吹き荒れるからっ風。
東西南北に広がるのは見渡す限りの砂漠。
雲はなく、容赦なく太陽が地面を照りつける。
周りを見渡すと、ポケモンが住めるという環境とは断じてない。
乾燥した環境を好むサボネアやサンド、ナックラーと言う地面ポケモンでさえ、ここでは生存することが出来ない。
食べるものがなければ、どんな生き物でも生存することが出来ない。
砂を食べると言われているポケモンでも、ここの砂には全く栄養がなく、住む事ができないのだ。
だから、この砂漠地方を好き好んで住む者はいないのである。



しかしながら、この地方にも交易があり、人の集まる場所が3つほどある。
1つは北の海沿いの港町。ここは砂漠に面していないだけあって、水ポケモンを中心に生息していた。そして、船が出て他の地方と交流があるのである。
2つはその海沿いの町の東の方にある何の変哲もない人の住む集落である。港町の近くにあり、そこの人たちは港町へと行って買出しをする。
しかし、この地方の一番有名な場所は、港町から遥か南の方にある温泉街である。ここの温泉はお肌が艶々になるとか、美容にいいとか、発育がよくなるとか・・・主に女性にとって、メリットがあるものばかりだった。
この場所は今、口コミで広がりつつある隠れた温泉街だった。
だが、それでも客が増えることはないと思われる。
なぜならこの土地は、警察に捕まってそこから抜け出した悪人や、前科を持つ人間、さらに数多の凶悪な組織が蠢く犯罪街でもあるのだ。
むしろ、温泉のイメージよりも犯罪で蠢く街と言うイメージがあり、知ってて近づくものはなかなかいないのだ。
つまり、この街に足を運ぶ者は、悪行を尽くした罪人、警察から逃げてきた悪者、そして、何も知らずにここへ来た観光客ぐらいだろう。
だが、観光客は1割にしか満たない。何も知らずにここに来た観光客は、そのターゲットとして狙われることになるのだ。その狙われる大半が女性だと言うことは言うまでもない。



吹き付けるからっ風。
その風に黒いコートをなびかせて、進む者がいた。
黒いズボンに中は白いTシャツだろうか?男か女かは被っているヘルメットによって判別は出来ない。
その者は、歩いてこの砂漠を渡っているわけではない。
バイクのような乗り物に乗って、砂漠を進んでいく。
”バイクのような”と言う婉曲的な表現になるのにはわけがある。
それは、バイクであってバイクではないのだ。
といっても、見た目がバイクなので、バイク以外に説明しようがないが。
とにかくその人物は、北にある港町からずっと南下していた。
目指しているのは、その凶悪なならず者が蠢く温泉街だった。










短編1
砂漠の温泉街













「あー気もちいぃ!なんていい温泉なの!?」

とっても広い温泉場。一人のとんでもなくスーパーボインな女性が上を向いて一言そういうと、言葉が空に吸い込まれるようだった。
この温泉場は、回りが石造りで出来て、いくらならず者が蠢くこの街といえど、簡単に覗きが入れるような場所ではなかった。
覗きができるといえば、男湯からロッククライムのように登るしかない。

「ここに来てよかったわ〜♪」

もう一度空へ向かって、叫ぶ女性。
さっきから、感想を漏らしているのはこの女性だけだが、他にも金髪の鼻の高い20代後半の女性と緑髪でセミロングの10歳にも満たない少女がいた。
この出るところが出ている魅惑の女性は20代前半・・・10代後半の女性だった。いや、少女といっても通用するような顔をしていた。もちろん、体つきはもうすでに大人だが。

「そっちはどう〜?」

彼女が男湯に向かって言ってみる。

「うん!なかなかいいよ!!」

と、少年のような軽い声が返ってきた。
その時、声がした。

「あっ!!あそこ!だれかみている!!」

緑髪の少女が石の壁の上を指をさした。すると、その先には黒色のツンツン頭をした男がそこによじ登って、女湯を堂々と見ているではないか。
その少女に言われて、他の二人もその男を見た。

「ノゾキ、ユルセマセーン!」

どこか、不安定な口調で金髪の女性は桶をフリスビーのようにヒョイッと投げると、その男の頭ににクリーンヒットして、男湯に落ちていった。

「オイ!一体何やってるんだ!」

「何って・・・覗きに決まってんだろ!」

と、男湯の方から、さっきの少年のような声とちょっと不良ぽい声をした青年のような声が争っていた。
どたばた騒動があったようだが、そこから、難なくして騒動は鎮静化した。










ツンツン頭の黒いコートの男はロープで縛られていた。もちろん、それは覗きをしたためである。

「って、ほどけよ!!」

「女湯を覗いといて何を言うんだ!」

こげ茶のハーフパンツに紫のTシャツ。男性と言うには幼く見える少年だった。

「覗いて何が悪ィんだ!?女性の裸体は見るためにあるんだろうが!!」

「言いたいのはそれだけか!」

二人の男がにらみ合い、火花を散らす。
しかし、帽子を被り、ネクタイをしたガールスカウト風の少女が少年を引き離した。
服装はガールスカウトのように見えるが、胸はボリュームがたっぷりで肌ははちきれんほどプリプリしていた。

