4


 記憶は封印したはずだった。
 決して、もう思い出すまいと誓ったはずだった。
 記憶の箱の中に押し込めて、さらにもう一つ、ボックスの中にそれを入れて、ガキを2重……いや、3重にかけたはずだった。
 僕が自分の名前を変えて、この場所に住むようになったのだって、幼い記憶を全て消して、奴らが自分に被害を加えないようにするためだった。
 だけど、記憶は封印できるものではないと、最近になって酒を飲みながら悟るようになった。

 あの時の2人の訪問が僕の記憶を呼び起こすトリガーだったのかもしれない。
 黒の組織の情報を見つけたとき、僕は記憶の断片が呼び起こされる感じがした。

 知り合いの有名な催眠術師に頼んで記憶を封印してもらったのに、それが少しずつ解け始めた。



 記憶が完全に復活したのは、ロケット団が壊滅して、彼女が現れたときだった。
 とっても小さな時にヒョコヒョコと自分にくっ付いてきた時の記憶が蘇った。
 動揺はしたが、彼女にはあまり感じ取られなかったようだった。
 突然、「ここに置いて」という言葉にためらっていたのだと思われたのだと思う。



 記憶が完全に解けて僕は、メカニックの他に何故自分が裏で情報屋をやっているかを理解した。
 潜在的に僕は生き別れに……そして行方不明になった妹のことを探していたのだと思う。

 とても安心した。そして、僕はこれからは何もしなくてもいいんだ。
 酒を飲んで、機械を弄りながら、彼女を見守っていこうとそう思うようになったんだ……。










 5


 ロケット団が壊滅して3年が経ったある日のことだった。

「あーつーいー……」

 お馴染みのショップ・GIA。
 ナルミは庭の作業場にあるインスタントテーブルに突っ伏して扇風機を独占していた。

「てか、ナルミ!暑いのはお前だけじゃないんだぞ!少しは俺様に風をよこせ!」

「いーやー」

「よーこーせー!」

 首振り型の扇風機を自分の方に向けようと、バンとナルミがケンカを始める。

「バンさん!ナルミさん!ケンカはやめてください!扇風機が壊れてしまい……」

 バキッ!!

 あ、遅かった(汗)

「……だから言ったのに……」

「わりぃ」 「ごめん……」

 謝る2人を尻目に、リクはテキパキと首が壊れた扇風機を持って解体し始めた。

「つーか、海行きてえ!!水着ギャルをナンパしてえ!!」

 唐突にバンがそんなことを叫び始める。

「ナンパが目的なの?」

「目の保養だ!目の保養!!」

「ふうん」

 ジト目でバンを見るナルミ。

「バンちゃん〜目の保養なら私がいるよ?」

「Σぶっ!!」

「うわぁー……」

 いきなり出てきたのは、上半身が胸の要所だけをギリギリかくした赤いビキニをつけているミナミ。
 下はパンツがギリギリ見えそうで見えないほど短いホットパンツだ。
 バストが90cm以上あるミナミの胸はさすがにバンを釘付けにさせるほどの威力があった。(ぁ)

「なぁ……ミナミ……お前……そんな格好でいたら、オレ様に何をされても文句いわねえよな?」

 手をクネクネとバンが動かして、今にもミナミに襲い出さんといわんばかりだ。

「え〜?バンちゃんのエッチー☆」

「(ミナミさんの発言……本気なんだかよくわからないわ……)」

 ちょっと疲れるナルミだった。

「(でも、確かにミナミさんの胸はすごいけど(汗))」

 とりあえず、現在は夏らしく、サンサンと太陽が照っていた。

「こんなに暑いと、任務もいきたくない……」

 文句を零し、団扇をぱたぱたと仰ぎながらも、外へとでてきたのは味音痴で食いしん坊のログだ。

「ログ……依頼をもらってきたのか?」

「ああ。これから行って来る」

 とっととログは行こうとしたところだった。

「ねえ、ログくん」

「なに?」

「どうしてログくんってそんなにお金が必要なの?」

 出会った当初から不思議に思ったことをログにぶつけた。
 しかし、ログは黙ったまま何も言わなかった。

「あっ、ゴメン……立ち入ったことを聞いちゃって……」

 慌てて謝るナルミに何も言わずに、ログは行ってしまった。

「……あいつは自分のことを聞かれるのが嫌がる性質みたいだな」

「う〜ん……」

 バンと共にログの後ろ背中を見送って言ったのだった。

「久しぶり!!」

「「っ!!」」

 そして、突然、二人は後ろからドンッ!ドンッ!と、背中を押された。
 慌てて振り向いてみるとやけに陽気な男がそこにいた。

「トキオくん!?」

 白衣を着て、本を持って、笑顔でトキオはにやついていた。

「なんだ?トキオ、いいことでもあったのか?」

「まーそういうことだな!それと、ブーグシティの図書館に行く前にちょっと寄って見たんだ。……って!!」

「どうした?……って、ああ」

 トキオの目線の先を見てバンは頷いた。

「あートキオちゃん〜!今日は暑いよねー☆」

 ギリギリなビキニ姿のミナミだった。
 なんかハンモックを持ってきて、日光浴しているし。

「やっぱり、海水浴に行きたいね……」

 ミナミがやや落ち込みがちに言う。

「じゃあ、今度、ショップ・GIAのメンバーで海へ行くか?」

「バンちゃん……本当!?」

 パーッとミナミは明るくなる。

「第一、この店、一日や二日休んだぐらいじゃつぶれねえだろ?」

「そうですね。僕も行きたいです。…………はい、直りました……って、ミナミさん……///」

 リクが扇風機を回し始めた。が、ミナミの格好を見てすぐに顔を赤くするリク。
 その赤くなった顔を戻す為、今度はリクが扇風機を独占した。

「じゃあ、私も連れて行ってもらうように、今からフウトさんに頼んでこよう!!」

 と、ナルミは急いで家の中に入っていこうといた。

 ドスンッ!!

