ipv6
2001年2月、神奈川県横浜市で町中を走り回る自動車をインターネットの端末にするという、なんともユニークな実験が行われた。
「IPCar(アイピーカー)システム」と呼ばれるこの実験の背景には、実際に走っている自動車から、車輪の回転数やワイパーの動き、位置情報、気温などのデータを無線ネットワークを通じてリアルタイムに収集し、
これを渋滞情報や天候情報などのサービスに活用しようという狙いがあった。最終的には国内に約7000万台ある自動車すべてをインターネットに接続するという壮大な構想である。
 このような“インターネット自動車”の例に限らず、近い将来はパソコンや携帯電話といった情報端末以外の機器、例えば冷蔵庫やエアコン、ラジカセなどの身の回りのあらゆる家電製品もインターネットに接続される日が来ると言われている。
「IPv6」(Internet Protocol version 6、インターネットプロトコルの第6版)は、このような“耐久消費財総インターネット端末時代”を根底から支える基盤技術と言うことができる。
 ちなみに「IP」=「インターネットプロトコル」とは、ネット上に接続された機器同士で通信をする際の約束事(手順)の意味。極めて大ざっぱに説明すれば、国際ビジネスの世界では英語が“標準”の共通言語になっているが、IPはその共通言語と考えると分かりやすいだろう。
つまり、その約束事を守らないと通信できないのだ。IPv6は、その約束事の次世代バージョンということになる。

なぜ必要か?

現在のインターネットは、1983年に米国防総省により標準化された「IPv4」により運用されているのだが、その後、ネットが急速に普及したことに伴い、IPアドレスの数が足りなくなってきた。

 現在利用されているIPv4のアドレスをコンピュータで利用するために使われる2進法に変換すると、「0」か「1」が32個並ぶ数字(32ビット)で表記される。32ビットで区別できるIPアドレスの数は2の32乗倍、すなわち約43億個分ということになる。
約43億個という数字は決して少ない感じはしないのだが、約60億人いる世界中の人がIPアドレスを1個ずつ使ったら、そこでもう足りなくなる。ましてや、身の回りのあらゆる機器をネットに接続させたいとなると、1人でたくさんのIPアドレスが必要になり、ますますIPアドレスは不足する。
 こうした従来のIPv4が抱える“アドレス不足”という問題を一挙に解決するのが、「IPv6」である。
IPv6は128ビットの“長さ”があり、2の128乗倍分のIPアドレスを確保できる。IPv4と比べれば、IPv6は約43億×43億×43億×43億のIPアドレスが使えるように設計されているのだ。
これを実数で表すと約3.4の10の38乗倍した数となる。
 「10の38乗倍」などと言われても大きさを感じづらいが、3.4億×1000兆×1000兆と言われればいかがだろうか。これによって、現在約60億人いる世界中の人々にIPアドレスを均等に割り当てた場合、1人当たり5.6穣(じょう)個(5600兆の100兆倍)の割当が可能となる。
 これは、人間の細胞(約60兆個と言われる)の一個一個にIPアドレスを割り当てたとしても、まだまだ余っている状態だ。つまりIPv6が導入されると、無限と考えてもいいくらいのIPアドレスが使えることになる。

高いセキュリティなど他のメリットも

IPv6の特徴は膨大なIPアドレスの数だけではない。「IPsec」(アイピーセック)という暗号・認証の仕組みを標準で装備した点も見逃せない。
 現在のIPv4のネットワークでも暗号や認証の仕組みはあるが、IPv6を採用した場合、各機器がデータを送り出す段階から暗号化や認証の機能を組み込むことができるので、現在と比べて格段に高度な安全性を保つことができるといわれている。
 さらにIPv6では、IPアドレスを自動的に設定できるという特徴もある。少々専門的になるが、IPv6のインターネットでは自分のIPアドレスを自分自身で生成する仕組みを持つほか、ネットに接続したパソコンなどの端末が最もよく利用するルーターのIPアドレスも自動的に取得してくれる。
この機能を「プラグ・アンド・プレイ」と呼ぶ。このため、例えば携帯電話や家電などにIPv6を装備しておくことで、電源を立ち上げるだけで(もちろん無線など何らかの手段でネットに接続する必要がある)、IPアドレスの各種設定を自動的にしてくれ、スグにインターネット端末として利用できるようになる。