シオンタウンジムリーダー・レイカと遂にバトルすることになったサトリ。レイカ1匹目のポケモン、ジュペッタをスターミーで倒し勢いに乗るサトリに対し、レイカは自分の肩に乗るムウマを次のポケモンに選んだのだった。
「スターミー、ますは『自己再生』で傷を治すのよ!」
「ヘアッ!」
スターミーの体が光り、体中の傷がみるみるうちに消えていく。バトル準備完了だ。
「…ムウマ、『黒い眼差し』…」
ムウマは目を大きく見開き、スターミーを睨みつけた。だがスターミーにはこれといった変化は見られない。
「?…まあいいわ、スターミー、『水の波動』で一気に決めるのよ!」
「…フッ…」
笑みを浮かべるレイカ。ムウマに対してよけることも防御技も指示しない。
「どうしたのよっ!観念したの!?今よスターミー!!」
だがスターミーは波動を放とうとしない。というよりも『放ちたいが放てない』ようだ。
「そんな……どういうこと!?」
第41話 決着!シオンジム
「…フッ、知りたい…?」
笑みを浮かべ続けながらレイカが話しだした。サトリはゴクリン……いや、ゴクリと唾を飲み込む。
「…幽霊ポケモンはただでは倒れません。そのスターミーにはジュペッタの『怨念』が染み付いているのよ……『水の波動』はもう使えない…どうする…?」
「くっ…仕方ない…戻ってスターミー……あれ?戻らない…ボールが壊れちゃったの!?」
ポケモンチェンジを試みたサトリだが、スターミーをボールに戻すスイッチが作動しなくなっている。何度やってもスターミーはボールに戻ることができない。
「…ムウマ、『シャドーボール』。」
黒い球体がムウマの目の前に現れ、それがスターミーに向けて発射された。
「『リフレクター』!!」
スターミーの目の前に見えない壁が出現したが、シャドーボールはそれをも砕きスターミーに直撃した。ムウマのその小さな体からは想像もつかないほどの威力だ。
「スターミー、しっかり!…何で!?どうして戻せないの!?」
リフレクターのおかげでダメージは抑えられたがそれでもかなりのものだ。それに加えてサトリはスターミーを戻せなくなっていることに動揺を隠せない。
「…誰も『黒い眼差し』から逃れることはできません。どこまで行こうとムウマの視線から離れるのは不可能です……」
「あっ、さっきの睨み…そうだったのね!だったら反撃あるのみ!スターミー、『自己再生』してから『バブル光線』よ!!」
光り輝く泡が光線となり、ムウマを一気に貫いた。ムウマはよろめきながらも反撃を試みようとする。
「…『サイケ光線』。」
「もう一発『バブル光線』!」
2つの光線が激しく押し合う。だが押し勝ったのはスターミーのバブル光線だった。その衝撃でムウマは吹っ飛ばされていく。
「今よ!『スターフリーズ』ッ!!」
スターミーの全身から星形の冷気が無数に放出され、ムウマを包み込んでいく。やがて冷気は星形の氷塊となり、その中にムウマを閉じこめてしまった。
「…なんてこと……チェンジできないとわかってからの怒濤の攻め…凄いの一言ね…でもまだ勝負は決まっていないわよ……」
「そうね、だけどあたしの方が有利なのよ!スターミー、とどめよ!ブレイク!!」
サトリの一声で氷塊が一瞬のうちに砕け散り、そのかけらは宙に舞い美しく輝いている。ムウマは地に落ち、その体は完全に冷えきっていた。
「よし!これで3対1!!」
「…2対1の間違いじゃないかしら…?」
レイカの言葉でサトリはハッとした。スターミーもその場に倒れているのだ。しかも目立つ外傷は見あたらない。
「これは……」
呆然とするサトリ。レイカはフィールドに出てムウマを抱き上げるとサイドに戻りながら言った。
「…言ったはずよ。幽霊ポケモンはただでは倒れないと…ムウマはスターミーを『道連れ』に倒れたの。」
「…そうだったの…スターミー、ご苦労様。ゆっくり休んでね……」
気を取り直したサトリは再びバトル体勢に入った。レイカも3体目のポケモンが入ったモンスターボールを既に手に持っている。
