護りたいものが有った。
 でも、護り切れなかった。
 次こそは………。
 次こそは、絶対に護りきるって誓った。
 だけど…、その自信が無い。
 護りきるって誓ってもその保障が無いから……。
 己に自身が持てる強さ……。
 そして大事なものを護りきれる強さを………。
 どんな事があろうとも絶対に掴み取るんだ。
 そして今度こそ絶対な自信を持って誓うんだ。
 妹達を護ると………。

 

 

 

1st「Beginning of Adventure.」

 

 

 

#1“僕と俺”
 
 ジョウト地方の北東に位置する町―――フスベシティ。
 この町の北部に位置する湖の辺にあるポケモントレーナーの修行場“フスベシティジム”。
 何やら黒髪に茶味がかかった男の子がオレンジ色の髪が美しい女性に話し掛けたようだ。

「母さん、そろそろ僕も旅に出ていいよね」

 どうやら女性は、彼の母親のようである。
 彼の話を聞いた彼の母親は、神妙な顔でこう呟いた。
 なにやら彼女は、男の子に旅立たせたくはないようだ。

「…………まぁいつかは言い出すと思ってたけどね。本当に行くのね?」

 ―――まだまだ早いと思うのよね………――――――――――――――――――

 ――――もう分かりきった事だけどまだこの子には、早すぎる―――――――――――
 
 ―――――旅をする上で一番、大事な者が欠けているから―――――――――――――― 

「そうだね、自分で決めた事だから………。でも、ジョウト地方じゃ駄目な気がするんだ」

 自信が無さそうな口ぶりで男の子は、母親にそう呟く。
 だが、このジョウト地方じゃ物足りないようだ。

「ぼ、僕は……。トージョ地方に行く、そしてもう二度とあんな情け無い思いをしないために」

「…………心配ね。やっぱり諦めなさい、今のあんたじゃ無理よ」

 ―――やっぱりね。思ったとおり………―――――――――――――――――――

「何で? 僕は、これでも真面目に言ってるんだ」

 男の子は、自分の決意をうやむやにされた事により啖呵を切った。
 その母親は、冷静にこう釘を刺す。

「旅は、そんなに甘いものじゃ無いのよ? あんたの決意じゃ私は行かせる気にはなれなくなったわ」

「僕は………、僕は……。自信をつけたくて………」
 
 男の子は、項垂れ震えながら小さい声で呟く。
 あまりに小さい声過ぎて聞き取るのでさえ難しい。
 そんな彼に彼の母親は、理由を付け加える。 

「……理由を説明するわね。自分に自信が持てない奴が旅に出るほど……危険な事は、無いのよ」 
 
「なら如何すればいいの………。如何すれば…………いいのさ」

 男の子がもうお終いだといわんばかりに力無く言った。

 ―――しょうがないわね………。本当は自分で気付くべきなのに……―――――――――――――

「これが守れるなら良いわ。でも、あんたに此れが出来るが如何かが問題だけどね」

「やるよ、僕」

 救済処置がでた時、男の子は飛びついた。
 だが、“これ”と言われたものをやり遂げれるかどうか内心不安なようだ。

「まずは、一人称を“俺”に変えなさい」

「お、俺? まだ僕は……そんな……」

「その一人称が“僕”だからいけないの。自信を持ってる奴は“俺”と言うものなのよ」

 どうやら彼の母親が出した案とは、一人称を変えるというもののようだ。

「お、俺に変えたら良いの? 旅に出て……」

「まぁそうね………。トージョ地方、あんたには思い出深い場所のようだからね」

 ―― 一人称が“俺”になろうが性格が変わらない限りね……―――――――――――――
 
 男の子は、半信半疑ながらも母親の言う事に従う事に決めた。
 だが、母親はまだ心配のようである。

「うん、頑張るよ、俺」
 
「なら頑張ってきなさい、自信は旅の間に絶対に身につくと思うからね。
 でも自分に自信が持てない奴はただの屑なんだからね? 分かったかしら静真(シズマ)?」

 こうしてシズマと言う少年の旅は、始まろうとしているのであった。


#2“???”

