"お前は戦いのために非情になりきれるか"
―――為り切れないかも知れない
―――だが守るためなら……
"その自信はあるのか"
―――悔しいが無い
―――この旅は、それ得るための旅だ。
"得るためなら何をするか"
―――どんなこと汚いことでも
―――やるしかない。
5th「Beginning of Sparkle.」
#1“旅”
―――59番道路
ここは、トージョ地方の中核であるナグラシティとツチギシティを結ぶ道
ナグラシティから伸びる五つの道の中で四番目の利用数と言う悲しい道でもある。
この道路を二人の少年と少女が疾走している。
多少、どころか大分少年の方が足は速いのだが少女は、それに難なくついて行く。
「ついて来るんじゃない。………邪魔なだけだ」
と、茶味掛かった黒髪を持つ少年が立ち止まり、そう少女に告げた。
その言葉に茶髪に青い瞳と言う外見をもつ少女は、少年にこう呟いた。
「だったらまた道端でぶっ倒れても良いわけ?」
「チッ、其れは、そうだが。お前だってあの能力を持ってるんだから一緒だろ?」
と、少年は、バツの悪い顔をして見せる。
「……そうね。でも、私はドジッたりなんかしないわよ、」
「その証拠は、何処にある?」
「無いわ。あんたと一緒の根拠の無い自信よ」
少年は、少女の言葉に溜息をつく。
だが少女は、自信有り気であるのは確かだ。
「はぁ〜、ったくお前と居ると、調子が狂いっぱなしなんだよ」
「で、あんたが意外に寂しがり屋だって事は、百も承知だしね」
「五月蝿い! 俺は、一人でも大丈夫だよ!」
「へぇ〜、そうなんだぁ?」
少女は、掃き捨てるように呟いた。
少年は、癇癪を起こしながらそう少女に告げる。
それを聞いた少女は何だか楽しそうだ。
「そんな証拠が何処にあるんだ? 煌(キラメ)? 教えてくれると助かるけど?」
「そうねぇ静真(シズマ)、例えば何だけど………、まずあんたシスコンでしょ?」
「…………。………」
そこからキラメと呼ばれた少女のシズマと呼んだ少年に対する数々の真相が語られる。
それを聞くうちにシズマの顔は、どんどんと青くなる。
「そして極めつけは、ジェノー出して逃げればいいのに、逃げないしね。
だって私、ジェノーより、飛行速度の速いポケモンが居ないし……」
と、キラメは、しれっと言ってのける。
ジェノーは、3m40cmの巨体であり、飛行速度は並みのポケモンじゃ追いつけるわけが無い。
つまりシズマは、逃げようと思えばいつでも逃げられたわけである。
「そ、それは……ただ……」
「"ただ"何よ?」
シズマの青い顔がどんどんと赤みを帯びていく。
青から急に赤に変わるとは、壮絶な変化だ。
聞く側のキラメにしてみたら面白い事はこの上ない。
「だから俺だって倒れたんだ。この俺だってだぞ? だからお前もそうなるかもって思うと心配で……」
「その"俺"と言う奴が情け無いけどね」
シズマは、赤面しながらそう呟いた。
だがキラメは、冷静にそう切り返す。
「何だと? ……取り合えずだな。まぁしょうがないから一緒に旅してやるよ」
「ふふっ、まぁいいわ。あんたがそんなけ言うのなら一緒に旅でもする事にしますか」
いつもどうり壮絶な痴話喧嘩が行われると思われた。
だが何故か和やかな雰囲気で話が進み一緒に旅をする事になった。
どうやら二人ともが譲歩しあった結果らしい。
「さぁ先は長いんだから行くわよ。でも、負けないんだからね!」
「望む所だよ!」
――こんなに早く真価が問われるとはな――――――――――――――――――――――――
―――お前は、俺が絶対に守ってやるからな――――――――――――――――――――――
#2“情報”
―――トージョ地方ツチギシティ。
"新たなる旅の訪れを告げる町"と呼ばれる落ち着いた町並みの町である。
茶味掛かった黒髪の少年と茶髪の青い瞳の少女が並んで歩いていた。
傍から見ればお似合いのカップルと言ったところだ。
「さてこの町のジムリーダーは、悪タイプ使いの雅(ミヤビ)ね」
