ここは田舎のような土地だった。
 だが、田舎といえどもここにはナルトという岩系使いのジムリーダーが町を束ねていた。
 また、市長の名はクラキチといい、市民は彼に信頼を寄せてこの町を守ってきた。

 それ以外は何の観光も名産もない……この町の名はオートンシティ。
 南にはジョウトとカントーの間にある危険な山といわれるシロガネ山のレベルに匹敵する野性ポケモンがうじゃうじゃいるオートン山がある。
 大抵のトレーナーは下のオートントンネルを使って、この町へとやってくる。
 南東には、ノースト地方の核といえるジョウチュシティ。
 北には世界有数の図書館があるブーグシティ。

 ……やはり他の町と比べると、どこか見劣りする町……それがオートンシティだった。





「あれっ?」

 8歳くらいの幼い女の子が首を傾げて、とある建物をジーッと見ていた。

「どうした?ナルミ」

「お兄ちゃん……変な建物があるよ」

 お兄ちゃんと呼ばれる彼がこの時のオートンシティのジムリーダーのナルトである。
 そのナルトは妹に指摘されて、う〜ん……と頷いた。

「確かに少々風変わりの建物のようだね」

 幼いナルミの手を引いて、ナルトはレンガ造りで建てられた風変わりな建物へと入っていった。

 ナルトはこのとき、17歳。
 妹のナルミと一回り年の差があった。

「お客さんですか?」

 中にいたのは青のオーバーオールを着て、白い手ぬぐいをした15歳ほどの少年だった。

「お客さん?」

 ズイッと顔を寄せる少年にナルトはたしろいだ。
 その顔を見て、少年は落ち込んだ。

「なんだ……違うのか……。初めての客だと思ったのに」

「それより、いったいいつからここに?」

「あ、自己紹介がまだだったようだ!僕の名前はフウト!メカニックマンさ!」

「いや、ええと……まあ。いいや。俺の名前はナルト。こっちは妹のナルミ。……メカニックマンということは、機械の扱いに長けているということ?」

「そういうことさ」

 と、フウトは持っているレンチやスパナをくるくる回している。てか、危ない(ぁ)

「お兄ちゃん」

「ナルミ?」

 何故かうずくまっているナルミ。

「ポケギアでね、時間をね……調べようとしたら……動いてないの……」

「ナルミにやったポケギアは古いタイプだったからなぁ……。そろそろ買い替えの時かな?」

「ヤダ!お兄ちゃんから貰った大事なポケギアを捨てたくない!」

「そんなこと言われたってなぁ……」

 頭をぽりぽりと書きながら困った顔をするナルト。

「それなら、僕が直してあげるよ?」

「え?」

「本当?」

「そのくらいなら1日預けてもらえれば何とかなるさ」

 フウトは屈んでナルミと同じ目線で優しく言った。
 ナルミは頷いて、そっとフウトの手にポケナビを置いた。

「本当に大丈夫なのかよ?」

 ナルトは不審そうな目でフウトを見る。

「任せておいてくれよ。コレでも腕は一流だからさ!明日また来てくれよ」

 フウトの初めての修理。それはナルミのポケギア。

 オートンシティで店を構えてから初めての客であるナルミは、この出来事をきっかけにこの店を出入りすることになる。

 

 

 

ショップ・GIAと愉快な仲間たち (短編3)

 

 

 

 1


 出会いは様々な形でやってくる。
 ナルト&ナルミ兄妹のように初めてのお客さんで出会うこともあれば、開店後3年後にやってきたヒロト&トキオのように噂を聞きつけてやってくることもある。(WWS7話参照)
 また、じわじわと知り合いになっていくものもいた。

 フウトの店が始まって6年後のことである。





「フウト……俺はこのままではいけねえと思っている……」

 白いワイシャツとスラックスを着た少年が備え付けのカウンターをバンッと叩いた。

「このまま、暴走族を続けていても、俺や仲間たちの身には何にもならねえと思うんだ!フウト、あんた何かいい話はないか!?」

 男にもかかわらず長い黒髪をポニーテールでまとめた彼は、一段と様になっていた。

「……バン……。……一応、ないこともないけど……」

 ……バン。
 彼と出会ったのは、3年前の今日。
 暴走族の彼は、バイクが故障した時にこの店によって、修理を依頼したのである。
 そのときに、彼の腕に惚れて、しょっちゅうこの店によることになったのである。

 それから、彼はミナミやジュンキと共にこの町にいることが多くなったのである。

 ただし、彼らは明らかに14歳とかでバイクを乗っているので完全に無免許運転です(ぁ)
 フウトは注意しないのかというと、注意してもやめそうになかったから……だそうだ。