「ショウ、もうこの辺でいいでしょ」

「でも、コトハちゃん・・・」

「別に見られて減るものでもないしね」

コトハがそういうと、ロープに縛られた男は舌を出してべぇー!とショウに向かってやった。

「さっきの金髪の女性も、許してくれるみたいだから、別にほどいてあげてもいいんじゃないの?」

「コトハちゃんはいいだろうけど、僕は・・・」

ショウはうつむいて何かを言いかけたが、言葉を飲み込んでしまった。

「どうしたの?」

「・・・いや、何でもない・・・」

「じゃあ、先に私は宿に行くわよ」

「え!待ってよ!」

少々慌てた声をしながら、ショウはコトハの後を追いかけていく。

「てめぇ!ちょっと待て!ロープを解きやがれ!!」

ぽつんと男は残されてしまったのであった。














ロケット団とダークスターの戦いから、もう4年が経ったのね。
あのときの私は、ヒロトさんに私のことを好きになってもらおうと必死だった。
あんなに人を好きになったのは初めてだった。そう、今までもこれ以降もないと思わせるくらい私は必死にアプローチしていた。
でも、それはかなわぬ願いだった。
ヒロトさんには好きな人がいた。
その気持ちは私がヒロトさんを思うくらい・・・いや、それ以上だった。
何せ、彼女を助けるために命を賭けるくらいなのだから・・・。
ヒロトさんの想いというのは、好きになるというよりは愛と表現する方がいいかもしれないわね。
私だったら無理かもしれない・・・。
いいや、絶対無理・・・どんなに人を愛していたとしても、自分を犠牲にしてまで相手を救いたいとは思えない。
そこで私は気づいた。
私はヒロトさんを好きになる資格がないと・・・
決して、ヒロトさんに近づけるわけがないんだと・・・



その騒動の後、私はオト姉ェと一緒に旅をするのをやめた。一方的に私が一人で旅に出ると決めたからだ。
オト姉ェは反対すると思っていた。だけど、オト姉ェは意外にもOKをしてくれた。
オト姉ェもなんだか分からないけど、何かに迷ってみたみたいで、一人で旅をしたかったみたい。
それから、山を登ったり、海を渡ったりして、様々な場所に一人で旅に出たんだけど、私のバトルの腕はあれから衰えていた。
どこでバトルしても、負けるか、ぎりぎりで勝つかだった。
その原因をオト姉ェがいないからかと考えていたけど、どうもしっくり来なかった。
一人で旅をするようになってからも、時折町で踊ったり、歌ったりして、踊り子としての役目を果たすことは欠かさなかった。

憧れた一人旅・・・オト姉ェがいないから、余計な文句も言われないし、気遣う必要もないと考えていたけど、一人は寂しかった。



そんなある時、ゴロツキに囲まれて、私はバトルを挑まれた。
以前なら、軽くあしらえたそいつらのレベルでさえ私は勝てなかった。
そして、捕まって観念したときにショウに会ったの。

ショウもあの事件以降、お姉さんと別れて、一人で旅をすることにしたらしい。
話ではお姉さんは姉弟の目標であるタッグバトルマスターを諦めて、別の目標を掲げて歩き出したらしい。

その彼は私を助けようとして、ゴロツキどもに挑んでいった。実力は勝っていた。だけど、多勢に無勢でショウはぼこぼこにされてしまった。
それでも彼は無事でよかったといってくれた。
以前、私は落ち込んだショウに声をかけたことがあった。
私が元気のない顔をしていたから、声をかけようとしたところで、ゴロツキどもが襲ってきたらしい。



それから成り行きで私はショウと旅をすることになった。
彼の言う、タッグバトルマスターを目指して、様々な大会に参加して荒らしまくっていった。
それとともに、私の力は、以前と同じくらいにまで戻すことが出来た。
もちろん、今はショウよりも私のほうが実力は上なの。



様々な地方の大会を一通り参加してたまにはバトルのことを考えないで来たのがこの温泉街だった。
この温泉街に来る前に、オト姉ェから連絡が来た。
それはポケモンセンターにあるメールボックスからなんだけど、そこに書いてあった内容は、オーレ地方のハルキとカレンが1年前に結婚して、半年前にはサトシとカスミが結婚したと言うことだった。
大体同じ年のカスミやカレンが結婚したと聞いて、私はとても驚いた。
このメールの内容からすると、オト姉ェはまだ結婚していないらしい。まだ、誰かを探しているみたい。
結婚・・・まだ考えたこともなかった。
大体結婚をすると、家を持ち、旅に出ることはしなくなるのが主なのよね。中には、そうじゃない人もいるようだけど。
私の周りの男で目ぼしい人はいなかった。
・・・。
いや、いた。
一緒に旅をしているショウ。
でも私はショウを男として意識をしたことはなかった。
背も私より低いし、声だって、男性というよりも、少年のようにキーが高い。
嫌いか?と聞かれると、そうではないと答えるし、好きか?と聞かれると、返答に戸惑うし・・・。
一緒にいて嫌ではない。
ショウ・・・ショウは私のことをどう思っているの?
ショウの答えによっては私は・・・・・・・・・



私も今年で19歳になる。そろそろ考えた方がいい時期なのかな?














