FTTH
FTTHというのは、Fiber.To.The.Homeの略で、その名の通り、家庭まで光ファイバーケーブルを引くということ。各家庭までの通信ネットワークをすべて光ファイバーケーブルを使って敷設するということ。光ファイバーにはコンピュータ用のデータ、テレビ映像、音声通信(電話)などの情報を流すことが可能で、高速かつ常時接続のネットワーク環境を手に入れられる。
 FTTHの大ざっぱなネットワーク構成は図のようになっている。家庭まで光ファイバーケーブルで結ばれるという仕組みだ。FTTHに対して、最近、何かと話題のADSLサービスや、従来からのISDN、アナログ電話(56kbps)はNTT局から家庭までの配線に銅線(メタリックケーブル)を利用している。
 このFTTHの魅力はズバリ、従来の銅線などを使った通信インフラと比べて桁違いにデータの伝送能力が高いということだ。実験レベルでは、毎秒約3.3テラビット(テラはギガの1000倍)、商用の光ファイバーでは毎秒16テラビットを実現している。回線速度は想像を絶するレベルまで進化している。
技術的に見れば、まさに夢のインフラとも言えるFTTHだが、既設の銅線を使った電話網と比べると、ケーブルや光/電気信号の変換装置などに多大な投資が必要となる。また、ケーブルの敷設自体も長期の工事期間と莫大な費用がかかってしまう。
 NTTは当初、2005年までに各家庭に現在の電話線(メタリックケーブル)に代えて光ファイバーケーブルでネットワークを配備するという計画だった。しかし基幹の光ファイバー網から各家庭までどうやって光ファイバーを引き込むのかという、「ラストワンマイル問題」に対する具体的な解決策を示せずにおり、実現は厳しいと見る向きも多かった。
 実は、基幹の光ファイバー網は既にほぼ完成しているのだ。NTTによると、基幹ネットワーク(NTTの電話局間などを結ぶ回線など)は100%光ファイバー化され、さらに「「き線点」のうち約90%までが光ファイバー化されているという。にも関わらず、誰もが低価格で利用できる高速常時接続としてのFTTHは、これまで具体化されなかった。
その最大の理由は、FTTHの構築コストにある。元々、NTTは現在の銅線(メタリックケーブル)並みのコストで光ファイバーを各家庭まで張り巡らせるということを目標として掲げ、そのための新たな技術開発などを進めながらFTTHに取り組んできた。実は、この「銅線並みのコストでFTTHを実現する」という目標が“曲者”で、光ファイバー化のコストダウンが進んでいるとはいえ、ハッキリ言ってしまえば現時点ではまだ不可能なのだ。
 だから、部分的に非常に強いFTTHのユーザーニーズがあっても、それに対してNTTはダイナミックに動けない。なぜなら、その時点で部分的にFTTHに対応すると、将来、もっと低コストでFTTHが実現できるようになった場合、結局、二重投資になりかねないと考えているからである。
 もう一つ大きな要因がある。それは「NTTが光ファイバーをすべてのユーザー、各家庭まで敷設し、その上で既存の電話も含めた様々なネットワークサービスを提供する」という考え方に“とらわれていた”ことだ。ライフラインとしての電話サービスをベースにFTTHを考えてきたため、どうしても公共事業的な発想になる。全体計画で考える体質になる。だから、基幹ネットワークをまず光ファイバー化し、それが終わったら各家庭までの回線を順次、光化していく。ユーザーニーズという物差しは、プライオリティが低くなる。  分かりやすい例で言うなら、高速道路の整備を見よ。高速道路は国で取り組む整備事業であり、最初にゴールの青写真が作られ、それを実現するために全体計画の下で進められている。その結果、交通量が多く渋滞が起きやすい既存の高速道路の拡幅工事などがなかなか進まない一方で、開通した真新しい高速道路がガラガラの空き状態という現象が見られる。ユーザーニーズ・オリエンテッドで高速道路を整備していけば、少なくともこんな歪んだ現象は起きないハズ。  