「時が来てしまったようじゃの・・・」

夜になって、満月を見る老婆はそういった。
彼女はずっと事の成り行きを見てきた。
そして、自分の水晶玉で様々な人の運命を見て、必要とあれば道を示してきた。
そんな彼女は今、森の中から月を見ていた。
月はいつもに増して不気味に輝いている。

「婆さん・・・婆さん・・・」

「おや、リュウヤかい?」

長身の男、リュウヤに気づいてそのまま喋る。

「どうだい?手がかりはつかめたかい?」

「ああ。つかんで来た。奴は・・・ザンクスはこの世界でナポロンという名前を使って、ダイナという男とダークスターという集団を作ってこの世界を破滅へ導こうと企てていた」

「ふむ・・・我々のいた世界だけでなく・・・この世界も滅ぼそうとしてるようじゃな・・・。それで、そやつらの行き先は・・・?」

「そこまでは分からなかった・・・。くそっ!一体どうやれば奴らの世界へもぐりこめるというんだ!?」

リュウヤは近くの気を右手で殴った。木は10メートルほどのものでびくともしなかった。

「アマ婆ァ!奴らの世界の位置をつかむことは出来ないのかよ!?」

「何度も言っておるじゃろ。こういうことは地道に探していくしかないと。わしらの力は見つける力じゃなくて未来を見る力なんじゃ!」

「くっ・・・」

リュウヤは木に寄りかかって座った。

「む?」

「どうしたんだ?婆さん!?なっ!」

突如、老婆の持っていた水晶玉が光を帯びて光り始めた。

「ふむ・・・わしは行かなければならないようだな・・・」

「また、お告げか?」

「そのようじゃ。行ってくるぞ!ハナダシティへ・・・」

 

 

 

第74話 何よりも一番大切なもの

 

 

 

「ヒカリ―――ッ!!!」

顔を上げて、涙を流すヒロト。しかし、その表情は悲しさから憤怒に変化する。

「ヒカリを・・・・・・・・・ヒカリを返せ!!」

「ヒカリはまだ死んでいない」

「何・・・!?本当か!?」

「だが、同じことだ。もうすぐ世界は滅びる。全員死ぬのさ」

「・・・な・・・お前・・・自分がしていること分かっているのか・・・?自分も死ぬ気なのか?」

「これだけ、価値に無意味だといっているのだ。自分の価値も無意味に決まっている。そう、最初からそうすればよかったのだ」

「なんて奴だ・・・」

「さぁ、これで準備が整った。デオキシス!」

ダイナに呼ばれて、デオキシスはダイナに近寄った。

「これで、準備完了だ!」

その短剣をデオキシスのコアに突き刺した。
すると、その剣はデオキシスに吸収されていった。

「なっ!」

「この剣は“ソウゲド”という想いを溜める鉱物でできている。それを力に変えるのだ。デオキシスがあの月を引っ張るにはデオキシスの基本的な力だけじゃ無理だからな。そして、こうすれば、後は時間の問題だ。夜明けにはこの星と月は激突。そして、無に変えるのだ」

つーか、こいつのしていること・・・ム○ュラか?(蹴)