「危険な仕事だよ?」

 しかし、バンは鼻で笑った。

「仕事に危険は付き物だろ?てゆーか、スリルのねえ仕事なんて逆に願い下げだぜ!」

 フウトのいう危険な仕事というのは、裏で取り寄せている情報の確認やポケモンの捕獲依頼……札付きの賞金首を捕まえる仕事など、様々な種類のものだった。

「上等だぜ!」

 バンは椅子を蹴っ飛ばすように立ち上がる。

「その依頼、俺たちが全てクリアしてやるぜ」

 バンは、元暴走族のメンバーのうち、ミナミとジュンキと共にチームを組んで依頼をこなすようになった。
 後に彼らは『チームトライアングル』と呼ばれるようになったのである。

 余談だけど、このときから、バンは煙草を吸い始めるようになったとか(何)





 また、憧れでこの店に駆けつけてきたものもいた。

「ねぇー……フウトさん」

 椅子に座って足をブーラブーラしながら、ミニスカートにブラウス姿のナルミが言った。
 このとき彼女は16歳……彼氏の一人や二人いてもおかしくはない年頃である。

「2人いたら不味くない?」

 ツッコミありがとうね。でも、君ならいてもおかしくないよなと思ってさ。

 とりあえず、彼女は10歳の時からナルトに変わってジムリーダーに就いていた。
 ナルトの時は岩系のポケモンで有名だったのだが、ナルミになってからは、オートンジムは鋼と電気タイプのジムになっていた。

「はぁ……退屈……。それにフウトさん。昼間から酒を飲んでいていいの?」

 ナルミが呆れているのは、フウトの酒癖だった。
 現在フウトは23歳。
 酒を飲んでもおかしくない歳なのだが、昼間から酒を出す分、少々癖が悪くなっていた。

「うっぷ……少しくらい飲んでも……平気ら!」

「全然平気に見えないんですけど」

 すでに呂律が回っていない状態を目の当たりにする。

「あ、決勝戦が始まるみたい」

 テレビに目を移すとノースト大会の決勝戦が始まっていた。
 ノースト大会のルールも最近改正されて、決勝戦はフルバトルというルールに変わっていた。

”赤コーナー!ブラウンタウン……リク! 青コーナー!マサラタウン……サトシ!”

「二人とも、ジム戦で私にストレート勝ちして行ったのよね……あの時は悔しかったわ……」

 ナルミはギュッと、拳を握り締める。
 そんなことは気にせずフウトは酒を飲みながら、依頼されていた冷蔵庫の修理を行っていた。

 試合は大熱戦となった。
 2人とも、全力を出しつくし、互いに最後のポケモンになった。

”ニドキング!『どくづき』!!”

”ピカチュウ!『アイアンテール』!!”

 最後の一撃は、ピカチュウがニドキングの攻撃を掻い潜って顔に命中させた。
 その一撃でニドキングは倒れ、同時に大歓声が上がる。

”ニドキング戦闘不能!よって勝者、マサラタウンのサトシ!!”

「あー。サトシくんが勝ったかー。私、リクくんの方を応援していたんだけどなぁ」

 商店街のくじ引きが外れて景品がポケットティッシュだったみたいに落ち込むナルミ。

「リクといえば……以前ウチにも来たなぁ」

 思い出したようにフウトが零す。

「それはそうでしょ。ラジオを直すところを紹介したのが私なんだから」

「あー。それ、ナルミちゃんの紹介だったのかー。うっぷ」

「そうよ。って……少しは酒やめなさいよ」





 その一週間の出来事だった。

「はぁ……退屈……」

 一週間と同じ時間、同じように椅子に座ってぶらぶらとしている少女ナルミ。
 てか、こんなことやっていていいのか?
 本職(ジムリーダー)はどうしたんだ?

「う〜ん……」

 そして、フウトは珍しく酒を飲んでいなかった。真面目に作業に取り掛かっていた。

「フウトさん……本当にポケモンセンターの回復装置なんて直せるの?」

「僕に直せない物はない!」

「本当に?」

「……多分」

「自信あるんだか無いんだかはっきりしてよね」

 そんな訳で、オートンシティのポケモンセンターの機械の一部を直しているフウト。
 朝早くに何者かによって機械が壊されていたことから、フウトにこの依頼が回ってきたらしい。
 そして、朝から昼下がりの今までずっとフウトは直しているのである。
 結構苦戦しているようだ。

「私もそろそろジムに戻ろうかな」

 器をそのままにして外に出ようとするナルミ。
 てか、昼はいつもここで食べているらしく、本日は炒飯だったらしい。
 フウトにはここは定食屋じゃないぞと、たまに言われているらしい。

 意外だが、フウトはそれなりに料理はできるらしい。(ナルミはフウトに劣る)

