"何のために戦い、力得るのか"

 ――求めている最中は、盲目にただ戦い、力を得ようとした。

 ―――だが、得てから一つの壁にぶち当たった。

 "何のために戦うのか"

 ――それが何なのか時々、俺は、其れが分からなくなる。

 ―――――ただ力を得ようとして……

 

 

 

3rd「Beginning of Silence.」

 

 

 

#1“闇に根付くもの”

 
 ―――トージョ地方ナグラシティセントラル
 トージョ地方最大の都市であるこの町の中核は、ネオンや街頭によって明るく照らされている。
 だが、路地を奥に進むと薄暗い闇に包まれてしまっている。
 そう華やかな表の町並みと同じくして裏には裏の華やかさと言う物も備えてしまっているのだ。
 そこには、浮浪者や怪しげな露天商が表の町とは違い別の雰囲気で商売をこなしていた。

「………ここか。楽な任務だと良いんだがな」

 と、黒尽くめいや、髪だけ茶味掛かっている少年がそう呟いた。
 そんなこの場所に場違いのように思える少年は、当然、浮いてしまっている。

「………坊やはこんな場所にきちゃいけないよ。良い子は、早く家で寝なさい」

 少年の立っている付近で露天を行っている怪しげな老婆がニヤリと笑いそう呟く。
 其れに対し少年は、何ふさることも無く奥へ行こうとする。

「待てよ、坊や。ここから奥には通行料が必要なんだよ!」

「大人しく渡せば悪いようにはしないからさ……」

 奥に行こうとした少年の前に、がたいのよさそうな男が数人、彼を取り囲んだ。
 そんな彼等を見ながら少年は、顔色一つ変えずにポケモンを繰り出す。
 それを見たさきほどの老婆は、苦笑しながら両者を見つめる。
 少年が繰り出したポケモンは、白い毛並みを持ったグラエナだった。

「…………坊主、そのグラエナは………」

「やべぇやべぇよ。こんな場所で出会っちまうとは……」

 そのグラエナを見た男達は、冷や汗が零れ落ちている。
 グラエナを従えている少年は、溜息をつきながらハンドシグナルをグラエナに送った。
 その直後、悲鳴が木霊した。
 まさに一瞬、閃光のごときスピード、周りには地面に突っ伏している先ほどの男達

「…………邪魔をするからだ。クレア、戻れ」

 少年は、倒れた男達を睨みながらクレアと呼んだグラエナを回収する。 
 そんな少年に辛うじて意識を保っていた先ほどの男達の一人がこう呟いた。

「………てめぇ、この町に何のようなんだ。『白野威(シラヌイ)』と『虚世』の………」

 だが最後まで言い終わる前に男は、気絶してしまった。
 其れを見たほかの人たちは、悟ったような顔をして少年の前から姿を消す。
 腰を抜かして動けないさきほどの老婆に少年は、近づく。

「お婆さん、俺はこう言う男を追ってきたんですが心当たりはありますか?」

「こ、こ、ここっちだよ!」

 と、写真を見せ柔らかい口調で老婆に尋ねる。
 老婆は、口を詰まらせながらも方角を指し示した。
 どうやらその方角の方に少年の追っている男が居るらしい。

「………ありがとうございます」

 そう少年は呟くと老婆の指し示した方向へと走っていってしまった。
 少年が走っていくのを見ると先ほどまで隠れていた者達が自然と戻ってくる。
 それほど彼の存在が恐ろしかったという事になる。

「あれが………『白野威(シラヌイ)』」

「………あぁこの地方に伝わる伝説を垣間見ているようだったな」

「………伝説の白いポケモンか。だがそうなると其れを操るトレーナーも……」

 少年が居なくなったあと立ち話が始まった。
 どうやら少年のポケモンであるグラエナについてのことらしい。

「『虚世』とは、表と裏の顔を持ちどちらの世界も虚ろに生きるその様から呼ばれる異名だ。
 見た限り、今は表の顔、バイオレットフェニックスの飼い犬だ」

「どちらも必要な時に利用し、必要がなくなったら捨てる。だが一つだけ言えるのは、奴が闇を好むという事だけ」


#2“白い影”

