「遅い!にゃにやってるにゃあの小娘は〜っ!」
赤いハチマキを締めたニャースが怒鳴り気味に言った。
「まあ待てよ。開会式まではまだある。」
コタロウも赤いはちまきを締め、トレーナーにジャージ姿だ。ジャージというとダサいイメージがあるが、コタロウは上手に着こなし非常に格好良く見える。
「お待たせ〜♪」
向こうからサトリが走ってきた。コタロウとニャースは彼女を待っていたのだ。
「待ったのじゃにゃ!ん?にゃはー!その格好は!!」
「どうしたニャース…うっ!」
男達は真っ赤になり体から湯気を噴きだした。まるでコータスのようだ。それも無理はない。サトリが体操着にブルマという格好で現れたからだ。これは彼等でなくとも男ならそうなるだろう。
「?…どうしたの?」
「い、いや…」
「にゃんでもにゃい……」
「なーに?変なの……」
サトリは自分の格好が原因であることに気付いていない。その時、アナウンスが流れ始めた。
“間もなく開会式となりますので参加者の皆さんは至急グラウンドに集まってください。繰り返します。間もなく……”
「さっ、行きましょ。…2人ともどーしたのよーっ!」
コタロウとニャースの体はすっかり火照っていた。それほどサトリの姿が強烈だったということである。

(サトリのナイスバディ+童顔)×(体操着+ブルマ)=興奮無限大

 

 

 

 

 

 

 

ここはポケモンゼミヤマブキ校のグラウンド。今日ここで『秋のポケモン大運動会』が開かれるのだ。ヤマブキジムでリーダーのナツミに敗れたサトリは彼女の勧めでポケモンと心を通わせる修業もかねてコタロウ、ニャースと共に参加することにしたのである。
“これより開会式を行います!まずは運営委員長挨拶………”

(遂に来たわ!この時が!この運動会でポケモンとの信頼関係を強めてみせる!そして優勝もゲットよ!ファイト!!)

サトリは心の中でガッツポーズをし、気合いを入れた。
“………続きまして選手宣誓。ヤマブキシティジムリーダー・ナツミちゃん!宜しくお願いします!”
「えっ!?」
サトリの丸くなった目の先でナツミがツカツカと進んでいく。驚くべきことに彼女もまた体操着にブルマという格好である。男達の目は彼女に釘付けだ。もちろんコタロウとニャースも例外ではない。
「コラ!なに見とれてんのよ!」
サトリはコタロウとニャースの頬を思いきりつねった。
「いてて…ごめんごめん…」
「あだだ…見とれてにゃにが悪いにゃ!」
「あたしじゃ物足りないってゆーの!?」
そういう問題ではない。サトリ達が騒いでいるうちにナツミは朝礼台上に登っていた。白いハチマキが微風にわずかになびいている。
「宣誓!わたしたちはポケモントレーナーシップにのっとり、正々堂々と競技を行い、ポケモンとの絆を深め合うことを誓いまァ〜す!!」
宣誓を終えるとナツミは一礼し、朝礼台を降りてまたツカツカと進んできたところを逆に戻っていった。
「ナツミさんは白組なのね、よーし、負けないわよーっ!」
ライバルとなったナツミ相手に激しく闘志を燃やすサトリであった。



開会式も終わり、参加者は紅白それぞれの選手席に着いていた。さて、ここは紅組の選手席………
「さーてと、自分の番が来るまで調整でもしてよっかな…」
そんなサトリの肩を叩く者がいた。
「だーれ?コタロウさん?」
「おはよ!元気だった?」
サトリが振り返るとそこにはナツミの姿があった。何度見ても立派な胸である。サトリも思わず見とれるほどに。

(もしかしてあたしより大きい…?)

「どうしたの?」
「いえ、なんでもないわ。それよりどうしてここに?」
ナツミの胸からわざとらしく目をそらしながら尋ねるサトリ。
「あなた達の姿が見えたから来てみたの。一緒にいたニャースとハンサム君はだぁーれ?」
「旅の仲間よ。あ、来た来た。」
向こうを指差すサトリだが、視線はナツミの胸をむいている。ナツミも感付いた。流石は超能力者である(笑)。
「アハハ、あたしの胸そんなに気になる?」
「違うってば……あ、コタロウさんにニャース。この子がナツミさん。」
「エヘ、よろしくね。近くで見るとますますいい男ねぇ〜。こんな人と旅が出来るなんて羨ましい〜。ニクイねこのぉv」
ナツミはニヤニヤしながらサトリをどついた。苦笑いを浮かべながら顔を赤くするサトリ。一方のコタロウとニャースも顔を赤くしている。だがそれはサトリの比ではない。原因は言うまでもなく2人のセクシー系美少女の競演(いや競艶と言うべきだろう……)である。
「いや、はじめまして……」
「よろしくにゃ……」
「どーしたのよっ!これじゃ競技出られないわよ!」
サトリが怒り気味に2人の肩を叩いた。
「はっ……ごめん。面目ない。」
本当にその通りである。今日のコタロウはどうもおかしい。いつもと違う。
「ぼっちゃまには免疫がにゃいのじゃにゃ。じゃあ持ってるはずのわしは何故……」
ニャースに本当に免疫があるのかどうかはわからないが、あるなしに関わらずこの競艶にはかなわないだろう。ぜひとも実物を見てみたいものである(蹴)。
「あ、そろそろあたしの出る番だから、じゃーねェーーv」
そう言うとナツミは投げキッスをして走り去った。走るたびに上下に揺れる胸がたまらない。ぜひとも実物を………(殴)



