ホウエン地方、国道111号、通称111番道路にある広大な砂漠、そこでは常に砂嵐が吹き荒れている。そこに1人の青年がいた。
「ここでいいんだよな……?」
青年は1枚の紙を見ながら言った。と、彼の周りに1人の男がいた。
「ふっ。来たな……」
男はアラビアのロレンスのような格好をしている。青年は男を後ろ目で睨みつけた。
「お前は何者だ?何のためにオレを呼んだ?」
「オレは砂漠の戦士(トレーナー)、サンドウォリアーのリーダー、ガブリエル。お前には我々の同志になってもらいたいのだ。そのために呼んだ。」
男がそう話した。青年はその言葉に不信なものを感じた。
「断る……と言ったら?」
「どうやら同志になるつもりはないようだな。ならば消えてもらうしかない。行けっサンドパン!!」
「サンッ!」
「ならばこっちもいくぞ、行けっハガネール!!」
「グオォーーン!」
「ハガネール、『龍の息吹』!」
ハガネールの吐き出した息が敵を包み込んだ。が、サンドパンはその息をはじき飛ばした。
「その程度の攻撃は効かん、砂の鎧が守ってくれているのだ。今度はこちらの番だ、サンドパン、『爆裂パンチ』!!」
「サンッ!!」
サンドパンの拳に気が溜まり、それがハガネール目がけて打ち出された。それはクリーンヒットし、ハガネールはその巨体を吹っ飛ばされ気を失った。
「くっ、何という威力だ……戻れハガネール!」
「オレの実力、思い知ったか!出ろっノクタス!『綿胞子』だ!!」
「ノークッ」
ノクタスが綿胞子を放ち、青年の体を包み込んでいく。
「何っこれは……」
「この綿胞子は普通のものとは違う。少しでも吸い込めば強烈な眠気に襲われるのだ。」
「なん…だと……!」
青年の意識はそこで途絶えた。
ポケットモンスター エピソードF外伝1
砂漠の巨人(1)砂戦士
「うう……」
独房らしき場所で青年はうっすらと目を開けた。両手は後ろに回され皮手錠のようなもので繋がれている。独房に放りこまれたときに打ちつけたのか後頭部に痛みを感じる。
「ここは一体……ん?」
1人の少女が彼を介抱してくれていた。
「良かった、気付きましたね。」
「オレを介抱してくれていたのか、ありがとう。君は……?」
「私はアリエルといいます。ごめんなさい、私の彼が非道いことを……」
「彼?」
「ええ、ガブリエルは私の恋人なんです。彼は大変な野心家でホウエン地方全体を征服しようと企んでいるんです。」
「そうだったのか……」
と、独房の外に男が来た。
「アリエル、時間だ。出ろ。」
「はい。では……」
「アリエル…オレの名前をまだ言ってなかったな。オレはコタロウ。君の恋人の野望はオレが食い止めるよ。」
「えっ……」
「ハッハッハ、何を言っている。その前に独房から出られるものか!」
男は笑いながら独房の鍵を開け、アリエルを出すとまた鍵を閉め、アリエルを連れて行ってしまった。
(笑っていられるのも今のうちだぜ……)
コタロウは不敵な笑みを浮かべた。その頃、1つの小さな影が砂漠に向かっていた………
「ぼっちゃま〜、どこですかにゃ〜」
砂漠に近付いていた影がすっとんきょうな声を発した。
(あの馬鹿、気付かれるじゃないか……!)