「そんなことさせない・・・」

ヒロトは立ち上がる。

「立ち上がるのか・・・だが、何をさせないって?ヒカリを死なせることか?それとも、月をぶつけることか?」

「そんなの・・・・・・決まっているだろ・・・・・・・・・」

ヒロトは涙を拭って、前を見る。

「両方だ!!」

モンスターボールを握り締めて、ダイナを睨むヒロト。

「それならいいことを教えてやろう。デオキシスのコアを破壊すれば、ヒカリは元に戻るし、月にぶつかることも阻止が出来るぞ」

「(本当なのか・・・?何故俺にそんな事を教える・・・?罠か?)」

ヒロトはもちろん疑う。

「疑っているようだな?何故そんなとこを教えるのか?そういう顔をしているな?なに、ただの暇つぶしだ。時間を潰すためだ」

「・・・それなら・・・お前を倒す!!俺のすべてをかけて!!」

ヒロトは足を踏ん張って、ダッシュしてポケモンを繰り出す。

「行け!!シオン!!『10万ボルトッ』!!!!」

高電圧の電流をデオキシスに向けて放つ。

「凄まじい電撃だ・・・。だが・・・」

「なっ!!」

その強力な電撃をまともに受け止めたデオキシス。

「デオキシスDフォルムの前には意味を成さない・・・さぁ、攻めろ!」

手をかざして、波動のようなものを解き放つ。
圧縮された、超エネルギーのようなものだ。
ヒロトとシオンはもちろんかわす。

「『シャドーボール』!」

「弾き飛ばせ!」

黒い光球を投げつけるのはデオキシス。
しかし、シオンは片手で地面を付き、バランスをとって尻尾でシャドーボールを弾き飛ばした。

「シオンッ!攻めろ!」

スピードを上げて、接近するシオン。速さで言えば、テッカニンの通常スピードはあるだろう。
デオキシスも身体を変化して対応するが、引き離すこともできなければ、追いつかれることもなかった。

「まさか・・・Nフォルムのスピードと同等だというのか!?」

「行けっーー!『エレキテール』!!」

同じスピードだったのだが、攻撃の瞬間、シオンはさらにスピードアップして飛び上がった。シオンが狙うのはデオキシスの顔。体を捻って一回転させた。でも、尻尾は空を切る。

「ふん!そこだ!」

反撃として、シオンは手で地面に叩きつけられた。

「シオン!?」

「終わりだ!『サイコキネシス』!」

「シオン!チャージ&防御だ!」

電気を溜めながら、瞬時に光の壁を張る。たいていの攻撃なら防げるのだが・・・

「そのまま、Aフォルムにチェンジだ!」

姿が変わった瞬間に、サイコキネシスの威力が増大して、壁を破ってしまった。
さらに地盤が崩れてシオンはそこに落ちてしまった。
そして、AフォルムからNフォルムに戻した。

「所詮、ピカチュウなんてこの程度だろう」

ガキン!

「余所見なんてしていていいのか?一瞬でも隙を見せたら、お前を斬るぞ!」

と、ヒロトは言うが、フロルの不意打ちを、あっさりとデオキシスは腕で受け止めた。

「その程度の攻撃じゃ、傷一つ付かないぜ。超能力を右手に集めたんだ。それに、スピードも勝てるものか!Sフォルム!」

「まずい!フロル!最高速度!!」

二匹の姿が瞬時に消える。時折、ガキンガキンと攻撃の音が聞こえるが、姿が全く見えない。
しかし、トレーナーである二人には見えているようで、目で攻撃を追っている。いや、追っているのはヒロトだけだ。ダイナは目を瞑っていた。
ヒロトは痺れを切らした。

「言っただろ!隙を見せたら、お前を倒すって!フロル!『銀色の旋風』!」

銀色の風と切り裂くを合わせた打撃技で接近。しかも、最高スピードでほとんど見えないとなれば、かわすことはほぼ不可能。

「隙?違うな。隙なんかじゃない」

ドガン!

「え・・・!?」

音とともにフロルが地面に叩きつけられていた。

「(見えなかった・・・スピードは同等のはずだったのに・・・。一瞬、奴が俺でも見えないくらいに速度を上げた・・・)」

「これは余裕さ。やれ!『サイコブースト』!!!!」

ダイナの元へ戻ったデオキシスはやっと起き上がったフロルに巨大なエネルギーをぶつけた。
攻撃をかわすことも、受け流すこともままならなかった。そのまま攻撃は爆発した。クレーターのような穴があいて、フロルが真ん中で気絶していた。

「(・・・っ!なんて威力だ!半端じゃない!だが・・・)ディン!『サイコキネシス!』」

「デオキシス、『サイコキネシス』!!」

同様のエネルギー波がぶつかり合う。その力は互角のようだった。

「なるほど、Nフォルムのサイコキネシスと互角とは、なかなかやるな」

余裕を見せるダイナ。
ディンとデオキシスが接近戦で激しく火花を散らす。雷パンチと冷凍パンチを駆使して打ち合うディンだが、デオキシスはパンチをかわしている。そして、目に見えてデオキシスのコアの光が高まっていく。

