シオンジムでパープルバッジをゲットし、次のジムがあるヤマブキシティを目指すサトリ一行は小高い丘の上で休憩をとっていた。
「ふーっ、そろそろ行こうか。」
サトリが大きく伸びをしながら言った。
「この丘を下ればヤマブキシティが見えてくるはずだ。あと一息だよ。」
「近いと言ってもやっぱ距離があったにゃあ〜。」
ふと、近くの茂みがガサッと揺れた。2人と1匹の視線が一瞬のうちにその茂みに集中する。と、そこから顔を出したのは1匹のきつねポケモン、ロコンだった。
「こっこれがロコン…本物よ………かっ、可愛い〜〜〜〜〜っ!!」
サトリは思わず跳び上がった。いや、『飛び上がった』の方が正しいと思えるほどサトリの体は高く舞い上がっていたのだ。
「にゃんじゃ、そんにゃに嬉しいのかにゃ?」
「もっちろんよ!よーし、ゲットするわよ〜っ!」
「…コン!」
モンスターボールを構えたサトリを見て、ロコンは再び茂みの中に潜ってしまった。
「あっ!逃がさないわよ〜、行くのよカメール、『水鉄砲』!」
「カメーッ!」
水鉄砲が茂みに命中し、驚いたロコンは慌ててそこから跳びだした。
「よーし、バトル開始よ!!」

 

 

 

第42話 ロコン!愛らしく美し

 

 

 

それは一冊の雑誌から始まった………
これより回想シーン、イワヤマ洞窟へ行った日の午前中……






「はぁ〜、シオンのジムリーダーさんはどこにいるのよぉ〜…」
サトリ達は情報を求めてシオンタウンを歩き回っていた。
「疲れたのじゃにゃ。そこのショップでお茶でも飲みたいにゃ。」
ニャースが言いだした。
「そうだな、ここらで一息入れよう。」
「そうね。」
サトリも少し疲れていたのでそれに賛成し、ショップに入っていった。
「何にする?」
「あたしはコガネ産モーモーミルク!それ飲むと胸の発育が良くなるの!なかったらミックスオレね。」
サトリの胸はどうやらそのコガネ産モーモーミルクによって育まれたようだ。それにしてもまだ大きくしたいか!
「わしはお茶ですじゃにゃ。」
「わかった。買ってくるから待っててくれ。」
コタロウは乳飲料・飲料水の棚へ向かった。
「さーてと、何か立ち読みしてよーっと。」
「立ち読みはまにゃー違反じゃにゃ。やめたほうがいいにゃ。」
ニャースがサトリを注意するが、彼女はそんなことは聞かず既に陳列された雑誌の一冊を開いていた。
「仕方のにゃい奴じゃにゃ〜。」
ため息をつくニャース。それには目もくれず雑誌をパラパラとめくるサトリ。その彼女の目があるページに留まった。
「…?このポケモンは…ロコンっていうんだ。可愛い〜。」
その雑誌にロコン特集のグラビアが載っていたのだ。サトリはそのページにずっと見入っている。見れば見るほど写真の中のロコンは愛くるしく写っていた。


(はあぁーっ…いつかゲットしたいわぁ〜〜……)


その時、サトリの肩を叩く者がいた。
「だぁれぇ〜っ?今いいとこ……はっ!」
サトリは思わずドキッとした。ロコンの写真に心奪われていた彼女を現実に引き戻したのはコタロウだったのだ。
「? どうしたんだ?」
「い、いえ…なんでもないの…さっ行きましょ……」
サトリはこそこそと雑誌をもとあった場所に返した。
「そうだ、店員さんが言ってたんだけどこの町の北にあるイワヤマ連峰の洞窟はシオンの霊能者の修行の場になっているらしい。」
「そ、そうなんだ!もしかしたらそこにいるかもね。行こっ!」
こうしてサトリ達はしばし休憩ののちイワヤマ洞窟へ向かったのだった……






回想シーン、終了






茂みから跳びだしたロコンは逃げるように丘を下っていった。
「逃がさないわよーっ!カメール、『転がって』追いかけるのよーっ!!」
カメールは首と手足を引っ込め、ロコンに向けて転がりだした。下り坂だけあって勢いがつき、一気にロコンをはね飛ばした。ロコンは空中でうまくバランスをとり着地したものの少しよろけ気味だ。
「チャンス!今よ、止まって『水鉄砲』!」
しかし、勢いのついたカメールは止まることができずどんどん転がっていってしまう。
「あ、あーっ!!」
「木にぶつかる!!」
コタロウが指差したとおり、カメールの転がる先に一本の木が立っている。次の瞬間、木にぶつかったおかげでカメールは止まったもののピヨピヨ状態。すぐには回復しそうにない。そして驚くべきことにぶつかられた木はその衝撃で根元から倒れてしまったのだ。
「な…いくら勢いがついていたとはいえ何というパワーなんだ……」
これには流石のコタロウも度肝を抜かれた。一方のサトリはそれどころではない。
「カメール、ごめんね……」
申し訳なさそうにカメールを戻すサトリ。それを見つめるロコン。ふと、サトリがロコンの方へ振り返った。一瞬ビクッとするロコンだが気丈にも前かがみ姿勢をとり軽くうなり声を立てている。
「やる気なの?それともいきなり攻撃されて怒ってるとか…?」
答えは後者のようだ。カメールの入ったモンスターボールに跳びかかってきたのだ。サトリは間一髪でよけたが、勢い余って尻餅をついてしまった。
「いったァ〜い!でもこれでお互い様ね!(←そうか?by作者)さぁ、これからが真剣勝負!絶対あなたをゲットするから!頼むわよ、ニドラン!」
サトリは尻餅をついたままの体勢でボールを投げた。
「ニドッ!」
「『毒針』よっ!」
無数の毒針を放つニドランに対してロコンは炎を吐いて応戦した。その炎が毒針を包み、焼き尽くしていく。
「何て強力な『火炎放射』!可愛い顔に似合わず結構やるわね!ニドラン、接近戦よ!『二度蹴り』!!」
ロコンに走り寄り、ニドランは一発目の蹴りを放った。だが体を反り返らせてそれをかわすロコン。続けて二発目。
「一発目をかわせても二発目はそうはいかないわ。その体勢じゃよけきれないでしょ!」
サトリの言葉通り二発目の蹴りは見事にロコンにヒットした。だがよろけながら尚も立ち上がってくる。そしてまるで舞い踊るような動きを見せ始めたではないか。