「ロープを解けっー!!」

相変わらず、周りの者たちは男を全く気にせずに通り過ぎてゆく。
しかし、不意にロープが緩んだ。

「ん?何だ?」

緩んだと思って後ろを見ると、どこかで見たような白いワンピースの上に青い袖なしシャツを着た緑初のセミロングの女の子がいた。彼女が、男のロープを解いたらしい。

「・・・一応礼を言わなきゃな。ありがとな」

ぶっきら棒に男がそう言うと、その子は右手を差し出した。

「ん?その手は何だ?」

「おかねちょうだい!」

「はぁ?」

「さっき、わたしをみたでしょ?」

「お前を見た?いつ?」

「おじさん・・・さっき、うえからみていたでしょ!」

ふと、男は思い出す。

「お、おじ・・・!?俺はまだ21になったばかりだ!!それと、誰がてめぇを見てたって?て言うか、あの時てめぇいたか?」

「いたよ!だから・・・」

男は大きなため息をついた。

「誰が、てめぇみたいなガキに覗き料なんか払うか!」

男は一括した。その子はビクッとして一歩下がった。ガキと呼ばれたその子は、せいぜい6〜7歳くらいで、男があしらうのも無理はなかった。

「それにガキの体なんて興味ねぇんだよ!実際、金髪の女とコトハって奴しか気づかなかったしな」

「わたしもいたって!」

「居ようが居まいが関係ねえよ!せめてあのコトハって奴ぐらいの体になったら考えてもいいがな!ガキは帰って、ママにでも甘えてろ。俺は忙しいんだ!」

そう言って、黒いコートを翻して歩き出そうとする男。

「ママは・・・・・・じこでしんじゃったの・・・・・・」

ポツリと漏らす、少女。その顔は悲しげだ。

「ふん、じゃあ、パパに甘えるんだな!」

「パパは・・・・・・しらないの・・・」

シクシクと、泣き出す少女。

「じゃあ、ここで野垂れ死ぬんだな。俺は知らねー」

泣き出す少女を見ず、男はそのまま歩いて去っていった。少女はそのまま、泣いていた・・・。
男が見えなくなるまで、様々な人が通り過ぎるけど、誰も女の子を気にも留めなかった。

「大丈夫かい?」

しかし、一人の青年が手を差し伸べた。

「全く酷い男だね・・・。酷いのはあの男だけじゃなくてこの街の住人もだけどね。俺の名前はカツトシ。君、名前は?」

少女の目線に合わせて腰を低くくし、優しそうな声で話しかける青年、カツトシ。
涙を拭いながら、少女は顔を上げた。

「・・・カズミ・・・」

「そうか、カズミちゃんか・・・どうしたんだい?よかったら、力になるよ?」

すると、カズミと名乗る少女は、カツトシにいきなり抱きついて、手をカツトシの腰にまわした。

「そうか・・・寂しかったのか・・・」

抱き寄せて、愛おしそうにカズミの頭を撫でる。

「わたし・・・ひとりなの・・・。ママはこのまえ、しんじゃったの。パパは、いないの・・・」

「いないって?」

「わからないの・・・うまれたときから、パパはいないってママにきいたの」

「(そうか・・・この子のお父さんはお母さんに子供を押し付けて、雲隠れしちゃったんだな・・・)わかった・・・僕がついていてあげるよ。だから、もう寂しくないよ」

「・・・・・・・・・うん」

俯いて、頷く。

「さて、そうと分かったら、今日の泊まるところを探さないとな!」

「そこのお前・・・そこの女の子を渡してもらう!」

「誰だ?!」

カズミを後ろに隠して前に出るカツトシ。目の前には、数人の集団が睨んでいた。

「(穏やかには見えないな・・・それにしても、僕よりも年下だよな・・・?)」

カツトシの見立ては間違っていなかった。その集団の平均年齢が大体15〜16歳くらいで、22歳であるカツトシから見れば年下で、服装は少年が白いワイシャツの黒のスラックス、少女が紺色のスカートと白いブラウスで統一されていて、突っ張っているようなイメージを持つ不良たちだった。

「一体この子をどうするつもりだ?」

「お前に説明する義理はない。さっさと渡せ!」

「(そういえば、最近子供を誘拐している奴らがいるって聞いたことがある・・・もしかして、こいつらが?)」

カツトシが町の情報を聞いてそう考えていた。
珍しい土地を探して旅をする彼は3日前にこの街にやってきていた。
この町に来て、ただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
それは、どこかおぞましい禍々しい悪意が感じられる・・・そう感じ取っていた。
この街には人を思いやることも助けることもしない。
そんなこの町にカツトシは寒気を感じていた。

「(そうだとしたら・・・渡すわけにはいかない・・・)・・・渡さないと言ったら?」

ふと、集団の中に隠れていた少女がクスッと笑った。

「力づくで、奪う!」

少年がボールを繰り出して、襲い掛かってきた。中から出てきたのは、程よく太った猫・・・ブニャットだった。

「やれ!『シャドークロー』!!」

瞬時にカツトシとの間合いをつめて、爪を振り下ろす。太っているのにどこからそのスピードは来るのだろうか?謎である。
だが、シャドークローを鞭のようなもので巻きつけて、攻撃をいなした。

「『パワーウィップ』!!」

攻撃の隙間を狙い、超強力な鞭をブニャットに撃った。
ブニャットは吹っ飛ばされて、トレーナーの目の前まで転がって踏みとどまった。

「一発では無理か・・・」

「俺のブニャットはこの脂肪でダメージを吸収する。俺のブニャットに勝つのは不可能だ」

少年は不敵な笑みを浮かべて、カツトシに言った。

「それはどうかな?」

カツトシもにやっと笑った。

「さぁ、行くぞ!マスキッパ!『パワーウィップ』!!」














「ここか・・・」

黒いコートの男は砂漠の中乗ってきたバイクを横において、掲示板を見ていた。そこには、顔がずらっと並べられていた。正確には、”WANTED”と書かれた張り紙・・・つまり賞金首のリストだった。
男は次々とそのリストをチェックしていった。





