今、サトリは図書館にいる。本を読んで知識を頭に入れ、パルシェンの攻略法を考え出そうとしているのだ。
「えっと、この本とこの本にしよっと。」
サトリは本を選び設置されている机へと向かった。そこではコタロウが白いポケモン(第12話参照)のことについて書かれた本とにらめっこを続けている。


(コタロウさんの邪魔しちゃ悪いからちょっと離れた席で読もうっと・・・ん?)


ふとサトリの目に留まったのは机の上に置きっぱなしになっている1冊の本だった。
「まったく・・・自分で読んだ本ぐらい自分で片付けられないのかしら・・・えっと、中国故事?面白そうね・・・」
興味をそそられたサトリは自分の持っていた本を机に置き、中国故事の本を手にとってパラパラと眺めた。
「へぇ・・・結構面白いわね。!これは・・・なるほど!これだっ!この手があったわ!!」
サトリの大きな声は図書館中に響き渡った。と、向こうからものすごい剣幕をしたおばさんが猛烈な勢いでやってくるではないか。
「あなたはここを何処だと思ってるんですかーっ!!」
「えっ、と、図書館・・・」
サトリは何が何だかわからない。
「図書館では大声を出さないでくださーい!!」
「えっ、そっちの方が大声出してるじゃーん・・・」
30秒後、サトリは図書館の外に放り出されていた。何故かコタロウも巻き添えにされて・・・

 

 

 

第25話 親子対決再び!リベンジバトル

 

 

 

一方その頃、サトミは自宅のパソコンに向かっていた。
「あっ、メールが来てる。クチバジムのガイルさんからだわ。あの黒真珠みたいなモンスターボール(第19話参照)の事がわかったのかしら?」
サトミの予想は的中していた。メールの内容は次の通りである。


《Good afternoon サトミサン。依頼していたボールの調査、終わったヨ。知り合いにモンスターボールの製造工場に勤めてる奴がいるからそいつに調べてもらったんだ。そうしたら量産型のモンスターボールには入っていない超小型の電波受信機が埋め込まれていたんだ。何のために埋め込まれたのかハッキリしない以上あのボールは使わない方がいいネ。ボクは他のジムリーダー達にもそれを知らせるメールを送ることにする。 See you!》


「やっぱりね・・・あのボールはすぐに壊そう・・・」
サトミが椅子から立ち上がると外から人の話し声が聞こえてきた。
「コタロウさん本当にごめんなさい、あたしのせいで・・・」
「いいんだよ気にしなくて。調べるものは大体調べ終わったし・・・それよりも今日ジム戦するって本当かい?」
「うん!勝つ方法思いついたんだ〜。」
声の主はサトリとコタロウだった。サトミはドアを開けて2人を出迎える。
「おかえり〜。ずいぶん早かったのね。」
「うん。そうだママ、今からジム戦を申し込むわ。リベンジバトル!いいでしょ?」
「おっ、ついにやる気ね!よーし、準備しましょ。」
サトミは肩を回すと準備のため自分の部屋へと向かった。
「あたしも準備しなきゃ。コタロウさんには審判をお願いするわね。先にジム行って待ってて。」
「わかった。頑張れよ!」
コタロウが右の親指を立てるとサトリも同じように右の親指を立てた。
「うん!」
そう一言言うとサトリも自分の部屋に準備をしに行った。






10分後、ハナダジム内バトルフィールド・・・
「お待たせ〜」
「ああ、始めようか・・・!」
コタロウは一瞬サトリから目を反らした。何故ならサトリは以前リーダーとしてジム戦をした時に着た水着を着ていたからだ。
「どうしたの?」
「い、いや、何でもない・・・」
コタロウは深呼吸し、気を取り直した。
「ではこれより、挑戦者、サトリとジムリーダー、サトミのバッジをかけたジム戦を開始します。使用ポケモンはそれぞれ2体、ポケモンの交換は挑戦者のみ良しとします!ではバトルスタート!!」
コタロウが両手のフラッグを高く挙げると2人はそれぞれ1体目のポケモンを繰り出した。
「行くのよっスターミー!」
「頼んだわよ、パルシェン!」


(よしっ!)


