アオイのお見合い相手・スサノオとバトルしたカオル。結果はカオルの勝利に終わり、ボロを出したスサノオとその付き人・ウズメは正体を現した。彼等はアオイの家の財産を資金にしようと企むネオロケッツの団員・タケルとミコトだったのだ。2人で攻めてくる彼等に対し、カオルは1人で戦おうとするがそこへアオイが加わりチーム制のダブルバトルとなった。
「デルビル、『頭突き』だ!」
「ヒノアラシ、『電光石火』よ!」
2体のポケモンが一度にカオルのニョロゾにとびかかった。が、攻撃を受ける直前に緑の影が2体を阻んだ。アオイの出したポケモン・ジュプトルだ。
「ジュプトル、『見切り』ですわ!」
ジュプトルは腕についている刃のみねで2体の攻撃を受け止め、その状態のまま両脚を挙げて2体を蹴り飛ばした。
「なにいっ、何という素早さとテクニック!さすがはジムリーダー…」
「でも所詮は草ポケモン!弱点の炎攻撃を受ければひとたまりもないはずだわ!ヒノアラシ、『火の粉』よ!」
ヒノアラシの口から小さな火の玉が無数に放たれた。その火の玉とジュプトルの間に今度はニョロゾが割り込んだ。
「ニョロゾ、『水鉄砲』で消火だ。」
火の玉とニョロゾの水鉄砲がぶつかり合い、次々と水蒸気となって消えていく。
「ああっ、今度はニョロゾに攻撃が阻まれた!なんでよおっ!」
ミコトは地団駄を踏んでいる。その彼女の肩をタケルがポンと叩き落ち着かせた。
「焦るなミコト。焦ったら勝てるバトルも勝てないぞ。奴らは所詮インスタント・チーム!落ち着いて戦えば長年一緒に戦ってきたオレ達が負けるはずはない!」
「そ、そうよね…まだバトルは始まったばかり。あたし達兄妹の怖さ、たっぷりと奴らに教えてあげるわ!!」
第49話 ダブルバトル!兄妹VS即席コンビ
「デルビル、ニョロゾとジュプトルを引き離せ!」
「ヒノアラシ、あなたもよ!」
デルビルがジュプトルに、ヒノアラシがニョロゾにそれぞれ体当たりをしかけ、2体を分散させた。これではシングルバトルと大差ない。
「むう、ダブルバトルの中であえてシングル形式に持ち込むのも戦略のひとつということか…だがそれをまたダブルに戻すことも戦略のひとつ!ニョロゾ、ジュプトルと合流だ!」
だが、そうしようとするニョロゾの前にヒノアラシが立ちふさがった。お互いにけん制し合いニョロゾはジュプトルの元へたどり着けない。
「あなたの相手はあたしよ!よくもあたし達の決めゼリフをバカにしてくれたわね!それと…」
「まだそんなことを言っているのか。」
「それだけじゃないわ!」
言葉をさえぎられたミコトはいらつき気味に切り返した。だがいらつきの原因はそれだけではなさそうだ。
「…さっきのバトルでお兄ちゃんに向けてルナトーンを吹っ飛ばしたでしょ。大事には至らなかったけど、もしあれでお兄ちゃんがつぶれちゃったら…あのハンサムフェイスが傷物になったら…どうするつもりだったのよ…」
ミコトはややうつむき、体を震わせている。そのナイスバディからは怒りのオーラが放たれているようだ。
「あたしのお兄ちゃんを…世界で一番大好きなお兄ちゃんを危ない目にあわせる奴は…絶対に許さない!!くらえーーーっ!!!」
ミコトの叫びと同時にヒノアラシの背中が激しく燃え上がり、そこからたくさんの小さな炎が矢のように放たれた。まるでミコトの怒りがそのまま攻撃のエネルギーに変換されたかのような勢いだ。
「ニョロゾ、『守る』…駄目だ間に合わない。よけるんだ!」
「よける?これだけの炎の矢を全て?どうやってやるのか見せてみなさい!」
ミコトの言葉通り、いかに動きの機敏なニョロゾでも迫り来る無数の矢を全てかわしきることは出来ず、足にダメージを受けてしまった。