 だが、そのまえにドアが開かれて、誰かとぶつかった。

「「うぅ……」」

 2人とも頭をぶつけたらしく、同じ様な格好でうずくまっていた。

「ご、ごめんなさい……ナルミちゃん。急いでいたもので……」

 慌てて出てきたのはキリッとした顔立ちで美人顔のミライだが、ナルミとの衝突がよほど痛かったらしく、涙を滲ませて、美しいというよりも、可愛いという印象に変えた。

 「涙一つで女ってこんなに印象が変わるものなのか……」って、バンが後日談で言ってました(ェ)

「どうしたんだ?ミライちゃん」

 ぶつかって倒れているナルミを放っといて、バンが代わりに聞いた。

「実は…………」





 寝室。
 そこで、一人の少年が息を荒くして呻いていた。

「オイ……ジュンキはどうしちまったんだ!?」

「医者の話によると……とても危険な病気にかかったとか……。治療法がないといわれている危険な病気だって」

 酒を飲んで酔いつぶれているフウトにかわって、リクが代弁した。

「危険って……おい!ジュンキは助かるんだろうな!?」

「うわっ!!」

 リクの胸倉を掴んでバンはブンブンと振り回す。

「バンさん……落ち着いてください」

「そうだ、落ち着けよ!」

 ミライとトキオがバンを宥める。

「落ち着いてなんかいられるか!!こいつとは小さいときからの仲なんだ……。絶対に俺が死なせねえ!!」

 バンはリクを離して、バンッ!!と壁を思いっきり殴りつけた。
 壁は少々へこんだが、それ以上にバンの拳には血が滲んでいた。

「畜生!!何でこんな時に限ってユウナはいねえんだ!?」

「仕方がないですよ。ユウナさんは、今ライトさんの家へ手伝いに行っているのですから」

「あっ、そうか。ライトちゃん、子供が産まれたんだって言っていたよな」

 トキオが思い出したように頷いた。

「確か……名前はミホシちゃんって言ったかな?かわいい女の子だったはz「あっ!!」

 大きな声に反応してみんながみんなリクを見る。
 すると、リクは部屋を出て、情報部屋のパソコンを開いた。
 そして、履歴を調べると一つの雑草の種類が出てきた。

「あった……奇跡の薬草……ミラクルハーブ……」

「なんだそれ?」

 バンがリクに追いついて尋ねる。

「原因不明の病気を治すには良いと言われている薬草です。以前、ユウナさんが調べているのを見たんです。これさえあれば……」

「てか、生息場所とかわかんのか?」

「生息場所は……」

 リクは慌てて、調べまわる。

「ホクト地方の……マボロシ山」

「……聞いたことねえよ」

「私……聞いたことがあります」

 ミライが手を挙げる。

「ホウエン地方のマボロシ島のように滅多に姿を現さないと言われている山のことです。恐らくそこなら未知の植物も生えていることでしょう」

「なら、さっそくそこへ行くぜ!!」

 気合を入れてバンはがっちり拳を振り上げたのだった。










 6


 ―――マボロシ山。
 リクの紹介にもあったが、その場所はホウエン地方のマボロシ島のように滅多に姿を現さない神出鬼没の山とまで言われている。
 そこにはマボロシ島に珍しい木の実『チイラの実』が存在するように、マボロシ山にも特別な薬草が多数生えていると言う。

 しかし、その場所でリクの予想のつかない事態が待ち受けるとは知る由もなかった。





「ここがマボロシ山か……」

「そのようです……ご主人様」

 一見、男女の2人組みが山の中を歩いていた。

「ここに僕たちの求める”あのポケモン”が今日降りてくると言うんだな?」

「ええ。そして、ご主人様の実力なら”あのポケモン”を捕まえるのは、データの範囲内だと思われます」

「そうか。ハクでは進もう」

「はい……ご主人様」

 ”ご主人様”と”ハク”と言う女。

 男は黒いスラックスにグリーンのジャケットを着て、ツバがやや長い帽子を被っていた。

 ハクと言う女は黒いスカートに赤のカーディガンを羽織っていた。また、ツバがやや長い帽子はシロとまったく同じだった。ちなみに彼女の首には首輪が巻かれていた。

 そして、男が手招きすると3人の男たちがついてきた。
 どうやら下っ端らしい。
 その下っ端たちもツバがやや長い帽子を被っていた。

「さて、邪魔なく任務を遂行できるといいのだがな」

「大丈夫です。邪魔するものはわたくしがすべて排除します。シロ様のために」

 にっこりとハクは笑顔で言う。

「ハク。僕のためだと言ってくれるのはありがたい。しかし、これは僕たちの組織”風霧”のためだ。そして……」

 シロと呼ばれた男はハクをギラッと睨みつける。

「僕のことはご主人様と呼びなさい。もし次呼び間違ったら……」

「申し訳ございません……ご主人様……」

「まぁ、いいだろう」

 こうして、風霧と名乗る5人組は山を登っていく……。

「お待ちください」

「どうした?ハク」

 ハクはパソコンを弄って、何らかの反応を察知していた。

「どうやらこの山を登っているのはわたくし達だけではなさそうです。人間3名の生命反応があります」

「……まさか奴らも”あのポケモン”を求めて?」

「わかりませんが、妨害をしておく必要はあるかと……。あなたたち」

 ハクは下っ端の3人を呼びつける。
 すると、すぐにハクの前にひざまずく。

「そいつらを見張って、邪魔だと思ったら始末するように」

”ハッ!!”

 下っ端はザザッと素早い動きで去っていった。

「さて、行きましょう、ご主人様」

「ああ」

 シロとハクは下っ端に任せて山登りを再開した。





 さて、その一方で。 





「うぅ…………すごく辛いです…………」

「久しぶりの運動……とても堪えます……」

 ゼイゼイ、ハァハァと木に寄りかかって休んだり、手を膝についてたり、彼と彼女はとっても苦しそうにしていた。
 しかし、そんな中一人だけまったくスタミナが衰えず登っている男がいた。

「ッたく……だらしがねえな。特に、お前は男だろ?リク」

「そ、そんなこといわれても……僕はバンさんみたいにそこらじゅう旅しているわけじゃないんですからそんなに体力はないんですよ……」

「泣き言なら聞かねえぜ?」

 木に寄りかかってゼイゼイ言っているリクを無視して、バンはもう一人の苦しそうにしている女性に手を差し伸べる。

「ミライちゃん、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です……このくらい、ジュンキさんの苦しみに比べたらたいしたことではありません……」