「ちょっと待った。ナルミちゃん、少し手伝ってくれない?」

「フウトさん……私、これからジムに戻るんですけど」

「う〜ん……」

 そんな時だった。

「こんにちは〜」

「……お客さんかな?」

 ナルミが玄関に顔を出すと見知った少年がいた。

「リクくん?」

「あ、ナルミさん。お久しぶりです」

 少年リクは丁寧にお辞儀をする。
 あまりにも律儀だったのでナルミも自然とお辞儀を返した。

「大会は残念だったわね。テレビで見ていたわよ」

「はい……でも、いいんです」

「で、今日はどうしたの?」

「実は……」

 後頭部に手をやって照れたように何かを言おうとした。

「君はリク?そうだ、ちょっと手伝ってくれないか?」

「「え?」」

 突然出てきたフウトによって連れて行かれるリク。
 そこはフウトの作業場……つまり回復装置を直している場所だった。

 作業場といってもそれほどの広さは無く、椅子が3つくらいとカウンターが置いてあり、また、作業ができるスペースがちょっとあるくらいだった。
 しかも、レンガ造りの一軒家の中にあるから、あまりきっちりとしたものではない。

「そこを持ち上げて欲しいんだ」

「あ、ハイ」

 とか何とか、フウトはリクに指示を出して行き、トントントンッとあっという間にポケモン回復装置の修理を終えてしまった。

「ふぅ……助かったよ」

「って、いくらなんでも早すぎじゃないの?(汗)」

「これもリクのおかげだな。僕が何かご馳走するよ」

「え?そ、それよりも僕……」

「ほかに何か希望があるのかい?」

 リクの顔を覗き込むフウト。

「僕を弟子にしてくれませんか?」

「弟子?」

「ハイ。以前にここに来てラジオを直してもらったときから、フウトさんの腕に惚れたんです。僕はポケモントレーナーよりも機械を扱う仕事に就きたかったんです。親がどうしてもトレーナーになれって言うから……」

「…………」

「僕自身、機械の扱いに慣れているほうだとは思ったんですけれど、あの時、僕にはラジオを直せませんでした。だから、僕よりも技術のある人に教わりたいと思っていました。だからお願いします!」

「リクくん。ポケモントレーナーの道はいいの?」

「別にメカニックになったって、ポケモントレーナーはできますよ?」

「……まぁ、それもそうよね」

 ナルミは軽く頷いた。

「僕も別に構わないよ。正直、人手が欲しいなと思っていたところだし」

「それじゃあ……」

「ああ、よろしく頼むよ」





 こうして、リクがフウトの店に下宿で住み込むことになった。

 リクが住み込むようになってから変わったことがいくつかあった。

 レンガ造りの家の中にある作業場とは別にもう一つ作ったこと。

 作業するには狭いということもあり、改めて新しい作業場を庭に作り上げた。

 鉄板やら銅やらで作られた不恰好な作業場だったが、中は案外しっかりとしていた。

 また、この頃からフウトの店はショップ・GIAと看板を掲げるようになったのである。










 2


 リクがフウトの店に住み込みで働くようになってから1年と数ヶ月がたったあるとき、フウトは作業場(一軒家の方)の地下にある情報室でとある情報を目にした。

「(……ロケット団壊滅……謎の5人の集団『ダークスター』の存在が明らかに……)」

 ジョウト、カントー、ノーストと悪名を積み重ねていた組織、ロケット団。
 10年ほど前から、ノースト地方で活動をしていて、最近はカントーに本社を置いていた。
 そして、つい先日、カントーで大規模な襲撃が行われた。
 そのロケット団によるカントー地方の被害は甚大なものだった。

 ニビシティは一部建物が崩壊、ハナダシティはケガ人が多く、クチバシティはロケット団の逮捕者が大量に出た。
 タマムシシティ、ヤマブキシティも被害はあったが、どこよりも被害が深刻だったのは、セキクチシティだった。
 セキクチシティはほぼ壊滅状態だった。その原因を作ったのは……誰だかわかるよね?(何故聞く)

 しかし、ロケット団は十数人の若きトレーナー達によって野望を阻止され、壊滅させられたのだった。
 また、その裏に潜んでいた『ダークスター』は何を企んでいたかは、わかっていない。





「ちっ、ロケット団なんて俺様の手で壊滅させてやりたかったぜ」

 煙草をプカプカと吸いながら、バンはバチンッと拳を握って手と手をガチンと合わせた。

「バンさん……あまり危ないことに突っ込まない方がいいですよ?」

 リクが控え目にバンを諭す。

「それにしても、本当にロケット団が壊滅してよかったわ」

「そーだね☆」

「ああ」

 ナルミの言葉に、カウンターでコーラフロートを飲んでいたミナミと隅っこでコソコソと手帳にメモをしていたジュンキが頷く。
 現在、彼らはもう一つの庭の作業場の方で、昼食中らしい。
 作ったのはバンで、みんなにサンドイッチをご馳走していた。