「よくそこまでよけられたわね。普通なら半分ぐらいのところでよけきれなくなって集中砲火をくらうのに…でも足にくらった以上は同じこと!もう一度くらえっ!『フレイムアロー』っ!!」
「よけられないならこうすることも出来るんだぜ。ニョロゾ、『吹雪』!」
猛烈な吹雪が巻き起こり、炎の矢とぶつかり合っては水蒸気となり、それが霧となってニョロゾとヒノアラシの戦っているゾーンを覆い隠してしまった。もう一方のゾーンではタケルのデルビルとアオイのジュプトルの接戦となっている。
「くううっ、炎ポケモン相手にここまで粘るとは…」
「自分のエキスパート・タイプの苦手とするタイプにどのように対処するか理解できなければタイプ型ポケモンジムのリーダーは務まりませんから…」
アオイはタケルに向けてニッコリ微笑んだ。
「フッ、そうか…だがいかに対処しようとも完全に相性をひっくり返すことは出来まい。結局は相性の良さがバトルに置いて勝敗を分けることとなるのだ。」
「そうですか…でしたらあなた方はわたくし達に勝てませんわよ。」
そう言うとアオイは離れているカオルを指さした。そこでは霧の中でニョロゾとヒノアラシがバトルを続けているがその霧のために様子は見えない。
「ぐぐっ…ミコト!霧を晴らせ!合流だ!」
タケルが自分のバトルから目を離した一瞬をアオイは見逃さなかった。
「今ですわ!ジュプトル、『タネマシンガン』!」
ジュプトルの口から無数の種がその名の通りマシンガンのように連射され、デルビルにヒットした。
「しまった!オレとしたことが陽動作戦に引っかかるとは…だが今の一撃でデルビルを倒せなかったのは痛かったな。もう同じ手は通じないぞ。さて、デルビル、『遠吠え』だ。」
デルビルは頭を上向きに上げ、高くうなり声を吐いた。気合いを入れ直したのだ。
「もとよりあの一撃で倒そうとは思っておりませんわ。」
「なに。」
予想していなかったアオイの返答にタケルは一瞬戸惑った。
「どういうことだ。相手の隙を見つけたらそこに全力の一撃をくらわせるのがセオリーのはず。そのセオリーを覆そうというのか、それともただ強がりを言っているだけなのかな…」
だが、アオイは答えない。
「フッ、まあいい。答えたくなければだんまりもいいだろう。さて、ミコトと合流するのはあなたを倒してからにしよう。デルビル、『頭突き』だ!」
「ジュプトル、『見切り』ですわ!」
序盤戦を再現したかのようにジュプトルが刃のみねでデルビルの頭をしっかりと受け止めた。そしてそのままの体勢で脚を振り上げて蹴りに入る。違う点はヒノアラシがいないことだけだ。だが、間もなくもうひとつ違う点が出てくる。序盤戦の再現通りにはならなかった。
「今だ!デルビル、『カウンター』!」
ジュプトルの蹴りを肩越しにスリップさせたデルビルはそのまま後ろ脚を振り上げ、逆にジュプトルの顔面に蹴りをくらわせた。
「なにっ…?」
カオルとミコトも思わずそちらを向いた。ジュプトルはその場に倒れ、気絶こそしていないものの相当のダメージを受けている。
「ジ、ジュプトル!」
「戦闘不能こそまぬがれたようだが起き上がることはできないぞ。そいつは自分の蹴りとデルビルの蹴り、2つの蹴りの威力を一ヶ所に同時に受けたのだからな。さて、残るは1匹!ミコト、合流だ!」
「うん!もうあたし達の勝ちは決まったわね!」
タケルはどうだかわからないが、ミコトは既に勝った気でいる。残るニョロゾも足のダメージがまだ残っているため思うように動けないのを知ってのことである。
「くっ…ニョロゾ、動けるか?」
ニョロゾはカオルの方をチラッと見てわずかにうなずくもののまだ完全ではなさそうだ。
「行くぞミコト!ツープラトン攻撃だ!行け、デルビル!」
「はい!お兄ちゃん!行くのよヒノアラシ!」
