そして今、そのヤマブキシティにサトリ一行はやってきた。
「うわーっ、ビルだらけ!ジムはどこにあるのかしら?」
「まあそう慌てずに。まずはポケモンセンターで準備を整えよう。」
「そうね、ロコンも転送してもらいたいし。」
はやる気持ちを抑えながらうなずくサトリ。そしてニャースは……
「わしの尻尾……」
2人より後ろを落ち込みながらトボトボ歩いていた。まだ前回のショックを引きずっているようだ。
「おーい、ニャース!ポケモンセンターに行くぞ。」
「早く来ないと置いてくわよーっ!」
「あ…?わかったにゃ…」
返事はしたもののまだトボトボ歩きのままだ。それに合わせていてはポケモンセンターに着く頃には真夜中になってしまう。本当に置いていっても元気なときなら別に問題はないが、今回はそうはいかない。ポケモンセンターへ行かずにフラフラし、外で夜を明かし風邪をひいてしまう可能性もあるからだ。
「仕方ないわねー。ホラ、あたしにおぶさって!」
「…ありがとにゃ…」
こうして一行はようやくポケモンセンターへの道を歩きだしたのだった……

 

 

 

第43話 ヤマブキジム!怒りのセクシー系

 

 

 

「オーキド博士、お久しぶりです。」
サトリはテレビ電話の向こうに話しかけた。
“おーサトリちゃん。そういえばロコンをゲットしたようじゃな”
「はい!そのロコンを転送してほしいんですけど…」
“あいわかった!ところでサトリちゃんはスターミーを持っておったな。その謎に包まれた生態を調べてみたいんじゃが、送ってくれんか?”
「いいけど、気を付けてね。」
そう言うとサトリはスターミーの入ったボールを転送装置に置いた。向こうも既にロコン入りのボールを置いている。スイッチオン。スターミーは研究所に転送され、サトリの方へはロコンが送られてきた。
“ありがとう。ではまたな!”
「それじゃ…」
電話を切り、サトリは席を立った。フロント席でコタロウとニャースが待っている。ニャースはすっかり元気を取り戻していた。さっきまでとはまるで別人だ。
「あれ?尻尾はもういいの?」
「たまたまこのセンターにちょいと年いったコーディネーターがいてにゃ。美しく整えてもらったのじゃにゃ。どっかで見たような顔じゃったが……まあいいにゃ。」
その尻尾は元通りになっただけでなく美しさを増したように見える。
「オレもちょっと席を立っていたんでわからないんだ…あったらお礼を言わないとな。」
「そうなんだ…どういう人だった?」
「女性の方じゃったにゃ。髪はにゃんかクレーンゲームのキャッチャーのようにゃ感じで……にゃんでも各地をまわりにゃがら素質あるコーディネーターのタマゴを探しているそうじゃにゃ。」
「へぇ〜、あたしのポケモンもコーディネートしてもらいたいなぁ。…う〜ん…」


(クレーン頭……確かおじいちゃんのお友達にそんな人がいたような……)


サトリは自らの記憶をたどるが思い出せない。会ったことがあるような気がするがそうであっても恐らくは赤ちゃんの頃であろう。
「もうここにはいにゃい。行ってしまったにゃ。」
「ねぇ、名前はなんていうの?」
「あっ……聞き忘れてしまったにゃ…」
「ガクッ…なんで忘れるのよーっ!…まあいいか、もしかしたらそのうち思い出すかもしれないし。よしっ!そろそろジムに行こう。」
サトリはベルトにセットされたモンスターボールをポンポンと叩き、ファイティングポーズをとった。
「そうだな、行こうぜ。」
「コタロウさん達は待ってて。あたし1人で行くわ。」
間髪入れずにサトリが言った。コタロウがポカーンとした顔になる。ニャースも真似してポカーンとする。
「ロコンとの戦いの時にわかったの。アドバイスがなかったらやられてたし、いつまでもアドバイスに頼りっきりじゃあたし自身いつまでたっても本当に強くなれないと思うの。だからこれからはあたし1人の力で戦う力をつけたいのよ。」
「そうか…わかった!頑張れよ!」
「みっともにゃい負け方するにゃよ〜っ!」
「うん!じゃあ行ってくるね!!」
コタロウとニャースの激励を受け、サトリは勇んでヤマブキジムへと向かった。バッジをゲットするため、そして自分自身を成長させるため………






ヤマブキジム入り口……


(よしっ…行くわよっ!!)