 意外に器用だな……バン(何)

「そういえば、リクくん。フウトさんは?」

「地下室に行ったみたいだよ?」

「そうなんだ……バンさんのサンドイッチおいしいのに……」

「お褒めに扱い光栄だぜ、ナルミ」

「アハハッ! バンちゃんのその言葉遣い似合わない〜☆」

「うるせえ!ミナミ!」

 ミナミの頭を軽く叩こうとするが、するりとミナミはかわした。その反動でバンは椅子からずるりとコケ落ちた。

「それより、みんなでトランプやろーよ☆」

 どこからかとも無く、ミナミはトランプを取り出した。

「楽しそうだな」

「やりましょう!」

 バンとナルミが賛成すると、一斉に輪を作った。
 ……が?

「ジュンちゃんもやろうよ〜」

「……俺はいい。やることがある」

 ジュンキは一人で隅っこで手帳をゴソゴソと書いていた。

「ジュンキ!だから、お前は影が薄いって言われんだよ!それがいい所だがよ」

「それって良い所なんですか?(汗)」

 矛盾しているバンの言葉に突っ込むリク。

「あと一人いたほうが面白いのに〜☆」

 ムスッとミナミがむくれた。

「へぇ。面白そうなことしてるじゃねぇか。俺も混ぜてくれねぇか?」

「!?」

 すると、黒いコートの目つきが鋭い男がいつの間にか輪に加わっていた。

「……誰?」

「誰でもいいよー!とりあえずやろー!!」

 そんな訳で、謎の男が一人加わってトランプ大会が始まった。





 フウトは情報を閲覧し終えて、一息ついた。
 しかし、次の瞬間に緊張が走った。
 冷静にフウトは言った。

「いったいどこから入ってきたんだい?」

 気配を感じて、その気配の主に言葉を放つ。

「どこからって……普通に玄関から入って、そのまま作業場からこの地下室に入ってきたのよ?」

「…………」

 フウトは少し恐れながらも、振り向いた。
 すると、そこにいたのは緑を基調としたワンピースを着て、その下にズボンを着用し、ベルトでウエストを締めた知性に満ちた少女だった。
 髪が癖っ毛のように跳ねてはいるが、恐らくワックスとかで強引に作ったものと思われる。

「あなたがこのショップ・GIAのオーナー……フウトさんよね?」

「……そうだ」

 ピリピリとした緊張が走る。

「一つお願いがあるの。いいかしら?」

「……何を?」

「私をここに置いて欲しいの」

「…………」

 フウトは少しの間ためらった。
 そして、返事をしようとした時だった。

「多分、あなたのことだからわかっているだろうけど先に言っておくわ」

「……?」
 
「私は少し前までロケット団の組織者だった。でも、私は組織が許せなかった。だから、組織と敵対してロケット団とダークスターを潰したの。ダークスターを潰したのは私の力ではないけどね」

「…………」

「ロケット団を潰したのはよかったけれども、私の居場所はどこにも無いの。そんな時、トキオがここを紹介してくれたのよ」

「……トキオか」

「そういうわけ。……だから、ここにいてもいいかしら?」

 フウトは彼女に見えないところで少し笑みを浮かべた。

「ああ。いいよ。好きなだけここにいるといいさ」

「良かった」

 そう彼女は呟いたのだった。





 そして、彼女とフウトは庭の作業場に来たのだが……

「♪わーい☆ また、私のいち抜け!」

 ミナミが歌うように宣言する。

「ち、ちくしょう……なんでだ!?俺の運が全てこの女に吸い取られているようだぜ!!」

 トランプに乱入してきた男は、全敗していた。

「あ、フウトさん」

 リクがフウトの存在に気付くと、全員が2人のほうを振り向いた。

「……ラグナ……あなた何をやっているの?」

 トランプで全敗し、頭を抱えている男に向かって彼女は言った。
 すると、男……ラグナは顔をあげた。

「お?ユウナ、話は済んだのか?」

「まあね」

 髪をかきあげつつユウナは言う。

「フウトさん……その人は……?」

 少し赤くなりながらリクが、隣にいるユウナのことをフウトに尋ねる。

「今日からこのショップ・GIAで働くことになったユウナだ」

 フウトに紹介されて、ユウナは軽くお辞儀をする。

「(美しい人だ……)」

「へぇ……なかなかいい女だな」

 リクとバンの第一印象はそうらしい。

「てめぇもそう思うか?」

「あん?」

「あいつ、すげースタイルがいいんだぜ?」

「そんなの、見ればわかんだろ?」

「いやいや、服の上じゃなくて、直接の方がもっとすげぇんだぜ?」

「お前……覗いたのか!?で、どうだったんだ!?」

 なんか、ラグナとバン……意気投合しかけたのだが、彼らの頭にガンッ!ガンッ!とスパナとレンチが降って来た。
 当然、たんこぶを作って気絶した(ぁ)