司馬のタスク
懸賞金・・・52万ポケドル
所属・・・水郡



破殻のシロヒメ
懸賞金・・・12万ポケドル
所属・・・水郡



風帽子のハヤット
懸賞金・・・76万ポケドル
所属・・・風霧



爆撃バリー
懸賞金・・・30万ポケドル
所属・・・エビルバット



魔女ココロ
懸賞金・・・19万ポケドル
所属・・・不明



クロノスヴィーノ
懸賞金・・・13万ポケドル
所属・・・不明



蛇髪のジャキラ
懸賞金・・・20万ポケドル
所属・・・シャドー






「なんか、見たことある奴もいるな・・・それにしても・・・」

男は最後にもう一度ある手配書を見た。



水帝レグレイン
懸賞金・・・200万ポケドル
所属・・・水郡



「200万ポケドルだと・・・?一体こいつ・・・何者なんだ・・・?」

と、つぶやいたとき、何者かにぶつけられた。男はそのショックで張り紙が張ってある壁に頭をぶつけた。

「つつ・・・何だぁ!?何しやがる!!」

男は怒鳴り散らしたが、そのぶつかってきた集団は、そそくさと、街の外へ向かって消えてしまった。

「ん?」

ふと、男はさっきの集団の中に、覗き料を請求してきた少女がいたことに気づいた。

「さっきのガキ?まぁいいや。早速仕事にかかるか・・・」

(ドサッ!)

「ん?」

男が意気揚々としていたところに、人が急に倒れ込んできた。

「何だお前?」

「・・・くっ・・・俺の名前はカツトシ・・・俺の代わりにあの子を助けてくれないか・・・?」

カツトシはぼろぼろの体で必死に男に頼む。どうやら、彼は負けたらしい。

「やなこった」

「なっ!?何故だ!?」

「俺には関係ないことだ。それに、助けてえなら、てめぇが助けりゃ済む話だろうが」

「見ての通り俺は負けた・・・奴らに勝つことは出来なかった・・・だから・・・」

「だからって、何故俺に頼む?諦めれば済む話しだろーが」

これ以上付き合ってられねぇ。そう言う様に、男はカツトシに背を向けてバイクを引いて歩き出す。

「君は可愛そうだと思わないのかい?あんな小さい子がさらわれて・・・何をされるかわからないんだぞ!?相手は最近この街で名を上げている”エビルバット”なんだぞ?放っては置けないじゃないか!」

「そうか・・・てめぇはその組織の名の恐ろしさに向かっていく勇気がねえって話しか・・・」

「違う!そういうことを言いたいんじゃない!」

「ケッ、チキン野郎が・・・」

男はセリフを吐き捨てて、バイクを引いてカツトシを無視して歩き出した。

「くっ・・・あいつといいここの街の人といい、何でみんな冷たい奴ばかりなんだ・・・?」

カツトシはギュッと右手を握り締めたのだった。














月が砂漠を照らす。
砂漠地方というのは、たいてい日中が暑くなって、太陽が沈むと急激に冷え込むところなのである。
街から遠くはなれたところに寂れた建物があった。見ての通り、外装はぼろぼろで隙間風が入るようだった。
そこに数人の若者たちが入っていった。

「それにしても、さっきの奴笑えたな!」

「そうね。『パワーウィップ!』とか言って、勝手に攻撃を外しているんですもの・・・」

口を押さえてウェーブのかかった少女が言う。どうやら、笑いをこらえているようだ。

「それにあいつ、俺たち全員がかかっていっても、勝てる気でいたみたいだぜ」

ブニャットのトレーナーの少年がおどけた声で言った。

「笑っちゃうわよね!私たち下っ端はほとんど同じくらいの力を持っているのよ!ブニャット1匹に勝てない奴が全員に勝つなんて笑えるわね!!」

額にバンドをして髪を抑えている少女がバンドを外して髪を直しながら言った。

「ふっ。だけど、あいつは正々堂々としたバトルは強そうに見えたな。1対1で大会のようにトレーナーに攻撃しなければ、負けていたかもしれないかもよ」

メガネをかけたグレーの髪の少年が、左手でメガネをくいっと直しながら冷静に言った。

「でも、もっと笑えたのは、こいつが何者かって知らなかったことかだよな!!」

耳に2連ピアスをしていた少年が笑いながら言うと、他のものも皆笑って騒然とした。
ピアスの少年が左手で掴んでいるのは、先ほど捕まったはずの女の子、カズミであった。
カズミは暴れることをせず、うつむいて彼らに従って歩いていた。
すると、入り口付近でだべっていた彼らの前に、白いワイシャツに黒のスラックス、そして赤いネクタイをした男が建物の奥から姿を現した。

「成果はどうだ?」

「一応こんなもんだ。カズミ、見せてやれ!」

先ほど戦ったブニャットのトレーナーが足でカズミを蹴りつけると、ふらりと前に出されてそのまま赤いネクタイの男にぶつかった。
カズミはあるものをその男に差し出した。

「・・・これでどう・・・?」

「ふむ・・・」

カズミから受け取ったものを物色する男。それは誰でも持っている財布だった。正確には、カツトシの財布である。

「・・・5,6,7・・・9万ポケドルか・・・。なかなか上出来だ。カズミ」

赤いネクタイの男は、それだけ言うと、また奥へと去っていった。

「ちっ!俺たちの分け前はないしか!」

「仕方ないだろう。今盗んでいるお金はこれからの勢力拡大のための資金なんだ。それまで俺たちは我慢しなければならない」

「だけど・・・こんなこと続けて本当にお金なんて貯まるわけ?」

「さぁ?計画の全てはボスと側近の2人が決めることよ。私たちに権限はないわ」

少年と少女たちが愚痴をこぼす。
それをカズミは彼らのほうを見ずに暗い表情で聞いていた。

「それにしても、あんたもが気とは思えないわねぇ。あんな優しい男から平気で財布を抜き取るんだから」

ウェーブの髪の少女がカズミに言う。

「私だったら出来ないわね!」

「・・・・・・」

黙るカズミ。そこへ、また奥の方から一人の男が姿を現した。
彼の姿はマントを身に着けて、いかにも偉そうな格好をしていた。ボスのようだが、どこかボスとしての風格は欠けていた。

