シオンの塔に閉じこめられたサトリとコタロウは閉じこめた張本人である幽霊ポケモンをゲットするために2階へ上ると、そこには気絶したゴースがあたりに転がっていた。そしてそこにはマサラジムで共に修業したカオルもいたのだ。
「な、何でカオルがここにいるのよ。あんたもしかして幽霊?」
サトリの台詞に、緊張感が一瞬のうちに崩れ去った。
「何を言ってるんだお前は・・・ん?」
カオルはコタロウの方に目を向け、しばし沈黙ののちサトリに向けて口を開いた。
「・・・この人はお前の旦那か?」
2人の顔が同時に赤くなり、周囲に熱を放つ。まわりが揺らめいて見えるほどだ。
「図星みたいだな。」
「ま、まだそこまでは行ってないわよ・・・あんたも変わったわね。前はギャグなんて縁のない奴だったもんね。」
サトリの体からはまだ熱気が発せられている。近寄るだけで汗が出そうだ。コタロウの方はだいぶ熱気は治まっているようだがそれでもまだまわりが揺らめいている。
「そ、そうか・・・君がサトリちゃんと一緒に老師の元で修業したというカオル君か。」
「君付けはしなくていい。あんたは?」
ギャグは飛ばすようになったが、気位の高い言葉遣いは相変わらずのようだ。
「オレはコタロウ。よろしくな。」
コタロウが右手を差し出すと、カオルはフッと息をついてからそれに従った。

 

 

 

第37話 真昼の肝試し

 

 

 

「ふうふう・・・ぼっちゃま〜今行きますにゃ〜・・・」
ニャースは杖をつきながらシオンの塔へ向けて歩いていた。一歩が百歩にも感じるぐらいに足が重い。だがニャースはくじけない。何としてもコタロウ達のもとまで行かねばという思いがニャースの足を動かしているのだ。
「わしは負けにゃいのじゃにゃ〜・・・」






シオンの塔・2階
「ところでカオルは何でこの塔に来たの?肝試し?」
カオルは『そんなわけないだろう』と言いたそうな目をサトリに向けながらそれに答えた。
「この塔に強力な幽霊ポケモンがいるらしいと聞いて来た。この階のポケモン達はそれほどじゃなかったからもっと上にいるんだろう。」
「強力な幽霊ポケモン?」
サトリは目の色を変えた。
「よーし!その幽霊ポケモン、あたしが先にゲットしてやるわ!!行きましょコタロウさん!」
コタロウの手を引っ張り、サトリは駆けだした。それを目で追うカオルはクスッと微笑む。


(カカア天下かな・・・フッ、まあいい、どっちが先にゲットできるか勝負といこうか・・・!)