 ―――ナグラ中央製鉄所
 幾多ものビルディングを抜けた先にその廃工場はあった。
 これほど発展している土地に廃工場などと言うものは存在しないはずそう思う人が多いだろう。
 だがここに存在した。
 廃工場とは言えど違う意味で利用されているという事だろう。

「……ふぅ、今宵も派手に稼ぐための計画でも立てるか。奴等もしっかり来ているとは思うが………」

 そう中年間際の男が廃工場のシャッターに手をかけながらそう呟いた。
 どうやらこの廃工場で待ち合わせをしているらしい。
 "よいしょっ!" と言う何とも気合の抜けた掛け声と共にシャッターを開ける。
 その工場の中を見たとき男は、疑問に思った。

「お〜い? 居るんだろ! 隠れてないで出て来いよ!」

 どうやら待ち合わせしていた者達の気配、いや反応がない。
 心配になった彼は、すたすたと工場の奥へと走り出した。
 辿り着いた彼だが驚愕する事になる。
 待ち合わせをしていた仲間が全員気絶しているからである。

 ――オイオイ、マジかよ。ドジりやがったのかよ―――――――――――――

 ―――だが油断は出来ない。腐ってもCランク若しくはBランクだったからな―――――――――

「オイ? 招からざる客よ! 大層なご挨拶だな」

 中年の男は、倒れている仲間を見ながら悟ったようにそう叫んだ。
 だが辺りには、何の気配も感じない。
 男は癇癪もちなのかポケモンを繰り出した。
 青い四足のボディに銀色のクロスが特徴的なポケモン―――――メタグロスだ。

「居るのは、分かってるんだぜ? どこの誰だか知らないが、俺様の組織を潰しにきやがるとは!」

 中年の男は、メタグロスに辺りを確認させながらそう呼びかける。
 辺りには、強者独特の雰囲気――――殺気を出しながら……
 普通のトレーナーなら目を合わせただけで白目剥いて倒れる。
 ――――それほどの威圧感
 その殺気の中を平然としていられるのだから相手も相当の強者であろう。

「……島原 虎次郎(シマバラ コジロウ)。
 ………総合犯罪組織"ジャガーズバンデット"を組織し、幾多もの悪行を執り行ってきた。
 俺の手配書(ビンゴブック)には、"それなり"って判定をされている」

「………それなりかまぁ俺だって戦うのは、本当に久しぶりだからな。
 取り合えず、面と向かって話をしようじゃないか?」
 
 線の細い声が廃工場に響く。
 それを受けたコジロウがそう呼びかけた。
 だが相手は一向に現れようとしない。
 だが次の瞬間、白い影のような物の気配を感じた。

「チッ、メタグロス、マグネットシールド!」

 メタグロスは、瞬時に磁力を利用してシールドを形成した。
 視覚で確認できないスピードを何とかコジロウは、捌くことに成功した。
 そして一筋の答えを導き出す。

「これは、『白野威(シラヌイ)』。と言うことは、貴様は『虚世』だな。」

 と、コジロウは自信満々にそう呟いた。
 すると一人の少年と白い毛並みを持ったグラエナが降りてくる。
 少年は、黒髪が少し茶味掛かっているのを覗いたらあとは全て黒尽くめだ。

「俺の名前を知っているとは、光栄だな。名は、海原 静真(ウナバラ シズマ)。
 …………知ってるだろうが再確認って奴だ。そしてこいつが相棒のクレアだ」

 ――伝説の白いポケモンか久しぶりにしては大層な相手だ――――――――――――――――

 ―――それにしても『虚世』は若いと言う噂があったがこれほどとはな――――――――――

 両者ともニヤリと笑い相手を威嚇しあう。
 そして今宵もポケモンバトルが始まる。
 ――――楽しい楽しいポケモンバトルが



#3“白野威(シラヌイ)”

