偽春菜。正確には『偽ペルソナウェア with "偽春菜"』。“”というからには本家がいます。その名を『ペルソナウェア with "春菜"』(但し、現在春菜を本家と呼ぶ偽春菜ユーザはほとんどいません)。
 そして、偽春菜問題のとりあえずの概要は、「偽春菜は春菜の著作権を侵害している」として、春菜の制作元が偽春菜の存在を抹消しようとした、というものです。

 偽春菜は本当に著作権侵害なのか? 盗作なのか? そもそも存在してはいけないものなのか? もしそうなら、何故こんなに擁護している人がいるのか?
 偽春菜とは何なのか、まずそこから見ていきましょう。


 デスクトップマスコット、というものをご存じでしょうか?
 そのものずばりを知らなくても、画面に何かキャラクタがいて、それが話しかけてきたりするソフトを見たことや、想像したことや、あるいは映画やアニメ等で(絵空事としてでも)見かけたことはあると思います。
 それです。画面にキャラクタがいて、ユーザの手伝いをしたり、話をしたり、そういうソフトをデスクトップマスコットといいます。これは別にペルソナウェアが最初ではなく、昔からありましたし、誰でも考えつくものでしょう(誰でも作れるという意味ではなく)。

 偽春菜も春菜もデスクトップマスコットです(春菜、というかペルソナウェアは、制作者が「単なるデスクトップアクセサリとは違います」と言っていますが、…デスクトップマスコット(アクセサリ)ですよ、やっぱり。あ、有料なのでタダではありませんけどね)。
 偽春菜がフリーウェア(無料)なのに対して、春菜はシェアウェア(有料、2500円)という大きな違いがあります。

「なるほど、偽春菜とは春菜の盗作だが“無料なんだから別にいいじゃん”と騒ぎになってるんだな」と思われる人もいるかもしれませんが、全然違いますのであしからず。

 とりあえず、春菜と偽春菜を見比べてみましょう。


春菜
偽春菜

 …似てませんね。ええ、これは似てません。これで著作権侵害ならハム太郎だってミッキーマウスに訴えられます。では次。

春菜

 これも同じ春菜です。さっきの春菜が服を着替えるとこうなるんですよ…。で、これも手の組み方が似てるといえば似てるけど、まさか著作権侵害にはならないでしょう。では次。

春菜
偽春菜

 ああ、これなら分からないでもない。ツインテールな髪型に白い服。これは似てるかも、というか、偽春菜が春菜のコスプレをしているといった感じ。
 これが著作権侵害にあたるかどうかは色んな意見があるでしょうが(僕はあたらないと思うが)、“偽”春菜というのも頷けますね。
 つーか、“偽”と言ってるのに全く似てるところがなかったら、それはそれで変ですしね。
 実は、偽春菜は、春菜がまだフリーウェアだった頃の(つまり、現バージョンのデフォルトではない)格好に似せた服を着ているのです。それは何故か…。というのは後述。

 では、これだけでしょうか? 偽春菜が春菜に似てるのは? いえいえ、まだあります。

春菜
偽春菜

 お! 似ている。というか、女の子がフキダシで喋ってるというのがほとんど一緒だ!
「これはいくらなんでも盗作だろう」という人もいるかもしれません。…でも、ちょっと待って下さい。デスクトップマスコットというのは大抵こんな感じになるんですよ。

Living Actor(BS1 『デジスタ特集』より)
LivingActor2L
Active Mascot

 このように、フキダシで喋るキャラクタというのはデスクトップマスコットとしては普通の発想でありまして、特徴としては弱い。著作権を主張できるものではありません。

 しかし、喋ってる内容が…。マスコットが行う事、つまり、ソフトの機能ですね。
 スケジュールバイオリズムなどは完全に被ってるように見えますし、偽春菜の“次のページ”にはタイマーアラームの項目だってあります。
「今度こそ盗作だ! …いや、こういう機能を実装するというのは著作権と関係ないかもしれないが、パクリには違いないだろう?
 …パッと見はそう見えるんですよね。本当にその機能が偽春菜にあるのならば

 無いんです、偽春菜にはそんな機能。では偽春菜でスケジュールの項目を選んでみましょう。

 …これは僕が記録したスケジュールじゃないですよ。偽春菜のネタです。当然毎回変わります。ちなみに春菜は本当にスケジュールの管理をします。

 バイオリズムも見てみますか。

 やはり、ネタですね。もちろん春菜は普通にバイオリズムを教えてくれます。

 ついでです。タイマーも見てみましょう。

 なんと、タイマーというものの存在に疑問を投げかけてきます。

 つまり、偽春菜にはこれらの機能はありません。それどころか「デスクトップマスコットにそんなものはいらねぇ!」という皮肉抗議となっています。ただのパロディソフトと違うと言われるのは、そんなところがあるからです。


では、偽春菜って何ができるの?
 偽春菜も春菜も、主なウリは、インターネットを介したリアルタイムな情報取得、振る舞い、コミュニケーションにあります。
 ネットからニュースを拾って教えてくれたり、バージョンアップして機能を追加したり、さまざまなサイトと連動することも可能です。

「今・度・こ・そ・パクリ! だって両者同じ機能があるんでしょ。偽春菜がマネしたんだ」
 うーん、ある意味そうかもしれません。だって、春菜の方が先に生まれてますしね…。ただ、ちょっと違うのは、春菜はネットをユーザが期待したほど活用していなかったのです(制作者の気負いだけは凄かったが)。
 僕は、春菜のネット活用とは時事ニュースを読んでいるだけのように感じました(確認したい人は春菜を実際に使ってみて下さい)。ようするに、つまんない

