「プロゲーマーは21歳〜韓国・ソウル〜」

ウンギョンさんとスンインさんは韓国に住む女性プロゲーマー。 特にウンギョンさんは、スタークラフトの大会で優勝するほどの腕の持ち主。この二人がプロになってわずか9ヶ月で手にした収入は350万円。大学卒初任給の約3倍で、さらに雑誌の表紙を飾るほどの人気者になった。だが、アメリカのITバブルが崩壊した影響を受けて、韓国でも株が急落。それによりスポンサーの企業が次々と手を引き始めた。そこでウンギョンさんと一緒のアパートに住んでいるスンインさんは、こう言っている。

「今年に入ってからもっと悪くなってしまいました。スポンサーが見つからなくて仕事のない人たちばかりです。大会がいつ開かれるかもわからないんですよ。プロゲーマーの世界には将来性がないと思います。私はもう十分やったので、あとは商売でもしてお金を貯めたいと思います」

それに対してウンギョンさんはこう言う。

「将来のことを悩んでいたら何もできません。迷っていたらプロの仕事はちゃんとできないでしょう。ゲームが好きなのでそれだけを考えて、プロの仕事に集中するつもりです」

スンインさんはプロゲーマーを続けることを諦め、今年二月洋服店で働き始めた。収入は月八万円。プロゲーマーのときと比べ4分の一に減ってしまったが、将来ファッション関係の仕事に就きたいと思ったスンインさんはしばらくそこで働くことを決めた。そこでスンインさんはこう言っている。

「プロゲーマーの仕事はとても不安定なんです。でも、この仕事なら少しずつお金を貯めていけます。将来につながる仕事なんです。だからプロゲーマーをやめたことは後悔していません」


去年まで行われてきた大会が今年は不況のため開かれず、このままではいつ契約が打ち切られるかわからない。プロゲーマーにこだわりつづけるウンギョンさんだが、不安定な生活が続く。

深夜のほうがより強い対戦相手が見つかることで、ウンギョンさんは毎晩遅く、PCバンに出かけ練習を続けている。「一日でも練習を休めば指の動きが鈍る」とウンギョンさんは言う。あえて苦手な相手に挑み、自分の欠点を克服しようとしているウンギョンさんは、次の試合のチャンスが巡ってきたときに備え、朝まで対戦を続けている。

「私は女性プロの中で今でもトップだと思っています。絶対負けるわけにはいかないし、絶対に負けない自信があります。」


2001年3月20日、スポンサーの企業がプロ選手全員に召集をかけた。景気が好転せず、危機感をつのらせた企業が「プロゲームチーム協議会」という団体を結成。この協議会では、去年年間を通して行われてきたリーグ戦を復活させるよう、国やほかの企業に働きかけていくことが決議された。

ウンギョンさんが新たに移籍したのは、大手携帯電話会社がスポンサーにつく有名チーム。ゲーム業界の不振が続く中、よい成績を残さなければ「チームの解散」という最悪の事態もありうる。専属コーチがついての特訓も行われている。去年に女性プロのトップの座に着いたウンギョンさんに、チームの大きな期待がかかる。

ウンギョンさんは、ふるさとの大学でコンピュータープログラマーを目指して勉強していた。そこで「ゲーム」に出会い、両親の反対を押し切ってソウルにでるが、大学は二年間休学したままだ。


ソウルに戻ったウンギョンさんに待ち望んだ日が来る。テレビ局が企画したチーム対抗戦に出場することになったのだ。この対抗戦というのは、8つのプロチームと2つのアマチュアチームが参加し、6ヶ月かけて戦い、その勝率を競うというもの。ウンギョンさんの所属するチームは、現在10チーム中7位と低迷。この日のウンギョンさんの試合にチームの命運がかかる。この試合はテレビを通じて全国に放送された。

今回の対戦相手は、過去に何度も戦ったことのある、プロのキム・ジウン選手。これまで一度も負けたことがない相手で、圧倒的にウンギョンさんが有利と見られている。そして試合が始まった。

相手を攻撃しながら陣地を広げ、敵の基地をすべて破壊したほうが勝ちという、「スタークラフト(StarCraft)」というゲームだ。

実況「ウンギョンさんの戦闘機が敵地に入りました」

実況「いいですね。いいタイミングです」

ウンギョンさんは最初から積極的に攻撃をしかけている。現段階はウンギョンさんの優勢。

実況「弾を大量に浴びせかけています」

実況「ウンギョンさんが壁を破って突き進みそうです」

ウンギョンさんは激しく相手を攻撃し、勝負をしかける。 しかし相手は攻撃を巧みにかわし、思うように試合を進めることができない。

実況「試合の流れが急に変わりました」

実況「ウンギョンさん防ぐことができません」

実況「ああ、降伏しました」

予想に反しウンギョンさんは試合に敗れた。

「試合をしばらく休んでいたので緊張してしまいました。それで実力が発揮できなかったと思います。やっていたとき震えていたし、今もまだ震えています」

ひさしぶりのチャンスをモノにできなかったウンギョンさんは、今日もPCバンに出かけ、練習を続ける。プロゲーマーになって一年。ウンギョンさんは、時代の波に翻弄されながらも、自分で選んだプロの道を諦めるつもりはないようだ。ウンギョンさんは最後にこう言っている。

「プロはお金をもらっているのだから勝たなければなりません。人に評価してもらえるよう努力して、期待にこたえることが重要なのです。そうなれるようベストを尽くします」




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