「行くのよ、ピジョン!」
「…いでよ、ゲンガー…!」
紫色のオーラをまとい、ゲンガーが現れた。その強さは発電所でのバトルでご存知の通りだ。
「ピジョン、『風起こし』!」
「ピジョーッ!」
物凄い強風だ。ゴースならあっという間に飛ばされただろうがゲンガーは流石に動じない。
「…『影分身』。」
ゲンガーが自らの影に入り込んだ。するとその影がピジョンを取り囲むように増えていく。
「…もう逃げられません。影の間を通ろうとしても本体がすかさずピジョンの影に入り込んで動きを封じます。かといってそのままでもゲンガーの攻撃がピジョンを襲いますが。さて、どちらがお好み……?」
「どっちもごめんだわ!ピジョン、『見破る』のよ!」
ピジョンは目を細め、影をひとつひとつ見つめ始めた。見つめられた影はあっという間に小さくなり消えていく。最後のひとつを見つめたとき、その影の中からゲンガーが飛び出した。
「ゲェーーンガァーッ!」
「よし!もう影には入れないし実体化したから物理攻撃も当たるはず!『突進』!!」
本来、実体を持たない幽霊ポケモンには物理攻撃が通じない。だが正体を見破ることにより実体化し、物理攻撃でも命中することができるようになるのだ。そして今、ピジョンの一撃は確実にゲンガーの急所をとらえた。
「続けて『かまいたち』!!」
空気の刃物がゲンガーを切り裂いた。またクリティカルヒットだ。あと一撃受ければ倒れるだろう。
「よーし、とどめよ!」
サトリが技の指示を出すより早く、ゲンガーの体から瘴気が吹き出したため、ピジョンは慌ててゲンガーから離れた。
「…あなたは本当に素晴らしいポケモントレーナーだわ…だからこそあなたに…この技を使う!!『ファントムゾーン』……!!」
「しまった!この技は…」
ゲンガーのまわりを円形のオーラが取り囲む。これがあらゆる攻撃を飲み込む究極のバリアなのだ。
「…さあ、破ってみなさい…破ればあなたの勝ちですよ…」
レイカが笑みを浮かべる。サトリは逆だ。笑ってはいられない。
(ここまできて負けられない!どんな究極のバリアだってひとつはつけこむ隙はあるはずよ…!)
「ピジョン、『風起こし』!!」
「ピジョーッ!!」
だが、その風はあっけなく吸い込まれてしまった。
「やっぱり駄目か…それなら!『かまいたち』でオーラを切り裂くのよ!!」
それも駄目だった。わずかに切り裂いてもすぐ再生し、かまいたちを飲み込んでしまったのだ。
「…どうしました…もう終わりですか……?」
「まだまだよ…でもどうすれば…… !あったわ!ひとつだけがら空きのところが!ピジョン、飛び上がって!!」
ピジョンは天井近くまで一気に飛び上がり、ゲンガーの真上にとどまった。
「…なっ…!」
レイカの顔から笑みが消えた。今度は逆にサトリが笑みを浮かべている。
「そうよ!真上ががら空きよーっ!!ピジョン、急降下!!」
猛スピードでゲンガーに突っ込むピジョン。これだけのスピードならよけることは難しい。撃墜することも同様である。
「くっ…『守る』のよ…」
ゲンガーは防御体勢に入り、ピジョンの攻撃を何とか受け止めたが、息切れが激しくなっている。次の攻撃は受け止められそうにない。それどころか立っているのがやっとだろう。
「よし、もう一度…あっ、ピジョン!」
攻撃を受け止められたピジョンはゲンガーの傍に倒れていた。
「…凄まじい勢いの攻撃を受け止められたためにその反動が全てピジョンに返ったのよ…それに加えてジュペッタ戦でのダメージも重なっているはず…もう立てないわ…」
「…そっか…戻ってピジョン、お疲れさま…」
ピジョンをボールに戻しながら、サトリは考えていた。
(上からの攻撃が有効だってわかったけどあたしのポケモンにはもう上から攻撃できるポケモンがいない…どうすればいいの…待ってよ、上からの攻撃が駄目なら…よし!一か八か!最後の勝負よ!!)