「さて、さっそくだし、私もトランプに混ざってもいい?」

「もちろんだよ〜☆じゃあ、ラグナちゃん、トランプを切ってね☆」

「いつつ……俺かよ!」





 ショップ・GIAに加入してユウナはロケット団時代からの情報処理能力やハッキング能力を生かして、情報収集の力を存分に生かしていた。

 また、ラグナは裏情報から仕入れることができる依頼や任務を数多くこなして行った。

 中でも、ラグナの好みの任務は懸賞金がかかった賞金首を狙うことだった。

 結果として、ユウナとラグナの加入は以降、ショップ・GIAの知名度を大きく上げることになったのである。










 3


 ロケット団が滅んだとしても、悪さをするものがいなくなるわけではない。
 それを証拠に、オートンシティで市長のクラキチが逮捕されるという事件が起こった。
 それはジョウチュシティで市長の弟のトラキチがポケモンの覚醒剤の密輸をしたということが事件の発端だった。
 市長のクラキチはそれに関与したということで、捕まったのである。

 その影響で、市長の選挙戦真っ只中だったオートンシティは、ナルミの兄、ナルトの市長就任というあっけない幕切れで終わってしまったのである。





「はぁ……退屈」

 市長選が終わって数日が経ったある日。
 中の作業場で椅子に座ってカウンターに顔をつけてボーとしている19歳のジムリーダーの少女……ナルミの姿があった。

 なお、このときもまだ彼女に彼氏はいない(蹴)

「ラグナさんどこまで行っちゃったんだろ……」

 実はナルミはラグナのことが気になっていた。
 好きと言うまでには行かないが、少なくとも淡い恋心みたいなものは持ち合わせていた。
 しかし……

「みんな……ラグナさん狙いだよねぇ……」

 ラグナがショップ・GIAに通うようになってから2年。
 会って1週間経ってから、自身がラグナのことを気に入っているんだと思い始めたときに、ナルミは気づいたことがあった。
 自分以外の女性……ミナミやユウナが自分よりもラグナと親しく話しているところを見て、2人ともラグナに好意があるんだと思っていたのである。

 実際の話はナルミの勘違いであるが。(ぁ)

「しかも、聞いた話によると……ラグナさんってスタイルいい娘が好きなのよね……」

 ふと、自分の身体を見る。
 そして、ユウナやミナミと比べてみる。
 ……その差は歴然だった。

「(2人は少なくともDカップ以上は有りそうだし……私なんて、どんなに見積もってもBカップよ……?勝ち目なんて無いじゃない……)」

 ナルミは泣きそうだった。

「リクくん……」

 そのままのグデっとした状態で、ナルミは言った。

「なんですか?」

 リクは近くでホバースクーターのエンジンを弄っていた。

「今日は他の人はどこへ行ったの?」

「それがですね……ユウナさんはトキオさんの手伝いに行くって言ってました。当分は戻ってこないと思います。バンさんたちは仕事でヘマしたと言って現在刑務所の中です。フウト師匠が誤解を解きに行っているのでどうにかなるでしょうけど」

「そう……」

「ナルミさん」

「なあにリクくん?」

 一瞬リクはたしろぐ動作を見せたが、気を取り直していった。

 注釈を入れると、リクはナルミの振り向いた動作に、心が揺れ動いたらしい。(何)

「そろそろお昼の時間が終わるけど……時間は大丈夫ですか?」

「え……?いけないっ!!早く戻らないと!!昼一番でジム戦の予約が入っているんだった!!」

 ドタバタとナルミは慌てて飛び出そうとする。
 だが……

 バゴンッ!!

「イタッ!!」 「っつ!!」

 誰かにぶつかった。

「お客さん……ですか?」

 リクが対応する。

「ここなら賞金稼ぎができるとライトという女から紹介をされてきたんだけど」

 少年は紫色のバンダナに黒のスカーフを口元に巻いていた……が喋る時はスカーフをずらしている。

「……ライトさん?……あっ!確かトキオさんと一緒にいた女の人ですね」

「……多分そうだな」

「イタタタ……」

「ナルミさん……大丈夫ですか?」

「へ、平気よ……ぶつかって悪かったわ」

 彼の目を見て謝るナルミ。

「ああ。大丈夫だ」

 しかし、目を合わせずそう返した。
 
「あっ!!それよりも急がないと!!」

 ナルミは駆け出して言った。

「ええと……名前は何でしたっけ?」

「ログ。僕の名前はログだ。しっかり、お金が入る仕事を頼むよ」





 後から考えてナルミはログの印象を見て思った。

 ログはいつかショップ・GIAに大きな事件を巻き起こすのではないか?……と。

 しかし、そんなナルミの不安とは裏腹にログはレンジャーとしての能力を生かして、捕獲専門の依頼を確実にこなして行ったのだった。 





 それから半年が経ったある日のこと。
 ショップ・GIAでは平穏な日々が続いていた。

「こんにちは〜」

 昼になって、ナルミがショップ・GIAに顔を出した。

「よぉ、ナルミ」

「いらっしゃい」

 バンは背もたれつきの椅子にもたれて、ギーコ、ギーコとバランスをとりながら煙草を吸って暇をもてあましていて、ユウナといえば大好きな暑いブラックコーヒーを飲みつつ備え付けのパソコンとにらめっこをしていた。

