元ポケモンリーグカントー支部、現ブラック・サン本部、会長室。
「買収した発電所の改修工事はどの程度進んでいる。」
元支部長、現会長がその場にいる1人の部下に尋ねた。
「はっ、予定通りに進んでおります。2ヶ月後には運転を開始できるでしょう。」
「フッ、フフ・・・そうか、なら良いのだ。下がれ。」
「ははっ!」
部下の去った会長室で会長は1人つぶやいた。
「あと2ヶ月・・・あと2ヶ月すればカントーのジム全てのポケモンが我が配下に・・・いや、マサラとニビのリーダーだけは今だ私の招集に応じない。まあいい、まだ時間はある・・・ふっふ、ふふ・・・ふぁっはっははは!!」
つぶやきは高笑いとなり、室内にこだました・・・

 

 

 

第38話 岩の聖域

 

 

 

「ふぅーっ、きつい山道ねーっ、いつになったら洞窟に着くのかしら・・・」
「にゃん弱にゃ・・・と言いたいところじゃが、わしもつらいにゃ・・・この山道、老体にはこたえるにゃ〜」
「あそこに立て札があるよ。あと1qだってさ。」
ここはシオンタウンの北に位置するイワヤマ連峰へと続く道。そこの最高峰であり連峰の名にもなったイワヤマには巨大な洞窟があり、古来より霊能者の修業の場になっているという。それを聞いたサトリ達はそこにジムリーダー・レイカがいるかもしれないと考え、行くことにしたのだ。
「見えたぞ、あれが洞窟の入り口のようだ。」
コタロウが指差した先にポッカリと巨大な穴が空いている。
「にゃがき道のりじゃったのにゃ〜・・・」
「さっ、入りましょ。」
「待つのだ!!」
突然横から声がした。その方向を見ると1人の若い男が立っている。頭を丸め、袈裟を身につけているところからして僧侶のようだ。
「この洞窟は古来より我らシオンの民が霊能修行の場とするもの。旅の者が入るようなところではない!」
厳しい顔つきでサトリ達を睨みつけている。
「あ、あの・・・あたし達ジムリーダーのレイカさんを探しているんです。もしかしてここにいるんじゃないかと思って・・・」
「ご存じないですか?」
レイカの名を聞くと僧侶はわずかに顔の厳しさをゆるめた。
「そうか、君達はレイカ様に挑戦しに来たポケモントレーナーか。ついてきたまえ、案内しよう。申し遅れたが私の名はホクシン。シオンジムのトレーナーだ。」
「あたしはサトリ。よろしく。」
「オレはコタロウといいます。」
「わしはニャースじゃにゃ!」
2人と1匹はホクシンの案内で洞窟の中へと入っていった・・・






洞窟の中はところどころにランプの光があるだけでほとんど真っ暗だ。
「前が見えにく〜い。」
「気を付けろ。ここは天然の洞窟に古来の民が少し手を加えただけのもの。足場も悪いぞ。」
「ひぇ〜っ」
やがて暗闇に目が慣れてくると壁に色々な彫刻がしてあるのがわかってきた。
「何だか不気味ね・・・あっ、あの浮き彫りにされてるのってゴーストに似ていない?」
サトリが壁の彫刻を指差して言った。
「本当だ。ゴーストそっくりだな。あれは一体・・・」
「あれは古代の神をかたどったもの。ここにはポケモンを神と崇める宗教があったのだ。今はもう廃れているがな。」
「なるほど、ね・・・」
やがて一行は広い場所に着いた。そこは一面ぼうっと淡く光っている。
「こ、ここは・・・?」
「光ゴケが繁殖しているのだ。ここから先は我らにとって聖域。レイカ様の一族以外のシオンの民が立ち入ることは禁じられている。」
「一族・・・??」
サトリ達の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「そうだ。レイカ様の一族は代々この聖域を守ってきたのだ。そしてここは初代の使役していた守り神がいるという。気を付けていくのだぞ。」
「守り神・・・ね。とにかく行きましょう!」
「ああ。ありがとうホクシンさん。」
「この恩は忘れにゃいのじゃにゃ〜。」
2人と1匹はホクシンと別れ更に奥へと進んでいった・・・






