特別小説
1
『…………言えない、言ったら戻れない、この感情』
アイスとシャーウの旅が終わる日、シャーウはアイスに告げた。
「あのさ、俺、親父の所に帰るわ」
「え?」
オルガもこの旅で心境が変化したのだろうか? 旅が終わったらアイスの家に居たいと言っていたのに。
けど、オルガがこれで親と仲直りできるならその方がいい。
でも、オルガは更に言う。
「で、親父の跡継ぐ」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
シャーウの父はジムリーダーだ。つまり、シャーウはジムリーダーに成るという事だろうか。それはそれでいい。
夢が出来たという事だから、アイスは嬉しい。なんせ親友みたいな奴だから。
親友の夢は応援するぞ! と思っているアイスに向けられた言葉は、アイスを悲しませる酷い言葉だった。
シャーウとしては悪意は無かったのかもしれないけど、結果としてアイスを悲しませた。
「でも、アイス」
「ん?」
笑顔のアイスの耳元で囁かれたのは、別れの言葉。
「さよなら。今までありがとう」
理解できない、したくない。でも、シャーウは……笑顔でアイスを抱きしめると、再び残酷な言葉を紡いだ。
泣きたくても、泣きたくない。
アイスは放心状態で、そのまま部屋に戻った。
部屋で嗚咽しながら泣いたが、どうして泣いてしまったのか自分でも分からなかった。
いや……分かりたくなかったのだと思う。
その感情に気づいてしまえば、自分は彼を手放したくないと思ってしまうから。
でも、無駄だった。
アイスはその感情に気づいてしまった。初めての感情に動揺しながら、アイスは呟いた。
「……わ、たし……好きなんだ。シャーウの……ことが」
2
『素直に言えたら苦労しないのに!』
父親と仲直りしたアイスの兄・オルガ。
実の親と出会って自分の道を見つけたアイス。
そのほかの旅で出会った人たち、全員が自分を持っていた。
俺は?
俺は……前に進めているか?
父親と仲直りして無いし、夢も達成しているわけじゃない。俺って、何の為に旅していたのかな? って思う。
最初は反抗からで、ただの家出だった。
でも、アイスに出会って、自分の昔からの夢を叶えたいって思ったのに……どうしてだろ? 俺って、進めてない。
俺は、アイスが好きだ。
病弱な癖して元気で、少し弱い……そんなアイスが俺は好きだ。
好きだ。だからこそ、このままの俺じゃダメなんだと思う。このままじゃ、アイスの隣に居るべき男になれないと思う。
だから、俺は決心した。
親父の跡継ぎになるよ。
親父と仲直りして、親父以上に凄いジムリーダーになろうと思う。
トラウマだったバトルは未だに苦手だけど、それでも……成りたいと思う。ゲッターが俺の夢だったけど、ジムリーダーとゲッターは両立できると思う。
「泣いてる…………?」
部屋に戻ったアイスの嗚咽が隣から聞こえる。壁薄いし。
でも、俺はアイスに甘えたままじゃダメだと思うから、進まないといけない。
そのためにアイスが悲しんでしまうのは苦しいけど、それでも――俺は、進みたい。
「御免ね……御免よ、アイス……」
実際にアイスに謝る勇気を俺は持っていなかった。
3
『離れないで! 置いてかないで!』
「……帰ってきたんだね、俺と、アイスの出発点」
「森。ここで私とシャーウ戦ったよね」
ここでカゲボウズを掛けて戦い、アイスが勝った。
アイスとシャーウの出会いは良くなかったけど、その時からシャーウはアイスに惚れていたかもしれない。
「…………ねぇ、家まで来て」
「うん」
離れるのが怖いと思ってしまった。
偶然なんだけど、この出会いがなければ二人の出会いはなく、カゲボウズが恋のキューピッドかもしれない。
家までの距離は結構在るのに、短く感じる。
家に行くまでに、マルスのジムのある町がある。
一応ジムに寄って、シャーウは家に帰る事を伝える事にした。お互いにもう少し一緒に居たかったのかも知れない。
「そうか。家に帰るのか。……アイツも喜ぶかもな」
「さぁ? 歓迎はされないと思いますけど……おじ、マルスさん! 二人きりでお話が」
「ん? 良いぞ。アイスは……ジムのトレーナーと戦ってろ」
「はいはい」
〜in ジムリーダールーム〜
「お願いがあります」
「……なんだ」
きっと彼は気づいてる。
だからこそ俺に態々言わせるんだと思う。
俺は……っは、なんて子どもらしくない発言するんだろうな? 自分の心では決まっているのに、こんなにも言うのが大変だ。
舌噛みそう。
噛んじゃダメだと思いながら、俺はマルスさんに言う。
「俺はアイスが好きです」
マルスさんの顔が歪んだ。そうだよな。血は繋がってなくても、娘だもん。
「アイスを誰にも渡したくない」
更に歪んだけど気にしないで言う。
「――――アイスと婚約させてください。ただ、俺が貴方に勝てたら!」
ボールを用意する。
バトルは苦手だけど、アイスのためなら勝てるような気がする。いや、勝つんだ! 俺は勝つ。
「良いだろう、勝てたらな!」
今、俺は誰よりも強い。アイスのため、勝ってやるさ!