 
 既に夜は深け辺りは完全な暗闇と化している。
 人っ子一人居ない筈の廃工場に四つの影が合った。
 その四つは相手を睨みあう様にして対立している。

「行くんだ! メタグロス!」

「行くぞ、クレア!」

 先に動いたのは、コジロウのメタグロス。
 クレアと呼ばれたグラエナは余裕の表情を見せている。

「メタグロス、バレットパン………」

 メタグロスの渾身の拳がグラエナに直撃すると思われた。
 だがその指示の前にグラエナの噛み砕くがメタグロスに当たっていたのだ。

 ――クッ、先手を取られたか。しかし何てでたらめなスピードだ―――――――――――――――

 ―――まるで見えなかった……。流石は『白野威(シラヌイ)』――――――――――――――――

 ――――動きを鈍らせるしかないな。小細工は趣味じゃないのだが――――――――――――――

「メタグロス、こわいかお」

 メタグロスがその強面を利用し、グラエナを威嚇しようとする。
 だがすでにその場所にグラエナは、居なかった。
 そうその瞬間にメタグロスの背後を取っていたのだ。

「守る!」

 コジロウは、メタグロスに守るの指示を出した。
 そう噛み砕くがくると考えた末の結論だ。
 だがまだ何かを考えているような印象を受ける。

「……フェイント。そして、噛み砕く」

 だがシズマは、それを読んでいたような指示を出した。
 お手のような動作のフェイントと噛み砕くの連続攻撃が決まった。
 しかし、そのメタグロスが消え、別のメタグロスが現れた。
 そしてそのメタグロスは、カウンターよろしくアームハンマーを喰らわせようとした。
 グラエナは避けようとしたが攻撃が腹にかすってしまう。

「チッ、今のは完全に芯に当たったと思ったのだがな。速すぎるか」

「………さっきのは、みがわり」

「ご名答。ドンドン行くとするか! ラスターカノン」

 と、さきほどの攻防に対して愚痴をこぼす。
 そしてシズマの考え出した答えに相槌をしながら次の指示をだした。
 しかし、いとも簡単に避けられてしまった。

 ――しかし掠っただけなのにかなりのダメージがある。―――――――――――――――

 ―――例え此方の防御が低いとは言え相手の攻撃力は、高いと言う事か―――――――――

 ――――あのアームハンマーをまともに直撃したら一撃ということだな――――――――――
 
 その後もコジロウは、メタグロスにラスターカノンの指示をし続けた。
 その連射速度は、かなり厳しい物であるがグラエナは、避け続けた。
 
 ――クソッ! 何てスピードだ! グラエナが見えない――――――――――――――

 ―――と言うよりさっきよりスピードが増して無いか………―――――――――――
 
 そう思索をめぐらせている時、コジロウは何かを発見する。
 あのグラエナが入れそうなスペースの穴だ。

 ―――穴を掘るをしていたのか。ならば………――――――――――――――――――

「メタグロス、電磁浮遊」

 メタグロスがラスターカノンの連射を止め電磁浮遊の準備を始めた。
 その瞬間、グラエナが噛み砕くをしようと飛び掛ってきた。

「何っ! 穴を掘るをしていたんじゃ! ……みがわりか」

「その通り。クレア、噛み砕く」

 しかし、グラエナの様子がおかしい。
 何だかさきほどより反応が遅いのだ。

「まさか、電磁破か……。……いつのまに」

「好機は巡ってきたか、アームハンマー!」

 メタグロスは、先ほどより動きが鈍くなっているグラエナをその腕で薙ごうとする。
 しかし、突如穴の中から現れたものに阻まれた。
 そうそれは、穴を掘っていたグラエナの身代りである。
 そしてその隙を利用し、グラエナは少し離れた場所に避難する。