2匹の炎ポケモンがニョロゾのまわりを弧を描くように走り、熱気をまき散らしていく。しばらくそれを続けたのち、2匹は描いた弧から飛びだし、ニョロゾに向けて炎を吐きだした。するとその炎が巨大な渦を巻き、ニョロゾを押し上げながら上昇していく。やがて渦が消滅し、ニョロゾは空中に放り出され落下し始めた。
「今だ、デルビル!」
「ヒノアラシ、あなたもよ!」
「なにっ!?ニョロゾ、空中でバランスをとってかわすんだ!」
だが遅かった。デルビルがニョロゾの右腕と右脚を、そしてヒノアラシが左腕と左脚をしっかりと固め、そのままあおむけに寝そべる形でニョロゾの体を突き上げた。
「な、何だこの技は!?」
「驚いたか!これぞツープラトン技『ツイン・ロメロ・スペシャル(二体吊り天井固め)』!2体の力で固められた四肢はそう簡単にははずせないぞ!」
タケルが笑いながら言った。ミコトも得意げに続ける。
「この技はトレーナーとポケモン…それだけじゃなくトレーナー同士、ポケモン同士の息が全て合わなければ決めることはできない難技!でもあたし達兄妹ならこの通りよ!」
「くっ…」
カオルの額に、手の平に冷や汗が浮かぶ。
「カ、カオルさん!」
そのカオルにアオイが叫んだ。
「もう少し…もう少し頑張ってください!わたくしももう少ししたら合流しますから…」
「アオイさん…?わかった。ニョロゾ、もう少しの間『こらえる』んだ…!」
カオルはアオイの言葉を信じ、手をぐっと握って待つことにした。そしてニョロゾも自分の主とそのパートナーを信じ、必死にこらえ続けた。
「ジュプトルが起きあがれるはずがない!無駄なあがきを!よし!思いきり力を込めてやれ!」
そうタケルが言った次の瞬間、右を固めていたデルビルがスルッと抜けるように固めを解いてその場に倒れた。残ったヒノアラシだけではバランスをとることができず、左の固めも解かれた。
「なにっ、どうしたデルビル!」
デルビルは起き上がろうとずるが体に力が入らないのかなかなか起きあがれない。
「効いてきたようですわね。」
その場の全員が声のした方向を向くと、そこにはアオイはもちろんのことジュプトルもしっかりと地に足をつけて立っていた。
「な…?どうなっているんだ。ジュプトルはカウンターを受けて立ち上がることもできなかったのに…ま、まさか…!」
タケルはハッとしてデルビルの方を見た。背中に小さな芽が出ているのがわかる。
「そうですわ。さっきの『タネマシンガン』の中に『宿り木のタネ』をわずかに仕込んでいたのです。それがデルビルの体力を奪い、タネを放ったジュプトルに奪った体力を分け与えてくれたのですわ。」
「ぐぐぐ…あの時気付いていれば……」
「大丈夫よお兄ちゃん!まだあたしのヒノアラシは十分戦えるわ!」
「そうかな?」
カオルのほんの一言にミコトはビクッとした。
「体力を回復したジュプトルを加えてこちらは2体だ。いくらヒノアラシの体力が十分だからといって2対1ではどうしようもないだろう。」
「な、何を!そっちのニョロゾは体力も限界のはず!結局は1対1なのよ!草ポケモンのジュプトル相手ならこっちが有利よっ!」
強気に切り返すミコトだが、その表情には焦りの色が伺える。
「いや、2対1だ。ニョロゾ、真上に『水鉄砲』。」
ニョロゾはあおむけになり、お腹の渦巻きの中心から水を吹き出した。それはまるで小さな噴水のようだ。
「そ、そんなことをしてどうなるというの?自分に水がかかるだけじゃないの!…はっ、自分に水?まさか…」
水を浴びるニョロゾの体にうるおいと張りが戻り、それにともない失われていた体力もみるみるうちに黄泉返って…いや、蘇っていく。そしてニョロゾは放水をやめ立ち上がった。まるでこれからバトルを始めるかのように活き活きとしている。