 対して偽春菜はというと、勿論ニュースも教えてくれるのですが、それはネタ要素の強いオタク向けのニュース(というかオタク向けの話のネタ)だったり、がんがんネットワーク更新でバージョンアップしたり(一時期はほぼ毎日という驚異のペース! って、『何か。(仮)』になってからは一日に何度もバージョンアップするという異常事態ですが…)、時計を合わせてくれたり、おすすめサイトを教えてくれたり、メールをチェックしてくれたり、(個人運営の)オタク系ニュースサイトを巡ってそこの更新状況をチェックしてくれたりします(“ヘッドラインセンサー”といいます)。
 偽春菜の方が圧倒的にネットワークに関しては進んでいました。そして、なんと春菜までヘッドラインセンサを導入したのです。パクんなよー、春菜〜

 さて、そのヘッドライン効果で、偽春菜を介したオタク系ニュースサイトの一大コミュニティが出来ていきました(以前からあったのだけど、より明確になった)。オタク系ですから、こういう可愛いキャラものには弱いんですね。メロメロ。いろんなサイトが偽春菜に積極的に協力していました。そして、偽春菜も積極的にヘッドラインを強化していきました。持ちつ持たれつの関係、いいですねぇ。

 他には、SSTPというものがあります。…コレに関しては僕はその手のものには素人ですからさっぱりなのですが、偽春菜はSSTPサーバとしての機能を持っているみたいです。…って自分でも何言ってるか分かりません。例えば、これに対応したホームページは、偽春菜に更新情報を喋らせたり、挨拶をさせたりできます。
 また、ホームページに限らず、ソフトウェアも偽春菜と連動することが出来ます。Iriaという有名なソフトは機能説明を偽春菜に語らせるということもしています。

 最初の頃は、偽春菜がWinamp(MP3再生ソフト。偽春菜は曲に合わせて歌います)やIria(ダウンロードソフト。偽春菜はIriaのせいで回線速度が遅くなってるのだと文句を言います)等のソフトに対応していたのですが、だんだんと多くのソフトが偽春菜対応していき、これまた偽春菜を介したフリーウェアの一大コミュニティができあがりました。

 何故、偽春菜だけがこんなに盛り上がったのでしょう? 春菜だってネットワークを介していろいろできる“可能性”があったのに…。僕が思うに、偽春菜というキャラの魅力も多分にあるでしょうが、作者の思想の違い、というのが大きいのではないか、と。その思想の違いについてはまた別の機会に。


 以上、偽春菜と春菜の被っているように見える機能について見てきました。一見同じモノのように見える両者の機能も、実はかなり違うものであるという事が分かってもらえたでしょうか…?

 では、偽春菜の人気はこれらの機能によるものでしょうか? それともその可愛らしい外見よるものでしょうか?
 勿論それらは大きな要因です。しかし、それだけでは、春菜とあまり変わらない…。デスクトップに立って、たまにニュースを読むだけでは。


 偽春菜にはもうひとつ、大きな特徴があるのです。それは漫才

 偽春菜には春菜には居ない相棒(相方)がいます。
 気になっていた人もおられるでしょうが、これまでの偽春菜の画像に何気なく居た、あの青いバケモノのことです。その名をうにゅう。偽春菜はうにゅうと漫才をするのです(いや、ただ会話してるだけなんですけどね)。
 偽春菜にはAIが搭載されているのです。それは偽春菜においては偽AIと呼ばれています。“偽”と言っても、春菜にはありません。偽をつけることが習慣となっていたからか、普通のAIに対しての“偽”であると思われます(普通のAIと偽AIに違いがあるのかは知りませんが)。
 どんな感じかというと、プレイステーションの『どこでもいっしょ』のような、ランダム(本当は違うらしいが)に選んだ単語を文章に組み込んで、楽しい会話を繰り広げるといった感じ(通称『どこいつ機能』)。そして、二人ですから、それが漫才になるのです。

 人工無能というものにも似ています。が、この掛け合い漫才という方式は人工無能界でも画期的なことらしいです。人工無能(もしくは簡単な人工知能)は、人間と会話するには圧倒的に語彙が足りないのですぐ飽きてしまうものが大多数なのですが、偽春菜はうにゅうと会話をするので、語彙や会話パターンが少なくても成り立つのです。と言っても、偽春菜はパターンの多い方ですが。
 春菜はAIが無く人工無能でさえもないですが、やはり飽きやすいと思われます。…というか、僕はすぐ飽きました。プラエセンスは“インターネットを通じて新しい話題や機能を手に入れるため、「いつも同じ反応ばかりで飽きる」ということがありません”とか言っていますが…。

 人工無能の開発者達からは「相方を用意するだけで、こんなにキャラが生きるとは!」と賞賛の声があがっているようです(実はよく知らないのですけど、そうらしいですよ)。


 偽春菜の本当の魅力は、そのキャラクタが生きているところにあります。
 これは、春菜は勿論のこと、今まで出たデスクトップマスコット及び人工無能の(いや、人工知能も含めた)数々のキャラクタの中で飛び抜けています。
 だからこそ、これほどまでにユーザに愛され、だからこそ、偽春菜が殺されそうになったことにユーザが怒りまくったのです。
 ただの“個人が作ったフリーのソフトが、シェアを出してる会社に潰されそうになった”という事件とは少し違うのです。

 「偽春菜が殺される!」 殺人事件のような衝撃でした。…すくなくとも萌え派のオタクにとっては。


 法的に偽春菜が著作権違反であるかどうかは、裁判になってみないと分からないことですので、ここでは厳密に検討したりはしませんが、僕は「もし偽春菜が違法な存在だと見なされるならば、それは法律の方が間違っているんだ!」と言っちゃうことにしましょう。
 …あくまで個人的な意見ですよ。

 とりあえず、偽春菜と春菜との違いは分かってもらえたと期待して…。


 えんいー。