サトリは心の中でガッツポーズをした。パルシェン攻略の鍵はこのスターミーなのだ。
「どうやって戦うのかしら?見せてもらうわ、パルシェン、『棘キャノン』!!」
パルシェンが殻を閉じたまま棘を無数に飛ばしてきた。それを見たサトリは一瞬ニコッと微笑む。
「思ったより早く来たわね・・・でも好都合、早めに決着をつけるわ!スターミー、あの棘全部に『サイコキネシス』よ!」
「ヘアッ!」
強い念力が棘の1つ1つを包み込む。すると棘は一瞬動きを止め、パルシェンに向けて飛んでいく。
「何ですって!」
「どう?驚いた?行っけぇーっ!!」
棘がパルシェンの殻に突き刺さる。するとその部分を中心にひびが入っていく。棘の方も粉々になって砕け散った。
「くっ・・・やるじゃない。戻ってパルシェン。」
「戻したということは戦闘不能と判断していいんですね?」
コタロウがサトミに尋ねる。サトミは頷き(うなづき)ながら答えた。
「ええ。これ以上続けてもパルシェンを無駄に傷つけるだけ。」
「わかりました。パルシェン戦闘不能、スターミーの勝利!」
コタロウがサトリ側のフラッグを挙げる。サトミは次のボールに手をかけながらサトリに尋ねた。
「凄いわ、パルシェンにあんな方法で勝つなんて。何処であの方法を思いついたの?」
「図書館で中国故事の本をたまたま見つけてね、その中にあった矛と盾の話を見て思いついたのよ。」
その話とは次のようなものである。昔、中国に矛と盾を売る男がいた。その矛はどんな盾をも貫き、その盾はどんな矛を以てしても貫くことが出来ないという。では、その矛でその盾を突いたらどうなるのかと客の1人が尋ねた。ではやってみようと男が矛で盾を突くと両方とも砕けてしまったのだ。
「なるほど、矛盾ってやつね。見事よサトリ。でもバトルはまだ終わってないわ。行くのよ、ラグラージ!」
「ラージッ!」
「このポケモンはママがホウエン地方を旅したとき最初にゲットしたポケモンの・・・」
サトリは図鑑を開いた。
「ラグラージ・・・沼魚ポケモン。1トン以上の岩を軽々と引っ張るパワーを持つ。」
「さぁ、ラグラージ、あなたのパワーを見せてあげなさい!『渦潮』!!」
サトミが指示を出すが早いかラグラージはプールに飛び込みその太い腕を広げながら回転し水上に渦を作りだした。
「いいわよ、スターミーを抱えて渦の中へ!」
自らの作りだした渦の中心からラグラージが勢いよく跳び出しスターミーの目の前に立った。スターミーに目などないが。
「チャンス!スターミー、ラグラージのお腹に『体当たり』よ!」
スターミーの角張った体がラグラージの腹に食い込む。ラグラージは痛みを堪えつつスターミーをがっしりつかまえ、渦の中に飛び込んだ。
「しまった!反動を利用して抜け出せると思ったのに・・・!」
「残念でした。よしっ、特別に見せてあげよう、ママがジョウトの渦巻き列島の旅で思いついてホウエン地方の旅でついに完成させた必殺技、『トルネードドロップ』を!!」
サトミの声と同時に渦が激しく持ち上がり水竜巻と化した。その中をラグラージがスターミーを抱えながら昇っていく。
「そろそろいいわね、落下よ!」
今度はラグラージがスターミーを下にして物凄い勢いで落下しだし、そのまま着水、とてつもない水柱がプールの中央に上がった。その水柱の発生させた飛沫(しぶき)は大きく広がりサトリ、サトミ、そしてコタロウの体を濡らしていく。
「今日はあなたも水着着てるから濡れても大丈夫よねv」
そう言うとサトミはニッコリ微笑んだ。
「そういう問題じゃないわよ・・・スターミー、大丈夫?」
スターミーはプールの中央でぷかーと浮かんでいた。顔がないので素人目にはわかりにくいが気絶している。
「スターミー戦闘不能、ラグラージの勝利!」
コタロウが濡れた手でサトミ側のフラッグを挙げた。フラッグの先から水が滴り落ちている。
「やっぱりママは強いわ・・・でもあたしだって強くなったのよ!負けないわ!頼んだわよ、ゼニガメ!」
「ゼニゼニッ!」