「あ!!ボス!!」

少年、少女たちは、そのままの体勢でボスを見る。壁に寄りかかっていたり、机の上で体育座りをしていたり、欠伸をしたり・・・ボスとはみんな呼んでいるけれども、敬う気持ちはあまりないらしい。
ボスはカズミに話しかける。

「よく働いてくれたな。だが、これでお前の役目は終わりだ」

「えっ!?」

「お前をこれから他の街に売り飛ばす。そして、金にする」

「ちょ、ちょっとまって・・・まってよー!」

カズミは慌ててボスの服の裾を掴んだ。ボスの身長はそんなに大きくないが、カズミはまだ幼く、身長もそれほどないためにシャツの裾ぐらいしかつかめなかった。

「わたしがおかねをあつめるのをきょうりょくしてくれたら、パパをみつけてくれるっていったよね・・・?」

叫ぶカズミ。しかし、ボスは言う。

「言ったぜ!だが、この程度で協力というんだというのなら、お前はもういらない!たかが、他人の財布を盗んだくらいで資金が集まるわけがないんだよ!!だから、手っ取り早くお前を売りさばいて金にしたほうが手っ取り早いんだよ!」

「そ・・・そんな・・・」

「そういうわけで、お前ら、後は任せた。俺は奥で一眠りすることにする」

カズミを蹴り飛ばして、ボスは奥へと消えていった。カズミは蹴られた腹を押さえて慌てて追いかけようとするが、少年に首を掴まれて持ち上げられた。

「だとよ、カズミちゃん」

「パパを探せなくて残念だったわね」

「気の毒だが・・・これも我が組織のため・・・最後の役に立ってもらおう」

ピアスの少年、バンドの少女、赤いネクタイの男が順々に言った。
カズミは泣きながら、消えたボスのいる通路に手を伸ばした。










2週間前、6歳の少女・・・カズミは温泉街行きのバスに乗っていた。もちろんそれは、母親と一緒だった。

「ねえ、ママ!どこにいくの?」

「フフッ」

行き先に興味心身で聞きながら、ママに甘えるカズミ。

「温泉よ!そこの温泉は美容にも体にもスタイルにもいいって聞いたことがあるのよ」

「そうなんだ〜たのしみだね!」

しかし、その会話の後そのバスは運転手がハンドルを滑らして、バスの転倒事故を起こした。
乗客はほとんどが軽症ですんだが、カズミの母は、打ち所が悪く、死んでしまった。
カズミは、母が外に投げ出してくれたために、砂漠の砂場クッションになって、擦り傷だけで済んだのだ。

それからカズミは温泉街に来た。でも、一人ぼっちだった。そこに声をかけてきたのは、赤いネクタイの男だった。
カズミはそのとき、あるときの母親のやり取りを思い出していた。





「ねぇ、わたしのパパはこの人だよね?」

カズミは部屋にあった写真を指差す。それをみて母親は、苦笑いをしていった。

「その人は私が最も愛した人なのよ。10年間私はその人を信じ続けて待ってたの。でも、彼はある事件で私のために犠牲になってしまった・・・。だから、あなたのパパは違う人なの」

「えっ!?まえはこのひとっていっていたよね?」

「この人だったらよかったのにという話よ・・・。私が勝手に捻じ曲げちゃったの・・・。そう、あなたのカズミという名前だって、私と彼の名前をあわせたんだから・・・」

「ふ〜ん・・・そうなんだ・・・それじゃ、わたしのパパは・・・?」

「きっとどこかで旅をしているわよ!今もどこかにいるはずよ」



そしてカズミはなんでもするからパパを探すのを手伝ってと男を通してボスに伝えた。
それから、カズミは必死になって盗み、スリ、万引きを中心にこの2週間を過ごしてきた。










「泣いているとこ悪いけど、あんたを街へと連れて行かなくちゃね」

「高く売れるといいな!」

「カズミちゃんよ!大丈夫だぜ!きっと、買ってくれる人が可愛がってくれると思うぜ!」

ケケケと、みんなが笑う。6歳にして、カズミはどん底の絶頂だった。あまりにも残酷だった。
この街はそういうところだった。

「だれか・・・たすけて・・・」

か細い声で言う。

(ドガーン!)

「なっ!何だ!?」

少年、少女たちはびっくりして大きな音がしたほうを見た。
大きな音はどうやら壁に大きな穴が出来たためのようだ。
大きな穴・・・その穴を開けたのは、一台のバイクだった。