ジム内に入るとそこには白衣を着た1人の男が立っていた。その手には銀のスプーンが握られている。サトリは思わず後ずさりした。
「お前、挑戦者だな!言わなくともわかるぞ!」
男がいきなり言いだした。
「そ、そりゃあわかるでしょ…ジムに来るトレーナーの目的といえば挑戦しかないわ!」
言い返すサトリだが、男はそれを聞いているのかどうかいまいちわからない。
「案内しよう。ジムリーダーであるナツミ様のもとへ。」
「はぁ…」
奥へ進んでいくと、両面がガラス張りの通路になった。そのガラスの向こうでは今サトリの前にいる男のように白衣を着た複数の男女がスプーンを曲げたりモンスターボールを宙に浮かせたりと奇妙なことをしている。
「あの…ここは手品師でも養成してるの?」
サトリの言葉に男はすっころんだ。すぐさま起き上がるがその額には絆創膏がしっかりと貼られている。
「何を言うか!ここは超能力者の修業場ぞ!!それを手品などと……ぐぐーっ!!」
「超能力者ぁ?ポケモンのエスパー技みたいのが人間にも出来るの?」
サトリは疑り深そうな目で男を見た。
「信じられないか。まあ常人には無理もない。第六感というのを知っているだろう。」
「ええ。聞いたことがあるわ。」
サトリがうなずくと男は続けた。その表情は真剣そのものだ。
「第六感とはいわゆる超感覚。意志の力が物体に作用する念力や後に起こることを前もって知ることが出来る予知、物質をすり抜けて物を見ることの出来る透視などだ。それは全世界全ての人間が例外なく持っている。だが…」
「でもあたしにはそんな力ないわ。それどころかあたしの知ってる人ほとんどにないと思うけど…」
「話は最後まで聞け。だが大抵の人間はその力が文明の発達と共に衰えていった。わずかに勘などといったところに現れる程度だ。しかし遺伝的にその感覚が優れている一族や突然に力を発揮する者達がいる。それが超能力者。エスパーポケモンの力を最大限に引き出すことが出来る人間!常人などはハルカ……いや、遙かに及ばぬ……うっ…あぁっ…!」
男の体が宙に浮いた。サトリが目を丸くしていると奥から自分と同い年ぐらいの少女がツカツカと歩いてきた。紫色の瞳、同じく紫色の髪を2つに束ねている。服は長袖、ハイネックのタイトなワンピースで、縦のラインが真ん中に入っている。スカートはこれでもかというほど短い。お辞儀でもしようものなら丸見えだろうが、黒いストッキングでしっかりと隠しているのでその心配はない。幼さの残る顔とは対照的に胸の2つのふくらみはとても大きく、服からはち切れそうだ。
「くすっ」
少女がサトリに向けて微笑んだ。それを見たサトリの胸がドキッとする。別にアンの時のような嬉しさでもコタロウの時のような恋とも違う不思議な感じだ。
「ナ、ナツミ様……」
男が宙に浮かんだまま少女の名を呼んだ。彼女がジムリーダー・ナツミだったのだ。
「あ、あなたがナツミさん…手品師養成ジムのリーダー……」
「だから違うと言ってるだろうが!ナツミ様は我等の中でも最大の力を持つのだ。愚かな常人など……うあっ!」
ナツミが男をキッと睨むと今度は彼の体が逆さまになった。慌てるその姿は何とも間抜けだ。
「またそんなこと言ってるの。あたしはそうやって自分と他の人間をさも違う生き物のように言うのは大っ嫌い!!そう前も言ったはずよ!!」
「し、しかしナツミ様…」
「うるさいわねーっ!あんたなんか飛んでっちゃえ!」
ナツミの一言で男は本当に飛んでいってしまった。しばらくするとその先で大きな音がした。恐らくあの男が壁かどこかにぶつかったのだろう。
「ごめんねぇ〜、あいつ排他的でさ。でも気にしないでね。あたし達だって同じ人間。大した違いはないのよvそうだ、はじめまして、あたしがナツミよ。」
そう言うとナツミはサトリに向けてウインクした。またドキッとするサトリ。何だか変な感じだ。
「はっ……あっ、は、はじめまして…あたしはサトリ。ハナダシティのサトリよ。挑戦受けてくれる?」
「ハナダシティ?……あのおばさんと同じとこなんだ。」
「あのおばさん?誰のこと?」
気になったサトリはナツミに尋ねた。それが自分の母だとも気付かずに。
「ジムリーダーよジムリーダー!28歳で子持ちなのに自分を『お姉さん』な〜んて言うのよ〜。アハハ。さ〜てバトルフィールドにご案内〜♪あ?サトリちゃんどうしたの?」
「おばさん…?ママを…おばさん…ですってぇっ!!」
サトリが怒りに身を震わせ、大声で叫んだ。その表情はとてもこの世のものとは思えないほど恐ろしい。
「えっ…そうだったの?ごめん!ごめんね!……いっ!?」
ナツミは何度も頭を下げたがサトリの怒りはおさまらない。その体から燃え上がる目に見えない炎がナツミの目にははっきりと見えていた。
「さぁ!バトルフィールドに行きましょう!あっという間にやっつけてやるんだから!!」