(渦の中に巻き込まれたら終わりだわ、距離をとって戦わないと・・・)


「ん〜?サトリ、距離をとって戦おうと思ってる?」
サトミはサトリの考えていることを読みとっていた。と言っても超能力ではない。12年、胎内にいたときから数えれば13年も一緒に暮らしてきたのだ。ちょっとしたことなら表情の変化を見ればお見通しである。
「そ、そうよ!水の中に入らなければ体が小さいゼニガメでも戦えるわ!!ゼニガメ、『水鉄砲』連射よ!!」
サトリは変な理屈をこねながらゼニガメに攻撃の指示を出した。ゼニガメは小刻みに水鉄砲を連射する。ラグラージの巨体では全てをかわしきることは不可能であろう。サトミもそれはわかっていた。
「かわせないのなら相殺すればいいこと!ラグラージ、『ハイドロポンプ』!」
「ラァージッ!!」
ラグラージの口から大量の水が物凄い勢いで吹き出され、ゼニガメの放った無数の水鉄砲とぶつかり合った。
「くっ・・・凄い!」
ハイドロポンプは水鉄砲を全て打ち消し、ゼニガメへと襲いかかる。
「相殺なんてものじゃないわ・・・ゼニガメ、『からにこもる』のよ!」
「ゼ、ゼニ!」
「フフ、耐えられるかしら?」
ゼニガメは甲羅にこもったままハイドロポンプの勢いで壁まで吹っ飛ばされた。が、大ダメージは免れたようだ。
「ママ!ゼニガメの甲羅の硬さを甘く見てたわね?勝負はこれからよ!」
サトリは強気な表情で母の方を指差した。だがサトミも負けてはいない。
「その言葉そっくり返すわ、勝負はこれからよ!」
「よーし、反撃開始・・・あっ!!」
突然ゼニガメの体が光り出した。進化が始まったのだ。
「ゼ、ゼニガメ・・・」
光の中でゼニガメは少しずつその姿を変えていく。やがて光が消え、進化を終えたゼニガメがそこにいた。亀ポケモン、カメールだ。
「カメェーッ!」
「カメール・・・亀ポケモン。ゼニガメの進化系。毛で覆われた尻尾は長生きのシンボルである。」
図鑑を持つサトリの手が震えている。
「進化した・・・ゼニガメが・・・よし!よし!!勝てるわ!!ゼニガメ・・・いえカメール、『水鉄砲』!!」(←やたらと!マークが多い台詞だな・・・)
カメールの放った水鉄砲はゼニガメの時と比較にならないほど勢い、水の量、ともに上昇していた。
「よーし、連射よ!」
「カメーッ!」
進化したことにより連射力もアップしている。今度は相殺することは難しそうだ。
「フッ、進化したから必ず勝てるというわけじゃないわよ。ラグラージ、『ハイドロポンプ』!!」
水鉄砲とハイドロポンプが激しくぶつかり、どちらともはじけ飛んだ。プールの上を水しぶきが包む。
「今よカメール、『スクリューロケッティア』ーっ!!」
以前のハナダジム戦でも見せた回転ロケット頭突きである。当然の事ながら勢い、回転のスピードは以前よりも上昇し、威力は数倍にもなっているであろう。
「そのままラグラージのお腹を直撃よーっ!!」
「そうはいかないわ!ラグラージ、受け止めるのよ!!」
カメールの頭部がラグラージの柔らかいお腹に少しめり込んだ。が、ラグラージの太い腕がカメールの甲羅をしっかりと掴んでいる。
「よし、そのまま『渦潮』・・・」
サトミが言いかけたところでラグラージの巨体が仰向けに倒れた。白目をむいている。
「ラグラージ、戦闘不能。カメールの勝利!よって勝者、挑戦者サトリ!!」
その声を聞き、サトリは自分の頬をつねってみた。痛い、夢じゃない。サトリは本当に母に勝ったのだ。
「やった・・・ママに・・・勝った・・・!やったーっ!!」
バネブーのように飛び跳ねる娘の姿を見て、サトミはかすかに微笑を浮かべながら呟いた。
「サトリ・・・強くなったね・・・」