「なんだ、お前は!?」

バイクから降りて黒いコートをはためかせる。ヘルメットを外すと、ツンツンとしたとがった髪型が姿を現す。
一同は、ごくりと息を飲んだ。
しかし次の瞬間。

「おぇー」

男は、膝をついて、嘔吐した。

「な、何してんだお前!!」

「キャー!汚い!!」

「外でやりなさいよ!」

「というか、お前!ここがなんだか分かってここに突っ込んで来たのか!?」

男は、少しして深呼吸して、息を整えてから、言った。

「もちろん、分かってここに来たんだぜ!それと、俺は乗り物酔いする体質なんだ。戻したからって気にするな!」

「気にするなとか、そういうレベルの話じゃねーよ!」

「それにしても、運転して酔うなんてありえるの?」

「あるとしたら、運転しなければいいのに」

もっともである。

「さっきの・・・おじさん・・・」

カズミはもう泣き止んで、男を見ていた。

「分かってきたんなら、覚悟しろ!ブニャット!!『シャドークロー』!!」

まだ、気分を悪そうにしている男に向かっていきなりの先制攻撃だった。

「・・・雑魚に用はねぇ!!」

一閃。
ブニャットに空気の刃のようなものに切り裂かれて、ダウンした。

「何が起きた!?」

「お、俺のブニャットが・・・い、一撃だと!?」

「くそっ!何だあいつは!?」

「み、みんなでやるわよ!!」

全員がポケモンを繰り出して、襲い掛かる。

「言っただろ・・・雑魚に用はねぇって!束になっても同じだ!『裂水周覇』!!」

一匹のポケモン・・・ダーテングが一振りしたとき、先ほどの風の刃が瞬時に飛び出して、全てのポケモンを引き切り裂いていった。
攻撃を受けたポケモンは全てダウンした。

「う・・・」

「そんな・・・」

「こんなことが・・・」

少年と少女たちは萎縮した。

「す、すごい・・・」

カズミは何が起きたかわからず、ぽかんと呟いた。

「やるようだな」

赤いネクタイの男が前に出る。

「てめぇに用はねえ」

「ということは、狙いはボスか?」

「何度も言わすな!てめぇに用はねえ!」

「俺は貴様に用があるんだよ!ボスの元には行かせない!」










数分後。
男は、建物の最深部まで入っていた。その後ろからカズミがひょっこりと付いてきていた。

「あのおじさん・・・なにをするつもりだろう・・・?」

カズミは信じられなかった。
先ほどの赤いネクタイの男のポケモンをわずか1分かからず全滅させて、ネクタイの男を拘束した。
少年と少女たちは恐れをなして逃げてしまった。
そして、男はボスの前に立つ。

「久し振りだな。バリーよ!」

「久し振りだと?お前は誰だ!?」

「まぁ、知るはずがねーよな。てめぇは元ロケット団幹部、高速のエドの部下。そして、俺はてめぇがヒロトに負けた後に名を上げたんだからな」

「お前・・・何故俺がロケット団にいたこと知っているんだ!?」

「元中将のバリー!てめぇの30万ポケドルの首・・・いただきに来たぜ!」

黒いコートをはためかせてボールを構える。

「頭に乗るな!!俺にかなうと思うのか!?やれ!オニゴーリ!!『アイス・ブロック・ボム』!!」

氷の塊を放出して男へと放つ。一つの塊の大きさが半径30cmほどで5つくらいの塊を連続して放出してきた。

「ケッ!」

コートの男は一匹のポケモンを出して、後は何も指示を出さなかった。オニゴーリの攻撃は、全弾命中した。
しかも、ただ攻撃が命中しただけではない。当たって塊が花火の如く弾けたのだ。
煙と冷気で視界が遮られていった。

「身の程知らずが・・・。何者か知らないが、俺の『爆撃バリー』の首を狙いにきたのが運のツキだったな」

「何だ?この程度かよ!」

「何!?」

攻撃が当たったはずの男とそのポケモンは全くの無傷だった。

「次はこっちから行くぜ!!ピクシー!『フレアーリング』!!」

炎のリングを両手で作り上げ、そのまま接近していく。そして、切り裂くようにオニゴーリを攻撃した。

「舐めるなぁ!!オニゴーリ!!『絶対零度』!!」

「そんな攻撃、レベルの低いやつにやるんだな!『サイコグラビティ』!!」

絶対零度をもろともせず、ピクシーの重力を圧縮した攻撃でオニゴーリを押しつぶしてノックアウトさせた。

「っ!!ドサイドン!ポリゴン2!まとめて行け!!

ポリゴン2が鋭いレーザーのような攻撃を繰り出し、ドサイドンは尖った角で突進をしてきた。

「ふん!なぎ払え!」

言いながら、新たにポケモンを繰り出す男。中から飛び出してきたのは、抜け殻ポケモンのヌケニンだった。
ヌケニンの特性”神秘の守り”は弱点以外の攻撃を全てガードする攻撃で例外はない。
もちろん、2匹の攻撃は全く効果がなかった。
しかも、ドサイドンのメガホーンの際に、強力な爪の一撃でかっ飛ばした。

「なっ!?バカな!?ただの攻撃でドサイドンの腹が・・・」

その一撃で、ドサイドンの腹のプロテクターが砕け散った。岩・・・鍛えればそれ以上の硬さにまでなるドサイドンの体をヌケニンの一撃で崩したのである。

「わからねえのか?てめぇのドサイドンの防御力より、俺のヌケニンの攻撃力の方が勝っていたってだけの話だ!」

「ふざけるなぁ!!ポリゴン2!『シャドーボール』を乱れ撃ちだ!!」

ヌケニンに向けて攻撃を連続で放った。

「一発でも当たれば終わりだ!!避けられるものなら避けてみろ!!」

「よけるまでもねえよ!!」

「何だと!?」

ヌケニンは、一つ一つを全て爪で弾き返して、さらにドサイドンに全て命中させていった。

「なっ!?それならこれでどうだ!?『トリ・トライアタック』!!」

トライアタックを三つ重ねて大きな一つのトライアタックを作り出した。
建物が崩れんばかりの大きさだ。

「氷、電気、炎・・・全ての属性を合わせた技だ!!破れるものなら破ってみろ!!」

「大きいだけの能無しの技だな!『消滅の光』!!」

ヌケニンが禍々しい質量の重い光を放ったと思うと、ポリゴン2の攻撃をいとも簡単に相殺してしまった。
さらに、ポリゴン2の後ろをいとも簡単に取って、あっという間にダウンさせてしまった。