「………聞いた事のないな。煌(キラメ)、どうせその人新人だろ?」
「えっとそうね。ここ最近、ジムリーダーになって……連勝記録は六勝で止まってるわ。
この人の切り札は………、見たところグラエナね。
静真(シズマ)、クレアの指示パターンを教えて………そうすれば対策も立てられるし……」
キラメと言う少女の説明に対し、シズマと呼ばれた少年は、そう答えた。
どうやら彼等は、ポケモントレーナーでありジムに挑戦する前らしい。
この町のジムリーダーであるミヤビは、新人のようであまり有名では無いみたいだ。
そして二人は、相手の情報を見ながら作戦を立てているようだ。
「何でわざわざライバルにクレアの指示パターンやサインを教えなきゃならないんだ?」
「今は、仲間なんだから教えてくれたっていいじゃない。特に身代りのサインとか」
「………分かった。クレアじゃなくて一般的なグラエナの戦い方について教えてやる」
キラメの質問に戸惑ったシズマ。
行き成り自分のポケモンの指示パターンを尋ねられるなんて思っても見てないからだ。
だが頼み事は断れない性質なのか許容の範囲を語り始めた。
そしてシズマの講習が佳境に入り始めた時、キラメはこう呟く。
「ふ〜ん、勉強になったわ」
「それなら良かった。だがジムリーダーが一般的な戦い方をしてくるとは思えない」
「まぁこっちもその程度の戦法じゃ詰まんないしね。あとシズマに先を譲るわ」
其れに対し、シズマは冷静にそうキラメに仄めかす。
"分かっているわよ"と言わんばかりの口ぶりでキラメは、そう答えた。
その言葉の真意を一瞬で悟り、シズマは、不機嫌そうに尋ねる。
「どうせ俺とそのジムリーダーを戦わせて情報を読もうって言うのか?」
「ご名答ね」
「ふざけ―――――」
シズマが反論しようとしたが其れは適わなかった。
一瞬、キラメの姿を見たシズマは、言葉を紡ぐのを止めてしまったようだ。
そうしてシズマは、キラメに先導されツチギジムへと向かう事になった。
#3“ジム戦”
―――トージョ地方ツチギシティジム。
ここは、新人であるジムリーダー―――『黒裁』の雅(ミヤビ)が管理するジムだ。
『黒裁』とは、相手に攻撃する暇を与えずあたかも罪人を裁くような戦いを見せると言われる事から来る異名だ。
そしてそのジムリーダーミヤビと茶味掛かった黒髪の少年がジム戦を行っている。
「アブソル! 雷! 雷! 雷! 豪雷!」
『黒裁』の名の通り、一方的なバトルのはずだが勝手が違った。
戦況は、明らかに挑戦者の少年の優勢である。
少年側には、通常よりも大きいオーダイル、ミヤビ側には、アブソルである。
ミヤビは、焦っているのだ。
少年の強さに………アブソルは、彼の指示を受け雷を連続でオーダイルに見舞おうとする。
「これは、避けられないだろう!」
「テュール、避けなくてもいい」
少年は、落ち着きを払いそうテュールと呼んだオーダイルに指示を送る。
雷が向かってきているのに、オーダイルは微動だにしない。
避けなかったオーダイルは、当然、雷に打たれる。
その絶大な威力のせいで辺りには、砂塵が舞う。
「これで一匹目、アブソル、この調子で行くぞ!」
と、ミヤビはオーダイルの戦闘不能を確認せずアブソルを鼓舞した。
だがミヤビの思った通りにはならなかった。
砂塵がやむとオーダイルは、何食わぬ姿で指示を待っていた。
「テュール、終わらせるぞ。塵と化せ、ギースラッシュ!」
少年は、驚いているミヤビに構わず指示を送った。
次の瞬間、アブソルの背後にオーダイルが回り込んでいる。
だがアブソルは、回り込まれていることにまったく気づいていない。
青白いオーラを纏った爪がアブソルを薙ぎ払い、一撃で戦闘不能まで追い込んだ。
つまり勝者は、少年だ。
「…………何故、何故だ? 何故、オーダイルが雷に耐えた?」
「静真(シズマ)のオーダイルであるテュールは、絶縁の身体を持つのよ」
「………煌(キラメ)。…………勝手にネタを明かすなよ」
ミヤビは、シズマと呼ばれた少年に尋ねた。