「あれ?フウトさんとリクくんは?」

 辺りを見回すと、いつもいるはずの2人がいなかった。

「2人なら、仕入れるものがあるって言ってブルーズシティまで出かけたわよ」

 注釈:ブルーズシティとはノースト地方にある最南端の漁業の町……オートンシティの北の北にある街である。

「で、バンさんはいるのに、何でミナミさんとジュンキくんはいないんですか?」

「今日はフリーでそれぞれ遊びに行ってんだ。たまにはそういうこともあんだろ」

 バンは灰皿に煙草を押し付けてもみ消す。

「じゃあ……」

「ラグナなら今日中に帰ってくる……ラグナのことが聞きたかったんのでしょう?」

「あはははは…………」

 ユウナに先に言われて、苦笑いのナルミだった。

「はい、できたよ」

 すると、ログが2人の目の前にがたんと2つのどんぶりが置かれた。
 バンとユウナは目を細め、口を揃えて言った。

「「ログ……これは何(だ)?」」

「何って……僕オリジナルのシーフードラーメンだよ」

 ログが説明するが、2人は固まったままだ。

「(……イカとかタコとか丸ごと入ってんぞ)」

「(このホタテ……ちゃんと炒めたのかしら?)」

 さらに付け加えると、ラーメンもテンコ盛りで美味そうには到底見えなかったという。

「僕は美味しいと思ったよ?」

 スープをズズッとすするログ。

「うん。美味しい」

「本当かよ?」

「バン……あなた先に食べてみてよ」

「ユウナこそ食えよ」

「嫌よ」

 ユウナとバンはお先にどうぞと譲り合う。

「…………仕方がねえな」

 ため息をついてバンが箸を取って、ラーメンに手を伸ばす。


 10秒後。


「…………バンさんは大丈夫かな?」

「どう見ても大丈夫じゃないでしょ?」

 ログ作、バンの食べかけのラーメンを見て、後頭部に大汗を書きながら呟くユウナ。
 何が起きたかというと、バンが一口食べた途端に急いでトイレへ直行して行ったのである。

「……バンに食べられないものが私に食えるわけないわ」

「ユウナさん……何気に酷いわね」

 苦笑いのナルミ。
 しかし、ここで文句が飛ぶ。

「こんなに美味しいのに、何で食べられないんだい?」

「ログ……あなたの味覚がおかしいだけよ(汗)」

 結局、ユウナの分はログにあげたという。

「でも……昼食はどうしようかしら……外で何か買って来ようかな」

「今日はバンさんが昼食を作ってくれると思って楽しみにして来たのに……残念です」

 ナルミが落胆し、ユウナが立ち上がったときだった。

「ごめんください」

 抑揚の効いた女性の声がした。
 ユウナとナルミは玄関の方へと足を伸ばす。

 そこにいたのは、フリルの入ったロングスカートに地味な色のTシャツを着たやせ気味の女性だった。
 しかし、ユウナとナルミが第一印象で思ったのは、服装のことでも、棒っ切れのような小柄な体格についてでもなかった。

「(すごく顔立ちが綺麗……)」 「(美人な人……)」

 2人とも、彼女の美しい顔立ちに一瞬見とれていた。
 俗に言う美人とはまさに彼女のことだと2人は思った。

「こちらに、ラグナという方は居られますよね?」

「え?ラグナさん?」

 ナルミは慌てて聞き返した。

「ラグナなら今、出て行っているけど……何か御用?」

「そうですか……」

 彼女はホッとした表情でそういった。

「それなら、こちらで待たせていただいてもよろしいでしょうか?」

「別にいいですけど」





 すると、彼女は作業場に着いてすぐにお昼を食べたかと聞いた。
 ユウナとナルミがまだだというと、彼女は台所へ行って、何かを作り始めてしまった。


 30分後。


「うわぁー」

「美味しそう……」

「すげえ!!」

 ナルミ、ユウナ、そして復活したバンの前にはアルトマーレ風の料理がずらりと並べられていた。

 え?アルトマーレ風の料理って何かって?……あんまり突っ込まないでください。
 それだけ専門的な料理だということを理解してください(ぁ)