 漆黒の闇にただ少年は、浮かんでいた。
 無明の闇の中をただ浮かんでいるのだ。
 その何もないはずの闇が彼に問い掛ける。

「時は、満ちた。お前は、力を求めるのであろう?」

「あなたは誰ですか? それに僕、いや俺に何のようです」

 少年は、冷静に質問に答える前に相手の存在を確かめようとする。
 少しの間の後、闇は答えた。

「そんなことはどうでもいい。お前は、力を求めるのか?」

「…………求めるさ。俺はそのために旅に出るんだから………」
 
 ―――聞くだけ野暮な事だね。僕には、力が必要なんだ――――――――――――――――――
 
 ――――そのためになら何だってする。もう大事な者を失いたくなんて無いから―――――――――

 どうでもいいと言われたが少年は、黙ってその闇の質問に、答える。
 少年が答えた後、その闇は、ニヤリと笑ったように見えた。

「そうか……、我が力を求めるのだな」

「なっ、何のことなんだ。其れを言ってくれ!」

 少年の質問に答えることなく闇は消えて行こうとする。
 そして少年もその闇と共に何かに吸い込まれ消えた。


#3“さぁ旅の始まりだ?”

 トージョ地方カラマツタウン。
 清々しい朝、絶好の旅立ち日和である。
 だが、その旅立つはずの少年がまだ起きて来てはいない。
 少年は、未だにベットの中で眠っているが様子がおかしい。

「なっ、何のことなんだ。其れを言ってくれ!」

 何やら意味の分からないことを口走っている。
 どうやらうなされている様だ。
 すると彼は、急に飛び起きた……。

「…………あの夢は何だったんだ……。って今日は、旅立ちの日だった」

 と、どうやら悪夢のようなものを見ていたようだ。
 だが、今は、そうは言っていられない。
 それもそのはず今日は、彼が旅立つ日なのだから……。
 彼は、着ていたパジャマを脱ぎ捨て前もって用意しておいた服に急ぎ着替える。
 そして荷物を持って思いっきり部屋を飛び出した。
 だが、彼は違和感を感じる、何だかいつもと家の雰囲気が違うようだ。
 すると彼に何者かが話し掛ける。

「シズマ、遅い、さっさと禾(ノギ)博士の所に行くわよ」

「煌(キラメ)? 何でこんな所に?」

 突如、話し掛けた少女は、シズマと呼んだ少年に少々ご立腹のようである。
 シズマは、少女に引っ張られながらキラメと呼んだ少女に対し質問をした。
 その質問があまりにも素っ頓狂だったのかキラメは、呆れている。

「悪いけどここは、私の家なのよ……。あんたは、私んちに泊まってたんでしょうが」

「そう言えばそうだな」

 シズマは、自分の家だと勘違いしていたようだ。
 トージョ地方を旅するために一度、幼馴染のキラメの家に泊まっていたようである。 
 彼の家族には、この町に別宅があるがキラメの父親の好意によって泊めてもらっていたのだ。
 彼女の父親の名前は、炎野 翼志(エンノ ヨクシ)。
 プロリーグでは、“名人”と言うタイトルを持つほどの腕の持ち主だ。
 
「ならキラメ、急ごう。沙紅(サク)を待たしたらいけないしな」

「その態度は、何なのかは深く追求はしないけどね……」

 彼らは、ノギ研究所と呼ぶ場所へ急行する。
 その門の前には、赤い髪が印象的な少年がぽつんと立っていた。
 どうやらこの少年がさきほどシズマが言っていた、サクという少年らしい。
 サクは、薄ら笑いを浮かべながら彼らにこう呟く。

「やっぱりシズマとキラメは仲が良いな。やっぱりデキ――――」

「五月蝿い! サク、今度、そんなこと言ったら怒るからね」

「五月蝿い! サク、今度、そんなこと言ったら怒るからな」

「グフッ………こんなんだからそう思われるんだぜ……。そ、それに言う前に手が出てるだろ……」

 サクは、言い終わる前に思いっきり吹っ飛ばされた。
 キラメとシズマのコンビネーション攻撃によるものだ。
 何故、こんなに息が合っているのかと言えばやはりサクの答えに行き着くのは妥当であろう。
 そう言ったサクに更なるストンピングがシズマとキラメの合同にて行われた。
 次にサクが起き上がった頃には、すでに日は暮れていた。
 彼らを呼び出していた博士も流石に気になって外に出てきていた。

「シズマ君達………、何をやっているんだい」

「あっ、博士ちょっとね」
 
 シズマとキラメは、サクへの踏みつけ攻撃を終了した。
 もう少し博士がつくのが遅ければサクは、どうなっていたのだろうか?
 そしてキラメがサクに睨みを効かせることにより場は収まった。

