…………自信が欲しい。
あの日、中途半端な自信のせいで招いてしまった。
悲しい事件………。
もう二度と起こしたくはない。
涙は、もう見たくないから………。
自分の心に約束するんだ。
………強く、強く。
2nd「Beginning of Promise.」
#1“差をつける者”
トージョ地方ウジマシティ。
この町のポケモンセンターのロビーで少年が一人眠りについている。
この少年は、カラマツタウンの方面からやってきたようである。
本来なら47番道路を渡りきるには、子供の脚では一日はかかるのだが。
この眠りようを見るとこの町まで夜道を休まず歩き続けてきたのであろう。
「海原 静真(ウナバラ シズマ)君、ポケモン達は、元気になりましたよ」
と、ジョーイの慣れた声がポケモンセンターに響く。
寧ろこの時間帯に、ポケモンの回復をするのは、彼以外のトレーナーは居ないであろう。
さきほどまで寝息を立てていたシズマもそれに気付く。
すぐさま飛び起きロビーへと向かった。
「ジョーイさん、ありがとうございます」
「そんなお礼なんていいわよ。それにしてもあんなに遅い時間になんで?」
シズマは、礼を言いながらジョーイからボールを三個受け取った。
ジョーイは、あんな遅い時間に何故やってきたかどうかシズマに尋ねる。
それもそうであろう彼がこのポケモンセンターにやってきたのは、朝の四時なのだ。
シズマは、困った顔をしながらこう呟く。
「えっと昨日の夜に旅に出てなまじに野宿するよりかは良いかなと思って」
――喧嘩の拍子に勢い勇んで旅に出たなんて言えませんよ―――――――――――――
「ふ〜ん、彼女とでも喧嘩して勢い勇んで出てきたとか? じゃないわよね」
「………! …………………」
ジョーイの核心をついた例え話にシズマは、肝を冷やす。
そして少々落ち着いた後、また一礼をしながら逃げる事にしたようだ。
―――あのジョーイさん、ど、読心術でも持ってるのか――――――――――――――
――――あと僕とキラメが釣りあうわけ無いよ………―――――――――――――――
「さぁ気分を入れ替えてジム戦だ! あいつに差をつけてやらなきゃな」
シズマは、気分を入れ替え相棒である純白の毛並みを持つグラエナに声をかけた。
かなり疲れているはずなのだがその疲れを見せずに彼は、ウジマジムへと向かっていった。
少しの時間がたった後、余裕の表情を浮かべながら手には、ガイヤバッジが握られていた。
つまり、ジムリーダーに認められたという事になる。
シズマは、自分がかなりの差をライバルにつけた事を素直に喜びながら次の町へと向かっていく。
#2“差をつけられた者”
息を切らせながら少女がウジマシティに辿り着いた。
だが、朝に旅立ったはずがすでに夕刻を回っていた。
これでもこの年の子供にしては、かなり早いお着きであろう。
セミロングの茶髪を靡かせながらその青い瞳で辺りを見渡している。
だが、お目当てのものは、見つからなかったらしく少し残念なようだ。
「はぁ〜、やっぱりこの町にも居ないのかな」
と、呟きながら一先ず疲れを取る為にポケモンセンターへと向かっていく。
ジョーイへとモンスターボールを渡した後、何もする事がないという事に気付いた。
ためしにさきほど探していたものの所在をジョーイに尋ねる事に決めた。
――まぁ野暮だけどあいつが来てないかどうか聞いてみましょ―――――――――――――――
「えっとジョーイさん、私と同じ年の茶味かかった黒髪の男の子知りません?」
「フフッ、やっぱり来たわね。あなたが知りたいのは、シズマ君の事でしょ?」
「………!」
「図星のようね、煌(キラメ)ちゃん。シズマ君と仲直りでもしたくて探してたのかしら?」
キラメは、急に顔を赤らめるほか無かった。
ちなみにこのジョーイには、読心術など持ってはいない。
「な、何でシズマの事知ってるんですか?」
「少し前にこのポケモンセンターに来てたのよ、かなり急ぎだったみたいだけどね」
少々動揺しながらもキラメは、ジョーイに質問をする。
其れに対し、冷静にジョーイは対応した。
「仲直りって言うか……。あいつが無茶して先行っちゃったから追って来ただけで……」
「フッフフフ………。なら早く行った方がいいんじゃない? 彼も待ってるかもしれないでしょ?」
キラメは、項垂れながらぼそぼそと小声でそう呟く。
それを見て全てを悟ったような顔をしながらジョーイは、モンスターボールをキラメに手渡した。
どうやらポケモンの体力回復は、すんだようである。
「あっ、ジョーイさん、ありがとう。では、先を急ぎますので………」
「どういたしまして………。……ウジマジムでバッジを取り忘れないようにね!」
少々勇み足ながらもキラメは、ジョーイに一礼し、ポケモンセンターを後にした。
其れを見ながらジョーイは、少なからずとも彼女にエールを贈りながら見送る。
#3“????”
