クチバジムでのバトルに勝利し、オレンジバッジをゲットしたサトリは、中華街へと向かっていた。
「コタロウさんはもう来てるかな・・・」
「当然じゃにゃ。船の予約にそんにゃ時間がかかるわけがにゃい。」
「それもそうね。急ぎましょ。」
そう言うとサトリは走り出した。それをニャースが引き止める。
「中華街の場所はわかるのかにゃ!?」
「そ、そうだった・・・エヘv」
「『エヘv』じゃにゃいのじゃにゃ!こっちじゃにゃ!」
ニャースが走り出した。サトリもそれについていく。
「そんなに走って大丈夫なのーっ!?」
サトリが心配しているのはニャースの持病、ぎっくり腰である。速く走ったりすれば腰に負担が衝撃が走る恐れがあるのだ。
「そんにゃの平気じゃにゃ〜。最近は落ち着いてきてるしにゃ〜。」
次の瞬間、恐れていた事態が発生した。
「ぎゃにゃーーーーっ!!!」
ニビやハナダで響き渡った叫び声はクチバシティにも響き渡ることとなった・・・
第30話 中華街 美味しい料理を ゲットだよ(川柳調で)
「こっちにゃのじゃにゃ・・・」
ニャースはサトリにおぶさりながら中華街への道を教えていた。羨ましいぞニャース!(おぃ)
「まったく・・・だから言ったのに・・・」
「すまんにゃ。世話かけるのじゃにゃ〜。」
サトリは『本当にその通りよ』と言いたかったがニャースが涙声のため、言う気が失せてしまった。
「いいから・・・次はどっちに行けばいいの?」
「そっちじゃにゃ・・・」
その頃、中華街の入り口にはニャースの言った通り既にコタロウが到着していた。
(サトリちゃんはバッジをゲットできたかな・・・ニャースが足を引っ張るなんてことはないよな・・・)
そんなことを考えながら待っていると、向こうから老猫を背負った少女がやってきた。サトリとニャースだ。
「あっ、コタロウさんだ。やっほー!」
サトリはコタロウに向けて手を振った。コタロウも手を振り返す。
「サトリちゃん!・・・ニャースは何やってんだ?」
「遅れてゴメンネー。ニャースがぎっくり腰で・・・」
「ああーっ、ぼっちゃま〜・・・」
ニャースはサトリの背中で涙を滝のように流している。
「大丈夫か?最近は落ち着いてたのに・・・」
「実はかくかくしかじかで・・・」
サトリはニャースがぎっくり腰になった経緯をコタロウに説明した。
「なるほど・・・無理に走ったせいでね・・・気を付けろよニャース。」
「わかりましたのじゃにゃ〜・・・」
ニャースはサトリの背中から降り、反省のポーズをしてみせた。だが次の瞬間、再びニャースの叫び声がクチバシティに響き渡ることとなった。二度の騒音に市民の皆様もさぞかし迷惑しているであろう。
「ところでサトリちゃん、ジム戦はどうだった?」
ニャースの叫び声が響く中、コタロウはサトリに尋ねた。
「勝ったわよ、ホラ!」
サトリはオレンジバッジを手に取りコタロウにみせた。サトリの手の平の上でバッジは太陽の光を反射して光っている。
「おめでとう。やったな!ところでニャースは的確なアドバイスをしてくれたかい?」
「いえ、バトルの間ずっと気絶してたから・・・」
サトリはジム内でのニャースのことを全て話し始めると、その話が耳に入ったニャースは叫ぶのをやめ、顔を真っ赤にした。
「にゃ・・・恥ずかしいのじゃにゃ〜。」
「そうか・・・気にするなニャース。あっそうだ。アオプルコ行きの船の予約はうまくとれたよ。明日の正午に就航する船だ。」
「やったー!じゃあ話はこれぐらいにして食事にしよっv」
サトリははしゃぎながら中華街へと入っていった。
「まったく、食い意地だけは・・・」
ニャースが呆れた顔をしながら言うが、コタロウがとっさにその口を塞いだ。
「言うなって。サトリちゃんは本当に楽しみにしてたんだから。」
「はいですにゃ・・・」
コタロウとニャースもサトリの後を追って中華街に入っていった。