「ポケモン図鑑とトレーナーカードは、渡すがまぁ今日のところは旅をでるのは、流石に無理だな」

 博士は、シズマ達に赤色をした機械――ポケモン図鑑とトレーナーカードを手渡す。
 そして今日は、彼らに旅には、出ないように釘を刺した。  
 “え゛”と言う彼らの声を無視し、博士は旅についての説明を彼らに始める。


#4“旅の理由”

 ノギ博士の講義の元、旅の基本を教わったようだがすでに夜になっていた。
 夜道の旅は、初心者には危険な為、彼らは家に帰るようにしたようだ。
 シズマとキラメは、家に帰りながら話をしている。

「シズマ、あんたは何で旅に出ようと思ったの? あんた、充分にポケモンバトルは強いし……」

「俺は、あの日、妹達を守れなかった。だから強くなりたいんだ」

 キラメは、シズマに旅の理由を尋ねる。
 するとシズマは、強い意志でそう答えた。

「あんた、あの日の事まだ引きずってるの?」

「当たり前だろ………、あの日の事を後悔しなかった日なんて無いんだ。
 俺は、マスターリーグで優勝する、そして力を得るんだ其れに勝ち抜けるほどのな」

 あの日と言うものをシズマは引きずっているようだ。
 そんなシズマに挑戦するような口ぶりでキラメはそう言い放った。 

「へぇ〜、あんたみたいな其れをついでと思っているような奴に勝ち抜けるわけ無いでしょ」

 ―――あんたがそんな理由で旅してもらうのは、失礼よ―――――――――――――――

 ――――世の中には、其れだけを目指している奴も居るんだから……――――――――――――

 ―――――それに、シズマがそれを引きずるのことは………―――――――――――――――
 
 ――――――あの子にとっても嫌な事だと思うから………――――――――――――――

「なんだと? 俺は、決めたんだ強くなろうってな。ならどう言うことだ? 俺が強ければ問題はないだろ?」

「………そうね。やっぱりあんたが勝ち抜けない理由は、私が居るからよ」

 両者とも頭に血が上っているのか話が挑戦的である。
 それは、両者の思いのすれ違いによるものだ。
 ただ一人、力を求めるシズマとそれを彼のためだと思いそれを否定するキラメ。 
 そんな中、シズマはこう呟いた。 
 彼は、旅立ちの二ヶ月前からこのトージョ地方カラマツタウンに訪れていた。
 すべては、自分自身を変える為に……。 

「ならキラメ、トージョリーグで決着をつけようじゃないか? 俺は、先に行くぜ……」

 ――俺は、このトージョ地方に来て変わったはずなんだ……―――――――――――――――

 ―――だから一人でも大丈夫のはず…………――――――――――――――――――――――
 
 ――――もう二度とあんな思いはしたくないから………―――――――――――
 
 ―――――まずは、自分の身ぐらいは守れるようになるしかない――――――――――――

「ぇ゛……。シズマどこに行くのよ」

 キラメがシズマを呼び止めようとするが反応はない。
 すでにこの暗闇へと消えてしまった後のようだ。
 先に家に帰ったかと思い家に帰るも彼の姿はなかった。
 あの闇の中を一人、旅立ったのであろう。

「あの馬鹿、あんな夜道を旅に出るなんて………、決意は、やっぱり固いみたいね。
 挑戦しちゃった事だし、待ってなさいよ。あんたの優勝を阻止するのは私なんだからね」

 ―――あんたが強くなりたいって理由は、分かってるつもりだから……――――――――――――――――

 ――――あえて敵(カタキ)役になってやろうじゃないの………――――――――――――――――――

 ―――――あの時のシズマは、もう見たくないから………―――――――――――――――――――――

 窓から外を見つめながらそうキラメは、呟いた。
 海原 静真(ウナバラ シズマ)。
 今後、待ち受けるさらに数奇な運命を彼は、まだ知らない。 

 続く

 

[一言感想]

 一人称が『僕』でも自信のある人はいますし、『俺』でも自信のない人もまたいると思いますけどね(苦笑)。
 傾向としては、シズマの母が言うケースのが多いのかも知れませんが。
 シズマの過去には色々あったようで、今後それが明かされる事を期待してます。
 彼は旅の中で、過去の影を乗り越えられるのでしょうか?

 

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