「ゴ〜〜〜〜〜ス♪」
バトルフィールドに入った2人を出迎えたのは1体のゴーストだった。シオンの塔のゴーストとは違い陽気な奴だ。
「この子はね、50年以上前にマサラタウンの老師が連れてきたの。この子のおかげでおばあちゃんは明るくなった。それ以来うちの家系は明るいの。あたしもよォ。ウフフーッv」
そんな話には聞く耳持たず、サトリは既に自分のサイドへ行っていた。
「早く!バトルスタートよ!!」
「んもーっ、もう謝ったでしょ〜っ?機嫌直してよぉ〜っ。ごめんねゴースト、怒らないでね。」
「ゴ〜〜〜ス?」
ナツミもやや駆け足で自分のサイドへ向かった。その際に揺れる胸には健康な男子であれば思わず目を向けてしまうだろう。コタロウやニャースがこの場にいなくてよかった。もしいたらサトリの怒りは更に増加していたはずだ。
「バトルは1対1の時間無制限よ、準備はいいわね?行くのよキルリア!」
モンスターボールがナツミの手から放れ、ひとりでに開き中からバレリーナを思わせるポケモンが現れた。ボールは通常のもので、問題の黒いボールではない。だがそんなことは今のサトリにとってどうでもよかった。
「行くのよロコン!燃える怒りを力に換えて!!」
「コン!」
「なるほどね!負けないわよ、キルリア、『念力』!」
ロコンの体が宙に浮かび、地面に叩きつけられた。流石は超能力者のポケモン。ダメージはかなりのものだ。
「ロコン、『鬼火』!」
紫色の炎が無数にキルリアを取り囲む。
「『神秘の守り』!続けて『シャドーボール』!」
キルリアは取り囲んでいた鬼火を打ち消し、続けざまに黒い塊をロコンに向けて投げつけた。それはロコンにヒットし、大きく吹っ飛ばした。
「ロコン!立って『火炎放射』よ!」
何とか立ち上がり炎を吐くロコン。だが……
「キルリア、かわして『サイコキネシス』!」
まるで踊るように華麗に炎をかわし、再びロコンを宙に浮かせるキルリア。と、ナツミが口を開いた。
「サトリちゃん、もうやめましょ。今のあなたじゃどう頑張ってもあたしには勝てないわ!」
キルリアはロコンをそっと地面に戻した。ロコンはフラフラと立ち上がるものの先程のシャドーボールのダメージもあって満身創痍だ。
「何言ってんのよ!勝負はこれからよ!ロコン、『火の粉の舞い』!!」
必死に舞いのステップを踏み、火の粉を放つロコン。全て放ち終えたとき、ロコンはその場に倒れた。
「『テレポート』。」
襲いかかる火の粉をキルリアはあっけなくかわしてしまった。目を丸くするサトリにナツミが言い放つ。
「今のあなたは怒りに全てをまかせてポケモンをぶつけているだけ。それじゃあ戦わされるポケモンが可愛そうだわ。見てみなさい、あなたのロコンを。」
サトリはハッと我に返りロコンを見た。傷つき倒れ、苦しそうに息を切らしている。サトリはその場にひざをつき、ロコンを抱き上げた。目から何か熱いものが流れ落ちていく。
「ロコン…ごめんね……あたしのせいで……ううっ…」
「いい?トレーナーと心をひとつにしてこそポケモンは真の力を発揮できるのよ。心がバラバラじゃ十分の一の力も出せないわ。出直してらっしゃい。戻って、キルリア。」
キルリアをボールに戻し、ナツミは立ち去ろうとしたところでふと立ち止まった。
あ、そうだわ。これに出るといいわ。ポケモンと心を通わせる修業になるかもよ?」
そう言ってナツミがサトリに手渡したのは一枚のチラシだった。
「…?ヤマブキシティ秋のポケモン大運動会??」
「そうよ。あたしも出るの。楽しいわよ〜v待ってるからねv」
ナツミはサトリに投げキッスをすると今度こそ本当に立ち去った。ゴーストも彼女についていく。サトリは背筋に悪寒を覚えた。
「あの子、なんなの…?もしかして……」
ふと、抱かれているロコンが顔を上げ、サトリの頬を舐めた。
「あ…ロコン……ごめんね。あたし、あなたと心を通わせられなかった…許してくれる……?」
「コン…」
ロコンはゆっくりとうなずいた。
「ありがとう……」
ロコンを優しく撫で、立ち上がるサトリ。今回の敗北は彼女をひとつ成長させたのだ……