30分後、ハナダジム前・・・
「サトリ、受け取って。これがポケモンリーグカントー支部・・・もう支部じゃないんだけどね、公認のブルーバッジよ。」
母の差し出したブルーバッジを受け取り、サトリはそれを空にかざした。
「よーし!ブルーバッジ、ゲットだよ!」
「やったな、サトリちゃん!」
「やるじゃにゃーか、また少し見にゃおした(見直した)のじゃにゃー。」
いつの間にかニャースもいる。
「ニャース、招き猫修業はもういいのか?」
「『もうおみゃーに教えることはにゃにもにゃい』とのお言葉を頂戴したのですじゃにゃ。」
ニャースはこの年にして一人前、いや一匹前の招き猫ポケモンになったのだ。
「ママ、じゃあそろそろ行くわね。」
「え?ええ・・・気をつけてね。コタロウさん、娘をよろしく頼んだわよ!」
サトミはニッコリ微笑みながらサトリの頭をポンポンと叩いた。
「わかりました!それじゃあまた。」
「元気でね、ママ!」
「出発じゃにゃ〜〜!」
2人と1匹は歩き出した。サトミは手を振った。振り続けた。2人と1匹の姿が見えなくなるまで・・・






「ねぇ、次のジムがある街って何処かしら?」
サトリがコタロウに尋ねた。
「クチバシティだね。大きな港があるんだ。にぎやかな街だよ。」
「中華街もあるのじゃにゃ〜。」
「へぇ〜、早く行きた〜い!」
サトリは美味しそうな中華料理を思い浮かべた。
「食い意地だけはマスター級じゃにゃ。」
ニャースの言葉にサトリは顔を赤くした。
「な・・・何よーっ!」
「ぎゃにゃーっ!!」
サトリがニャースを追いかける。が、ニャースもそう簡単にはつかまらない。コタロウを置いて走り出してしまった。
「お、おい・・・待てって!」
コタロウの声も届かず、1人と1匹は先へ先へと行ってしまった。コタロウが追いついたとき既に道に迷っていたことは言うまでもない。






迷子の迷子のサトリちゃん・・・(何)続きます。






あとがきにかえて
次回はサトリ以外の人物が主人公になります。最近まったく出番のないあの人物が登場(ぉ)。そしてお待ちかねのあの人も・・・誰かは見てのお楽しみv

 

[一言感想]

 黒いボールの正体が気になるところですが、やはり何らかの策謀が渦巻いているようです。
 さすがにジムリーダー達も、そう易々とハマる様子はないみたいですが、まだ何かあるのでしょうか……?
 サトリはついに母を攻略し、バッジを手に入れる事ができました。
 ニャースも招き猫として免許皆伝になったようですし、けれど何だかんだでハナダシティ長かったな(笑)。
 それにしてもサトリのセクシー水着の姿は、いかに歳の差の離れた子供と言えど、コタロウにとっては刺激が強かったみたいです。

 

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