ハナダジムでブルーバッジをゲットし、次のジムがあるクチバシティを目指しているカオルは森の中にあるポケモンセンターで休息を取っていた。


(そろそろ出発するか・・・)


席を立ったカオルの耳に近くのトレーナー達の会話が入ってきた。
「最近この近くにポケモン密売組織のアジトが出来たらしいぜ。」
「怖いな、それって最近よく新聞に載ってるネオロケッツと関係があるのかな。」
「さあな、どうにしろポケモンGメンが来てぶっつぶしてくれればいいのに。」←自分で書いてて怖い言葉だ・・・(by作者)
そのような会話を横耳で聞きながらカオルはポケモンセンターをあとにした。


(密売組織・・・か。)


しばらく歩いていると少し広い場所に出た。そこには迷彩模様の布をかぶせた大きな物体がある。形からしてトラックのようだ。
「何でこんなものがここに・・・?」
カオルはふと気になり布をめくり上げてみた。そこにはポケモンが入れられた檻が大量にあるではないか。あるポケモンは怒りの表情を見せながら檻を壊そうとし、またあるポケモンは諦めたように絶望の表情を浮かべている。
「これは・・・ポケモン密猟!?」
「そこにいるのは誰だ!!」
突然聞こえてきた怒鳴り声にカオルは一瞬ビクッとしながら振り返った。そこには悪人面をした大柄な男がいる。
「何だ、ガキじゃないか。まあいい、さっさと行け。ただしここで見たことは忘れろ、いいな?」
「無理だな、こんなこと忘れる方が難しい。」
カオルは気丈にも言い返す。それが男の怒りを買ってしまった。
「このガキが!無事に帰してやろうという人の好意を受けとれんとは!許さんぞ!ただではおかん!!」

 

 

 

第26話 カオルと謎の老女

 

 

 

「行けっサンド!地獄を見せてやれ!」
「ピキー!」
砂地に住む鼠ポケモン、サンドだ。それを見たカオルは近くでじっくり見ないとわからないほどかすかな笑みを浮かべボールに手をかけた。
「行け、ニョロモ。」
「ニョモー!」
「相性の良さで来るか、果たしてそううまくいくかな?サンド、『乱れ引っ掻き』!」
サンドが爪をつきだしてニョロもに飛び掛かる。かなりのスピードだ。
「ニョロモ、『水鉄砲』。」
ニョロモの吐き出す水がサンドを直撃した。地面タイプのポケモンは水タイプの攻撃に弱い。サンドは大ダメージを受けたはずだ。
「うまくいったようだな。・・・何!?」
水が四方八方に飛び散り、体を丸めて回転しているサンドが姿を現した。サンドはそのまま回転しながらニョロモに体当たりをしかける。
「ニョモー!」
ニョロモは吹っ飛ばされ木に激突してしまった。
「バカな!地に足がついていない状態で目にもとまらぬスピードで高速スピンの体制に入り水をはじくなんて!」
カオルは顔をこわばらせながら言った。信じられないことを目にし、いつもの冷静さはどこかに吹き飛んでしまっている。
「気になるか?教えてやろう。」
男はニヤリと笑みを浮かべながら話しだした。悪人面の笑顔はとてつもなく恐ろしい(ほっとけ)。
「このサンドには水タイプの攻撃が来たら反射的に『高速スピン』をするように訓練を施してある。水タイプの攻撃といえどもはじき返せばダメージはない。さて、次のポケモンを出すか?それとも降参か・・・むっ!?」
突如黒い霧が男とサンドを包み込んだ。
「これは一体・・・?」
驚くカオルの耳に何者かの声が聞こえた。
「今のうちにニョロモを戻すんだ、早く!」


(誰だ・・・?)


声の主の正体を気にしつつカオルはニョロモをボールに戻した。やがて霧が晴れるとそこには1人の老女がいるではないか。男もサンドも消えている。ポケモンの入った檻を積んだトラックはそのまま残っていた。
「さて、今助けてやるからね。」
そういうと老女は辺りをキョロキョロ見回しながら自分のものと思われるポケモンの名を呼んだ。
「トゲチック、見つかったよ、おいで。」
すると森の中から呼ばれたポケモンがフワフワと飛んできた。顔には少々シワがある。老女とは長い付き合いなのだろう。カオルは図鑑を開いてみた。
「トゲチック・・・幸せポケモン。羽を使わずに宙に浮かぶことが出来る。」
「なるほど、しかし随分珍しいポケモンを持っているんだな・・・。」
そうこうしているうちに、トゲチックのサイコキネシスで檻の鍵は全て外された。自由になったポケモン達は散り散りに森の中へと戻っていったが、そのうちの1匹だけ何故かカオルにすり寄っている。子犬ポケモン、ガーディだ。
「くぅ〜ん、くぅ〜ん」
「!?どうしてだ?お前は行かないのか・・・」
カオルは少し困った顔をした。それを見た老女はクスクスと笑っている。
「おやおや、気に入られたみたいだね。あんた、この子のトレーナーになってあげたらどうだい?」
「えっ・・・そうだな、それも悪くない。・・・よし。」
カオルは静かにモンスターボールをガーディに当てた。ガーディは中に吸い込まれ、キャプチャーマーカーが赤から青に変わる。
「・・・ガーディ、ゲットだ。」
「良かったね。さてと、あたしは奴らのアジトに向かうとするか。」
老女の言葉にカオルは一瞬耳を疑った。
「どういうことだ・・・?」
「言った通りさ。この辺りに出来たポケモン密売組織のアジトだよ。そこに乗り込んで奴らをボスもろともつかまえるのさ。」
「でもどうやって?さっきの男は逃げてしまったんだぞ。」
カオルが方法を尋ねると老女はポケナビを取り出した。
「さっき『黒い霧』に紛れて発信機をあの男に付けたんだ。発信機から出てる電波はこのポケナビに受信して奴の居場所を教えてくれる。奴が向かう場所は組織のアジトに決まっているはず。奴は自分でも気付かずにアジトの場所をあたしに教えてくれるのさ。おっと、長話になっちまったね。ここでお別れだ。ガーディを大切にしてやるんだよ。」
「待ってくれ、オレも行く。あの男にリベンジしたいんだ。」
カオルは老女についていこうとした。が、老女は振り返りカオルを睨みつけた。
「敵は1人じゃないんだ。あんたの実力じゃ万に一つあの男に勝てても残った奴らにやれれちまうよ。」
老女の言葉にカオルは歯をぐぐっと食いしばった。
「くっ・・・だったらオレの実力、見せてやる!行けっフシギソウ!」
「ソウソウッ!」
「やれやれ、仕方がないね。出ておいでニョロトノ!」
「トニョーロトニョーロ」
ボールから出てきたニョロトノは手をパンパンと叩いている。その顔にはトゲチックと同じく無数のシワがあった。