“次の種目、『ポケモンと100メートル走』に出場する選手の方は入場門にお集まりください。繰り返します。次の種目……”
「あっ、これに出るんだ。行くね。」
サトリは席から立ち上がった。
「頑張れよ!」
「勝つのじゃにゃ!」
「わかってるって!じゃあね!」
ここで説明しよう。『ポケモンと100メートル走』とはトレーナーとポケモンが一緒に走るという競技である。ただし、単に素早いポケモンと出ればいいというわけではない。この競技はトレーナーとポケモンが一緒に走り、そしてゴールしなければならないのだ。いかにポケモンと息を合わせるかが勝利の鍵である。
「よーし、行くわよ!ロコン!」
「コン!」
サトリ達は1番手だ。隣には同じ紅組の選手が1人、その向こうには白組の選手が2人いる。それぞれが自慢のポケモンを引き連れて。
「それでは位置について!用意!」
バンというピストルの音と同時に、4選手とそれぞれのポケモンが一斉に走り出した。みんな横一線である。特にサトリ。大きな胸のわりにかなり速い。
「よーし!ロコン、抜かすわよ!」
「コン!」
サトリ達はスピードを上げた。だが他の選手も負けてはいない。差をつけられまいとそれを追いかける。ゴールは目前だ。誰が1位になってもおかしくない。
“今、ゴールしました!ほぼ同時!果たして1位になったのは誰か!?おーっと結果が届きました。発表します。1位は白組のダイキ君とラッタ!2位は紅組のサトリちゃんとロコン!3位は………”
「あーっそんな!勝ったと思ったのに!!」
サトリは地団駄を踏むがそれも無理はないだろう。勝ったと思った勝負に実は負けていたことほど悔しいことはなかなか見つからない。
「コン…」
ロコンも悔しそうに首を横に振った。
「ロコン、よく頑張ったね。あなたとの絆、深まったかな……」
そのロコンをサトリは抱き上げ、つぶやいた。そしていつまでも悔しがっていても仕方がない。そう思ったサトリは今は後の選手を見て学習することにした。



レースは進んでいった。どの選手も見事である。勝った者も負けた者も素晴らしい。
「凄いわね〜、みんな息がピッタリ合ってるわ。」
“では最後のレースです!”
「ふ〜ん、あっ!」
選手達の方を見てサトリは一瞬驚いた。ナツミである。彼女もこのレースに出場していたのだ。そのパートナーは薄紫色のしなやかな体にとがった耳、先が二つに分かれた尻尾を持ち、額に赤い宝石が付いているポケモン……太陽ポケモン、エーフィだ。
“位置について!用意!”
バンという音とともに走り出す最後の選手達。その中で一気にトップに立ったのはナツミだった。パートナーとともに他の選手をどんどん引き離していく。
「な、何て速さなの!?」
サトリは目をこすってみたがやはり速い。圧倒的である。
“ゴール!1位は白組のナツミちゃんとエーフィ!速い!速すぎる!!そのナイスバディからは想像もつかない……おっと失礼しました……間が空いて2位も白組、マイちゃんとオオタチです………”