(踊るたびに火の粉が飛び散る…!)


飛び散った火の粉がロコンのまわりで共に舞い踊る様は思わず見とれてしまいそうな美しさだ。
「綺麗じゃにゃ〜…」
その次の瞬間、火の粉は突然に牙をむいた。無数の火の粉がロコンの前方に拡散しながら放出されたのだ。
「こ、この技はっ!?」
「『火の粉の舞い』だ!全部はとてもかわしきれない。防御に徹するんだ!」
「わかったわ!ニドラン、『見切り』でできるだけかわしてから『丸くなって』急所を隠すのよ!」
コタロウのアドバイスによってサトリは適切な指示を出すことができ、ニドランのダメージは最小限に抑えられた。
「アドバイスされてよーやく動くとは…まだまだじゃにゃ……う〜〜ん、にゃんか尻尾が熱いのにゃ……にゃ?」
見るとニャースの尻尾に火がついている。ロコンの火の粉が飛び火したのだ。
「あ〜っ!あちゃちゃ〜〜っ!ぼっちゃま〜っ!助けてくだされにゃ〜〜っ!!」
「ん?」
コタロウが振り返ると尻尾に火のついたニャースが物凄い形相で迫ってくる。
「な、何やってるんだ!とにかく止まれ!」
「そんにゃことを言われましても、火が火が……」
今度はピョンピョンと跳びはねだした。その姿は見ている側からすれば間抜けだがニャース本人にとっては大変なことなのだ。
「ニャース…大丈夫なの…?あっ…」
ふと見ると、ロコンがそのニャースに気を取られている。隙だらけだ。サトリはその隙を見逃さなかった。
「今がチャンス!行けっモンスターボール!!」
ボールは見事ロコンにヒットした。吸い込まれたロコンが中で抵抗を試みるが、たまっていたダメージに加え今のニャースの行動を見て気が緩んでしまっていたせいかすぐに大人しくなった。
「よーし、ロコン、ゲットだよっ!!」
サトリはモンスターボールを拾い上げ、空高くかざした。そしてボールはフッと消えた。オーキド博士の研究所に転送されたのだ。
「ニドッ、ニドーッ!」
ニドランもサトリの真似をして右前足を空にかざしている。
「ゲットできたのか!やったな。」
コタロウの方もニャースの火を消し終え、ホッとした様子だ。それはニャースも一緒だが、彼にとってはそれよりも自慢の尻尾がコゲコゲのチリチリになってしまったショックの方が大きいようだ。
「あ、ああ……わしの尻尾がぁ……毎朝きちんと手入れしてる尻尾がぁ……」
まるでリピート再生モードに入ったCDプレーヤーのように同じ言葉を繰り返している。この状態では何を言っても無駄だろう。そっとしておくのが一番だ。サトリもコタロウもそう思った。
「そうだ、ありがとうコタロウさん。さっきのアドバイスがなかったらニドランがやられてたわ。」
サトリのお礼の言葉にコタロウは首を横に振った。
「いや、礼には及ばないよ。それにサトリちゃんだったらオレが言わなくてもきっとそうしてたと思うぜ。」
「そんなことは…」
顔を赤らめるサトリ。その胸は嬉しさとドキドキでいっぱいだ。
そして、目指すヤマブキシティはすぐそこだ。






第43話に続く。






あとがきにかえて
前回の『スターフリーズ』そして今回の『火の粉の舞い』あと以前出てきた『サイコパンチ』。これらはポケモンカードに登場した技です(『火の粉〜』はGB版オリジナルカード)。
最近ポケモンカードは買っていないしデッキ作りもしていませんが旧裏面の頃の水系デッキがあります。ぼくは何もできずに終わるターンというのがたまらなくイヤなのでエネルギー一枚で技を使えるポケモンばかりの速攻型。大きなポケモンが出てくる前に勝負を決め……られれば強いかな………?

 

[一言感想]

 今回はロコン捕獲劇でした。
 ポケモンカードの技は、僕も小説でたびたび使用していることがあります。
 ネーミングがなかなか面白いものが多いので、オリジナル技の参考にするには最適ですね。

 

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