 やや澄ましたような声で言っているものの、ミライは辛そうだった。

「本当に無理するなよ?」

「無理なんかしていません」

 そういうと、ミライは先へとザッザと進んで行ってしまう。

「オイ!! ったく、美人のクセに男に甘えることを知らない女だぜ……。まーそこがいいとこなんだがよ」

「ば、バンさん?」

「おら、進むぞ!リク!」

 げしっ! げしっ!とバンはリクの尻を蹴っ飛ばす。

「蹴らないでくださいよ!」

 弱音を吐きながらも、リクは登って行ったのだった。





 通常バンは”チームトライアングル”として、ミナミとジュンキとチームを組んでいる。
 だから、今回の場合、その2人以外と組んで行動するというのは例外的なことだった。

 チームのジュンキが病気で倒れて、ミナミがジュンキの看病を引き受けた。
 だから、本当は一人でも行くつもりだったのだが、リクが止めた。
 「マボロシ山は一人では危険すぎる!!」と。
 だが、バンはリクの忠告を聞こうとする男ではなかった。
 リクは仕方がなく、バンについていくことになったのだった。

 しかし、リクは2人だけでも心配だった。
 もう一人のメンバーとして、リクはログかユウナを選びたかったのだが、すでにログは捕獲任務で外へ出ていたし、ユウナはライトの家に行っていて連絡が取れなかった。仕方がなくユウナに留守電を入れるだけにしておいた。
 ナルミはジムリーダーだから街を離れることはできない。
 実はトキオが名乗り出たのだが、それを制すようにミライが行くと名乗り出たのである。
 トキオに「忙しかったのじゃないですか?」とミライが言うと、トキオはしばらく唸ったあと、頷いたのだった。

 ゆえに、薬草を摘みに行くメンバーはバン、ミライ、リクの3人になったわけである。
 そして、残留メンバーはフウト、ジュンキ、ミナミの3人だった。





「それにしても、珍しくマボロシ山が出現しているなんて今日はラッキーですね」

「そうですね。滅多に姿を現すことの無いと言われるこの山……それだけに、絶対見つけないといけませんね」

「当たり前だ!早く見つけださないと、誰かに取られちまうかもしれねえぜ!」

 リク、ミライ、バンが喋っているのはいいが、それをコソコソと草むらから聞くものがいた。
 そして、そいつらは音もなく突然襲い掛かってきた。

「な!?」

「え?」

「!!」

 決して、バンは油断していたわけじゃなかった。
 気を張り巡らせて、どんな時でも奇襲に対抗できる自信があった。
 だから、奇襲を防ぐことには成功していた。
 しかし……

 ドガッ! バキッ!

「うわっ!!」

「リクくん!!」

 リクが奇襲を受けて、霧の立ち込めるこの山の下へ一直線に落ちていってしまった。

「貴様ら!いったいなんだ!?」

 3人に向かってバンが吼える。

”名乗るほどの者ではないさ。しかし、この山であのポケモンを捕獲しようと言うのなら、消えてもらおう”

「”あのポケモン”……?」

 下に落ちたリクを気にしながら、ミライが首を傾げて復唱する。

”そうよ。あのポケモンは私たちの上司が捕まえるの。邪魔しないで欲しいわ”

「へっ!!そう言われると気になるな!是非”あのポケモン”とやらを捕まえたくなってきたぜ!!」

 バンがペロリと唇を舐める。

”へっ。俺たちに勝てなければ、あのポケモンどころか、リーダーのシロさんに勝つこともできない!!”

「そうか……」

 3人をギラッと睨みつけて、バンは言う。

「貴様等はこの俺様に勝てるとでも思っているのか?」

”なに?”

 バンは懐から”ウィザードスモーク”という銘柄の入った煙草を一本口に咥えて、ライターで火をつけた。

「格の違いを……教えてやろうか?」

”何を!?”

”調子に乗るんじゃないわ!!”

”いけッ!!”

 オニドリル、オオスバメ、ヨルノズク……先ほど奇襲をかけた3匹で、バンへと一斉に襲い掛かる。

”オニドリル!『マシンガンドリル』!!”

”オオスバメ!『スパイラルシュート』!!”

”ヨルノズク!『エアウィング』!!”

 オニドリルはドリルくちばしを繰り出しながらのみだれづき。
 オオスバメは体全体を回転してのツバメ返しで、カレンのオオスバメが繰り出す『ツバメ返し・改』と似たような技を繰り出していた。
 ヨルノズクはエアスラッシュを直接放たず、翼に纏わせることによって接近戦を強化した技の使い方をしていた。

 そう、三人のこの技はどれも簡単には敗れそうにもない必殺技ばかりだった。
 しかし、バンは断言した。

「5秒だ」

 1秒目。バンがハガネールを繰り出して、同時に繰り出してきた3匹の技を跳ね除ける。
 2秒目。オオスバメのトレーナーとオニドリルのトレーナーが次の技を指示する。
 3秒目。オニドリルをハガネールが尻尾で叩きつけていた。
 4秒目。ヨルノズクのトレーナーが間合いを取るように指示していたが、バンのもう一匹のポケモンがすでに行動を読んでいて、一撃で倒してしまった。
 5秒目。オオスバメの電光石火がバンに向かっていたが、それ以上にヨルノズクを倒したライボルトのスピードが速く、やはり一撃で倒してしまった。

「ジャスト5秒だ。まだやるのか?」

「すごい……」

 ミライはただバンの戦いに目を奪われるだけだった。

”なんだよこいつ……”

”でも、負けられないの!!”

”やるしかない!!”