「クレア、シャドーエクスプロード!」

 シズマの指示により、グラエナは、巨大な禍々しい玉を創造し其れを放った。
 それは、先ほどまでのグラエナの速度とは比べ物にならないほどの遅さだった。

「こんな鈍い攻撃があたるわけがない。………避けろ、な何ッ!?」

 コジロウは呆れたようにメタグロスに指示を出す。
 上手く避けようとしたメタグロスだったがそれは爆発し、メタグロスを巻き込んだ。
 廃工場が崩れ、辺りに煙が舞った

「やったか?」

 そうシズマが呟いた瞬間、破壊光線が飛んできた。
 しかし、グラエナは麻痺で避ける事が不可能だ。

 ――フッ、あれを使うか――――――――――――――――――

「カオスホールクラスター!」

 シズマがそう命じるとグラエナは、禍々しい空間を創造する。
 其れは、破壊光線を吸収し、メタグロスに直撃し、メタグロスは倒れた。
 つまり勝者は、シズマだ。



#4“虚世”

 ―――時刻が深夜に回った廃工場
 そこで一人の少年と片膝をついた中年の男が佇んでいた。
 男は、少年に向かってこう呟く。

「………俺も潮時か。こんな餓鬼に負けるとはな」

「お前には、後五匹手持ちが居るはず? 何故、勝負を放棄する?」

 勝負を放棄した男に少年は、問い掛けた。
 何故、勝負をここで中断するのかと。

「俺の勝手だ。好きにさせてくれ、俺達も長く悪い事をやりすぎたからな」

「だからとは言え、あんたは、どうなるか分かったかもんじゃないだろ?」

 男は、静かにそう呟いた。
 だが少年は、其れが納得できないようだ。
 この世界、負けたらどうなるか分かったもんじゃない。
 死ぬ事だって、全てを失う事だってある厳しい世界だ。

「戦いを見てお前には、そんなことは出来ないって実感したのさ。
 噂に及ぶほどの冷徹非道な奴じゃない。『虚世』にもそんな一面があったとは驚きだ」

 ――こいつに良いも悪いもない――――――――――――――――――――――

 ―――ただ純粋に戦いを求めるタイプの人間か―――――――――――――――

 ――――だがこいつに人は、殺せない―――――――――――――――――――

 ―――――冷徹に成り切るのは向いていない――――――――――――――――

「…………俺は」

 男がそう少年に語りかけた。
 だが其れに対し、反論しようとした少年は口を詰まらせる。

「無理しちゃ駄目だ。………お前はお前らしく行け、誰かの犬なんかじゃない。」

 ――組織と言う束縛から放たれたこいつと言うのも見てみたいものだ―――――――――――

 ―――野に放たれた野獣。秘めたりし力……――――――――――――――――――――――

「俺が誰かの犬 何でだ?」

 それを優しく男は、少年に説く。
 聞く少年の表情は、不安に満ちている。
 
「お前の戦いは、自分で望んでやっているものだ。誰かの指示を得てやるのは向いていない」

「……………。………」

「お前が力を求めるのなら自分の力で道を切り開け、お前はそっちの方が似合っている」
 
「何で俺にそんなアドバイスを!」

 少年は焦りながら男に尋ねた
 男は、苦笑しながらこう呟いた。

 ――何で俺もこんなお節介になったんだろうな―――――――――――――――――

 ―――後はこいつしだい。上手くやる事を望むとするか。――――――――――――

「…………知らない。ただ無性に節介が焼きたくなっただけだ」 

「俺はそんな節介なんて要らない。俺は、俺で道を切り開く」

「ならそれで良いじゃないか。その主義、曲げるんじゃないぞ!
 俺は自首をする。俺が俺で決めた事だ、他人のお前が決める事じゃない」

 ――俺が犬? まったく意味が分からない―――――――――――――――――――

 ―――こいつは何を言っているんだ?―――――――――――――――――――――

 ――――俺の道は、俺が切り開くか。今の俺に其れは出来てるのだろうか――――――

 男は、そう言うと少年の前を後にした。
 ―――― 一つの結末を迎えようが
 ――――ナグラシティの夜はまだ続く。

 続く

 

[一言感想]

 誰かの犬である事自体は、必ずしも悪いこととは言えないでしょう。
 自分が尊敬する人に仕えたいと思うのなら、それは素晴らしいことですから。
 どんな存在に仕えるか、そして仕えるとはどいう事か。
 それは自分自身が決めなければならないでしょうけれども。

 

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