紅組の選手席にサトリは戻ってきた。
「ただいまー。」
「おかえり。惜しかったな。」
「いいの。次の競技で頑張るわ。それにしてもナツミさんは速かったわねー…」
サトリはまだ信じられない顔をしている。
「ああ、それにただ速いだけじゃない。ポケモンと心を完全にシンクロさせていなければあそこまでの結果を出すのは難しいよ。」
「そうね。あたしも負けてられないわ!………ん?」
ふと気付くとニャースがいない。辺りを見回してもいない。どうしたことか気になったサトリはコタロウに聞いてみた。
「ねぇ、ニャースは?」
「ニャース?今から始まるピンポン玉運びリレーに出るらしくて出ていったよ。ホラ、選手入場だ。」
コタロウの指差した先の入場門から選手達が紅組白組それぞれ2組ずつになって行進していく。人もポケモンも混ざっているがニャースの姿は見えない。小さくて目立たないからか。
“ではここでルールを説明いたします。選手はスプーンにピンポン玉を乗せそれを落とさないように運び、それを次の選手に渡します。なお、選手は人とポケモンが交互となっております。では整列が終わったようですので第1走者の皆さん、スプーンとピンポン玉をお受け取りください。”
係の人が4人の第1走者にスプーンとピンポン玉を渡す。各選手はそれを受け取り、ピンポンをスプーンに乗せた。準備ばんたんだ。
「はじまるよ!ニャースはどこだろ?」
「後の方の走者なのかな…」
2人は目を凝らして選手達の方を見るがなかなか見つからない。
“では位置について!用意!”
聞き慣れたバンという音と同時にスプーンを手にした選手達が走り出した。慎重に早歩き程度の速度で進む者、一気にダッシュする者の2パターンに分かれている。
「頑張れーっ!紅組ーっ!!」
「負けるなよーっ!!」
2人の応援のためかはわからないが、紅組はいい調子で進んでいった。白組にかなりの差をつけている。
“さあ、紅組第1チーム、最終走者は老練なテクニックを見せてくれるか、ニャース選手!!今ピンポンの乗ったスプーンが手渡されたぁーっ!!”
「…っ!あいつアンカーだったのか!大丈夫か?無理したらまた『あれ』が再発するかもしれないぞ……」
コタロウが心配する『あれ』とは言うまでもなく『あのこと』である。無理がたたって再発する可能性は十分にあるのだ。
「大丈夫よ。心配いらないわ。ニャースだってその事はわかってるはずだし。」
サトリは楽観的だ。だがしかし、コタロウの心配したことが現実になろうとしていた。なんとニャースはダッシュで駆けだしたのだ。しかも前かがみで。
「や、やばい!あれじゃあ腰に負担が……何考えてるんだあいつ……」
「あ、あのバカ…」
2人の心配(?)など知るはずもなくニャースは走り続けた。そしてゴールは目前。2人を除く誰もが紅組1位を確信していた。だが………
「楽勝、らっくしょ〜にゃのじゃぁ〜にゃあ〜♪にゃ?」
ピシッという音がニャースの背中に走った。
「ピシッて…まさか……あ!あだ!あだだーーーっ!!」
コタロウが心配したこと、『あれ』ことぎっくり腰の再発だ。叫び声を上げるニャース。スプーンもピンポン玉も落とした。もうリレーどころではない。
“おーっとどうしたことか!ニャース選手が倒れてしまいました!腰を押さえていることから察するにどうやらぎっくり腰のようです!救護班ーっ!!”
「ラッキー。」
「ラッキー。」
ブーイングの中、ニャースはみっともない姿をさらしながら救護班に運ばれていった。この騒ぎの中でもう1人の紅組選手もピンポン玉を落としてしまい。拾い上げようと慌てるがなかなかつかめない。上手く拾ってもすぐ落としてしまう。そうこうしているうちに白組選手2人に抜かされてしまった。まさに奇跡の(?)大逆転である。
「ニャース…」
「見てるこっちが恥ずかしいわ…」
額を手の平で押さえて恥ずかしさをこらえる2人だった………
「あっ…!」
サトリがふと思いついたかのように声を上げた。

(今、コタロウさんと2人っきり…文句を言うニャースもいないし、周りの人はカボチャ。チャンスよ!イイカンジになるチャンス……!)

「あの、コタロウさん……」
「どうしたんだい?」
チャンスと思いながらも胸がドキドキして言いたいことが言えない。もどかしさとドキドキとが絡み合う。

(早く!言うのよサトリ!どうして言えないの!?『好き』の一言が……!)

自分に言い聞かせ、勇気を振り絞ったサトリの口から出た一言は………
「…隣に座っていい……?」
「ああ、いいよ。遠慮しないで。」
言えなかった。『好き』の一言を言うことが出来なかった。だがサトリは嬉しかった。今日初めて誰にも邪魔されることなく2人っきりで座ることが出来た……自分の思いが一歩進んだことをサトリは実感したのである。



第45話に続く。



作者のうだうだ雑言
………っ、もう12月だァーーーっ!!運動会など遠い昔。今や時節はクリスマスに近い!でもポケF世界はまだ秋!運動会は次回に続きます!!
話は変わりますが。ブルマって一体どこの誰が考案したんだろう……今はどこもハーフパンツだが、やっぱりブルマだと恥ずかしいからだろうか?あ、漫画とかではブルマだよなあ……(笑)
そんなこんなで根強いファン(?)を持つブルマを考案した人に一言言いてえぜ。『素晴らしいものを考えてくれてありがとう』と(爆)。

 

[一言感想]

 周りはカボチャ……(ぇ)。
 ニャースの唐突な戦線離脱(?)により、2人っきりになったコタロウとサトリ。
 10歳差の2人の仲は進展するのでしょうか←
 それにしても、今回もナツミは、色んな意味でその手強さを披露していました。

 

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