「(・・・なんだ?あの光は・・・?分からないけど、まずい予感がする!)ディン!離れろ!」

「気付いたか・・・だが、遅い!」

デオキシスはダイナをつかんで、空へと飛んだ。

「最大パワーで放て!お遊びは終わりだ!Aフォルム!『サイコブースト』!!」

超巨大なエネルギーの塊を放出する。速さは無いがその大きさは洞窟を覆うほどだ。

「くっ!よけられない・・・。こうなったら、これしかない!目覚めしサイコの力よ発動せよ!!必殺『サイコストーム』!!!!」

巨大な念道エネルギーに対して、超能力で起こした暴風で受け止めようとする。しかし、ディンの最強の技の一つでさえ、だんだん、押されていった。

「くっ!最大出力だ!!!!」

暴風で飛ばされないように必死だったが、それでも、デオキシスの攻撃を受けるよりましだと、全開で止めにいく。何とか食い止めた様に見えた。

「ディン・・・!」

ヒロトはディンを呼びかける。

「すまない・・・」

と、いきなりヒロトは謝る。ディンはそれににっこりと答えた。





「この攻撃のせいであいつの姿はよく見えないが、まず、避けるのは無理だな。そして、食い止めているが、時間の問題だ」

上空にいるダイナが冷静に傍観する。

「(だが、避けるとしたら一つ考えられる方法がある・・・)」

と、ダイナが、考えていると急にエネルギーが動き出した。そう、デオキシスの攻撃が押し始めたのだ。

「フーディンの力が限界を迎えたか・・・」

「違うぜ!目覚めしサイコの力よ発動せよ!!」

「やはり、かわしていたか・・・。デオキシス!!」

声の方を見て一気に攻撃を指示するダイナ。その隙は全くない。

「『サイコバズーカ』!!」

強力な念動力と反撃で繰り出したサイコキネシスがぶつかる。

「互角!?いや・・・それ以上だと!?」

わずかにディンの念動力の力が押し始めていた。

「あれだけの強い『サイコブースト』を出したんだ。反動が無いはずが無い!一気に押し切れー!!」

ヒロトの気合がディンに伝わり、デオキシスのサイコキネシスを一気にぶち破った。
かわそうと試みるダイナだが、デオキシスは右腕に攻撃を受けて、怯んだ。

「これで終わりだ!!ディン!!『サイコブースト』!!」

隙を見せたデオキシスに接近して、スプーンをかざす。強力なエネルギー弾を放とうとした。
だが、次の瞬間、ディンのスプーンが砕けた。

「くっ・・・しまった!」

スプーンが砕けた時、同時にダイナとデオキシスはダメージから解放された。

「よくもやってくれたな・・・神速!!」










「はぁ・・・はぁ・・・何とか勝てた・・・サンダース・・・よくやった」

森のあった場所はもうすでに森とは言い難かった。すべての木が倒されて、穴ぼこや、何かが地面を食いちぎった後など生々しくバトルの爪痕を残していた。

「ちっ・・・でも、あの女を逃しちまった・・・。ポケモンを倒されて何もできないだろうけど・・・。俺もすぐに行くぞ!ヒロト!」

トキオはサンダースを戻して、急いで洞窟の中へと入っていった。
おーいトキオ君!ライト起こすのを忘れているぞ!(ぁ)










「もうちょっと私を楽しませてくれると思ったのにな」

ダイナが埃を払いながら、服を整える。
ヒロトはディンと地面に伏していた。
ちょうどそのとき、洞窟の出口から、一つの人影が姿を現した。
ダイナは気配でそのものが誰だとわかっていた。

