シオンタウンへの道を行くサトリ達。もうすぐシオンタウンに着くというところで少しずつにぎやかになっていった。
「見て、出店が出てる!アンズ飴にかき氷・・・あっ!焼きトウモロコシも!」
他にも射的ゲームやくじ引きなどがあったが、サトリの視線の先は常に食べ物だ。
「まったく、食べ物のこととにゃるとこの小娘は・・・」
「それにしてもにぎやかだな。今日は祭りの日なのか・・・」
あたりの出店を見回しているうちにシオンタウンに着いた。中央には巨大な塔がそびえ立っている。
「むぐ・・・大きな建物ねーっ、随分古いみたいだけど。」
サトリの手にはいつの間にか焼きトウモロコシが握られている。そしてそれにかぶりつきながら塔を見上げる。
「あれはこの町のシンボル、『シオンの塔』。町ができる前からあの場所にあったと言われているんだ。」
コタロウが塔を見上げながら言った。その姿を横から見たサトリは自分の胸が震えるのを感じた。
(またこの感覚・・・これってまさか・・・?)
「ん?どうしたサトリちゃん?」
「はっ!何でもない。それよりさっそくジムに行かなきゃ!」
2人と1匹はジムへと向かった。
第35話 シオンタウンの夏祭り
サトリ達はジムの前にやってきた。入り口に何やら貼り紙が貼ってある。
「ん?何て書いて・・・これは!?」
貼り紙にはこう書いてある。
《私用のためジムはしばらく休業します。ジムリーダー・レイカ》
「や、休み・・・」
「祭りにでも行ってるんじゃにゃーか?」
「その可能性もあるな。」
サトリ達は仕方なくそのままジムを後にした・・・
カントーで最も古くからある町のひとつ、シオンタウン。その名は創世記にも記されている。また、霊的磁場が強く、多くの霊が集まってくるという。そのためかこの町に住む者の多くは霊感がある。中でも最も強い霊力を持つのがジムリーダー・レイカなのだ。
「しゃーない、祭りを楽しむとしましょうか!」
サトリは浴衣に着替えていた。
「わしもじゃにゃ〜。・・・おぉ、ぼっちゃまも。」
コタロウとニャースも浴衣を着ている。それにしてもコタロウの浴衣の着こなし方はプロ級だ。知ってる人は知っている。祖父母譲りである。
「よし、行くか!」
「うん!」
霊というと暗いイメージがあるが、この祭りは何とも明るくにぎやかだ。道の両側に出店がずらりと並び、道でははっぴ姿の男達がみこしをかついでいる。
「いいわよねー、お祭りって大好き。」
サトリが綿菓子をほおばりながらつぶやくと、コタロウが尋ねた。
「ハナダシティのもこんな祭りがあるのかい?」
「うん。毎年今頃になるとママと一緒に行ったわ。コタロウさんは?」
サトリが尋ねると、コタロウは少し淋しそうな顔をした。こんな顔は初めてだ。
「?どうしたの?あたし何かいけないこと言っちゃった?」
「いや、そうじゃないよ。オレの両親は厳しくてね。祭りとかには全然行かせてくれなかったんだ。クラスのみんなは行ってるのにオレだけ行ってないから話題に入れないのが淋しかった。」
「そんやことはにゃーす!一度・・・もごっ」
言いかけたニャースの口をふさぎ、コタロウが再び話しだした。
「でも一度だけ祭りの日に両親が留守だったことがあってその時おじいさま、おばあさまが連れていってくれたんだ。」
「へぇー、優しいのねコタロウさんのおじいちゃんとおばあちゃんって。」
サトリがコタロウの顔を見るともう淋しさは消え、いつもの顔に戻っていた。
「怒ると怖かったけどね。特におばあさまは。」
「クスッ」
「にゃはは。おばあさまがお怒りになった時の顔はもう地獄の修羅の如く・・・」
その頃、とあるお屋敷では・・・
「はーっくしょん!」
安楽椅子に腰掛けた老婆がくしゃみをした。
「どうした、風邪かい?」
隣にいる翁がたずねる。
「きっとあたしの噂をしてる人がいるのよ〜っ。若い頃は美人でナイスバディだったって〜っ。はーっくしょん!」
・・・知らぬが仏である。
「ソーーーーナンス!!」
日が沈み、あたりは暗くなってきた。その夜空に一輪の大きな花が美しく咲き、一瞬で散る。
「わーっ、綺麗な花火ーっ。」
「本当だ。あっまた!」
色とりどりの花火がいくつも夜空に咲いては一瞬で散っていく。2人と1匹はそれを見つめ続けていた。
「はにゃびは一瞬ゆえに美しいのじゃにゃ〜。」
ニャースがつぶやいた。
「そうね。でもニャースにその台詞は似合わないわ。どっちかっていうとギャグ系だもんねニャースって。」
「にゃ、そりゃにゃいにゃー!」
ニャースは怒って立ち上がった。見るとコタロウも笑っている。
「フフ、確かに言えるかもしれないな。」
「ぼ、ぼっちゃままで・・・ううーっ、怒ったのじゃにゃ!『乱れ引っ掻き』・・・にゃ!」
ニャースが飛び上がった瞬間、腰に電撃が走った。毎度おなじみのぎっくり腰だ。
「ぎゃにゃ〜・・・・・・・・・・・・〜!!」
ニャースは叫んだ。が、その絶叫は花火の音に殆どかき消された・・・
第36話に続く
今回の祭りは現代の祭りと同じように書きました。どんなに文明が発達しても祭りの中心は人間。そこに文明の入り込む余地はないと思うのです。出店はともかく、ね。花火とかのシミュレーションもあるけど本物にはかなわない、よね。
[一言感想]
不思議とお祭りは心が躍るものです。
ここんとこ災難(?)続きだったサトリ達でしたが、いい気分転換になったことでしょう。
コタロウのお婆様は、確かに怒ると恐そう……。
さて、不在とのことであるジムリーダーのレイカですが、果たして今回はどんなジム戦が待っているのでしょうか。