 決死の覚悟で3人は再びバンに向かって行った。





「ううん……ここは?」

 目を覚ますと、雑草がクッションになっていて助かっていた。

「さっきの3人組……みんな同じ長いツバの帽子を被っていた……確か前にユウナさんが言っていた組織に似ているんだよなぁ……なんて言ったっけ?」

 そういいながら、リクはバンを追いかけるために再び登って行った。





”嘘だろ……”

”くっ……”

”俺たちが勝てないなんて……”

 バンのライボルトの電撃が3人共に炸裂し、3人は気絶した。

「100年後に出直して来い!!」

「それでこの人たちは何者なのでしょうか?」

「さあ?」

 バンがライボルトを戻してすぐの事だった。
 空気が一瞬にして震え上がり、音の波動がバンとミライに襲い掛かる。

「っ!!何だこいつぁ!?」

「鳴き声のようです」

「こんなポケモンの鳴き声なんて聞いたこと……」

 ふと空を見たときバンの口が止まった。

「なるほど……奴ら……あのポケモンを狙っていたのか……」

 空を自由に跳びまわるポケモンを見て、バンはつぶやいた。

「まさか……あれは……レ」

「行くぜ!ミライ!奴らより先にあのポケモンを捕獲する!!」

「え?ちょっと、バンくん!?」

 先に行くバンを追いかけるようにミライも走って登っていく。





「この空に近い幻の存在といわれるこのマボロシ山ならば、現れるというシロの推理は間違っていなかったようだね」

「ええ。ついに見つけましたね。シロ様」

「ああ。だが、お仕置きが必要だな?」

「はい?」

 ビシッ!! バチンッ!!

 ズボンのポケットに携帯していたのか、シロがムチを振るってハクの腰とスカートで剥き出しになっている足に向かってうつ。
 当然、ハクは痛がってその場に倒れる。

「僕のことはご主人様と呼べと呼べと言ったはずだ。それとも何か?このムチの味をもう一度味わいたいのか?」

「……はぁ…はぁ……申し訳ございません……”シロ様”」

「そうか……」

 シロはニタリと笑って、ムチを高々に振り上げた。
 しかし、ふと空を見て止めた。

「おっと、こんな事をしている場合じゃない。急いでレックーザを捕獲しなければ……」

「シロ様ぁ……」

 憐れむというかモノ欲しそうな顔でハクはシロに気持ちを送っている。
 しかし、シロはそんな彼女に目もくれず、空を悠然と飛び回る伝説のポケモンと呼ばれるレックーザの姿を見ていた。

「レックーザを捕獲すれば、僕の……いや、我々の野望がまた一段階進むことになる。そうしたら、ハクにはご褒美をやろう。後でたっぷりとな」

 シロに言われてパアッと顔を輝かせるハク。

「では、行くか。エアームド!!」

 鋼飛行系の頑丈なポケモンを繰り出して、シロは飛び乗り、レックーザに近づこうとする。
 いや、「近づこうとした」というほうが正しい。

「っ!!エアームド!!」

 シロはエアームドから飛び降りて、エアームドは空に飛び上がった。
 そして、今シロがいた場所に向かって電撃が飛んできた。

「誰ですか!?」

 ハクが敵意を剥き出しに相手を睨みつける。

「お前らにはレックーザを渡さないぜ!あれはこの俺様が捕獲する!!」

 煙草を蒸かした男と素朴な美女だった。
 つまり、バンとミライである。

「レックーザは我々の物だ。どうしても邪魔をするというのなら、命の補償は無いぞ?」

「命だあ?お前、誰に向かって言っちゃってくれてんの?お前如きが俺様を亡き者にするなんてそう簡単にできるとは思えねーな。確かに強そうだがよ」

 バキバキっと指を鳴らすバン。

「そうか。お前は僕と同格と見ているのか……。だが、その考えが間違えだということを教えてやろう。やるぞ、ハク」

「はい……。ご主人様……」

 シロとハク、バンとミライがボールを持って構える。

「バンさん!」

 ぜいぜいと息を切らして走ってきたのは、リクだ。

「どうした?リク」

「さっき襲った奴らのことを思い出したんです!組織名”霧風”。飛行系ポケモンを使う組織として有名です!」

「そうか。その霧風の奴らが目の前にいるぜ?」

「えぇ!?」

 シロとハクを見てリクは相当びびったらしく、尻餅をついた。

「しかもだ。さっきの雑魚と違って、今度は幹部級と考えてもよさそうだ」

「そ、そんな……」

「そこでだ、オレに作戦がある」

 3人で丸くなってゴソゴソと話し始める。
 だが……

「作戦タイムなんて、誰が許すと言った!?」

 シロの繰り出したピジョンの電光石火。
 いや、正確には燕返しの命中精度と電光石火の機動性をあわせた混合技だ。
 3人の円陣のど真ん中に落ちていって、そのまま地面へと潜っていく。

「よし、わかったな?お前等」

 と、バン。

「ええ!?そんなこと言ったって……どうなっても知りませんよ?」

「私もそんなにバトルが得意じゃないのですから、早くお願いしますよ?」

 リクとミライが答えるのを見てバンは走り出した。

「無策で突っ込むのか?」

「行けっ!!アーボック!!『ダストシュート』!!」

 毒というよりも酸に近いこの毒系最強の技。
 シロとハクに襲い掛かるものの、2人はそれを左右に分かれて回避した。

「後は任せたぜ!リク、ミライちゃん!!」

 そして、バンはハクリューを繰り出して空を飛ぶ。
 レックーザを追いかけていった。

「まさか……!! ハク、逃すな!」

「はい、ご主人様……」

 シロはエアームド、ハクはマンタインに飛び乗って追いかけようとする。

「『波動弾』!!」

「『渦潮』です!!」

 絶対命中をほこる闘気の一撃と全てを巻き込む水の螺旋がエアームドとマンタインにそれぞれ命中して足止めする。

「邪魔を……!!」

「リオル!!『はっけい』!!」

 エアームドに跳びかかり、隙を突いた攻撃で相手をマヒ状態にする。

「ポッチャマ、『欠伸』で眠らせてください」

 一方、渦潮に飲まれているマンタインを眠りに誘い込む。
 戻す事も抜け出す事も出来ないマンタインはそのまま眠りに陥ってしまった。

「バンさんの邪魔はさせません」

「僕たちが相手です!」

 リクとミライがシロとハクをおさえるようだ。

「お前達如きに……我々が止まるとでも思うかっ!!」

 シロは怒りをみなぎらせたのだった。





「ハガネール!『締付ける』!ミロカロス!『冷凍ビーム』!!」

 レックーザをホールドしようと、締付ける攻撃を仕掛けるが、するりとかわされて、ミロカロスの冷凍ビームも同じく不発だった。
 逆にレックーザが強力な攻撃を仕掛ける。『竜の波動』だ。