また少年は漆黒の闇に浮かんでいた。
より深く無明な闇にただ一人浮かんでいる。
そして闇が彼に話し掛ける。
「………満ちた。満ちたぞ時が………、我が力………、お前の力と化す時が……」
「またお前か………。結局、お前が言いたいことがさっぱり分からない」
少年は、何も見えないはずの闇にそうぼやく。
そして少年に二つの声が響く。
「………静真(シズマ)。………こんな奴の力を借りなくとも強くなれる」
「そう私達は、あなたの味方なんだから………、信頼して欲しいわね」
その二つの声は、どうやら年の近い少年と少女のようである。
闇に包まれている為、その姿かたちは、把握できない。
少年は、シズマと言うようだ。
「………ささやかなお友達だな。………我が主たるものよ」
「…………、舞守(マイス)、阿須実(アズミ)。彼等は、僕、自身でもある」
「…………ほぅ。……長く人間に力を貸しておるがこんな事は初めてだぞ」
シズマと言う少年は、意味深げな事を答えた。
闇そのものは、回答に対し、興味深げな様子である。
「そう俺達は、シズマのために生まれ、シズマのための力となるものだ」
「…………そうだよ。僕には、君たちが居るじゃないか………」
「そうシズマ、私達を信頼して、いや自分の力をね」
シズマと言う少年に宿りし二人は、彼を励ました。
そう答えた主に対し、闇は、さらなる質問を浴びせる。
「…………闇。………それは形容しきれぬ力。何れそれをお前、いやお前たちは求める」
「………ならばこうするまでだ。俺達がシズマを支えきれぬ場合、甘んじてお前の力を借りよう」
「まぁ闇の力を借りるなんて絶対にさせないわ。………どう? 私達との賭けに乗るのかしら?」
其れに対し、シズマと言う少年の近くから響く二つの声がそう呟く。
どうやら賭け事を持ちかけたようだ。
その闇は、少年――――シズマに問い掛けた。
「……………お前は、どう思うのだ? 其れによって我の意思とする」
「………シズマ」
「…………シズマ?」
「ぼ、僕は、………力を得られればそれでいいんだ。どんな力だろうと……
大事な物を護れる力なら………、だから………、だから………」
シズマと言う少年は、優柔不断にもそう答えた。
其れを聞いた闇は、ニヤリと笑ったようにこう呟き消えた。
「………そうか。………面白い、その言葉、覚えておくぞ。………お前たちよ」
そして少年は、その闇が消滅すると共に何処かえ吸い込まれ消えた。
少年の心に、大いなる力と謎を残して………
#4“約束”
少年の旅も一段落つきようやく休める余裕が出来た。
それにより彼は、木陰で寝息を立てているのだ。
そんな彼に風のイタズラか木の葉が顔に掛かる。
「ふっ、ふわぁ〜、うん? ………木の葉か………」
危険を感じ取った彼は、直ちに起き上がり木の葉を払う。
辺りを確認してみても危険な要素は何一つない。
「…………敵じゃあるまいし、なんでこんなに反応しちまうんだろうな。
……まったく日ごろの癖って言う物は治り辛くて敵わない」
と、払った木の葉を見ながら少年はそうぼやいた。
「あれから俺は、どれだけ進歩しているんだろう……な」
そう呟きながら近くに置いてある水筒を口にする。
どうやら彼は、自分の過去を振り返るようにしたようだ。
彼が旅立ってから二ヶ月と言う時を遡る。
―――――ジョウト地方フスベシティ
この町のジムであるフスベシティジムの近くに建つ白い建物、そこに彼と彼の所縁のものが集まっていた。
彼の装備を見る限り旅立ち前と言ったところであろうか。
彼の家族達が彼にエールを送る中、彼は、妹と思われる少女達にこう言った。
「俺は、詩鶴(シズル)と雫(シズク)のために強くなって帰ってくる。………約束だよ」