「そう、そのまさかだ。ニョロゾの『貯水』。水を受ければ受けるほどニョロゾの体力は蘇る。」
「そんなぁ…ずるいわよぉ…」
ミコトの中に強気の勢いはもうない。超ミニスカートから覗く美しい脚が無意識のうちに一歩また一歩と後退していく。
「行くぞ、ニョロゾ、『冷凍パンチ』を地面に連続で放て。」
ニョロゾは両手に冷気をまとわせ、地面を殴り続けた。その部分から氷が盛り上がり、壁のようになっていく。それはまるでレンズのように透き通っている。
「!?何を考えているんだ。そんなものを作って何になる!」
「すぐに見せてやるさ!…アオイさん、わかるな?」
「ハイ!ジュプトル、頼みますわ!」
ジュプトルは何をすべきか理解し、前かがみになり口にエネルギーをため始めた。その口はまっすぐと氷のレンズに向けられている。
「ま、まさか!ミコト!早くあの氷を溶かすんだ!」
「えっ?わ、わかったわ!ヒノアラシ、『火炎放射』!」
ヒノアラシが炎を吐くと同時にジュプトルのエネルギーも満タンになった。
「ジュプトル、『ソーラービーム』!!」
ジュプトルの口からまぶしく輝く光線が放たれ、炎よりも先に氷のレンズに達した。光線はその中を通り抜け、拡散しながら標的に迫る。炎もその光の前に消し飛んでしまった。
「そ、そんな…そんなのありぃ?」
そう言っている間に、光線は標的に達し、そこにいた2人と2匹を巻き込み爆発を起こした。
「きゃあぁーっ!」
「うわぁーっ!」
「ヒノーッ!」
「デルーッ!」
彼等は爆発の衝撃により吹っ飛ばされ、天井を突き破ってそのまま空のかなたへと消えていった。
「オ、オレ達があんな奴らに敗れるなんて…」
「あいつ、絶対許さなぁーいっ!!」
「やな心境ーーーっ!」
2人の悲痛な(?)叫びがタマムシシティの空にこだました………
その日の夕刻、タマムシジム正門………
「ありがとうございました。お気をつけて…」
アオイは礼儀正しくお辞儀をした。それにあわせて後ろのメイド達もお辞儀する。
「しかしあのお見合い相手がネオロケッツとかいう悪い奴らだったとは…その悪巧みを阻止してくれたあなたにはお礼の言葉もありません…」
メイド長のタエコが言った。が、カオルは首を横に振る。
「いや、礼には及ばないさ。じゃあ、行くぜ。アオイさん、いい相手を見つけなよ。」
「カオルさん…」
アオイはさびしそうな眼差しでカオルを見つめた。目を合わせたカオルはドキッとしてしまいその場から動けない。その彼にアオイがゆっくりと体を、いや唇を近づけていく。そして2つの唇が重なり合った………
(カオルさん…わたくし、あなたが……)
(…ア、アオイさん……?)
カオルの思考は止まり、ただ目を点にして立っているだけだ。顔は赤く染まり、体からは湯気が立ちのぼっている。彼は免疫がないようだ。だが、一番衝撃を受けているのはタエコだった。
「お、お嬢さま…何とはしたないことを……」
彼女はそのまま倒れてしまい、完全に気を失っている。この時、まわりのメイド達は時が止まったかのような錯覚を感じたという………
お見合い騒動編・終わり
作者のうだうだ雑言
ダブルバトルを本格的に(?)書くのは初めてな気がします。書いてて楽しいけど、ゲームでやるのと同じようにシングルバトルとは勝手が違う…苦労しました。いつも苦労してるけど(ぉ)。さて、次回はいよいよ第50話。久しぶりに本当の主人公が登場します。お待たせしました…!
[アットの一言感想]
ある意味タケルとミコトのおかげで、カオルとアオイの関係はより深まったと言える(ぇ)。
にしても、ミコトは本当にお兄ちゃんを愛してるなぁ←
ダブルバトルというか、2つの戦いを並行して書くのはなかなか難しいものですよね。
次回から主人公サイドの本編再開のようです。