だがシズマは、むすっとした顔を保ったままで話そうとはしない。
急に割って入ってきた茶髪に青い瞳の少女―――キラメは、そう得意げに説明した。
どうやらテュールは、絶縁の身体を持つことにより、電気攻撃を全て無効化にしてしまうようだ。
「…………シズマ君、君は強いトレーナーだ。これからも頑張ってくれたまえ」
「ええっ、あとアドバイスですが、もう少し落ち着いて戦うべきだと思います。
あなたの戦い方は少し乱暴だから一回の攻撃をもっと精密にした方がいいです」
――君が予想以上に強かったから慌ててしまっただけ――――――――――――
―――冷静になりきれないところがまだまだ青いってわけか――――――――――――
ミヤビは、理解しきれないようだったが直ぐに建て直し、シズマに握手を求めた。
それに答えたシズマは、ミヤビに容赦の無いアドバイスを送る。
言い終えたシズマは、観客席の方へと向かっていった。
するとバトルフィールドには、三人の姿だけになる。
観客と挑戦者が入れ替わり、あとはジムリーダーと審判だけだ。
「次は君かい?」
「ええっよろしくお願いしますね。私の名前は、炎野 煌(エンノ キラメ)
女の子だからって舐めていると痛い目を見るわよ。だってシズマより私は強いわけだし」
「其れは面白そうだね。じゃあ、始めようか血沸き肉踊る戦いをね!」
得意げにセミロングの髪を靡かせながらキラメはそう啖呵を切る。
ミヤビは微笑みながら審判に戦いの開始の笛を鳴らすように指示をした。
こうしてキラメのジム戦が始まった。
#4“圧倒的”
―――ツチギジムでジム戦が今、始まった。
ジム戦とは、ポケモン協会公認ジムの代表者―――ジムリーダーと戦う。
その理由は、勝てば貰えるバッジを八個集めることにある。
それは、その地方のポケモンリーグへの参加資格を得ることが出来るからだ。
その為にトレーナーは、旅立ちジムリーダーとの戦いを繰り広げるのだ。
「セレノ、フラッシュ!」
「……行くぞ! ドンカラス!」
両者のボールが地の付いた時には、攻防はすでに始まっていた。
セレノと呼んだキラメのトゲキッスは、開始と同時に閃光を放ったのだ。
不意に閃光を浴びたドンカラスは、目を眩ませてしまう。
「セレノ、電磁破!」
ドンカラスが目を眩ませている最中、トゲキッスは、敵の目の前へと接近していた。
そして超至近距離から電磁破を放つ、当然、ドンカラスは態様できず麻痺を受けた。
「エアスラッシュ」
圧倒的優勢での容赦の無いキラメの指示。
まさに怒涛の攻撃であり、ドンカラスは麻痺で動けず直撃してしまう。
攻撃技の後の隙を狙い、ようやくドンカラスに攻撃のチャンスが巡ってきた。
「ドンカラス、悪の波動だ!」
だがドンカラスは、ミヤビの指示虚しく怯んでいて動けない。
そんな姿を見たキラメは余裕と言わんばかりに解説を始める。
「セレノの特性は"天の恵"で、さらに"鋭い牙"を持たせてあるの。
そうすればエアスラッシュは、殆どの確立で怯みを与える事が出来るわ。
そしてこれで仕上げね、セレノ、威張る!」
その後、トゲキッスのエアスラッシュ一回に混乱で自らを攻撃してしまったドンカラス。
あまりに呆気ない結果だがドンカラスは自滅していた。
観客であるシズマは、その対戦を見ながら誰にも聞き取れない声でこう呟いた。
「バトル開始早々のフラッシュで隙を作り、確実に電磁波を当てるようにしたか……
………また一層嫌らしい戦術を使うようになったな……」
余りの速さで終わってしまったバトルを反省したミヤビは、二体目を繰り出した。
その二体目とは、大きな岩に魂を繋がれているポケモン―――ミカルゲである。
得意げになっているキラメは、あまり相手の方向を見ていない。
「ミカルゲ、のろい!」
その隙を突きミカルゲは体力を犠牲に払い、トゲキッスにのろいをかける。
キラメは、油断していた。
普段なら絶対に先手を取られないスピードの相手に、先手を取られたのだから………
ふとキラメの頭に三ヶ月前に兄に言われた台詞が過ぎった。
