伝説の食べ物・「にーに」とは…?
注・この物語は実在の店を脚色して構成したフィクションであり、
現実の個人・団体・事件とは一切関係ありません。
第1話
「にーに」…それは湘南にあり。湘南のはずれの某所、看板も何も立ってない店に「にーに」という恐怖が存在する。それは一見弁当のようだが、蓋を開けてみると、過去に見たことのない白と赤の油の何とも言いがたいハーモニーが、食うものに死の恐怖を与える。いや、それ以前にお品書きを見て購買欲を削がれるだろう。そのお品書きにはこう記されていた。
「にーに(肉です) 大440円 小380円」
そんな怪しさ全開の「にーに」を敢えて食おうとする人型たちがいた。
第2話
ある日曜日の昼時に、看板もない店に現れた数人の人型たち。ある者はひたすら意味不明な言語を発し、ある者は顎に親指と人差し指をあてがって黙っている。彼らはカウンターの前に群がり、立て続けに注文をする。
「オヤジ、にーに大!」「焼肉弁当とにーに小!」「俺はにーに大とからあげパック!」
立て続けの注文にオヤジは半ば混乱しているようだ。なにせ、注文をメモすらしてないのだから。パニックの色は隠せなかったオヤジだったが、何も言わずに調理をはじめた。買うほうの人型も注文を間違えられるんじゃないかと焦っていた。しかしそんな中、さっき意味不明な言語を発していた人型は、黙ってただひたすらカウンターに置いてあった食卓塩を店先のアスファルトに振り掛けていた。仲間の人型たちは、彼の行動に「なぜ塩を振り掛けてるのか?」と思ったが、何も言わずにやりたいようにやらせていた。アスファルトに撒かれた塩は、日光にあたって輝いていた。
第3話
人型たちはにーに屋で買い物を済ませ、店を後にすることにした。するとオヤジが一言発してきた。
「仲間によろしく〜」
人型たちは、その言葉に「死」を予感したが、とにかく腹が減っていたので公民館の視聴覚室でにーにを食うことにした。そしてまたも意味不明かつ挙動不審な行動をとって公民館へ向かった。
そしてたどり着いたは公民館の視聴覚室。椅子を全て出せば15人くらいは入ることが出来るスペースである。奥にはテレビとビデオがあり、右手にはピアノが置いてある。壁は音を拡散するために湾曲になっている。人型が暴れたり叫んだりするにはもってこいの部屋だ。
人型たちは、戻ってくるなりにーにを開封した。油にまみれたご飯の上には、肉を醤油で煮たものがのっている。そしてその上からマヨネーズと赤い油がかけられていた。それを見て、リーダーらしき人型が言った。
「クソ、特選を入れられていたか。どおりで20円高かったわけだ。」
この赤い油こそが「特選」と言われるものだった。さっき、この人型は聞いていた。オヤジが
「特選入れておく?」
と言っていたことを。その時、折悪しくも他の人型たちは、アスファルトに食塩を撒いていた人型のほうを気にしていた。リーダーらしき人型も塩を撒くのを止めに入った。オヤジは人型たちの返事がないので有無を言わさず特選を入れていたのだ。しかも特選は20円増し。にーにに特選が入っているのを知った人型たちはオヤジに怒りを覚えていた。
第4話
人型たちが買い物を済ませた後、平穏だったにーに屋に次の客が現れた。その客は、車に乗ってやって来た。車は先々代の三菱ギャラン。車体色はシルバーで、どことなくいかつい感じがするが、それと同時にやや内外装の質感にチープな印象も受ける。どうやら廉価グレードなのだろう。タイヤのホイールもホイールキャップをかぶせていない、いわゆる「鉄チン」である。そんな車からダークブルーのスーツにグレーのトレンチコートをまとった30前後の男が降りてきて、オヤジに何か掌におさまるような黒いものを見せ、さらに1枚のA4の紙を差し出して、こう言った。
「注文ナンバーTKS−2229お願いします。」
すると、オヤジは何事もなかったかのように、
「特選入れておく?」
と聞いてくる。男は
「いつものとおりで…」
とだけ言い返した。どうやらオヤジにとってこの男は馴染み客なんだろう。
それから20分ぐらい時間が経った。男は壁に寄りかかりながらタバコを吹かしていた。その男に向かってオヤジが呼びかけた。
「はい、上等なのが出来たよ」
男はオヤジの言葉を聞くと、店先のカウンターに置いてあった灰皿でタバコをもみ消し、出来上がった品物を受け取ると、オヤジに代金を渡してそれと引き換えに、代金を意味する「¥850」という表記と「パパママ愛してる」という言葉が書かれた紙を受け取った。どうやらこの店ではこれが領収書らしい。こんなもので領収書として成り立つのだろうか…。
男は品物と領収書を手にとるや否や、ギャランに乗って去っていった。去っていく車に向かってオヤジはこう言った。
「仲間によろしく〜」
先に人型たちに言っていた言葉である。その言葉に男は意図を知ってか知らずか、車の窓から手を振って合図していた。
男はにーに屋から南に車を走らせていた。そして車に据え付けてあった無線機を手にしてこう話していた。
「こちら機捜4号。例のブツは確保しました。これより帰還します。」
車はそのまま南へ向かって去っていった。
(続く)
緊急特集!!
1.これが「にーに」だ!!
2.これが「にーに屋」だ!!
3.にーに解析レポート