「お口に合えばいいですけど……」

 彼女は謙遜するが、ナルミたちの評価は……

「美味しい!!」

「私……今までこんなおいしい料理、食べたことなかったわ」

「俺より料理がうめえ奴にはじめて会ったぜ」

 大絶賛だった。

「そんなに美味いのかい?」

 ログは気になって、ナルミたちの料理を眺めていた。
 てか、バンが放棄したラーメンまで食べてるし(ぁ)

「ところで、あの人は誰だい?」

 ログが聞くと、3人とも顔を合わせた。

「そういえば、まだ名前を聞いていなかったわね」

「申し訳ありません。遅くなりました。私、ミライと申します」

「ミライ……」

 ユウナはポツリとその名を繰り返した。

「ユウナさん?」

「その名前……どこかで聞いたことがあるのよね」

 すると、ユウナは再びパソコンに向かい合ってしまった。

「にしても、美人だよな!ミライちゃん、彼氏とかいんのか?」

 さっそく口説きにかかる男、バン。

「彼氏は……いません」

「それじゃあ、今フリーなんだな?」

「バンさん……」

「なんだナルミ?」

 少しムスッとした顔でナルミは言う。

「バンさんってよく女の人口説いていますけど、誰にでも口説くんですか?」

「誰にでもってことはねえよ。俺だって好みってもんがある!」

「例えば……?」

「もちろん、ミライちゃんみたいな美人さんや、ユウナみたいなツンと澄ましたスタイルのいい女の子とか……」

 ミライは微笑んで「ありがとう」と言い、ユウナは「褒めても何も出ないわよ」と無表情で言った。

「そういうわけだ」

「じゃあ、私のいい所って言ったらどんなところ?」

「ん?ナルミのいい所?」

 う〜ん……とバンはまじまじとナルミを見つめる。

「……言っちゃ悪いが、ごく普通なところだな」

「要するに特徴がないってことが言いたいのね」

 怒っている様で悲しい口調でナルミは呟いた。

「それならば、服装で決めてみたらどうでしょうか?」

 ふとミライが提案した。

「服装?」

「服装だけでなく、アクセサリーとか……外見的な要素ですよ。内面も大事ですが、外見も非常に大切なのですよ。そうだ」

 ミライは持ってきたかばんをカウンターの上にトスッと置いた。
 すると中から、指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス……などなど様々なアクセサリーが出てきた。

「すごい……これどうしたんですか?」

「これらは全て私の手作りですよ」

「なっ!?これ全部か?」

 バンもアクセサリーとミライを交互に見て驚く。

「ええ。私……こういうアクセサリーを作るのが得意なんです」

「……なるほどね……。聞き覚えがあると思ったらそういうことだったのね」

「……ユウナ?」

 ユウナがバンとナルミを手招きする。
 すると、パソコンの中に写っていたのは紛れもなくミライだった。

「なっ!?最優秀ポケリスト(ポケモンスタイリスト)の賞を過去3回受賞!?」

「すごーい」

 バンとナルミはパソコンに写っているミライと本人を交互に見る。

「でも、自分で作ったアクセサリーをしないのはなぜかしら?」

「アクセサリーは自分で作ったものはしない主義なのです。ポケモンや他の人につけてもらうのが私の幸せなのです」

「そうなんだ……」

 と、目はアクセサリー方を見ていて、完全に虜のユウナ。

「一つ頂いていいかしら?」

「さすがにタダという訳には……」

「わかっているわよ」

 と、ミラノとユウナが仲良くなり始めたそのときだった。

「あ゛ー!!腹減った!なんか飯はねぇか?」

「あっ!ラグナさん!」

「お帰り、ラグナ」

「結構早かったじゃねえか」

 ラグナに向かって、それぞれ言葉を放つ。

「今昼だろ?なんか食べるもんねぇか?」

 腹を押さえていかにも腹が減ってますというジェスチャーをするラグナ。

「それなら、ミライさんが作ったアルトマーレ料理があるよ!」

「あ゛?ミライ?」

 ラグナは部屋を見回す。
 カウンターに座っているのはバン。
 備え付けのパソコンにいるのはユウナ。
 一人で地面に座ってラーメンを食べているのはログ。
 料理のそばにいるのはナルミ。
 そして、その料理を押しのけてなにやらアクセサリーを広げている女性と目があった。