「ば、バカな!?・・・俺のポリゴン2の最強の攻撃をあのへんてこな光で消しただと!?それと同時に後ろを取りやがっただと!?」」

「てめぇは・・・雑魚だな。30万ポケドルの価値もねえ」

「・・・ふざけるなぁ!!俺はロケット団を辞めてここに来て、自分の世界征服を達成するための組織『エビルバット』を組織したんだ!!貴様のようなどこの馬の骨とも知らないよう奴に負ける訳がないッ!!ドサイドン!命がけで撃て!!最強の攻撃だ!!『岩石波動砲連弾』!!!!」

ドサイドンは立ち上がり、静かに息をして力を溜めていった。

「この攻撃で貴様は終わりだ!!塵となれ!!」

「御託は終わりだ。つーか、隙がありすぎだ」

「なっ!」

力を溜めているドサイドンの前に現れたのは、今まで小さくなって姿をくらましていたピクシーだった。

「終わりだ!『モルガナ彗星拳』!!」

そういうと、ピクシーが目にも止まらぬ速さで拳を打ち出して行った。しかもその威力は一撃一撃がドサイドンの腹に食い込み、岩を砕いていくほどで、攻撃が終わったとき、ドサイドンについていたはずのプロテクターはぼろぼろになっていた。

「あぁ・・・」

バリーは後ずさりをした。

「最強の技というのはな、隙がなく、それでもって絶対的な破壊力のある技のことを言うんだぜ!!」

男はそしてそのままバリーの腹を殴って気絶させたのだった。

「ケッ!こいつが30万ポケドルの賞金首とは、マジで警察の目もどうかしてやがるぜ」

「おじさん・・・たすけてくれてありがとう」

「助け?俺が何でてめぇを助けねーと行けねぇんだ?俺はエビルバットの噂を聞きつけて、こいつの首を取りに来ただけだ!」

そういって、悶絶しているバリーの腹を足でつつく。

「・・・ねぇ・・・おねがい・・・わたしをいっしょにつれていってくれない?なんでもするよ・・・」

カズミが懇願のようにお願いをする。

「何度も言わせんじゃねぇ!俺はガキには興味がねぇんだ!」

「わたし・・・いくあてがないの・・・」

「さっきの優しくしてもらった男がいるだろ?あいつに頼めばいいだろうが!」

「できないよ・・・あのひとのさいふ・・・ぬすんじゃったんだもの・・・」

「謝ればいいだけの話だろうが。あいつのことだから許してくれるだろうが」

「おじさん・・・わたしはおじさんと・・・」

「だぁ!何度も言わすな!俺はおじさんじゃねえ!それに一緒には行かねぇ!」

「・・・」

「だが、あいつのところまでは送ってやる!それでいいだろ!!」

男はバイクに乗って、カズミを乗せて、バリーをバイクの後ろに括りつけて、エビルバットのアジトを後にしたのだった。














夜が明けて、日中になって、2人は昨日の騒動があった場所に戻ってきた。

「カズミちゃん!!」

カツトシは、優しい笑顔でカズミを迎えた。

「大丈夫!?ケガはないかい!?・・・君、彼女を助けてくれてありがとう!」

男は頷こうともせず、ただバイクに寄りかかって、2人を見ていた。顔色は悪かった。どうやら、またバイクで酔ったらしい。
そしてカズミは、地味な財布をカツトシに差し出す。

「これは・・・僕の財布!?」

「ごめんなさい・・・わたしがぬすんでいたの・・・わたし・・・パパをさがすためにさっきのひとたちにきょうりょくしていたの・・・ごめんなさい・・・」

カズミは泣いて謝る。

「(そうか・・・そんな理由があったのか・・・)大丈夫。君が反省しているなら許すよ」

「ほんとうに?」

「ああ、本当さ」

カズミはほっとした。

「それじゃ、今日の宿を探そうか・・・」

と、行こうとするところへ、男がカツトシの肩をつかんだ。

「気が変わった。てめぇみたいなチキン野郎にこいつは渡せねぇ」

「な、何だと!?」

カズミはポカンとしていた。

「それじゃ、君が彼女と一緒に行くというのか!?」

「それも少し違うな!とりあえず、てめぇには渡せねえ」

「・・・カズミちゃんはどうしたいんだい?」

「わたしは・・・」

カツトシの顔を一瞥した後、男の足に組み付いた。

「そうか・・・分かったよ。カズミちゃん、お父さんが見つかるといいね」

「うん・・・カツトシさん!ありがとう」

カツトシは笑顔で2人が街の中へ消えていくのを見送っていた。

「(さて、俺はこれからどこに行こうかな・・・?)」

カツトシは、また、見知らぬ土地を目指して旅に出たのだった。






「おじさん!これからよろしくね!」

「・・・。最初に言っておくが、俺はてめぇと旅をする気はねぇぞ!」

「え!?どういうこと?」

「後で説明する。そして、何度も言うようだが、俺はおじさんじゃねぇ!まだ21歳だ!」

「じゃあ、なまえをおしえてよ!おじさん!」

「・・・ラグナだ」

自分の名前を一回だけ、ポツリと言った。

「わかった!ラグナおじさま♪」

「・・・もう何とでも呼べ・・・」

黒いコートの男、ラグナはため息を付いた。

「あ!昨日の除き男!!」

「あ゛?」

後ろを振り向くと、昨日、温泉でもめたショウの姿があった。彼の手にはソフトクリームが握られていて、口の周りにはソフトクリームが付いていた。
彼の隣にはコトハもいて、同様にソフトクリームを美味しそうに味わっていた。