その頃、オーキド研究所では……
「何としても今度の学会までにスターミーの生態に関する論文を完成させなくては!頼むぞスターミー!おっとその前にラーメンをゆでるためのお湯を沸かさなくては…そうじゃスターミー、このビーカーに水を入れてくれんか。」
オーキド博士がビーカーの口をスターミーに向けると、理解したスターミーは水をそこに向けて吹き出した。だがその勢いが強すぎ、博士はビーカーごと吹っ飛ばされてしまった……
「ひえええぇ〜〜〜〜〜!」






第44話に続く。






作者のうだうだ雑言
『ホモやレズが好きな奴なんて、ヘンタイだ!』
カップリングを初めて知った頃はそう思っていた………が、愛とは別にラブラブやチュッチュし合うことだけとは限らないとわかったり、それ系が好きな人の話を聞いたりしているうちに偏見が薄れ、『まぁ、エッチすぎなければヘンタイでもないか』と最近は思うようになってきた………といっても、ぼく自身がホモになったわけじゃないので…念のため。
世の中には色々な人がいて、その趣味も千差万別。認め合わなきゃいけんってことですね(ぉ)。


…今回の話のタイトルは…特に気にしないでください。ハイ。

 

[一言感想]

 オーキド博士、妙にドジっぷりを発揮させる時があります。
 ……ボケたのかな←
 ニャースの尾をケアしてくれた、たぶん元カモ娘も気になりますが、ヤマブキジムでの戦いも注目でした。
 今回は怒り任せで戦った末、敗北してしまったサトリですが、リベンジなるか……運動会で(?)。

 

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