クチバシティへの旅の途中、密猟者のトラックを見つけたカオルはそのトラックの持ち主である密猟者の男とバトルし、敗れそうになるがポケモンGメンのメンバーと名乗る謎の老女に救われる。男にリベンジするため、老女についていくことに決めたカオルだが・・・






「まだアジトには着かないのか?もう2日経つぜ。」
「ああ、思ったより遠くにあるみたいだね。」
老女はポケナビを見ながら言った。発信機はまだ移動を続けている。
「そうか・・・オレにとってはラッキーかもな。修業の時間が増えるしな。」
カオルはクスッと微笑んだ。
「何言ってるんだい。まったくこの坊やは・・・」
老女も笑い混じりに言い返す。と、カオルが立ち上がった。
「よし、おしゃべりはこれくらいにして修業だ。ばあさん、頼むぜ。」
「ああ、出ておいでサニーゴ!」
「サンゴッ、サンゴッ!」
珊瑚ポケモン、サニーゴだ。体を再生させる能力を持っているためかトゲチックやニョロトノよりも少し若く見える。
「よし、出てこいニョロモ。」
「ニョモ!」
「サニーゴ、『原始の力』!」
サニーゴの放つオーラが周囲の石ころを持ち上げていく。それをニョロモに向けて鉄砲玉のように勢いよく飛ばした。
「ニョロモ、『水鉄砲』で撃ち落とせ!」
ニョロモが水鉄砲を連射して石を次々と落としていく。
「よし、あと1つだ・・・やった!初めて全部撃ち落とせたぞ!」
「ニョモー!」
カオルは柄にもなくガッツポーズをした。といっても必要以上に大袈裟な動きはしない、クールなガッツポーズである。


(ほぉ、やるじゃないか。成長速度は思っていたよりずっと上だね。)


老女はそう心の中で呟いた。

 

 

 

第27話 倒せ!密売組織

 

 

 

修業を始めて3日が過ぎた。
「奴らのアジトの場所がわかった。Gメンの本部に連絡したらすぐに向かうよ。」
老女がポケギアを取り出しながらカオルに言った。
「・・・オレは足手まといにならないか?」
カオルが聞き返す。老女はクスッと笑いながらそれに答えた。
「大丈夫だ。あんたの成長速度には本当に驚くばかりさ。」
「そうか、わかった。」
カオルはそう言うと右拳をぐっと握りしめた。


(待ってろよ・・・あの男・・・!)






その頃、密売組織のアジトでは・・・
「ボス、只今戻りました。」
密猟者の男がデスク越しにボスに一礼した。
「随分と遅かったではないか。まあいい。捕獲したポケモンは地下倉庫に入れておけ。」
ボスは葉巻を一服すると男に指示を出した。男は冷や汗を浮かべながら口ごもっている。
「あ・・・それが・・・」
「どうした。まさか失敗したとでも言うのではあるまいな。」
険しい顔つきになったボスの言葉が男にグサリと突き刺さった。
「うっ・・・くっ・・・そ、その通りで・・・」
「馬鹿者が!!」
男が言い終わる前にボスは男を怒鳴りつけた。くわえていた葉巻はその拍子に口から落ちたが丁度うまい具合にデスクに置いてある灰皿に乗った。
「す、すみませんボス、これには深いわけが・・・」
「言い訳など聞きたくないわ!私が失敗を何より嫌うと知っているだろう!貴様は今を以て解雇だ!!」
「そ、そんな・・・」
ボスは男の言うことに耳を貸そうともしなかった。
「さあ、ここから出てどこへなりとも行くがよい!」
「くっ・・・それでは失礼します・・・」


(オレはこれからどうすればいいんだ・・・それもこれもみんなあのガキとそれを助けた奴のせいだ!もし会ったらただではすまさん!)


男は怒りを抑えながらボスの部屋を後にした。まもなく『あのガキ』に会えるとも知らずに。






カオルと老女はアジトの目の前まで来ていた。
「どうやって忍び込む?堂々と正面突破なんて言うなよ。」
「いいかい、入ったらまずフシギソウの『眠り粉』をばらまくんだ。自分で吸わないように気を付けるんだよ。そうしたらあたしはボスをつかまえに行く。あんたはリベンジする相手を捜すなら捜しな。」
「わかったよ。出てこいフシギソウ。」
フシギソウはどことなくたくましくなっていた。僅かの間とはいえ修業の効き目がバッチリ現れている。
「よし、行くぜ!」






数分後・・・近くでドサッと音を聞いた男がそちらを見るとそこにはいた人物が眠っていた。彼だけではない。まわりの人間はみんな眠りに落ちている。
「これはどうしたことだ・・・まさか何者かが催眠ガスでもばらまいたのか・・・」
男が注意深く辺りを見回すと何か粉のような物が僅かに漂っている。男はそれを手ですくい取って少し舌で舐めてみた。
「これは『眠り粉』!くっ、誰だ!誰の仕業だ!?」
「オレの仕業さ。見つけたぜ密猟者!」
男が声のした方向に振り返るとそこには『あのガキ』ことカオルがいた。思わぬ再開(?)に男は驚きを隠せない。
「な、何故お前がここにいる!?」
「お前にリベンジするためさ。さあ、サンドを出してこい!今度は打ち負かしてやるぜ!」