「昨日は、よくもコトハの裸を見てくれたな!」

「・・・あ゛?だから、昨日も言っただろうが!女の体は見る為にあるんだろうが!!」

「昨日は昨日!今日は今日!今日は許せないんだ!!」

「まぁまぁ、ショウ。落ち着きなさいよ!」

「でも・・・」

そういって、コトハはハンカチを取り出して、ショウの口の周りを拭った。拭いてもらって、ショウはうれしそうだ。

「ところで、昨日の女の子も一緒なのね!?」

「あ?だからなんだ?」

「女なら誰でもいいんだなぁ〜と思って。ショウもそう思ったでしょ」

「うん、そうだね」

「俺はガキには興味がねぇっつーの!!」

ラグナは大きな声で言って、コトハとショウに噛み付く。噛み付くといっても、本当に噛み付いているわけではありません。

「ショウ、それよりも、今日は秘湯を探すわよ!」

「秘湯なんてあるのかなぁ・・・?」

「そこなら混浴のはずよ!!」

「っっ!!」

コトハの突拍子もない発言に動揺して、ショウはソフトクリームを顔に押し付けてしまった。顔はもうソフトクリームだらけだ。

「さぁ!行くわよ!!」

ショウが大変な状態になっているのも気づかず、コトハは走り出す。

「待ってよ〜!コトハ!!」

ショウも慌てて走り去ってしまった。

「あのふたり、なかがよさそうだったね」

「そんなの俺の知ったことじゃねぇ」

ラグナとカズミも先ほどの2人と反対の方に進んでいったのだった。














数週間後。

「このふねにのればいいの?」

「ああ。この船に乗れば、俺が言った場所に着く。そこでてめぇは過ごすんだな」

とある港。ラグナはカズミを見送っていた。

「じゃあな」

「ありがとう!ラグナおじさま!!」

彼女は船に乗ってこの地方を後にする。





―――「え?人を預かって欲しい?それも子供!?ラグナ・・・あなた一体何を考えているの!?」

ラグナはとある知り合いに連絡を取ってカズミを預かってもらうように頼んでいた。

―――「別に何を考えていようがてめぇに関係ねえだろ!?」

―――「関係あるわよ!大変なのは私なのよ!それにフウトさんにも迷惑かけることになるし・・・」

―――「あの酔っ払いは関係ねーよ。俺はてめぇに頼んでるんだ」

―――「はぁ・・・それが頼む人の態度なの!?」

彼女は怒っているというよりも、呆れているようだった。

―――「あいつは・・・てめぇに似てんだよ」

―――「え?」

―――「親がいなく、兄弟もいない・・・そして、一人ぼっちだ。だから、てめぇなら頼めると思ってな」

―――「・・・」

―――「もちろん引き受けるよな?」

―――「あなたはいつも勝手よね。そうやって、いつも強引に決めるんだから・・・。分かったわよ。カズミちゃんは私が責任を持って預かるわ。ジョウチュシティで待ってるから」

―――「頼むぜ。ユウナ」

ラグナは安心して、ポケッチのスイッチを切ろうとしていた。

―――「ところで、私から頼みがあるんだけどいいかしら?頼みというよりも、依頼ね。受けるかしら?」

―――「ふっ愚問だな!金の上での依頼は俺は断らねぇぜ!」

その依頼を聞いた後、ラグナはポケッチの通信機能をオフにしたのだった。





俺は、何であいつのことを気にしたんだろうか?
ユウナと状況が似ていたからか?
そんなのしらねぇな・・・。

ラグナはフッと鼻息をして、ヘルメットをかぶってバイクにまたがった。そして、依頼をクリアするために目的地へと向かっていったのだった。










アトガキ

書いていて思ったことは・・・『長い』の一言ですね。
調べてみたらWWSの一番長い74話を遥かに凌駕しています。
短編なのに内容が長編になって申し訳ありません。(汗)


内容はWWSから4年後の世界。場所はゲームにはなかった場所になっています。ただ、とある地方に近いという設定ですが。
キャラたちも、環境が変化したり、年齢を重ねたことで変わったこととかあります。

ショウとコトハはそれぞれ姉と別れて、二人でダブルバトルの道を歩んできました。でも、この話で大きな変化があったのは、言うまでもありません。一回目と二回目で微妙に変化があります。もちろん、その二つの登場の間に大きな変化があったのですがね。(何)

カツトシは64話にチラッと登場しています。ただ、この時はポケモンバトルにならず、一瞬で散っていますが。シンオウリーグを一度制したという実績の持ち主ですが、運がないという悲運の持ち主でもあります。(爆)

ラグナはこの4年で圧倒的に強くなって、この時では賞金稼ぎとしてあらゆる土地を旅して回っています。その間に誰とも女の子とは付き合わず、ただひたすらお金を求めて旅をしています。ただ、覗きをすることはしょっちゅうです。(笑)

この短編で初登場なのはなんと言ってもカズミですね。まだ、6歳という少女。事故で母親を亡くして、父親は消息不明という彼女はこれから大変な未来が待っていることでしょう。



この話には先があるのですが、それはまた次の機会にします。
WWSの4年後の物語ということで、考えています。
ただ、その前にWWSの2年後の物語の方が先なので、そちらから着手しなければなりません。

さて、これからも小説の執筆をがんばって行きたいところですね。

 

[一言感想]

 ショウとコトハの仲は、これからも楽しみですね。
 一方でラグナは、いつ彼女ができるんでしょうか(ぇ)。
 カツトシ……すみません、覚えてない(蹴)。
 ともあれ、今回は色んな面々の未来がうかがえて面白かったです。
 あと今までヒロトとコトハがくっついて欲しいと思ってた自分ですが、ショウとコトハもいい感じに思ってます。
 ……オトハはヒロトとは無理かなぁ(オイ)。

 

戻る