「……分かった。マ〜兄ぃ頑張ってきてね!」
「シズマ兄さん、頑張ってください」
妹達とそんな約束をした彼に、一人の男が話し掛ける。
どうやら出発の時のようだ。
「さぁシズマ君、行くよ」
「………分かりました。父さん、母さん、伯父さん達、強くなって帰ってくるからね!」
シズマは、茶髪に紫色の瞳をした男に連れられフスベシティを後にした。
これもまた一つの旅の始まりである。
#5“妹”
所変わってフスベシティ
ある少年が旅立ってから一ヶ月と言う時が過ぎた。
その少年が足げよく通っていたこの町の修行場――――フスベシティジム
トレーナーの修行場であるこの場所に場違いな少女達がいる。
モンスターボールを持ってはいるものの積極的にトレーニングや練習試合を行う様子も見られない。
一人は、短い切られたオレンジ色の髪で年の割には、グラマーな活発的な少女
そして先ほどの少女とは対照的な腰まで届く長い水色の髪のスレンダーなおしとやかな少女
彼女らの共通点と言えばその紅い瞳しか浮かばないであろう。
そんな二人に気付いたこのジムのジムリーダーである女性が話し掛けた。
「………詩鶴(シズル)、雫(シズク)? どうしたの? いつもここにはこないのに?」
どうやらオレンジ色の髪の少女がシズル
水色の髪をした少女は、シズクと言うらしい。
シズルと呼ばれた少女は、ジムリーダーにこう返答する。
「………母さん、何だか無性に寂しくてさ………。私もシズクも何だか……ね」
「う〜ん、いつものシズルらしくないわね。そう思うわよね、シズク?」
この町のジムリーダーである女性は、シズルとシズクの母親であるようだ。
ちなみに彼女達は、双子である。
そんな二人の娘の態度に心配になった彼女は、双子の片割れであるシズクに尋ねる。
「お母さん、確かに………おかしいとは思いますけど……。
私もシズルも………シズマ兄さんが旅に出てから………何だか……」
「………シズマも罪深いわね。ねぇ? ………シズル、シズク」
シズクも項垂れた様子で母親に擦り寄りながらそう呟いた。
この双子の親である彼女は、双子にこう問い掛けた。
「お母さん、どうしたんですか?」
急な問いかけにシズクは驚いた。
「シズマは、あなた達のために旅立ったの。其れなのに二人がそんな姿じゃシズマが喜ぶと思う?」
「………喜ばないと思います」
「…………シズクが言う通りね」
母親の問いに、しゅんとした顔で二人はそう呟いた。
其れをみた母親はこう続ける。
「シズマも約束したわよね? 絶対に強くなって帰ってくるって
だからシズルもシズクも私に約束してくれる? シズマが帰ってくるまで笑顔で元気に居るってことをね」
「………分かった。……マ〜兄ぃが帰ってくるまで………シズクは私が支える」
「……約束します! シズマ兄さんが帰ってきたら私達も………」
「………強くなってるわよ。だから二人とも頑張ってね」
双子に母親は、こう提案する。
シズルは、さきほどとは、打って変わった明るい表情だ。
シズクもまた元気よくそれに答える。
「母さん、分かったわよ! マ〜兄ぃには負けないわ!」
「はい! 頑張ります」
「シズマに負けちゃ駄目よ!」
――こんなに、妹達に迷惑かけてるんだから絶対に強くなって帰ってくるのよ―――――――――――――――
―――途中で諦めたりしたら承知しないんだからね………――――――――――――――――――――――
フスベジムには、可愛い双子の元気な声が響き渡った。
双子は、大好きな兄が帰ってくるのを信じて………
続く
[一言感想]
シズマが旅する一方で、妹達も頑張るようです。
再会した時、双方が成長した姿を見せられるといいですね。
それと、キラメがシズマに追いつく日も楽しみにしてます(ぁ)。