「ここがボスの部屋か・・・」
老女が1つの部屋のドアの前に来た。他のドアとは違って巨大で派手なドアである。しかもしっかりと『ボスの部屋』とドアに彫ってある。これでわからないわけがない。老女はドアノブに手をかけた。鍵はかかっていないようだ。
「勝手で悪いけど入らせてもらうよ。」
ドアを開けるとそこはガラス張りの部屋だった。その一番奥にボスがいる。上等な椅子に腰をかけ、デスクにひじをつき、口には葉巻をくわえている。
「何だお前は。」
ボスは慌てた様子はない。老女はGメンの手帳を取り出した。
「ポケモンGメンだ。あんたの身柄を拘束させてもらうよ。」
「何?・・・フフフ、Gメンとはいえお前のような老いぼれ1人に何ができる。このボタンひとつで部下が駆けつけるのだぞ。」
ボスの言葉に老女はニッとして言った。
「悪いね、あんたの部下達はみんな揃っておねんねさ。気付かなかったのかい?アジトの中で起こったことも気付かずにのんびりしてるなんてボスが聞いて呆れるね。」
「何っまさか・・・おい、応答しろ!」
ボスはボタンを押した。反応がない。スピーカーから聞こえてくるのは寝息だけだ。
「くそっ!なんて事だ!!!」
ボスはボタンを叩き壊し立ち上がった。
「こうなったら老いぼれ!貴様を倒してまんまと逃げおおせてくれるわ!」
「それはどうかね?もうGメンの本部には連絡を入れてるんだ。もうすぐここに来る。逃げられっこないさ。もっともあんた相手にあたしが負けるわけないんだけどね。さ、どうする?」
老女はモンスターボールに手をかけながら言った。ボスもボールをかまえている。
「くっ・・・仕方ない、老いぼれが相手では戦う気も失せた!出てこいエアームド!後ろの硝子を壊せ!」
「エァーッ!!」
ボスはわずかに後ずさりし、ボールを自分の後ろに放り投げた。出てきたのは鎧鳥ポケモン、エアームドだ。
「さっきから老いぼれ老いぼれって五月蠅いね。行くよ、出ておいでニョロトノ!『催眠術』!」
「トニョ〜ロトニョ〜ロ♪」
ニョロトノの手が奇妙な動きを見せる。エアームドに対して暗示をかけているのだ。
「いかん、エアームド、そいつを見るなーっ!!」
ボスが叫んだときは既に遅く、エアームドの目は虚ろになっていた。催眠状態になっているのである。
「よし、うまくかかったね。今そのエアームドはあたしの言う通りに動く。エアームド、その男を押さえ込むんだ。」
老女の指示でエアームドは足のかぎ爪で自分の本当の主人を鷲掴みにし、そのままうつ伏せに倒した。
「くそっ、エアームド、私がわからんのかっ!!」
ボスの声はエアームドには届かない。届いたとしても催眠状態のエアームドにとって自分の主人は老女なのだ。主人でもない人間の言うことなど聞くはずがない。
「そんなバカな・・・」
そう言うとボスは観念したのかそのまま黙ってしまった。






一方その頃、カオルは密猟者の男とのバトルを開始していた。
「ニョロモ、『往復ビンタ』!」
「ニョモー!」
「サンド、『丸くなれ』!!」
ニョロモの尻尾がサンドの硬い外皮を連続でひっぱたく。が、防御態勢をとっているサンドには殆ど効果がない。
「甘いぜ、サンド、『乱れ引っ掻き』!!」
「ピキー!」
今度はサンドの爪がニョロモに襲いかかる。至近距離だったためかわす暇もなかった。
「とどめだ!『ブレイククロー』!!」
サンドが大きく振りかぶった。その隙を見逃すカオルではない。
「今だ、サンドから離れろ!!」
カオルの指示でニョロモはサンドに背を向け走り出した。が、サンドの爪はその時すでにニョロモの尻尾を捉えていたのだ。
「何っ!?」
「いいぞサンド、そのまま引きちぎれ!!」
「ピキィィッ!!」
次の瞬間、鋭い音とともにニョロモの尻尾はバラバラになり身体から離れた。
「ニョロモ!」
「ハッハッハ!勝負はついたな、所詮お前みたいなガキがオレに勝とうなんて10年早いわ!!さて、オレはお前のせいでこの組織を解雇された。恨みをはらしてやるぜ!!」


(おいおい・・・それって完全な逆恨みじゃないか・・・)


カオルは心の中で呟いたが口には出さなかった。この男を怒らせると何をするかわからないからだ。
「ひ、ひとつ聞きたいことがある・・・」
カオルはニョロモの方をチラチラと見ながら男に言った。
「何だ、命乞いでもするなら無駄なことだぞ。」


(何が命乞いだよ、ポケモンバトルで死にはしないだろう。負けたらこの逆恨み野郎に殺されそうだがな・・・)