「クレア・・・大丈夫か!?」

「・・・・・」

ふらふらしている、クレアを受け止めるダイナ。

「ごめん・・・ここに侵入させてしまいました・・・」

「大丈夫だ。問題ない。こいつなら俺が始末した。もう計画は進行中だ。後は時間が来るのを待つだけだ」

「いいえ・・・違います・・・後2人ここに来ます・・・・・・」

そう言い残して、クレアが気絶した。
数秒も経たず、トキオがやってきた。
目に映ったのはクレアを抱きかかえたダイナと地面に伏しているヒロトだった。

「ヒ、ヒロト!!」

「そうか・・・貴様がクレアをこんな目に遭わせたのか・・・」

クレアをそっと地面に寝かせてオーラを出すダイナ。

「ぐっ!(何だこの威圧感は!?)」

トキオは一瞬腰が引けた。

「時間が来れば、同じだろうが、それでは意味が無い。貴様は私が始末する!!」

「くっ!サンダース!」

トキオは相手の殺気に慌てて、サンダースを繰り出した。

「ま・・・待て・・・お前の相手は・・・俺だ・・・」

「ヒロト!?」

「貴様か・・・」

ヒロトは必死に立ち上がろうとする。

「貴様はもう負けたのだ。敗者に用は無い」

「参ったなんていってない!それに、返してもらっていないぞ・・・ヒカリを!!」

「まぁいいだろう。順番が変わるだけだ。デオキシス」

「なっ!?」

トキオは何をされたか分からなかった。そう、突然突き飛ばされたのだ。

「『自己再生』!そして、『バリアールーム』!!」

デオキシスの体の傷が治っていった。さらに、この月の石がある全体をバリアーで囲った。

「これで邪魔者はいない。このバリアールームは外からも中からも攻撃を完全に無効化する。これであの男は邪魔ができない」

「トキオに邪魔なんてして欲しくない!これは俺の戦いだ。俺がヒカリを助けないと意味がないんだ!!」

「心意気だけは立派だな。だが、それは実力に伴うぞ」

「フライト!!」

ヒロトは最後に残ったポケモンを繰り出す。しかし、フライトは息をぜいぜいと切らしていた。

「なんだ?最初からへばっているようだな」

無理も無い。ヤマブキシティ近辺から、お月見山まで全力で飛ばしてきたのだ。疲れないほうが無理といえよう。

「そんなんでフルパワーのデオキシスに勝てると思うのか?」

「無理だ・・・。あれじゃ勝ち目が無いぞ!助太刀するしかない!サンダース、『ドラゴンサンダー』だ!!」

電気で作り出されたドラゴンが、ダイナを襲う。だが、バリアーに阻まれて、攻撃はかき消された。

「ちっ!なんて硬い壁なんだ!俺の最強攻撃でさえ通さないなんて・・・」

一方、バリアーの中ではヒロトとフライトが力を溜めていた。

「フライト・・・一気に行くぞ」

頷いて、相手を見据える。

「何をするかは知らないが、一気に終わらせてやる。Sフォルム『神速』!!」

最強最速のスピードだ。

「(たぶん、この攻撃で、フロルはやられたんだ)」

そう思ってヒロトは先手を打っていた。攻撃は二人をすり抜けた。

「影分身か!」

「今だ!『グラン・ドレイン』!!」

ヒロトはフライトに指示を出す。
・・・しかし、何も変化がない。

「攻撃技・・・ではなさそうだな。それなら一気に決めさせてもらう!至近距離から『サイコブースト』!!」

凄まじいスピードで動きながらフライトに接近していった。

「は、はえー?」

トキオは目を点にして、バトルを見ていた。

「フライト!右だ!」

とっさに反応して、デオキシスの手を弾き、右手を受け止める。

「さっきから見ていて分かった。『サイコブースト』は必ず両手を使う大技だと。さっきディンが使ったときそう確信したんだ」

「“さっき?”今まで使ったことがなかったというのか?」

「先ほど使ったサイコブーストは『物まね』だ」

「なるほど。だが、威力まで真似ようとしていたとは・・・愚かだな。フーディンごときに私のデオキシスの力はコピーできない!だから、さっきは失敗したのだ!」

「いや、それは違うな」

「何が違う?」

「ディンが負けたのは、サイコブーストを真似したからじゃないということだ」

「そうか、それなら何が原因なんだ?」

「教える必要なんて無い!それに足元を見るんだな!」

「足元・・・だと?砂・・・?」

いつの間にか、足元の岩が砂になっていくのが分かった。しかもそれは、フライトの足元を中心にだった。

「なっ!?まさか・・・」

「そういうことだ!この技は地面の水分を吸収する事により、地面を砂に変える!そして、その水分で自分は体力を回復するのさ!」

その砂化現象はフライトを中心にバリアールームの全域に至った。

「フライトの力は砂のフィールドだと最大限に活用できる」

「そうか、やれるものならやってみな」

「言われなくても・・・やってやる!」

フライトに跳び乗って、浮遊してデオキシスを尻尾でなぎ払った。左手でガードしていたがそのまま吹っ飛んだ。それでも、軽々と着地して、反撃の準備を整えた。
今度はフライトから接近を仕掛ける。