考えをまとめたサトリは最後のポケモンをバトルフィールドに出した。そのポケモンは……
「ナゾー!」
「…!?…ナゾノクサ…?何をするつもりなの……」
「すぐわかるわ!ナゾノクサ、『根を張る』のよ!」
ナゾノクサはその足をフィールドに埋めた。その中では足が根の形となり伸びていくのだ。
「よーし!根をゲンガーに向けて伸ばすのよ!」
「なんですって!?まさか……」
「そのまさか、当たってるかな?」
そう言っているうちにもナゾノクサの根は地中からゲンガーに向けて伸びている。ゲンガーの真下に到達すると今度は上に向けて伸び始めた。そして地面を突き破りゲンガーの足にからみついていく。
「どう?当たってた?」
サトリはニッコリ微笑んだ。
「…ビンゴ…でもよけられなかったわ…ゲンガーは立っているのがやっとだったから…流石だわ。あたしの完敗よ…」
レイカもニッコリ微笑んだ。
「…何としてもわしと一緒に暮らしてもらうぞ!」
老婆はどこから出したのかロープをかまえた。
「そんな物を持ち出してもオレの意志は変わりません。」
「ぼっちゃまの意志を尊重してやってくれにゃ。」
「しかしなぁ…おっ、2人が戻ってきおった。」
サトリとレイカだ。コタロウとニャース、そして老婆も2人に駆け寄った。
「どうだった?勝ったか?」
「もちろん!」
サトリは満面の笑顔でうなずいた。
「よかったな!」
「そうかい、レイカ、残念だったねぇ。」
老婆の言葉にレイカは首を横に振った。
「…いえ、今までで最高のバトルだったわ…」
「それはよかった。では…」
くるっとサトリの方に向き直る老婆。サトリもビックリだ。
「このパープルバッジをお前さんに渡そう。受け取るがよい。」
そのバッジは人魂のような形をし、その名が示すとおり紫色に輝いていた。
「ありがとうございます!よーし!パープルバッジ、ゲットだよ!!」
サトリはバッジを受け取ると、いつものように高くかざした。
「やったな!これでバッジ4つだね。」
「うん!それじゃあ行こうか!」
「そうするにゃ!」
シオンタウンからヤマブキシティに通じる道……
「わざわざここまで見送りに来てくれてありがとう。」
「…おばあちゃんがどうしてもって言うのよ。」
レイカはクスッと笑い老婆の方をチラッと見た。
「そうじゃ。では気をつけてな。」
「また会おうにゃ〜ばーさん。」
「そ〜〜じゃな。」
握手を交わすニャースと老婆。それにつられてサトリとレイカも握手した。
「ありがとうございました!」
「またねーっ!」
「ばいにゃら〜っ!」
手を振りつつ、一行はヤマブキシティへの道を歩きだした。
「ヤマブキシティって大都会なのよね。楽しみだわ〜。」
「この道を行けばすぐだよ。一本道だから迷うことはないし。」
コタロウが地図を片手に答えた。
「ヤマブキにもちょっとイヤにゃ思い出が……」
ニャースはため息、それを見たサトリは?マークだ。
一方その頃、シオンジムでは……
「…どうしたのおばあちゃん。荷物なんかまとめて…」
「レイカ!わしはコタロウさんを追いかける旅に出る!ジムは任せたよ!」
老婆がいきなり無茶苦茶なことを言いだした。
「そんな…バカ言わないで……」
「そうですよ。それにしきたりは……」
「しきたりなんぞ廃止じゃ廃止!守りたければわしが戻るまでジムを閉鎖せい!!」
ホクシンの言葉もはねのけ、老婆は荷物を背負って行ってしまった。残された者はただ立ちつくすだけだった……
第42話に続く。
あとがきにかえて
何年か前、妹に聞いた話では手を手刀の形にしたとき小指が薬指の第一関節より長い人は霊感が強いという。
ふと思い出して見てみたら………う〜ん、ぼくはちょっと長いようで。他の人よりちょっと霊感あるかも(ぉ)。さて、これを読んでいるあなたはどうかな?見てみましょう!(笑)
[一言感想]
若干長いような……そうでもないような……。
どっちにせよ霊感は皆無です(ぇ)。
レイカとのジムリーダー戦を制したサトリは、このままヤマブキシティへ。
だが、その背後からは、婆様の愛が迫りくる←