コタロウがそう思っていると彼の独房の前にその声の主がやってきた。
「ぼっちゃま〜、ご無事で〜、このニャース、服に付けていた発信機の信号をたどって只今到着しましたにゃ。」
ニャースが自分がどうやって来られたのか読者にも分かるように説明した。
「あんなに大声を出したら気付かれるだろ、まぁいいか、早く鍵を開けてくれ。」
「はいにゃ、わしの爪は万能鍵なのじゃにゃ〜。」
読者に説明しながらニャースは鍵を開けた。そして中に入るとコタロウの両腕を繋いでいた皮手錠を爪で切った。
「すまん、オレのモンスターボールは?」
「はい、ここにありますにゃ。ご安心を。」
コタロウはモンスターボールを腰のベルトにひとつずつセットした。
「よし、行くぜ、ガブリエルの野望を阻止しなくては!」
「にゃ?脱出するんじゃにゃいのですか?」
「ああ、奴はホウエン地方の征服しようとしているんだ。」
「にゃんと!?それは大変ですじゃにゃ!!」
コタロウとニャースは独房を出て駆けだした。しかし砂漠を歩いてきたニャースはお疲れ気味だ。
「それにしてものどが渇いたにゃ……」
その頃、リーダーの部屋らしき場所………
「お願いガブリエル、ホウエン地方の征服なんて恐ろしいことはもうやめて」
「何を言っているんだアリエル。何度も言ったがこのまま掟に従いずっとここで暮らしていけば我が一族はこの砂漠の中で滅び行くだけなのだぞ。外の世界には豊かな土地が豊富にあるという。お前だって今の貧しい生活から抜け出したいだろう?」
だが、アリエルは首を横に振った。
「いえ、私はたとえ貧しくともあなたと一緒にいるだけで幸せなの。それに外の土地にはもとから住んでいる人達もいるのよ。あなたは彼等から土地を奪うつもりなの?」
「何を言う、我らが生き延びるためには多少の犠牲はやむを得まい!!」
「そんな…自分たちが生き延びるために他の人々を犠牲にすると…?非道い……」
「何故だアリエル、何故分かってくれない……そうか、あの男だな、あの男がお前をたぶらかしたのだな!」
ガブリエルはアリエルに向けて強く言い放った。アリエルは彼を見つめながら涙を流している。
「違う…違うわガブリエル……」
と、そこへ1人の部下が慌てながら走ってきた。
「ガブリエル様、大変です!独房に入れておいた男が脱獄した模様です!モンスターボールもなくなっています!!」
「何だと?絶対に逃がすな。」
「はっ!!」
その頃、コタロウとニャースは敵に囲まれていた。
「おいおい、1人と1匹相手に多すぎやしないか?」
「黙れ!これだけの人数なら逃げられまい!!」
「仕方ない・・・少々荒っぽいが勘弁してくれよ。出てこい、ギャラドス!」
「ギャオオーン!!」
敵達は次々にポケモンを出した。サンド、サボネア、ナックラー、ヤジロン………
「ぼっちゃま〜、これだけの数をどうするのですかにゃ……?」
「こうするのさ、ギャラドス、『竜巻』!!」
ギャラドスは体を激しくうねらせ始めた。その体を空気の渦が包み巨大な竜巻を作りだした。
「なにぃっ、うわああぁーーっ!!」
敵は人もポケモンも残らず吹き飛ばされ壁や天井に叩きつけられ気を失った。
「力は弱めて使ったからダメージは少ないはずだ。!……来たな!」
そこにガブリエルが現れた。
「貴様、部下達を随分かわいがってくれたようだな。」
「ガブリエル、今からでも遅くはない、野心を捨てろ。」
だがコタロウの言葉は怒りに燃えるガブリエルの耳には入らない。
「黙れ!!アリエルをたぶらかしやがって!!許さんぞ!!」
「何を言っている、お前は彼女の気持ちが分からないのか。」
「問答無用、行くぞ!!」
今、2人の戦士が激突する!
その2に続く。
作者のうだうだ雑言
これはポケF初の外伝作品です。サトリと出会う前のコタロウの活躍を描いております。
それはさておき砂漠というのは昼は摂氏50度近くにもなり、夜は一転して凍えるように寒くなるそうです。もちろん冷暖房機具なんて物は存在しません。そのような過酷な環境の中でも生きている人や動物がいる……凄いことです。おれにはとてもできないヨ………
[シェリーさんの一言感想]
コタロウ・・・・なんだかとってもかっこいいですね。サトリにデレデレし始めている最近からは想像も出来ません。
アリエル、ガブリエル・・・イスラム教の天使でしたっけ?
砂漠は湿度が低いので、炎天下では室内に居るとある程度凌げるようですね。ポケモンコロシアムの世界、オーレ地方も砂漠地帯・・・レオ(仮)とミレイ(仮)の旅も大変そうです。