「『アイアンテール』!!」

 ハガネールの打撃攻撃で相殺しようと試みるが、いかんせん相手の攻撃能力が高かった。
 ダメージを相殺する所か、自分の方が大きなダメージを負ってしまったのである。

 なお、空中でバトルしているため、バンは飛べないハガネールとミロカロスをボールから出したり戻したりしています。(何)

「ちっ!ミロカロス!『渦潮』!!逃すな!!」

 しっかりと狙うが、レックーザは『神速』も使えた。
 回避するのは容易く、そのスピードと巨体でハガネール、ミロカロス、そして、バンが乗っているハクリューにも体当たりを仕掛けてきた。

「っ!!」

 ハクリューから手を放してしまいそのまま、地面へと落下する。
 100〜200mからの落下では恐らく命は無いだろう。

「ハクリュー!!」

 しかし、ハクリューが間に合う。
 なんとか下へと飛んで来てバンを拾った。
 だが、安心したのも束の間だった。

「ゲッ!?」

 竜の波動をバンに向けてはなってきたのである。
 さすがのハクリューも転回して避ける事は難しい。

「ちっ!『流星群』!!」

 ここでドラゴン系最強とも呼ばれる技を上へ向かって放つ。
 威力はほぼ互角のようだったが、最終的に相手の竜の波動をぶち破ってレックーザにダメージを与えた。

「今だ!『アイアンテール』!!」

 ボールから飛び出すハガネールがレックーザに向かって渾身の一撃を叩き込む。
 だが、それは叶わない。
 火炎放射を放ってハガネールを地面へとたたきつけてしまったのである。
 
「ちっ!!さすがに伝説のポケモンって呼ばれていることだけのことはあるぜ」

 ほぼ戦況は五分五分。
 悪くは無い状況だった。
 しかし、バンはそう思ってはいなかった。





「くっ……強い……」

 リクが相手をしているのは、シロ。
 今のポケモンはリクの中で最強の存在のニドキング。
 しかし、相性が悪すぎた。

「空のチリになれ。『スチールスター』!!」

「ニドキング!!『炎のパンチ』!!」

 エアームドが炎属性を弱点とするのは、もちろん知っていた。
 しかし、攻撃を当てる事は叶わない。
 スピードスターと鋼の翼の利点を合わせ持った鋼のブーメランを打つ技は、リクのポケモンを一匹、また一匹と削っていった。
 しかも、この5匹目の最強のニドキングでさえ、攻略の糸口がまったくつかめなかった。

「くっ!!ニドキング!!」

 そして、ニドキングも体力の限界を迎える。

「カイリキー!『岩石封じ』です!」

 同じ場所で、ミライもハクのマンタインとバトルを繰り広げていたが、こっちも最後のポケモンのカイリキーだった。
 シロのポケモンの5匹中3匹がエアームドだったように、ハクのポケモンの5匹中3匹がマンタインだった。
 リクはエアームドを2匹倒したが、それだけ。ミライはこれが最後の一匹のマンタインだった。
 しかし、実際に2匹のマンタインを倒したのはカイリキーで、他の5匹のポケモンでやっとハクのほかの2匹のポケモンを倒したという喜べない状況だった。

「(さすがラグナ君のカイリキー……私のポケモンとパワーがまったく違いますね……)」

 だが、そのカイリキーも最後のマンタインのハイドロポンプの前に吹き飛ばされた。

「キャアッ!!」

 巻き込まれるように、ミライも気絶させられた。

「ミライさん!!」

「お前も終わりだ!!『鋼の翼』!!」

 ズガンッ!!

 鋼の翼を受け止めようとニドキングはしていたのだが、まったく止められなかった。
 見切ることが出来ず、まともにダメージを受けて、ダウンさせられてしまった。

「さあ……ハク……お前はこの小僧を。……僕はあのツンツン頭とレックーザを何とかしなければならない。頼むぞ」

「はい……ご主人様」

「くっ!!行けっ!!ベイリーフ!!」

「マンタイン、『冷凍ビーム』」

「っ!!」

 瞬時に光の壁を張ったことにより、何とかダメージを軽減する事が出来たが、その間にシロはエアームドに乗り飛び上がった。

「(あんな奴にレックーザを渡してはいけないんだ……)」

 リクは自分の力のなさに不甲斐なさを感じた。

「僕じゃ……足止めさえも出来ないんだ……」

「そんなことないわよ」

「え……?」

 突然聞こえる聞き覚えのある声。
 優しく包み込むようなおだやかかつ大人の女性の声。
 そして、次の瞬間、エアームドを強大な炎の渦が包み込んだ。

「なっ!?」

 シロは突然のことに何が起きたかわからなかった。

「私が来るまでちゃんと足止めできたじゃないの」

 クスッとリクに向かって笑顔を向けるのは、胸元のペンダントに緑のワンピース、そして、長い髪にハネッ毛のある女性だった。

「誰だ!?」

 炎の中からシロが怒りの声を上げる。

「ゆ、ユウナさん!!」

「まったく、こんな所で何をやっているかと思えば……。”風霧”ね。いいわ。あなたがそっちの女の子をやりなさい。私があのシロって男をやるわ」

「え?でも……」

「リク、自分に自信を持ちなさい。それでも、ポケモンリーグで準優勝をしたことがあるのでしょう?」

「……はい」

「あなたならできるわ」

 リクはベイリーフと共にハクに向かい合った。

「……ユウナ。まさかあの『ロケット団の娘:ユウナ』なのか?それなら……ちょっと厄介なことになりそうだな」

「……あら?私……その肩書きがすっごく嫌いなんだけど?」

 シロが呟いた言葉にユウナがやや怒りを含めて言い返す。

「ハク……。お前はその小僧を始末しなさい。僕がこの女をやる」

「ハイ……ご主人様」

 ハクはマンタインで突っ込んで行く。

「さて、炎の渦をぶち破るんだ」

 ユウナのウイりんの炎の渦によって閉じ込められていたエアームドだったが、自らが起こした風……いや、威力で言うと竜巻が炎の渦をいとも簡単に破ってしまった。

「それなら、これはどうかしら?『大文字』!!」

「『エアドライブ』!!」

 炎系屈指をほこる大文字を、風を纏った特攻でいとも簡単に破ってしまう。

「くっ!!」

 ブワッと凄まじい風が起こり、ウイりんとユウナにタックルを仕掛けようとするが、しっかりとユウナたちはかわす。

「これも駄目なら……出し見惜しはしないわ。ウイりん!!」

 螺旋の炎を放って、素早くその炎に合わさった。

「何をするか知らないが……破れるものか!『エアドライブ』!!」

「打ち破りなさい!『スパイラルキャノン』!!」

 威力の差は歴然だった。
 エアドライブは全体に風を纏って、風で切り裂く技なのだが、技のレベルは圧倒的にスパイラルキャノンが上で、纏った風は何の意味も持たなかった。