「違う。お前は何故『眠り粉』がばらまかれたときに眠らなかった?オレとしては都合がよかったがな。」
カオルの質問に男は声を上げて笑いながら答えた。
「ハッハッハ!そんなことか!よし、冥土の土産に教えてやろう。オレは密猟者を育成する施設で訓練を受けこの組織に入った。その訓練のひとつに『ポケモンの攻撃に対する免疫をつける』というものがあってな。オレはそこで免疫増強剤を投与され何千何百回と毒、麻痺、眠りの粉を浴び続けてきた。そのおかげでオレはポケモンの粉攻撃に対する免疫ができたのだ。さあ、これで心おきなくやられることができるだろう・・・ん?」
男が長い話をしている間に、ニョロモの体が輝きだしている。進化しようとしているのだ。
「ご説明わざわざありがとよ。おかげで無事に進化が始まった。」
カオルの言葉に男はハッとした。
「何っ、まさかお前はニョロモがもうすぐ進化することを見抜き無事に進化させるための時間稼ぎをするためにオレに対して質問を投げかけたというのかっ!?バカな、進化の兆しなどわかるものか!」
「そのまさかだ。オレは物心ついた頃から何度もポケモンの進化を見ている。祖父が研究者だからな。進化の兆しぐらい簡単に見抜けるのさ。」
カオルが話しているうちにニョロモは進化を終えた。おたまポケモン、ニョロゾだ。
「ぐぐっ・・・進化しようがしまいがこちらが水攻撃をはじく以上お前に決定打はないのだ!サンド、『アイアンテール』!!」
サンドの尻尾が鋼鉄の硬度を得てニョロゾに向けて振り下ろされる。が、ニョロゾは手の平で難なく受け止めてしまった。
「バカな、進化したとはいえオレのサンドの『アイアンテール』を掌底一本で防いだだと!?何というパワーだ!!」
「驚くのは早いぜ!」
カオルがそう言うとニョロゾはサンドの尻尾をつかみ、力を入れた。手の平から冷気が放たれているのがわかる。その冷気はサンドの全身を包んでいく。そのところでニョロゾは手を離した。
「なるほど、『冷凍パンチ』の応用か・・・だが手を離した以上致命傷にはならなかったぞ。どうするつもりだ!?」
「こうするつもりさ。ニョロゾ、『水鉄砲』。」
ニョロゾの渦巻きの中心から水が放たれる。それを見た男は大笑いをした。
「ワッハハハ!何を考えているのだ、オレのサンドは水攻撃が来たら反射的に『高速スピン』するように訓練されていると言っただろう!無駄なことだぞ!」
「それはどうかな?」
水鉄砲はサンドに直撃し、吹っ飛ばした。そのサンドの飛んでいく先には主人である男がいる。
「バ、バカなっ・・・ぐわっ!」
男はサンドに激突され、壁まで吹っ飛ばされて尻餅をついた。サンドの方は気を失っている。
「何故だ、何故『高速スピン』しなかったのだ・・・」
「今度はオレが教える番だな。」
カオルが男を睨みつけながら言った。
「『しなかった』んじゃない。『しようとしたが間に合わなかった』んだ。さっき浴びた冷気のせいで体が凍えて動きが鈍ったためにな。」
くっ・・・そんなことまで考えていたのか・・・なんてガキだお前は・・・」






それから約1時間後、Gメンが到着し、ボスを含む組織の一味を連行していった。
「あんたのおかげで密売組織をひとつ壊滅させることができた。ありがとうね。」
老女が言うとカオルは首を横に振った。
「いや、礼を言うのはこっちの方だ。オレのわがままを聞いて連れていってくれたんだからな。」
「なあに、気にすることはないさ。そうだ、あんたにこれをあげよう。あたしからの餞別さ。」
そう言うと老女はひとつの石を取り出した。水色に光った綺麗な石だ。
「これは水の石。ニョロゾとかがこの石で進化するんだ。進化させるもさせないもあんた次第だけどね。」
「そうか、ありがたくもらっておくよ。」
カオルは水の石を受け取った。水の石だけあってかすかにひんやりしている。
「じゃあオレはもう行くぜ。世話になったな。」
「ああ。もう会うこともないだろうけど達者でね。」






それから数日後、クチバシティ近くの丘の上・・・
「見えた。あれがクチバシティか・・・」
そう呟くとカオルは丘を一気に駆け下りた。






28話では久しぶりにサトリ達だよー






あとがきにかえて
突然ですが、何故カオルは冷凍パンチを応用した技でサンドを倒さなかったのか・・・カオルは男に水技を破られて男に負けたのでその水技でリベンジしようとしたのです。
それはさておき、次回は2話ぶりにサトリ達が登場します。何かポケモンをゲットしそうです・・・

 

[一言感想]

 2話構成の、カオルが主人公の話でした。
 最初の頃はなかなか強くて生意気なところもありましたが、やっぱり周りにはまだまだ強者がいるようです。
 とはいえ、彼も素直なところがあるようなので、いろんな事を吸収して成長は速いのでしょう。
 いずれサトリと再会して対戦となった時、どのようなバトルになるか楽しみですね。

 

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