3人は3階に着いた。この階にもゴースがうようよいる。
「1匹でもちょっと怖いのにこれだけいると・・・でもひるんでなんかいられない!行くのよピジョン、『体当たり』!」
「ピジョーッ!」
ピジョンはゴースのうちの1体に狙いを定めて突っ込んだ。が、そのピジョンの体がゴースの体を通り抜けてしまった。
「えっ!?」
戸惑うサトリにゴース達が飛びかかる。
「危ない!サンダース、『10万ボルト』!!」
間一髪、サンダースの電撃でゴース達は気を失った。だがまだ多くのゴース達が残っている。
「サトリちゃん、幽霊ポケモンに物理的な攻撃は効かない。気を付けるんだ!」
「あ、ありがとうコタロウさん。わかったわ。ピジョン、今度は『風起こし』!!」
ピジョンの起こした風がゴース達を次々と吹き飛ばす。中にはゴース同士でぶつかり合って気絶する者もいた。
「よぉ〜しいい感じ!ところでカオルは・・・」
カオルは既にかなり先に行ってしまっている。サトリ達の戦いなどどこ吹く風だ。
「こらーっカオルーっ!あんたも手伝いなさいよーっ!」
サトリの怒鳴り声に一瞬立ち止まって少し振り返るも、またすぐに歩き出した。
「くーっ!相変わらずやな奴ーっ!」
「こちらも追いかけよう。」
2人は一気に駆けだした。その2人に対してまたもゴース達が襲いかかる。
「サンダース、『10万ボルト』!!」
「ピジョン、『風起こし』!!」
ゴース達を蹴散らし進んでいく2人。ようやく4階への階段を発見した。
「カオルは先に行ったのよね・・・」
「とにかく急ごう!」
2人が階段を駆け上がり4階に着くとそこで真っ先に目に入ったのはうつ伏せに倒れたカオルと子犬ポケモン、ガーディだった。
「カオル!どうしたの!?」
サトリの呼びかけにわずかに反応した。意識はあるようだがその顔は何か恐ろしい物を見たように蒼白だ。
「一体何があったの!?カオルほどのトレーナーを恐れさせる何かがこの階に・・・?」
「幽霊ポケモンお得意の精神攻撃か・・・」
と、奥の方から笑い声のようなものが聞こえてきた。その声はどんどんこちらに近付いてくる。
「ケケケーッ!ゴースゴースゥ〜!」
やがて声の主がその姿を現した。紫色の体と手が宙に浮き、あたりにゴースを凌ぐほどの瘴気を漂わせている。
「ゴースト・・・ガス状ポケモン。ゴースの進化形。ゴース同様多くの謎に包まれている。」
「どうやらボスの登場みたいね。」
サトリは図鑑を閉じながら言った。
「そのようだな。気を付けるんだ。下のゴース達とは比べ物にならないはずだぜ。」
「ええ、でも攻撃しなきゃゲットもできない!ピジョン、『風起こし』!!」
「ピジョーッ!!」
ピジョンが風を起こすと同時にゴーストの目が光りだした。
「こ、これは!?」
風が全てゴーストをよけていく。そしてゴーストが手を広げてピジョンの方へ向けるとその風が全て返ってきた。吹き飛ばされたのはピジョンの方だ。
「しまった!戻ってピジョン!」
サトリは慌ててピジョンを戻す。今度はコタロウが前に出た。
「『サイコキネシス』か!これならどうだ、サンダース『10万ボルト』!!」
ゴーストは両手を前に広げ、サンダースの電撃を止めた。だが少々押され気味だ。
「今だサトリちゃん、別のポケモンで攻撃を!」
「わかった!行くのよピッピ、『サイコキネシス』!」
「ピッピ!」
サンダースの電撃の威力にピッピの念動力が追加された。ゴーストのものほど強力ではないがそれでも押し返すには十分だ。
「ゴースッ!」
ゴーストは吹っ飛ばされた。敵の攻撃に加え自分の念動力もモロに受けてしまったためダメージは大きい。
「よーしあと一息!一気にたたみかけるわよ!」
「ぐっ・・・気を付けろ・・・」
サトリの後ろから声が聞こえた。カオルだ。
「気がついたの?でも遅かったわね、ゴーストはあたしがゲットするわ!」
「くっ・・・奴にはまだ切り札があるんだ。オレもそれにやられた・・・」
カオルはフラフラと立ち上がる。ガーディも意識を取り戻した。
「やられる前に倒せ。受ければ下手をすると精神が破壊されるぞ!」
「あんたがそう言ってる間にしてきたらどうするの・・・あっ!」
ゴーストが両手を合わせ指先から放った光線がサトリの額を直撃した。
「何よ、これ・・・」
サトリの意識が遠のいていく。催眠術にでもかけられたようだ。
「サ・・・ちゃ・・・!!」
コタロウが何か言っているが聞こえない。サトリの意識はプッツリと途切れた。
















































サトリが気付くとそこは見たこともない場所だった。
「あれ・・・ここはどこ・・・?シオンの塔じゃないの?コタロウさんは?カオルは・・・?あっ!!」
ふと前を見たサトリの背筋に悪寒が走った。そこにはコタロウがいたのだが、その手には血のこびりついた刀が握られていたのだ。
「な、どうしたのコタロウさん!?」
コタロウは無言のままサトリに向けて刀を振りかざした。サトリは慌ててよけようとするが後ろから何者かに肩をつかまれ動けない。
「ママ!?2人ともどうしちゃったの!?」
サトリを押さえていたのは母、サトミだった。驚く間もなくサトリに向けて刀が振り下ろされた。サトリは目を閉じた。顔に痛みが走る。


(あれ・・・思ったより痛くない・・・)


恐る恐る目を開けるとそこにはニャースがいた。白い布をまとい、その背には天使のような翼が生えている。ちょっと不気味だ(爆)。そのニャースはサトリに告げた。
「それはみにゃ幻覚じゃにゃ。目を覚ますのじゃにゃ。」
サトリの意識が再び遠のいていった・・・










