「……ま、まさかっ!!!!」

 ラグナは酷く驚いた顔をした。

「え?え?知り合い?」

 ミライとラグナの顔を交互に見るナルミ。

「なんだよ、ラグナ。ミライさんと知り合いだったのか?まさか恋人とか……?ククッ」

 バンは楽しそうに茶化す。その言葉を聞いて、ナルミは顔を青くする。
 そして、ミライは言った。

「久しぶりですね。ラグナくん」
 
「……っ!!やっぱり、ミラか!?」

 コクンとミライは頷いた。

「ね、ねえ……どういう関係なの?」

 さっぱりわからないナルミは人懐っこくバンに聞く。

「俺が知るか」

「あっ。思い出した」

「どうした?ユウナ」

「ミラって……ラグナの幼馴染のミラ……つまりミライのことね!」

「「ラグナ(さん)の幼馴染!?」」

 バンとナルミがハモる。

「……ラグナに幼馴染なんていたんだ……」

 ログは呟くようにそういった。

「ラグナはシンオウ地方のクロガネシティ出身なのよ。ミライも同じ出身だからちょっと引っかかっていたのよね。それにしても、まさかトップポケリストのミライと同一人物だとは思わなかったわ」

「確かクロガネシティっつったら、鉱山の町だったな。ってことは、アクセサリーをはじめたのは……」

「ええ。バンくんの言うとおりです。石とかに興味を持って、そこから装飾を作れないかなと思い始めたのが私のポケリストの始まりなのです」

「てか、ミラはポケモンバトルよりもコンテストの方が好きだったよな」

「ええ」

 と、にっこりとミライはラグナに笑みを送る。

「で、何でここに来たんだ?」

 ぶっきらぼうにラグナはミライに尋ねる。

「ラグナくん……心配したんですよ?」

「あ゛?」

「シンオウリーグを制覇して、ホクオーリーグを制覇したところまでは連絡を頻繁に取っていたのに、ホクト地方に入った辺りから全然連絡が取れなくなっちゃったのだもの……」

「…………」

「(確かその辺りは、ラグナが『ロケット四天王の信女マリー』にたぶらかされているあたりよね)」

 ミライの話を聞きながらパソコンをいじっているユウナ。

「それから……5年ほど音信不通で……本当に心配したんですからね?」

「え、お…オイ」

 クスンっと涙をこぼすミライ。

「あーあー。ラグナが泣かせたー」

「ラグナが悪いね。女を待たせるなんて酷い奴だ」

 バンとログが口を揃えて言う。

「俺のせいじゃねぇよ!!」

「5年も放っといて俺のせいじゃないとか……それはないよな?ログ」

「そうだね」

「うるせェ!!てか、ミラ、泣くなッ!!」

 バンとログを追い掛け回すラグナ。ついでに、涙を流しているミライに向かって大声を上げる。

「私……決めました。ここに住ませていただきます」

「はっ!?ミラ、何言ってんだ!?」

 ミライの突然の発言にラグナは目が点になる。

「私は別に構わないわよ」

「俺も毎日ミライちゃんみたいな美人が見れるんならおおいに賛成だぜ!」

「みんながいいなら僕は否定しないよ?」

「って、ユウナ!バン!ログ!」

「良かったです」

 ミライは涙を拭いて笑顔でそういった。

「ふぅ……ご馳走様でした」

 そして、ログは爪楊枝を咥えつつ腹をさすりながらそう言った。

 ……って!!

「ログ……あなた、ミライが作った料理を全て食べちゃったの?」

「僕が作ったほどじゃないけど、おいしかったよ」

「ログ!!てめぇよくも全部食いやがったな!!」

「お前は自分の作ったラーメンで満足してろって言うんだよ!!」

 食べ物の恨みは恐ろしい。
 まさにその通りで、ラグナとバンは阿修羅顔負けの形相でログに詰め寄る。

「ラグナ……バン……よく言うだろ?飯は早いもん勝ちだと」

「「知るかっ!!」」

 バコバコッ!

 乱闘を始める男三人。

「はぁ……まったく、これしきのことで男は……」

 ユウナはヤレヤレと肩をすぼめている。

「仕方がありませんね。皆さんの分をもう一回作ります」

 にっこりと微笑んで、ミライはそう言った。

「だから、ラグナくん。ケンカはやめようね?」

 けど、その微笑みはラグナに向けられていた。
 「うっ」と顔をしかめてラグナは手を引っ込める。
 すると、自然にバンとログも争いをやめたのだった。

「(むぅ……)」

 そして、ナルミはミライの出現により、よりいっそう危機を感じていたという。










 こうして、新たなメンバーにラグナの幼馴染のミライが加わった。

 今まで情報提供のサービス系と機械のエンジニア系に加え、ミライのアクセサリーの彫金は他の客……特に女性に大人気だった。

 ショップ・GIAはこうして、オートンシティでも名所となるほどの店になって行ったのだった。

 

[一言感想]

 ……だいぶ前のキャラだと、記憶ががg(ry
 しかし、ラグナもかなりモテますね。
 更には幼馴染の登場により、ナルミの想いは複雑になる一方。
 後編では決着がつく……のか?

 

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