最近の話題 2004年10月2日

1.Blue Gene/Lが地球シュミレータを抜いて世界トップに

  日本の地球シミュレータがスーパーコンピュータの世界ランキングのTop500で2年間で王座を占めてきましたが,9月29日にIBMはBlue Gene/Lでこれを上回る性能を達成したと発表しました。Blue Geneは2003年5月10日の話題で紹介していますので,こちらも参照ください。

  地球シミュレータのLinpack性能は35.86TFlopsですが,今回,8192ノードのBlue Gene/Lで36.01TFlopsをマークしたとのことで,僅か0.42%ですが,地球シミュレータを上回っています。11月6日からピッツバーグで開催されるSuperComputing 2004に合わせて更新されるTop500に,駆け込みで間に合わせており,11月の発表で正式に世界一と認定されると思われます。

  新聞などでは,Itanium 2を1万個使うNASAのColumbiaなどがこの数字を上回るので,Blue Geneの天下は短いというような報道がありますが,今回の8192ノードのシステムは来年5月頃にローレンスリ バモア研究所に納入されるフルシステムの1/8の規模です。Columbia,Red StormのOpteronのデュアルコア化システムBigMacの拡張などが一時的には上回ることがあるとしても,64KノードのBlue Geneのフルシステムが動けば2009年まではこれを上回る計画は見当たらず,地球シミュレータより長期に渡って王座を維持するのではないかと思われます。

2.富士通がスパコン開発に名乗り

  2004年10月2日の朝日新聞が,富士通が2010年を目処に3 Peta Flopsの達成を目指し,ペタスケール・コンピューティング推進室という組織を立ち上げてスパコンの開発に着手と報道しています。 45nm半導体プロセスや大幅な低消費電力化技術などの要素技術の研究に取り組むということで,2010年に向けて長期的に取り組もうという感じです。

  上記のBlue Geneのフルシステムがピーク360TFlopsですから,3PFlopsはその一桁上の性能です。地球シミュレータで抜かれた米国が猛烈な巻き返し開発に取り組み,Blue Geneなどの成果が出始めているので,日本も再逆転を狙うということでしょうか。今やコンピュータシミュレーションは理論と実験に並ぶ,科学を支える第三の柱と言われ重要な競争力の源泉なので,こういう開発に取り組むのは良いことだと思います。

3.Azul Systems社がJAVAサーバを発表

  Azul Systems社は2004年9月27日に,ネットワーク接続でJAVAや.NETのC#などで書かれたアプリケーションを高速で処理するサーバを発表しました。

  同社はx86を使ってLinuxでWebサーバを動かすサーバを業界で初めて発売したCoBalt Networksを設立したDeWitt氏が設立した会社で,何をやっているかは秘密のステルスモードで活動していたのですが,ついに製品発表をしました。DeWitt氏はCoBalt社を$2BでSunに売り,SunのVPを暫く勤めていたのですが,それを辞めてAzul社を設立しました。最初のCoBaltの箱も コバルトブルーで,今回のAzulもスペイン語で青を意味しており,Azul社のホームページも青系で統一されていることから,同氏は余程,青が好きな人と思われます。

  それはともかく,このサーバに使われているプロセサはVegaというコードネームで,JAVA等を直接実行する24個のプロセサコアを1チップに集積しています。4cm2程度の大きなチップで半分を24個のコアが占め,残りがキャッシュという噂があります。真偽のほどは分かりませんが,おかしくない値です。

  今回発表のサーバは,このVegaチップを16個と256GBのメモリを11Uの筐体に収容し,384スレッドのJAVAアプリを並列に実行できる構造です。噂によればこの384コアはキャッシュコヒーレントなSMPで,データを共有するスレッドでも処理できそうです。

  ホスト側のサーバでJVMが動くところを横取りして,ネットワーク経由でこのサーバを動かしてトランスペアレントにJAVAアプリを加速するとのことですが,小規模な処理ならソフトのJVMで問題なく動いており,このような専用サーバを必要とするカストマがどの程度あるのか,また,Sunを始めとしてJAVAチップを作ったが(ARMのJazelleのような携帯用のプロセサエンハンスを別とすると)専用チップは成功しておらず,Azulのビジネスモデルが成功するかどうか業界のアナリストは懐疑的です。

  しかし,こういうアプローチは技術的に面白いし,筆者の友達でAzulに勤めている人もいるので,成功を祈らずには居られません。

4.SuperHは事実上解散

  日立とST Microの合弁でSHシリーズの組み込みプロセサを開発,販売していたSuperH社を10月1日を以てRenesasが吸収することになったと発表されました。ご存知のとおりRenesasは日立と三菱の半導体部門が合併して出来た会社で,SuperHにST Microから来た人達はSTに帰るとのことなので,事実上のSuperHの解散です。ということで6月19日の話題で紹介したことは正しかったことが証明されました。

  Renesasは今後もSHを頑張り,ST Microも組み込み用途にはSHコアを使い続けるとのことなので,経営形態を別とすれば,当面は大きな変化は無いようです。