「向かってくるか?返り討ちだ」

フライトのスピードはヒロトのポケモンの中でも1,2を争うほどの速さを持つ。接近するのにそれほど時間はかからないのだが、それでも、デオキシスの攻撃を放つほうが速い。

「(やはり、速いな)」

表情を変えないヒロト。相手の能力から攻撃を読み取っていたようだ。それを元に、もう最初から手は考えていた。超スピードのまま、砂にもぐりこむ。

「(地面に!?・・・なるほど、砂上になっているから潜りやすくなっているのか!)」

そして、そう思ったときには、バリアールームほどの大きさのアリ地獄が突如出現した。
もちろんこの技をアリ地獄とは呼ばない。通称『砂地獄』である。

「(こんな攻撃は浮遊してかわせばいいだけだろ?)」

自分の体に念力をかけて、浮遊をするデオキシスとそれに捉まっているダイナ。
しかし、その砂地獄の中から、強力な波動攻撃がデオキシスに向けて放たれてきた。

「!!」

驚いて間一髪でその一撃を避ける。だが、その攻撃は一発ではない。1秒くらいの間隔でしかも違う位置から、正確にデオキシスとダイナを狙っているのだ。

「ちっ!小癪な!Dフォルム!『ミラーコート』!!」

すべての波動攻撃を受けながらも、攻撃を倍返しにする。数発の攻撃は一瞬にして砂地獄の方へ返された。

「(砂の中を海の中にいるポケモンのように動き回る上に、さらにその中で、正確に俺たちを狙ってくるとはな。・・・並大抵の訓練じゃできなかっただろう。しかし、相手が悪かったようだな)」

返ってきた波動がすべて砂に当たって爆発した時、砂を纏ったフライトとヒロトが急上昇してデオキシスに向かっていく。

「最後の激突だ!!この次でお前を倒すッ!!」

「やれるものなら、やってみろ。Nフォルム・・・『サイコブースト』!!」

強力な一撃を放つ攻撃だ。一方のフライトは爪を振りかざして、対抗した。だが・・・。

「終わったな・・・」

砂を纏ったフライトが爆発した。そして、砂が散ってバラバラになった。

「・・・・・違う・・・?時間差攻撃か!?」

爆発したフライトを間もなくして、本物のフライトがデオキシスに接近した。

「(さっきのはフェイク(身代わり)だな)」

「行けッーーー!!フライト!!『ガーネットクロー』!!!!」

「決めろ!ヒロト−!!」

コアを狙って、抉る様に攻撃を打ち出す。
爪が1メートル・・・50センチ・・・30センチ・・・10センチ・・・と近づいていく。
だが・・・

「フラッ・・・」

「なッ!?・・・身代わりだって気づいていなかったのにもかかわらず、本体の反撃に咄嗟に備えたのか・・・?」

トキオは異常なまでの相手の反応に目を疑った。

「残念だったな」

フライトの爪はあと1センチのところで止まっていた。デオキシスの右手が顔にめり込んで、左手が顔にそれぞれ当たっていた。

「完璧なカウンターを決めやがった・・・あいつ・・・。これでヒロトの手持ちはゼロなのか・・・?あれ?ヒロトは・・・?」

「(!?どこへ行った!?)」

「俺は言ったはずだぜ!この次で決めるってな!」

「まさか・・・上か?」

最後のモンスターボールを手に、ヒロトはバリアールームの最上まで飛んでいた。

「あらかじめ、手に砂をつけていたおかげで痺れずにすんだ。そして・・・充電完了だ!!」

「何を!?」

「シオン!!」

ヒロトは最後のポケモンであるシオンを頭に出して、さらに飛び上がらせた。そして、バリアールームの天井を使って一気に下へと踏み込んだ。
さらにそれだけではない。その攻撃には回転を加えて回りながら、電気を帯びていた。