NTTの話に戻ろう。彼らはFTTHをネットワークのインフラ整備という観点から全体計画の下で進めてきた。考え方として間違ってはいないが、これでは光ファイバーが銅線並みのコストで敷設できるようにならない限り、各家庭まで光ファイバーはやって来ない。FTTHの新しいユーザーニーズを発掘し、その将来性を素早く判断して取り組むどころか、現時点における超高速インターネットに対するユーザーニーズにも応えられなかったわけである。  こうした状況をあるベンチャー企業が一変させる。有線放送最大手の有線ブロードネットワークス(usen)が、自社で構築している光ファイバー網を利用してFTTHの商用サービスに参入してきたのだ。  usenが今年3月から提供開始したサービス「GATE01」は、個人向けの「HOME 100」が最大100Mbpsで月額料金が6100円、企業向けの「OFFICE 100」が最大100Mbpsで月額1万1000円と、破格の値段になっている。これに驚いたのはNTTだった。「こんな割安な値段でFTTHのサービスを提供できるのか。ビジネスとしての採算はあるのか」と。  大切なのはここからで、もし、usenが同社のFTTH商用サービスをどんどん展開できたら、最大10Mbps(ベストエフォート型)で月額1万3000円という高価なNTTの「光・IP通信網サービス(仮称)」は完全に霞んでしまい、ユーザーは利用しなくなる。せっかく超高速インターネットという具体的なユーザーニーズが登場し、銅線並みのコストではないが光ファイバーに対する需要が徐々に見えてきたのに、このまま他の事業者のFTTHサービスを指をくわえて眺めていては、今後の光ファイバー市場を総取りされかねない。  そこでNTTは大幅な路線転換を行った。2000年末から始めた「光・IP通信網サービス(仮称)」などを実験的に進めながら、2005年を目指してFTTHを徐々に整備していくのでは間に合わない、と考えたわけだ。それが、この8月から開始する「Bフレッツ」である(PART4で詳細を解説)。様々な紆余曲折はあったものの、NTTが重い腰を上げた、いや上げざるを得なくなったことにより、FTTHの商用サービスは本格的に始まったと言えるだろう。  では、具体的に光ファイバーはどのような経路をたどって家まで来るのだろうか?  まずNTT局内の設備から、地中に埋められている「とう道」もしくは「管路」に接続される。既にこの管路の部分は全国に張り巡らされている。  地中から家に光ファイバーを引き込むためには、一度地上に光ファイバーを出す必要がある。基本的には、電柱に併設される「き線点」と呼ばれる地上に引き出すポイントを経由し、そこから電柱と電柱の間を多心の光ファイバーケーブルで配線する。ちなみに、き線点の90%までが光ファイバー化されており、家庭までは本当にあと一歩のところまで光ファイバーが来ているのだ。  電柱に配線された光ファイバーは、その後「クロージャー」と呼ばれる機器で多心の光ファイバーケーブルを1本1本に分岐させ、単心の光ファイバーケーブルをユーザー宅へ引き込む。引き込んだケーブルは、光ファイバーの信号を電気信号に変換する「ONU」(加入者終端装置)という機器を経由し、そこから100BASE-TXなどのLANケーブルでパソコンやルーターに接続されるようになっている。  一戸建てに引き込む場合は、き線点から電柱を経由するのがほとんどだが、集合住宅やビルの場合は、地中から直接集合住宅用の加入者終端装置に接続する場合もある。また、電柱のない場所では、マンホールから光ファイバーを引き込む方法もある。このあたりはユーザーニーズや、回線の状況によって違ってくる。  注意したいのは、ここで解説したFTTHの流れは基本的にNTT「Bフレッツ」のケース。usenのように、既に自社内で持っているネットワーク(usenの場合は電柱)を利用する場合は、引き込み方法も異なってくる。