4
『お互いの戦い』
トレーナーは流石父さんの弟子みたいなもの。前よりも強いじゃないか。
だけど、負けれないね?
私は誰にも負けない。
今なら、神にだって勝てる勢いさ。
「オオスバメ、我武者羅! プラスルは手助けしてからスパーク!」
「う……ミミロルゥ!」
「次!」
絶好調。
このままなら百人斬りも夢じゃないさ。
「ザングースの切り裂く……なら、ゴローニャ、地震!」
「こ、交代。ケッキング、気合パンチ!」
気合をいつ溜めていたのか、気づかなかった。
「なら、大爆発!」
ケッキングはHPが高いし力も強いが、大爆発なら十分なダメージを与えられる。ただ、仲間を一匹失うので好きな技ではない。
けど、私は――負けれない。
「次ぃ!」
マルスさんは四天王にも選ばれて、それを蹴ってジムリーダーで居続けたと言われる伝説のジムリーダーだけあって強い。
けど、今の俺は誰よりも強い。
「ジュプトル、リーフブレード!」
「ヤルキモン、切り裂いてから欠伸だ」
ジュプトルは大して防御が高くないし、それに相手に状態以上を与えたら空元気でやられるし、欠伸は当る。
悪循環じゃないか!
でも、眠るまでの間に交代して……よし、こいつだ。
「ハガネール、アンアンテールしてから噛み砕く!」
ヤルキモンの急所に当ったらしく、倒れた。
鋼・岩? 地面? のこいつを倒すには『炎』『水』『格闘』の3つじゃないとダメだし、ノーマルじゃ効かない。
これは俺の勝ちだ。
でも、いくつもの修羅場を勝ち抜いたマルス。
ノーマルで勝ち抜く方法を知らないはずが無い。
「ケッキング、インファイト!」
※作者はケッキングがインファイトを覚えるかすら知りません。
「な、何い――――ぃぃ!?」
その時、壁が壊れた。
は? と思って二人して見ると、アイスが汗だくで戦っていたらしく、その衝撃で壊れたらしい。
ジムの壁は特別で、大爆発でも壊れないように出来ているはずなのに。
「次ぃ! ……ケッキングなら、ラプラス! 吹雪で凍らせろ!」
誰がアイスを病弱だと思うだろうか。
生まれつきなのか、その戦いの才能に嫉妬すらする。
俺の身体の中に……久方ぶりに、戦って楽しみたいという感情が生まれた。
楽しそうなアイスと同じく、戦いたい。
婚約とか忘れて、楽しみたかった。
「はは……。キノガッサ、マッハパンチをしてからキノコ胞子で眠らせて、更にメガドレインだ!」
楽しみたい。
もうトラウマなんか知るか。
俺は、楽しみたい。小さな頃の、あの気持ちに戻りたいだけなんだ!
「ラプラス!」
「ヤミカラス!」
「ケッキング!」
皆が同じ言葉を発する。
目的なんて忘れてさ、楽しんでいた。
アイスには、バトルを楽しませる才能が有ると俺は思う。
だから――皆、アイスが好きなんだ。
「トドメだ!」
5
『好き』
「――――あー……あそこで、ケッキングの我武者羅が当らなければ勝てたのに」
「中々だったぞ」
あほらしいけど。
でも、本気で楽しんでいた。
こんな気持ちは久しぶりだ。
「ほら、アイスに伝えてこい!」
「マルスさん……」
アイスはあの後、倒れてしまった。
バトルに命を掛けていたみたいに、場取る終了と同時に倒れたけど、今は起きている。
「アイス」
俺の好きな女の子。
「シャーウ」
私の好きな男の子。
「…………アイス=C=コールドさん。俺、貴女の事が好きです。俺が一人前になるまで待ってて下さいませんか?
……俺と、付き合ってください」
俺、顔真っ赤だよ。
返事断れたら悲しいと思うけど、きっとアイスは断らない。
「はい。私も、貴方が好きです。シャーウ……J」
泣きながら返事をするアイスを抱きしめて、俺はくさい台詞が浮かんだけど、言わなかった。
だって必要ないじゃん。
「待ってるから――絶対、ぜ、ったい、む、かえに来なさいよ!」
「うん……。御免ね」
二人は後に結婚する。
そして、二人の子どもが新しい物語を開くのだけど、それは今は秘密。
今は、二人のハッピー? エンドに物語を終えよう。
そして、二人の恋は永遠となる。
とりあえず今は、おしまい?
see you again
It is presented by アットA
作者から
台詞多い駄作ですが、貰ってください。
因みに、最終話はこんな風になるかも? と思って書きました。
初めての「ラブモード」小説です。
岩とか投げないで下さいね!
※返却不可能です
[一言感想]
マルスさん、大人になったなぁ(第一声がそれか)。
じゃなくて、いずれにせよシャーウとアイスの2人が幸せになれたなら、何よりであります。
それと、アイスに若干のツンデレ要素が伺えたことも楽しかったですね(謎)。
連載小説を書いてると、最終話を早く書きたくなってしまう衝動に駆られます。
場合によっては、このように短編でフライングしてしまうのも手なんですよね。
で、実際の最終話がまたちょっと違った話になるのはよくあることで……(ぇ)。
書きたい話というのは、時間が経つと変化してしまうものです。
あまりネタを出し惜しみしすぎても、よくないのかも知れません。