「神秘的ねー・・・まるで別世界のようだわ・・・」
あたりを見回しながらサトリがつぶやいた。
「自然が造り上げた美しさってやつだな・・・」
「まさに聖域ね。・・・ところで、さっきから誰かの視線を感じるんだけど・・・」
「確かに。オレもさっきから感じていた。!そこか!」
コタロウはとっさに小石を拾って視線の来る方向に投げつけた。小石は光ゴケのびっしりはりついた岩に当たりそのまま落ちたが、何とその岩が動き出したのだ。
「むっ、こいつは・・・」
岩がいくつも連なり、蛇のような長い体を構成している生き物だ。
「まさか、ニビジム戦で見たイワーク?でも何て大きさなの!?」
「15メートルはかるくありそうじゃにゃ・・・」
流石のニャースもこの大きさにはびっくりだ。一方のイワークは機嫌の悪そうな顔をしながらずっとこちらを睨みつけている。
「ど、どうしたのかしら?」
「今オレが投げた石で怒らせてしまったか・・・?」
案の定であった。イワークは鎌首を持ち上げ一気に振り下ろしてきたのだ。その迫力はニビジムのイワークの比ではない。
「うわっ!・・・すまない、オレのせいで・・・」
「そんなことないわ。イワークだったなんてわからなかったもの。それより逃げましょう!」
ダッシュで逃げ出す2人と1匹。するとイワークが追いかけてきた。その巨体からは想像もできないほどのスピードだ。追いつかれるのも時間の問題だろう。
「しかたない・・・行くのよカメール!」
サトリが急停止してボールを放った。コタロウもそれに続く。
「行け、ハガネール!」
イワークに似た姿をしているが、その体はメタリックに輝くポケモンだ。
「岩タイプには水タイプ!カメール、『水鉄砲』よ!」
「ガメーッ!」
しかし水鉄砲は命中したもののイワークは平然としている。
「えーっ、何でーっ!?もう一発!!」
再び命中したが同じことだった。ダメージになっているかどうかもわからない。
「むっ・・・そうか、光ゴケだ!あの体中に付着した光ゴケが水をはじいているんだ!」
「えっ、そうだったのね!だから・・・」
「水攻撃は効果が薄い!ここはオレがやる。ハガネール、『締めつけ』で動きを封じてから『アイアンテール』だ!!」
ハガネールの体がイワークの体にからみつき行動の自由を奪う。それと同時にハガネールの尻尾がその体に激しく打ち付けられる。イワークはうめき声を上げて悶絶した。
「ふぅーっ、助かったー。このイワークにはちょっと可愛そうなことしちゃったけどね。」
サトリはホッと安堵のため息をついた。
「そうだな。傷薬を塗ってあげなきゃな。」
「それにしてもでかい奴じゃったにゃ〜。」
気絶しているイワークの手当てをし、2人と1匹は更に奥へと進んでいった。






聖域最深部。そこに湧き出た泉に身を浸す少女がいた。その髪は洞窟の闇に溶け込むように黒く、それとは対照的に透けるような白い肌をしている。


(・・・誰かここに来る・・・)


「・・・ムウマ、タオルと着替えを。」
気配を感じた少女は泉から上がり、自分のポケモンを呼んだ。呼ばれたポケモン、ムウマは念動によって言われた物を持ち上げ、少女のもとへ運んできた。
「ムゥ〜・・・」
「・・・ありがとう。」
少女はうっすらと笑顔を浮かべムウマにキスをするとタオルで自分の体をふき始めた。その様子をムウマはじっと見つめている。


(来た・・・!)


少女が服を着終えると同時に3つの気配がその場に辿り着いた。男1人女1人、そしてネコ1匹。
「むっ、女の子じゃにゃ。」
「・・・ということは彼女が・・・」
「ジムリーダー・レイカ!」
少女は何も言わず訪問者を見つめた。その瞳はまるで深い海の底のように暗くも何故か美しい。見ているだけで吸い込まれそうだ。
「あの、レイカ・・・さん?」
サトリは自分の方から話しかけてみた。少女は表情ひとつ変えずコクリとうなずく。しばし沈黙ののち、その薄い唇が動き始めた。
「・・・あなた達、よくここまで来られたものね・・・」
「えっ?」
「普通なら守り神のイワークによって追い出されてしまうのに、あなた達、凄腕のトレーナーなのね・・・」
守り神と聞いて2人と1匹はホクシンの言葉を思い出した。
「なるほど、あのイワークが守り神さんだったのね。」
「相当生きていそうだったものな。」
「ハガネールに進化しててもおかしくにゃいにゃ。」
「・・・ところであなた達、こんなところまで何しに来たの・・・?」
2人と1匹の会話に横やりを入れるようにレイカが話しだした。
「・・・そこまでしてあたしに会いたかったのかしら・・・?」
レイカの顔にかすかに笑みが浮かぶ。それはまるでモナリザのように謎めいていながらも美しい微笑みだった。






第39話に続く。






あとがきにかえて
イワヤマもアニメでは描かれていなかったのでまた奇妙な設定を設けてみました。そして一番の見所はレイカちゃんのサービスカット(蹴)。妖しさの中に美しさを秘めた彼女の実力は果たして・・・?

 

[一言感想]

 会長の企みは着々と進んでいる様子ですが、サトリがそれと対峙するのはまだまだ先なのか?
 とりあえずはシオンジムリーダーのレイカへ挑戦ですね。
 シオンに着いてから色々ありましたが、ようやく巡り会えたようです。
 果たして、その実力は?

 

戻る