「えーっとどこで食べようかな・・・こっちがいいかなー。こっちも捨てがたいなー・・・」
サトリはあちこちウロウロしながらどこで食べようか決めかねていた。
「早く決めるのじゃにゃ!こっちは腹ペコにゃのじゃにゃ!!」
ニャースは空腹のためかご機嫌斜めだ。
「あっ!あれにしよう!」
サトリが指差した先を見ると、入り口に貼り紙の貼ってある店がある。2人と1匹はさっそくそこへ向かった。
「この貼り紙は・・・?」
貼り紙にはこう書いてある。
“店主とポケモンバトルして勝てば食べ放題を無料で承ります。”
「これは2つの意味でおいしいのじゃにゃ!・・・でも本当かにゃ・・・?」
ニャースは半信半疑だ。一方のコタロウは冷静に考えている。
「入り口にわざわざ貼り紙するってことは本当だろう・・・とするとここの店主はバトルによほどの自身があるってことになるぜ。でも店内でどうやってバトルするんだろう・・・」
「それは置いといて!バトルに勝って食べ放題をゲットしちゃお!」
サトリは勢いよく店内に入っていった。コタロウ達も続けて入る。店内にはサウナのように蒸し暑く、客は1人もいない。ふと見ると奥の厨房で中華鍋を使い何かを炒めている男がいる。
「ハーイ、いらっしゃい。お客様何名アルかーっ?」
男が急にしゃべり出した。サトリはびびりながらも男に人数を伝えつつ貼り紙についても尋ねる。
「人間2人にポケモン6×2+1で13匹!ところで表の貼り紙の・・・」
サトリが言い終わる前に男は火を止め、中華鍋の中身を手早く皿に移した。どうやら麻婆茄子のようだ。
「おー、久しぶりの挑戦者ねーっ!腕がなるよーっ!」
この男が店主のようである。
「OK!あたしが勝ったら食べ放題無料ね!」
サトリはやる気、いや勝つ気まんまんである。一方ニャースは店内に充満した美味しそうな匂いにもう耐えられない様子だ。
「そんにゃに待ってられにゃいのじゃにゃ〜っ!!にゃ?」
ふと見ると店主がたった今皿に載せたばかりの麻婆茄子をサトリに渡そうとしていた。
「これ参加賞!残りはバトル終わってからね。」
「あ、ありがとうございます・・・でもあたし・・・」
だが、その皿はサトリの手に渡る前にニャースが風の如きスピードで奪い取ってしまった。
「こら!これはサトリちゃんのだぞ!」
コタロウがニャースを叱るが、その時既に麻婆茄子は半分以上ニャースの胃の中だった。
「うみゃい・・・茄子食べるなら麻婆ニャースにゃのじゃにゃ〜。」
「まったく・・・サトリちゃんごめん。」
だがサトリは別に怒ってはいなかった。
「いいのよ。実はあたし茄子は嫌いでさ。だから気にしないで。」
「そうにゃら遠慮せず貰うのじゃにゃ〜。」
そう言うとニャースは残りの麻婆茄子を一気に口に流し込んだ。
「お前が言うなって!」
「うみゃいみゃ〜(うまいにゃ〜)。」
ニャースが口の中をモゴモゴさせていると、いきなり店内が音を立てて揺れだした。
「な、何、地震?」
サトリは店主の方を見た。するとその店主が壁にあるボタンを押したところだった。
「ハーイ、店内をバトルフィールドに変形ねーっ!」
「何て仕掛けだ・・・あんた一体・・・」
コタロウの言うことがもっともである。変形式の店を作るなんてよほどの変わり者としか思えない。そうこうしているうちに店内はすっかりバトルフィールドになっていた。
「さーっ、バトルスタートねーっ!」
「よーし、いくわよ!」
サトリと店主はそれぞれのサイドに着き、向かい合った。
「バトルは1対1でいいかな?」
「望むところよ!行くのよスターミー!」
サトリが出したのはスターミーだ。今回はサトリは予測を立てていた。『中華は火が命。だから店主のポケモンは炎タイプに違いない』という予測だ。・・・かなり苦しい予測である。
「いいポケモンね。こっちも行くよ、中華は火が命。出てくるねブーバー!」
(やったね!やっぱり炎ポケモンだわ!)