(また老ポケモン・・・パワーもスピードもこちらの方が上のはず・・・だが手加減はしないぜ。)


「フシギソウ、『蔓の鞭』。」
フシギソウの背中から蔓が伸び、ニョロトノに向けて振り下ろされる。
「ニョロトノ、回り込んで『はたく』!」
「トニョ!」
ニョロトノのスピードは大したものではなかったが蔓の鞭を紙一重でかわすことが出来た。
「何!?」
「パワーやスピードでは老ポケモンは若いポケモンにはかなわない。でも老ポケモンはその長い戦歴によって相手の攻撃を読める『勘』が鋭くなっていくのさ。」
ニョロトノはフシギソウに迫り、右前足を振り上げた。
「フシギソウ、かわし・・・」
カオルが言うより早くニョロトノの平手打ちがフシギソウの頬にぶちかまされた。
「そのまま『往復ビンタ』!」
ニョロトノの平手打ちの1発の威力は大したことはなかったが、連続で受けているため少しずつだが確実にフシギソウから体力を奪っていく。
「フィニッシュだよニョロトノ、『メガトンパンチ』!」
ニョロトノの握り拳がフシギソウの顔面にヒットし、フシギソウは白目をむいてその場に崩れ落ちた。
「戻れフシギソウ。・・・そんなバカな!」
「実力を見せるつもりがあべこべに実力不足の証明になっちまったね。じゃ、あたしはもう行くよ。ニョロトノ、戻っておいで。」
「ま、待ってくれ!」
ニョロトノをボールに戻し、立ち去ろうとした老女をカオルは再び呼び止めた。
「なんだい、しつこい男は嫌われるよ。」
「奴らのアジトに着くまででいい。オレを鍛え直してくれ。足手まといにならないくらいには強くなってみせる。」
「え!?」
老女は呆れた顔をした。
「何を言っているんだい。アジトはこの辺りと言ったはずだよ。着くまで大して時間はかからないはずだ。それだけの間に一気に強くなんてなれるもんか。」
「やってみなければわからないさ。」
カオルは真剣な眼差しで老女の目を見つめた。老女の方もカオルと目を合わせている。
「仕方がないね、行くよ。ついてきな。」
そういうと老女はポケナビの示している方向に歩き出した。見たところ密猟者の男はまだ移動を続けているようだ。
「あっ、そうだ。」
老女が立ち止まり、振り返ってカオルを見た。
「まだ名前を聞いてなかったね。」
「オレはカオルだ。そういえばあんたの名前も聞いてないな。」
「名乗るほどの名前じゃないさ、適当に呼びな。」


(そりゃないだろ・・・まあいいか。)


老女は名乗ろうとしなかったが、この話を読んでいる方々の中には気付いた方もいらっしゃるだろう。かつて『世界の美少女』、『おてんば人魚』の異名を持っていた女性である。そして・・・いや、ここから先は言わないでおこう。
「わかった。だがあんた、ただのトレーナーなのか?」
カオルが尋ねると老女はニッコリ微笑み、ポケットから何やら手帳のような物を取り出した。『G』の文字が浮き彫りにされている。
「ポケモンGメンのメンバーさ。驚いたかい?」
「なっ・・・」
ポケモンGメンとはわかりやすくいえばポケモン関連の悪事を取り締まる組織である。半世紀ほど前には当時の四天王チャンピオンであるドラゴンマスター、ワタルが所属していたことが有名だ。これには流石のカオルも驚いた。


(Gメン・・・このばあさん、やはりただ者じゃなかったぜ・・・)


「何ボケッとしてるんだい、行くよ!」
老女は先に行ってしまった。トゲチックもフワフワと彼女についていく。
「わかった、待ってくれよ。」
カオルは走って老女を追いかけた。密売組織のアジトにたどり着く前に彼女に認められ、あの男に対してリベンジする。そんな誓いを心に秘めながら・・・






第27話に続く。






あとがきにかえて
今回は前回言った通りサトリ達は登場しません。カオルが主役です。クールなイメージがある(?)カオルですが今回は意外にも慌てたり驚いたりかわいい(かわいいか?)カオルを書いてみました。あと、老女の正体はわかりますよね?わからない人は放送局を見よう!(謎)そして何故彼女がGメンにいるのかはまたの機会に!(ぉ)

 

[一言感想]

 ちなみに今では更に、トゲキッスという更なる進化形もいたりしますが、それは置いといて。
 ついに登場を果たした謎(?)の老女、熟練された実力の持ち主ですね。
 カオルが驚くのも無理はないかも知れません。
 それにしても、時折主人公以外の物語が展開されるというのも、面白いと思います。

 

戻る