再びサトリが目を覚ますとそこはさっきいたシオンの塔だった。汗をびっしょりかいている。隣にはコタロウもいる。その手に刀は握られていない。
「大丈夫か!?」
「うん・・・?なんか顔が・・・」
「にゃはは、間一髪じゃったにゃ〜。わしの爪はまだまだ錆びついていにゃ〜い!」
目の前にはニャースがいる。天使の姿をしていない、普通の老ニャースだ。顔の痛みはニャースが引っ掻いたためだったのだ。
「ラッキーだったな。お前の意識が途切れた瞬間にそのニャースが入ってきたんだ。引っ掻いたおかげで目が覚め、敵の幻覚から逃れられたんだ。感謝するんだな。」
カオルの言葉でサトリは気付いた。自分が意識を失ってから気付くまでものの数秒しか経っていなかったのだ。
「そう・・・ありがとうニャース。一体どうして・・・」
サトリが言いかけるとニャースは首を横に振った。
「話は後じゃにゃ!今はあのゴーストをやっつけるのが先じゃにゃ!」
「そうだ。あと一撃ぐらいでゲットできるはずだ。」
「そうね、いくわよ〜ピッピ!『スタンマシンガン』!!」
電撃のマシンガンがゴーストを直撃した。ダメージのためサイコキネシスは間に合わなかったのだ。
「今だーっ!行けーっモンスターボール!!」
2つのモンスターボールがゴーストに向かって飛んでいく。カオルもボールを投げたのだ。
「えーっずるーい!」
「オレもこいつとバトルしたんだぜ。ゲットした者勝ちだ!」
ゴーストはボールに吸い込まれ、中で最後の抵抗を試みるも観念したのかすぐに大人しくなった。
「どっちのボールに入ったのじゃにゃ・・・?」
ニャースはコタロウの顔を見上げながら言った。
「カオルの方がわずかに早かった。2人とも図鑑を開いて確認してみてくれ。」
2人は言われるまま図鑑を開いた。サトリの方にはゴーストのゴの字もない。一方カオルの方はゴーストがしっかりとカオルのポケモンとして登録されている。
「・・・ゴースト、ゲットだ。」
「きいーっ!くやしいーっ!!」
地団駄を踏むサトリを尻目にカオルはゴーストの入ったボールを拾い、その場を去ろうとした。
「ちょっと待って!」
サトリがカオルを呼び止めた。カオルはその声に反応し足を止めたが、サトリに背中を向けたままだ。
「修業の時のバトル、それに今のゲット勝負・・・あたしはまだ一度もあんたに勝ってないけど、今度勝負するときは負けないからね!おぼえておきなさいよ!!」
「フッ、オレがお前なんかに負けるわけないだろ。じゃあな。」
それだけ言うとカオルはさっさと階段を降りていった。その反応にサトリはふてくされている。
「なーによ、性格わるーっ。」
「いや、ああは言ってるけど本当は楽しみにしているんじゃないのかな。サトリちゃんとの勝負を。」
とコタロウ。ニャースも続ける。
「それが恥ずかしくて言えにゃかっただけにゃのかもしれにゃいにゃ。」
「ふーん、そういうもんなの?」
サトリはいまいち信用できない。ふと、塔の窓から光が射し込んできた。外はまだ昼である。
「あれっ?」
「随分長い間この塔にいたような気がしたけどそんなには経っていなかったんだな。」
「さーて、戻るのじゃにゃ〜っ!」
眩しいばかりの光が射し込む中、2人と1匹はゆっくりと来た道を戻っていった・・・






「ふーん、黒ずくめのおばあさんねー・・・」
サトリはニャースの話を聞きながらつぶやいた。
「謎のお人じゃにゃ・・・」
「もしかしたら霊能者かもな。この町には多いっていうし。」
一瞬あたりに寒気が走る。
「・・・ひょっとしたらそのおばあさんも幽霊とか・・・」
「ま、まさかにゃ・・・でもどっちにしろいい人だったから気にすることはにゃいのじゃにゃ。にゃはは〜。」
謎を残しつつシオンの塔をあとにするサトリ達。果たして謎の老婆の正体とは?そしてジムリーダーの行方は!?






第38に続く。






あとがきにかえて
もう幽霊話ができるような時期でもねえよな・・・もう運動会の時期だもんな・・・それは11月あたりになりそうな予感がします(ぉ)。でも必ず実施しますのでお楽しみに(笑)。サトリの体操着姿を想像しつつ構想中です(蹴)。

 

[一言感想]

 サトリとコタロウ、カオルの一言ですぐ赤くなってしまう有様。
 サトリがさりげなく「まだ」と言ってるあたり、将来的なことは十分考えてる(?)ようです←
 ゴーストはなかなか強敵でしたが、ニャースの活躍で窮地を脱しました……珍しい(オイ)。
 いずれ、サトリとカオルの再戦が繰り広げられることを、楽しみにしております。

 

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