「ぐっ!!ピジョン!!」

「ウイりん!切りかえして!」

 大技の隙を狙ってピジョンがウイりんを狙う。
 その攻防の裏でベイリーフとマンタインは攻防をまだ続けていた。
 ベイリーフが頭の葉っぱで何とか止めているが、パワー自体はマンタインの方が上のようで、じりじりと押していく。

「勝って……ご主人様に褒めてもらいます。ご褒美を貰います」

「くっ、ベイリーフ!!なんて力なんだ……」

「そろそろ、空のチリになりなさい。『ツバメ返し』」

 その場で急加速をして、ベイリーフを押し飛ばす。
 ベイリーフは地面を転がっていくが、何とか体勢を立て直す。しかし、マンタインは次の動作に入っていた。

「『怪しい光』です」

「『神秘の守り』!!」

 怪しい光を防いで何とか凌ぐが、次のハイドロポンプがベイリーフを捉えていた。

「(早い!!でも、それなら……)」

「とどめです!『ツバメ返し』」

 横たわっているベイリーフに向かって止めを刺そうとする。

「ベイリーフ!!」

 強烈なツバメ返しがベイリーフに命中する。
 だが……

「え!?」

 ベイリーフは耐え切った。
 そしてリクはこれを狙っていた。
 相手の最大の攻撃を耐えてからの最大の一撃……『カウンター』を。

「とどめの『のしかかり』!!」

 カウンターで吹っ飛んだマンタインに飛び掛って一気に押しつぶした。

「マンタイン!?そんな……ご主人様から……ご褒美がもらえない……」

 ガクッと崩れ落ちるハク。
 一方のユウナとシロの戦いも佳境を迎えていた。

「くっ……わかっていたが、まさか本当にこれほどの実力とは思わなかった……」

 ピジョンをユウナのウインディに倒されたシロは唇を噛み締めてユウナに言った。

「あら、私もそのセリフをそのまま返すわ。まさか、ピジョンにウイりんが相打ちに持ち込まれるとは思わなかったもの」

 そして、両者の最後のポケモンはブラッキーとフライゴンだ。

「「『電光石火』!」」

 ドンッ!!

 鈍い衝撃音が響く。
 それは同じような威力で同じようなスピードの力だった。

「『悪の波動』」 「『竜の波動』!」

 ややユウナの指示のほうが早く、技の出が早かった。そして、ワンテンポ遅れる形でフライゴンも竜の波動を放つ。
 だが、威力は互角で、相殺で終わった。
 しかし、ここからは違った。

 ズドンッ!!

「なっ!!」

 電光石火でフライゴンを一気に吹っ飛ばした。
 
「一気に行くわよ!『ファントムハリケーン』!!」

 超速の電光石火はまるで幻を巻き起こす。
 そして、その実態のある幻は一気にフライゴンを攻め立てる。
 だが……

「その程度で……!!」

 フライゴンは耐え切った。どうやら『こらえる』を使用したらしい。

「これで終わりなら、一撃で空のチリにしてくれる!!『デザートブレーd……」

「あら、これで終わりかと思った?」

 ドガッ! ドガッ! ドガッ! ドガッ! ドガッ!

 攻撃のあとのさらなる攻撃……連続攻撃にフライゴンはダウンしてしまった。

「……!! この攻撃は!?」

「どう?ブラりんの新技……『ダメ押し連弾』の威力は?」

 クスッと笑うと、ユウナはブラりんを戻した。

「くっ……ハク、引くぞ!!」

「ハイ……ご主人様……」

 ボフンッとシロが煙玉を投げると、2人は煙に紛れて姿を消してしまった。

「逃げるのが上手いわね……」

「ユウナさん!!」

「リク、無事だったようね」

「でも、ごめんなさい……せっかくライトさんの手伝いに行っていたというのに……」

「何を言っているのよ。仲間の命がかかっているというのに、のんびりとしているわけには行かないわ。とはいっても、もう意味はないんだけどね……」

「え?どういう意味ですか?……まさか……ジュンキさんは……!?」





「ぜぃ…ぜぃ…ちっ……」

 ハクリューの頭に乗っているバンと対峙するのは、少しダメージを受けただけのレックーザ。
 そして、そのレックーザはかなり激怒していて、『逆鱗』を繰り出してくる。
 一度攻撃を放ったら最後、怒りが静まるか、倒れるまで止まる事はない。

「やっぱり、最大の技を使わずにダメージを与えられるほどヤワじゃねえか……それなら……」

 怒り狂うレックーザがバンに何のためらいもなく向かってくる。
 しかし、一つのモンスターボールをかざしていた。

「このコンボ攻撃で一気に叩きのめしてやる!!行くぜ!!」

 向かってくるレックーザに向かってハクリューは流星群を放つ。
 しかし、バンの攻撃はそれだけではない。
 ミロカロスを繰り出して、氷系のここえるかぜと水系の水の波動を同時に繰り出した。
 微妙な具合の氷水と氷と水。またそれから生じる気体、液体、固体の三態の状態変化が流星群と混ざって凄まじく輝いてレックーザにダメージを与えていく。

 結果的に伝説をほこるレックーザは相当なダメージを負っていた。
 もし、効果は抜群じゃなくても相当なダメージを与える自信がバンにはあったのだが、やはりレックーザは強かった。
 効果は抜群の技を耐え切って見せた。

 そして、レックーザは最後の力を振り絞って襲い掛かってくる。

「(必殺『天の川』でも倒れねえか!?だが……)これで倒れやがれ!!」

 ドシュッ!!