「シオンッ!!『ボルテッカー』だッ!!!!」

銃弾のごとく・・・いや、銃弾というには威力が弱すぎる。ミサイルのごとく・・・しかし、それでも表現が違う。言うならば、閃光だ。とてつもない威力のその一撃をそのボルテッカーは秘めていた。いや、もう、その技はボルテッカーという技の威力の範疇を超えていた。
重力+踏み込む力+回転する力+充電した電力×鍛えたシオンの基礎能力・・・全ての要素が合わさってこの技は成り立ってた。

「!!Dフォルム、防御しろ!!」

今まですべての攻撃を防いできたDフォルム。両腕を前に出して防ごうとする。
だが、回転がその手を弾き、デオキシスはもろにその一撃を叩き込まれた。

「なっ!デオキシス!!」

そして、攻撃はまだ続く。ダイナは吹っ飛び砂へ転倒した。
デオキシスとシオンも攻撃したまま砂へとダイヴした。
砂が巻き上がって、バリアールームの中を砂で覆った。そして、フライトも砂の上に落ちてその隣りにヒロトも不時着した。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・やったぞ・・・」

「ピィ・・・ピカ・・・」

「ヒロト!やったな!!」

トキオは喜んで、ヒロトに駆け込もうとする。

(ドカン!!)

「グハッ!・・・なんでだ!?あのポケモンを倒したはずなのに、何故バリアールームが解除されてないんだ!?」

ぶつかった顔を抑えながら、トキオが言う。

「そんなの簡単なことだ。まだデオキシスがやられてはいないからだよ」

「「何だと・・・!?」」

ヒロト、トキオがダイナを見る。
あの攻撃を受けて、デオキシスは平然と立ち上がる。・・・とまでは行かないが、ダメージを負っているようだった。

「あれだけのシオンの攻撃を受けて・・・半分もダメージを受けていない・・・!?(間違いなく、俺のシオンの最強の技だったはず・・・それに回転や重力も加えたのに・・・!?)」

「それにしても、驚いたな。そのピカチュウがそれほどまでに力を持っていたとはな。それに、いつの間にボールを戻したんだ?岩の隙間に落ちたはずだろう?」

「砂化して砂に潜った時に、攻撃をしながらシオンも回収していた。(その前からずっと『チャージ(充電)』して、ボールの中でも力を溜めていたのに・・・)」

「すべては作戦通りだったというわけか。しかし・・・残念だが・・・ここまでだ。『自己再生』」

絶望的だった。シオンに受けたダメージは淡々と回復していった。そう、何も攻撃を受けていなかったように。
いや、一つだけ治らなかった部分があった。

「(コアだけが完全に治っていない・・・。シオンがまともにダメージを与えた部分だな!?あの部分に今のシオンの最大パワーの『エレキテール』と打ち込めば、あるいは・・・・・・だけど・・・)」

ヒロトは傍らにいるシオンを見て気づいていた。
先ほどの最大パワーを遥かに越えるボルテッカーで相当のダメージを受けていて、本来の力が出せないだろうということに。

「(ネールは一撃でやられ、マッシュとレインとザーフィはバロン戦で消耗して戦えない。フロルのスピードも、ディンの力もあいつには及ばなかった。フライトはがんばってくれたけど・・・ポケモンも強いが、あのトレーナー自体の勘も鋭い・・・最後に残ったのは・・・・・・)」

ヒロトはシオンを見つめる。
シオンは疲れながらもやる気を見せる。しかし、今のままでは結果は火を見るよりも明らかだ。

「(せめて・・・シオンに今以上の電力があれば・・・)」

拳を握り締めて、地面を叩く。

「(くそっ!俺は・・・俺は・・・ヒカリを救うことができないのか!?)」

「分からないな。何故そこまで目の前にあるものに拘る?そんなものに対して意味はないというのに」

「どういう意味だ!?」

「例え、目の前にあったとしても、それで満たされるとは限らない。そして、どんなに求め合っても満たされることは無い。人間とはそういう生き物だ。これはクロノの持論だがな。つまり、無に還ることで私達はすべてが満たされるのだ!」