サトリは勝利を確信しながら図鑑を開いた。
「ブーバー・・・火吹きポケモン。火山の火口で見つかった。非常に見つけにくいポケモンで捕獲例は少ない。」
「ブーバーとはまた珍しいポケモンを持っているな。」
「熱気が伝わってくるのじゃにゃ〜。」
コタロウとニャースは流れる汗を拭きながらバトルの開始を待っている。
「まずはけん制よ!スターミー、『水鉄砲』!」
先に仕掛けたのはサトリだ。水が勢いよくブーバーに向けて飛ぶがブーバーはよけようともしない。
「あれ?何で!?でもダメージチャンス!」
ところが、水鉄砲はブーバーに届く前に蒸発し消えてしまった。
「そんなっ!?」
「今度はこっちの番ネ!ブーバー、『火炎放射』!」
「ブバーーッ!!」
ブーバーが激しく巨大な炎を吹き出した。老師のリザードンの炎にも匹敵するほどの巨大さである。
「スターミー、『光の壁』と『水鉄砲』で防御よ!」
だが水鉄砲は炎に飲み込まれてしまい、相殺どころか威力をわずかに弱めることすらできなかった。そして光の壁も巨大な炎の前にはほとんど無力だ。
「にゃんて威力じゃにゃ・・・」
「あの店主、ただ者じゃないぞ。本当に料理人か!?」
コタロウとニャースが話しているうちに、スターミーは炎に包まれた。
「これでヒトデの丸焼きの完成アルね!」
店主が言った。考えてみれば意外に恐ろしい言葉である。それを聞いたサトリはカチンときた。
「何言ってんのよ!そんなわけないでしょ!スターミー、『高速スピン』で炎を散らして『自己再生』よ!!」
スターミーがベ○ブ○ードのように回転を始め炎を吹き飛ばし、炎が完全に散ると自己再生でダメージを回復させた。
「やるね。けど水技は効かないよ!ブーバー、『炎のパンチ』!」
ブーバーが右手に炎をまといスターミーに向かっていく。
「待ってました!近付いてくるのをね!スターミー、十分引き付けて『冷凍ビーム』!!」
発射された冷気はブーバーの熱によって完全に防がれたかに見えた。だがそのブーバーが一瞬たじろいでいる。
「ムッ!?」
「よーし、『冷凍ビーム』連射よ!!」
スターミーの連続攻撃にブーバーは押されている。ダメージも少しずつだがたまっているようだ。
「どうにゃっているのじゃにゃ?」
ニャースの疑問にコタロウが答えた。
「至近距離で大量の冷気が命中したため完全に蒸発せずにわずかにブーバーに届いたんだ。それが少しずつだが確実にブーバーの体力を奪っている。」
「とどめよスターミー、『10万ボルト』ーっ!!」
スターミーの体から放たれた電撃がブーバーに激しくぶつかった。ブーバーは立ったまま白目をむいて気絶している。まるで弁慶の立ち往生だ。死んではいないが。
「ま、負けたアル・・・」
店主はその場に手をついて顔をうつむかせた。勝てる自身があったからである。サトリはその店主に駆け寄った。
「いいバトルだったわ。おじさん強いわねー。」
「い、いや。君の方が強かったネ。本来は炎に効きにくいはずの氷技を上手く使うなんて・・・さて、約束だ。食べ放題、無料で承るヨ。」
店主は立ち上がり、さっきのボタンを押しに行った。バトルフィールドがみるみるうちに元の店に戻っていく。
「よーし、気合い入れて作るアルねーっ!みんな席で待っててね。すぐに持っていくからネ。」
美味しそうな匂いが漂う中、サトリ達は席について待った。やがて料理がどんどん運ばれてきた。どれもこれもいい匂いが漂っている。
「さっそく食べよーっ!いっただっきまーす!」
真っ先に食べ始めたのはサトリだ。行儀をまったく無視してがっついている。ポケモン達も同じようにがっついている。
「品のにゃい小娘じゃにゃまったく。ポケモン達も飼い主に似てるにゃ。」
「そんなに慌てなくても料理は逃げないからゆっくり食べようぜ。」
コタロウ達の言葉も耳に入らない。
「はーっ、美味しいーっおじさんおかわりーっ!」
「ハイヨーッ!まかしときーっ!」
ポケモンセンターへと向かう道の途中・・・
「うーっ、苦しい・・・」
サトリはお腹をおさえながら歩いている。原因は食べ過ぎだ。
「ほれ見るにゃ。言わんこっちゃにゃい。」
ニャースがほくそ笑む。いつもならここでサトリの拳骨が入るのだが、今回は拳を振り上げる気力すらサトリにはなかった。
「ハァハァ・・・一歩歩くのも辛い・・・」
「頑張って。ポケモンセンターまであと少しだから・・・」
その後、サトリ達がポケモンセンターに着いたのは30分後だった・・・。
第31話に続く
あとがきにかえて
中華街での思い出・・・今回のサトリのように食べ過ぎてダウンしました。しばらくは苦しくて動くのも辛かった・・・いや、駅まで30分かかるほどではありませんでしたが(蹴)。
本編のことですが、サトリの茄子嫌いは書いている途中で思いつきました。
・・・ちなみにボクは茄子は漬け物が好きです(私事)。
[一言感想]
指定時間内に食べればタダっていうのはありますけど、バトルでは勝てばタダとは、よっぽど腕に自信がある店主さんだったようです。
サトリには負けちゃったけど。
しかし、いくら食べた分は全て胸に行く体質とはいえ(ぁ)、食べ過ぎには気をつけましょう(苦笑)。