 落下するようにアーボックが上から降ってきた。
 ミロカロスとハクリューの同時攻撃の前に投げたらしく、上空からの強力な『どくどくのキバ』はレックーザを瀕死にまで追い詰めるほどの威力を発揮していた。

「でりゃっ!!」

 そして、サッカーの如く、モンスターボールを蹴飛ばして、レックーザの額に命中した。
 少しも暴れずレックーザはボールの中に納まってしまった。





「……しっ!!捕獲完了!!」

 地面に降りたバンはレックーザの入ったモンスターボールをがっしり掴んでガッツポーズをした。

「……あなた何をゲットしているの」
  
「ユウナか」

 振り向くと、ユウナとその後方でミライを背負っているリクの姿があった。だが、リクは千鳥足のようにフラフラと頼りなさげにしていた。

「まあレックーザなら何匹も確認されているからそんなに問題ないけどね。それに”霧風”が狙ってきたのなら、いずれレックーザを狙ってくるでしょうから、あなたが持っているといいんじゃない?」

「言われなくてもそうするつもりだ!」

 吐き捨てるようにバンは言う。

「もう駄目……」

 そして、リクは崩れ落ちた。

「情けねえな……。女一人も担げないのか?そんなんで惚れた女を守れると思うのか?」

「余計なお世話ですよ!!」

 リクは真剣に怒るのだが、バンもまた真剣に言っていた。
 その間に、バンはミライを軽く背中に背負った。

「まあ、ぼちぼち鍛えていけばいいじゃない。ね?リク」

「……う……はい」

 ユウナが割って入って、リクはしぶしぶ頷いた。

「さぁ、帰るわよ」

「なっ!?ユウナ、ちょっと待て!!」

 慌ててバンがユウナの服の裾を掴む。

「何よ?」

「ジュンキの薬草はどうすんだよ!!アレがないと……」

「薬草はいらないわよ」

「な!?アレがないと……」

「もう必要がなくなったのよ」










 7


 ザザーン

 小さな波が砂浜を浸食するがすぐに引いて、水分は地面へと吸収される。

 ザザーン

 小さな波が砂浜を浸食するがすぐに引いて、水分は地面へと吸収される。

 ザザーン

 小さな波が砂浜を浸食するがすぐに引いて、水分は地面へと吸収される。

 ザザーン

 ……ビーチはこの一連の流れを繰り返す。
 極自然に、当たり前のように。

 そのビーチをパシャパシャと走っていく女の子の姿がある。
 もちろん彼女はビーチにいるからして水着を着用している。
 空色のシンプルなビキニを着用していて、胸もそこそこあって、健康的なイメージの女の子だった。

「リクくん!行くよ〜!」

「あ、待ってください〜ナルミさん……///」

 そんな彼女のビキニ姿に顔を赤くしているのは、純情100%少年のリク。
 ナルミに誘われて、ビーチバレーを始めた。

「でりゃあっ!!」

「ちょっ!!ラグナさん!?」

 そして、乱入してきたトランクスを穿いた男はラグナだった。

「俺もビーチバレーをやるぜ!!」

「じゃあ、ラグナくん……私とチームを組みましょう」

「っ!!ミライさん!?」

 ナルミが誘おうとするよりも先にミライがラグナとのチームに名乗り出た。
 そんな彼女は、ビキニではなくシンプルな群青色のワンピースタイプの水着を着用していた。

「にしてもミラ…………」

「何です?ラグナくん」

「…………」

「……?」

「…………ちっとも成長してねぇな」

「…………」

 ミライはラグナの目線の先を辿ってみた。
 そして、ミライは何のことか気付いて、顔を赤く染めた。
 さらに……

 バキッ!!

 ミライのスカイアッパーが炸裂した。

「……ラグナくん……そういうことは幼馴染でも言っていいことと悪いことがあるんですよ!?」

 ヒューっとラグナは飛んで行き、沖へとドボンと落ちた。

 てか、ミライのスカイアッパーの飛距離でけぇ(汗)

「ってオイ!!誰か…俺を…ゴボゴボゴボ……」

「キャッーーー!!ラグナさんが溺れた!!」

「ミライさん!あれはまずいんじゃないですか!?ラグナさんが溺れちゃいますよ!?」

 ナルミとリクが慌てる。

「もう……知りません」

 プイッとミライはそっぽを向き、”やきそば”と書かれている屋台へと足を伸ばしていったのだった。

「ねえ……リクくん!ラグナさんを助けてよ!私、泳げないのよ!」

「えぇ!?僕も泳げないんだよ……」

 立ち尽くす二人……そして、二人はラグナが溺れるまでずっと混乱していたのだった。



「ウィーッ!いやー酒日和だなぁ」

「……いや、あんたはしょっちゅう酒日和だろ……っ痛ぅ……」

 さて、大きなパラソルの下で焼酎をグビグビ飲んでいるのはショップ・GIAの最高責任者のフウトなのだが、カケラも感じられない。
 一方、ツッコミを入れたログは頭を抱えていた。

「ウィ〜?どうした?ログ?」

「かき氷食いすぎて……頭痛い……」

「食べすぎは良くないぞぉ〜?うっぷ……」

 すると、今度はフウトが口を押さえてどこかへ行ってしまった。

「酒の飲みすぎも良くないぞ……」

 そして、ログはバタッと仰向けに寝転がったという。



「う〜ん……あの子は顔がいまいち……あの子はお尻が……あの子は胸が……」

 あーだ、こーだと海パン姿のバンは双眼鏡を覗いてぶつくさ言っていた。
 てか、あからさまに怪しい。
 
「もう一ランク……高い女は……っと……おっ♪」

 お尻をみるとキュッと締まっていて、ビキニはハイグレと部類されるものでだった。
 上の方を見ると黄色い布地が要所を隠しているだけで、胸の谷間をひどく強調して相手を誘っているようだった。

 「こいつはっ!!」と思い、バンは声をかけようとするが……

「その双眼鏡で何をやっているのかしら?」

 聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
 振り向いてみると、そこには腕を組んで黒いビキニを着用した大人の雰囲気がムンムンとしている女の子の姿があった。

「へぇ……改めて……お前っていい女だな」

「別にあなたに言われても嬉しくないわよ」

 しれっとユウナはなんの気もなく返す。
 だが、ここで突然ユウナも予想外のことが起きる。

「え?」

 突然後ろから抱きしめられた。
 そして、彼の手は上に伸びて行き……膨らみ触れた。

「っっ!!!!」

 ゴスッ!!