「私たちはってまさか・・・お前達・・・」

「そうだ。クレアは私の婚約者だ」

「クレアもそれを望んでいるのか!?」

「ああ、望んでいるから、今こうなっているんだ」

ヒロトはクレアを見る。気絶しているが、その表情はどこか曇った表情をしていた。

「形のあるものなんていつかは崩れるんだ!それならいつ崩そうが同じことだ!!」

「(・・・形・・・あるもの・・・)」

「とどめだ!サイコキネシス!!」

ヒロトはシオンを抱えて飛び退けた。そしてリュックの中からあるアイテムを取り出した。そう、6年前、ヒカリの別れの手紙に添付してあった『雷の石』だった。

「(使うつもりなんてなかった・・・。でも、ヒカリからもらった物で捨てる気になんてなれなかった・・・。今のままでもシオンは十分に強いし、それにまだまだ“ピカチュウ”のままではシオンは強くなれる・・・。だけど、デオキシスを倒すためには・・・・・・・・・ヒカリを助けるには・・・・・・・・これしか方法は無い!!!!)」

ヒロトはシオンを見た。

「シオン・・・・・・覚悟はいいな?」

「・・・ピカッ!!」

そして、ヒロトはダイナを目で威嚇する。

「なんだ?その目は?ピカチュウを進化させたくらいで私のデオキシスにはかなわないぞ」

「お前は・・・何も分かっていない・・・」

目を瞑って、ヒロトは語る。同時にそっと、雷の石をシオンに触れさせた。シオンがまばゆい光を放ち始め身体を変化させてゆく。

「私が何をわかっていないって!?」

「・・・・・・・・・少なくても俺はわかっているぞ・・・」

「だから、何がだ!?」

「・・・・・・」

「答えろ!!やれ!」

デオキシスがNフォルムのまま突撃して、ヒロトにパンチをする。

バン!

パンチの音が響いた。しかし、ヒロトに届くことは無い。シオンの尻尾がデオキシスの攻撃を防いだのだ。

「(何だと!?)」

並みのポケモンを吹っ飛ばす威力はあっただろう。だが、それがシオンの尻尾だけで止められたのだ。

「そのまま・・・吹っ飛ばせ!!」

尻尾で手を払って、さらにムチのようにデオキシスの脇腹にヒットさせて吹っ飛ばした。

「(バカな!?今での攻撃とはスピードもパワーも段違いだ!)」

「何をわかっていないって?1番・・・大切なことだよ・・・」

「一番大切なことだと?」

「お前は彼女の気持ちを全く考えていない!」

「彼女・・・クレアのことか?クレアなら、私の計画に賛同してくれた。それがどうした?」

「・・・それが本心だと思っているのか・・・?」

「何だと・・・?」

「そして、俺は自分が大切にしていることを知っている。それは・・・ヒカリを助け出すということだ!!シオン!行けッ!!」

「ハッ!迎え撃て!」

高速のスピードで消えるシオン。同じくデオキシスもSフォルムのスピードで対抗する。ちょうど、先ほど合ったフロルとデオキシスの戦いと同じ様な展開になった。

「同じことだ!『神速』!!」

「シオン!受け止めろ!!」

ドカン!

そうして、煙が晴れるとデオキシスの攻撃を止めたシオンの姿があった。

「Sフォルムのスピードについてきただと!?」

「シオン!『電撃波』!!」

デオキシスと間合いを取ってレーザーのように電撃を繰り出すものの、相手のスピードも速い。そう簡単には当たってくれない。

「これで終わらせてやる!Nフォルム!『サイコブースト』!!」

「シオン!『M(マルチ)10万ボルト』だっ!!!!」

体の電気を一気に放出して行く。その10万ボルトの帯は10本にも達した。すべての10万ボルトでサイコブーストを抑え付ける。

「まさか・・・互角だと!?」

「互角・・・?互角なものか!!シオン!!」

電流がドリルのように回転し始めて、サイコブーストを拡散させてゆく。
シオンの攻撃がデオキシスのそれを上回ったのだ。

「バカな!?デオキシス!かわせ!!」

Sフォルムへ瞬間的に変化して、サイコブーストを放ちながら、移動をする。

「逃がさない!!シオン!」

シオンは頷いた。
その時、10万ボルトとサイコブーストは相殺された。

「これで・・・・・・・・・って、何だと!?」

ダイナは相殺したものだと思っていた。しかしそれは違っていた。
シオンの電撃のコントロールによって、攻撃を食い止めたのだ。
しかも、電撃が消える瞬間に10本の威力を帯びた10万ボルトを5本分切り離してデオキシスを追撃、残りの5本分でサイコブーストを相殺したのだ。