―――トージョ地方カラマツタウン炎野邸
「お前は直ぐに気を抜く。だから、こんなにあっさりと逆転されてしまうんだ。
バトルは何が起こるか分からないんだ! 最後まで気を抜くんじゃない」
「気を抜いても勝てるぐらいまで強くなれば言いだけの話よ!」
兄の言葉にむかついたキラメは、そう啖呵をきった。
そしてあまりにも生意気な実の兄の股間を思いっきり蹴りつけた。
………その後、どうなったかは、言うまでもないだろう。
そんなことを思い出してしまったキラメは、とても腹が立っていた。
だが確かにその通りであるため、それを実行に移す事にした。
「セレノ、見破るのよ!」
「ミカルゲ、悪の波動!」
「全力で! は・か・い・こ・う・せ・ん!!!」
ミカルゲの存在を見破ったトゲキッスは、明らかに通常の其れとは違う威力の破壊光線を放つ。
ミヤビは、トゲキッスを狙っていたはずの悪の波動の軌道をかえ破壊光線を受け止めようとする。
だが破壊光線が呆気なく悪の波動を掻き消し、そのままミカルゲに直撃した。
そしてそのままミカルゲが倒れるがその直後、トゲキッスまで倒れてしまった。
「……道連れ?」
「その通りだよ。行くよ、グラエナ」
キラメの問いに答えるとミヤビは、グラエナを繰り出した。
表情が少しこわばったキラメだったが次の瞬間には、笑みを浮かべていた。
その笑みを見たシズマは、凍りついた。
「ビップ!」
ミヤビのグラエナに対し、キラメは、ビップと呼んだイーブイを繰り出した。
そのイーブイを確認できた頃にはすでに、"イーブイ"の姿は無い。
「ブースター、怖い顔、そして炎の渦!」
そしてビップの姿は、ブースターへと変わっていたのだ。
怖い顔により、グラエナの素早さが下がり、炎の渦に引きずり込み閉じ込める。
だがミヤビも負けてはいない。
「グラエナ、シャドーボール」
「グレイシア、ミラーコート」
グラエナが炎の渦の中から放ったシャドーボールは、其れを貫いた。
だが到達する前に、ブースターはグレイシアへと変化し、ミラーコートでシャドーボールをお返しする。
さきほどと同じように慌ててしまう癖があるミヤビは、この状況を理解できない。
そしてその隙を突きキラメは指示を送った。
「リーフィア、草笛」
グレイシアは、リーフィアへとなり、草笛を演奏した。
その旋律を聞いたグラエナは、眠りについてしまう。
それを見たキラメは、ニッコリと笑いながらこう呟いた。
「ねぇ、もっと抵抗してみなさいよ、犬?」
キラメの中で何かが目覚めようとしていた。
ミヤビは、焦っていたはずなのにその異変に気づきただただ呆然としている。
シズマは、その姿を見た瞬間、頭を抱えて震えていた。
「シャワーズ、雨乞い」
シャワーズとなったビップは、雨を引き起こす。
そしてまた次の変化へと移行する。
「サンダース、雷!」
サンダースの雷は、直撃し、グラエナは倒れてしまう。
つまり勝者はキラメと言う事になる。
「う〜ん、すっきりした」
キラメは、戦いが終わり、そう呟きながら伸びをした。
そうすると表情は、いつも通りに戻っていた。
だがまだあたりは緊張に包まれており、それを疑問に思ったキラメはこう呟く。
「何で皆、そんなに神妙な顔つきなわけ?」
――言えるわけないだろうが……――――――――――――――――――――
―――ったく恐ろしい奴だぜ………―――――――――――――――――――
と、シズマは心の中で思ったと言う。
こうしてツチギジムを制覇した二人は、次の町へと向かっていく。
旅は中盤に差し掛かり、ここから戦いが激化していく事をまだ知らない。
続く
[一言感想]
どちらかというとシズマは、ポケモンそのものの力がかなりのものといった感じですね。
もちろん、強力なポケモンを揃えるということも強さの1つなのですが。
シズマとキラメの仲は、良いような悪いような不思議なところです。
どちらも少しトゲがある言い方をするので、丸くなってくれると上手くいきそうですけどね(苦笑)。