 とっさに肘撃ちをかましてバンを怯ませた。

「いったいなんのつもり!?」

「ちっ……なんだよ……せっかくこの俺様がお前を本当の大人の女にしてあげようとしたって言うのに……酷い奴だな!」

 攻撃された腹をさすりながら、バンはブーブー言う。

「余計なお世話よ」

「なんだよ、胸を触られたくらいでそんな反応をするんじゃ、その先なんてまだまだなんだろ?」

「……いきなり触られたら誰だって同じ反応をするわよ!!」

 顔を赤く染めてユウナは言う。これは普通に怒っている。

「まーそんなんじゃ、男は寄ってこねーぜ?」

「別に私に特別な男なんて要らないわ」

「へーへー……そうですか」

 棒読みと言うか、馬鹿にしたようにバンは言い捨てた。

「さて、俺はさっきの女を……って、うおッ!!」

 よくみたら、さっきの黄色いビキニのハイレグ女がそこにいた。

「バンちゃん〜泳ぎにいこっ☆」

「って、ミナミかよ!!」

 こうして、ミナミはバンの手を引いて海へと走って行った。

「そういえば……トキオとルーカスも明日になったら来るのよね。楽しくなりそうね」

 ショップ・GIAのメンバーは全員で海へと来ていた。
 海へ行こうと言い出したのはミナミをはじめ、全員の意見だった。
 こうして、彼らは2泊3日の海のリゾートを楽しんだという。





 おわり……ってあれ?何か忘れているような?あっ、そうだ(汗)





 ザパンッ ザパンッ

 ブーメラン型のパンツを穿いた男が一目散に泳いでいた。

 ザパンッ ザパンッ

 クロール、平泳ぎ、バタフライ、背泳ぎ……いろんな泳法で。

 ザパンッ ザパンッ

 やがて、彼は疲れたのか砂浜へと戻ってきた。

「あ、ジュンキさん。ずっと泳いでいたんですか?」

「悪いか?」

 リクをギロッと睨みつけるジュンキ。

「いや、悪くないですけど……ただ、どこにいるのかわからなかったので、確認しただけなんですけど……」

 ちなみに、ジュンキが倒れたのはただの夏風邪で、医者の診断ミスだったらしい。
 そういうことって良くありますよね?

「あってはいけないと思います(汗)」←リク










 アトガキ

 最初に一言。
 剥。回の容量が多い!!
 本当は前編と後編をあわせて40kbくらいにするつもりが結果的に70kb近くになってしまいました。
 書くほうも読むほうもこれはバテるなぁ(汗)
 ちなみに本当はこれは前編と後編というわけ方をしません。ファイルを転送した時も(1)と(2)で送りましたし。
 早い話、2つあわせて短編3なのです。

 内容については、(1)でショップ・GIAの面々の出会いについてガガガっと書きました。
 フウト、ナルミ、バン、ミナミ、ジュンキ、リク、ラグナ、ユウナ、ログ、そしてミライ。

 詳しく説明すると、フウトはWWSでも最初の方で登場しています。
 しかし、DOCに入るといつの間にか酒飲みのスキルが加わって駄目兄貴に成り下がっていますが(笑)

 ナルミはオートンシティの電気鋼系使いのジムリーダーとしてヒロトやトキオともバトルしたことがあります。(WWS一部の序盤参照)
 ジムリーダーなのですが、よく遊びに来るので加えてみました。
 外見はイマドキの女の子でスタイルもBカップとそこそこ。
 そして、何故かラグナが好きな女の子。
 しかし、ラグナが巨乳好きが好きなので、なかなか踏み切れないところがあるんですよね。
 
 バン、ミナミ、ジュンキはDOCの5話に登場。
 どいつも一癖あるキャラで、特にミナミがすっごいロリ顔で巨乳(ぁ)
 しかも、結構”軽く見られているので”、誰もがミナミは能天気でお気楽な正確な位置づけにしているんですよね。
 そして、ジュンキはさりげなく空気キャラで出番が少なk(蹴)

 リクもDOCの6話で登場。
 リクの登場シーンのショップ・GIAに入るシーンは書いてみたかったので。
 大会で入賞したこともある実力を持っていましたが、最近では機械いじりばかりでバトルの腕は相当鈍っているようです。

 ラグナ&ユウナに関してはそれほど語ることはないかなと。主力中の主力キャラだし。

 ログはDOC7〜8話辺りに登場。
 元レンジャーの力を生かして、ポケモンゲッターになりました。
 しかし、彼の金を集める目的がなんなのか、結局明らかになりませんでした。
 そのうち明らかになるかなぁ?
 体格は標準のくせに、よく食べる食いしん坊君で、しかもどんな猟痢でも食べることができると言う恐ろしい口を持っています。

 ミライはこの短編3に初登場のキャラ。
 コーディネートキャラと言うか、なんとなく彫金師みたいなキャラは一人欲しかったんですよね。
 多分、ミライの知り合いのキャラとかは、彼女に指輪やネックレスを作ってもらってプレゼントするんじゃないかな?(ぁ)
 そして、ラグナの幼馴染。
 ラグナが行方不明になるまでずっと連絡を取り合っていました。
 もちろん、ラグナは彼女のことを友達のような感覚で付き合っていたのでしょうが、ミライの方はと言うと…………登場シーンを見ればわかりますよね?(何)

 (2)の方では、現在(WWS終了時点で3年後、DOC終了時点で1年後)のそのキャラたちのちょっとした騒動を書きました。
 こちらも、突っ込んだら突っ込みきれないよなぁ。敵キャラのシロとハクとか……(汗)

 なんか、アトガキまで凄まじく多くなっちゃったなぁ。
 そんなわけで最後に一言。

 ミライにスカイアッパーで沖まで吹っ飛ばされたラグナは、きっと海で溺れ死んだでしょう(待て)

 

[一言感想]

 ライトはついにおめでたでしたか。
 そしてラグナは……ワイルドな魅力が、意外とウケがいいか?
 や、僕もキャラとしてはお気に入りですけどね(笑)。
 個人的に、バンとミナミのやりとりが見てて楽しいです。
 そしてユウナは、相変わらずユウナでした(謎)。
 誰か、良い人が見つかるといいですね。

 

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