「バカな・・・」

5倍分の10万ボルトがデオキシスに命中し、デオキシスは足を止めた。
その隙を狙って、シオンはもう間合いをつめていた。

「行っけー!!『エレキテ――――――ルッ』!!!!」

シオンの槍のような尻尾がデオキシスのコアを貫く。
コアはバラバラに砕け散った。

「・・・デオキシスが負けるだと・・・!?」

デオキシスの形は粒子となって消えようとしていた。
ダイナは消え行くデオキシスを見る。
膝を付き、デオキシスに手を伸ばす。

「消えるな・・・消えないでくれ・・・」

ダイナの声も虚しく、デオキシスは消えていった。

「・・・・・・・・・」

ダイナはデオキシスが消えて消沈としていた。いや、そんな様子をしていたのも束の間だった。

「・・・まだだ!!・・・私の計画は終わらない・・・そう・・・終われないんだっ!!」

すると、ダイナはバリヤードを繰り出した。

「(まだやるのか・・・!?)シオン!」

ヒロトは相手の様子を伺う。

「バリヤード!本拠地に『テレポート』!!」

ダイナはこの場から姿を消した。

「・・・逃げた・・・か・・・。勝った・・・のか・・・?」

「バリアーが消えた・・・。ヒロト・・・お前凄いよ!」

トキオがバリアーを消えたのを確認するや否や、ヒロトの頭をバキッと叩いた。

「痛いな!何すんだよ!・・・あ、お前なんかにかまっている場合じゃない!!」

「“なんか”って何だよ!!・・・ん?」

反論をしようとするトキオだったが、目の前の光の粒たちが集まっていくほうに目が言っているヒロトを見てトキオもそれを見た。
やがて、その光の粒たちは人の形を作り出して、やがて一人の人間になった。

「ヒカリ・・・・・・・・・ヒカリ!!」

駆け寄って、ヒカリを揺する。

「ヒカリ・・・?大丈夫か!?ヒカリ!おい・・・返事をしろ!ヒカリ!!」

必死で呼びかけるヒロト。

「なあ、俺だ・・・ヒロトだ!返事をしてくれ!ヒカリ!・・・」

しかし、ヒカリはピクリとも動こうとしない。まるで人形のようにぐったりとしていた。

「オイ・・・嘘だろ・・・返事をしてくれよ・・・ヒカリ―――!!!」

「(・・・ヒロト・・・)」

トキオはただその様子を見ていることしかできなかった・・・。

「起きてくれ・・・頼むから起きてくれ・・・ヒカリ!!!!!!」

満月は明るく彼らを照らしていた。
しかし、彼らの心はどんよりと沈んでいた。





つづく





技データ

銀色の旋風・・・ヒロトのフロルの技。銀色の風と電光石火の利点を組み合わせた打撃技。

グラン・ドレイン・・・ヒロトのフライトの技。地面の水分を吸収して、地面を砂に変える上に自らは体力も回復する。ギガドレインの応用技でもある。

ガーネットクロー・・・ヒロトのフライトの技。別名、『光の爪』。砂で鍛えた爪で一気に切り裂く。しかも、宝石のように輝き、高い硬度を持つ。





アトガキ

今までで一番長いバトル・・・でした。
結局、ヒロトはデオキシスを倒しましたが、ダイナに逃げられてしまいました。
次回は最終回です。
最後は・・・もう、涙なしには語れません。多分。(ェ)

 

[一言感想]

 分かりました、涙を用意しておきます(ぇ)。
 ラストバトルはさすがに今までで一番の苦戦でしたね。
 デオキシスが完全な悪役ボスとして登場したのって、実は珍しいかも。
 ともあれ、ついにラストバトルを制したヒロトですが……ヒカリの安否は?

 

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