法人著作
1.はじめに
本論ではどのような法人著作物が個人または法人に属するかを判例を用いて考察する。
2.法人著作とは?
法人著作とは職務著作のうち、法人等の使用者が著作者となるために必要とされる一定の要件を具備したものをいう。法人著作も職務著作であり、法人著作規定の適用のない職務著作もある。
*職務著作:法人等の業務に従事するものが、職務上の義務として作成した著作物をいう。
3.判例
現代世界総図事件(東京地裁 昭和54年3月30日判決)
概要
原告 xさん(仮名)製図者
被告 y1さん(仮名)発行者(原図の提供者)
y2さん(仮名)y1さんから貸与を受けて印刷発表する。xさんの許可なく発表。
y3さん(仮名)y2さんと同じくy1さんから貸与を受けて印刷発表する。xさんの許可なく発表。
xさんの言い分
y2さんとy3さんがxさんの許可なく印刷発表するのは著作権侵害と同一性保持権侵害に該当する。
y1さんの言い分
企画、意図したのは被告側にある。そのため著作権はこちらにある。xさんは製図作業を行っただけ。
裁判所の見解
製図において使った技法はxさんのものであることを認定する。しかし検討事項として模写と原画の関係を取り上げる。内容としては今回のxさんが行った行為は模写(製図)を限りなく原画に近づけることである。模写画としての勝は有するが、その表現に創造的要素はない。
4.著作権における法人著作の見解
現行法では法人等における著作物の作成の実態とその利用の便箋を考慮し、職務著作と法人著作に関する統合規定を設けている。
著作権法第十五条一項によると実際に著作物を作成する者が著作権制度上の原則の特例になることから、その適用範囲を限定し、職務著作のうち特定の用件を具備したものに限って、法人等がその著作者になりうることにしている。すなわち、@法人等の発意に基づくものであること、A法人等の業務に従事するものが職務上作成するもであること、B自己の著作の名義の下に公表するものであること(ただし、プログラム著作物の場合には公表名義を要しない)、C作成のときにおける契約、勤務規則その他で著作権が従業者に留保される旨の定めがないこと、という4つの要件をすべて満たしたときには、法人等が著作者の地位を取得するのである。
@の「法人等の発意」とは、使用者がたんにアイデアを出し企画を立てることだけではなく、著作物の作成行為全体にコントロールが及んでいる旨表明することをいう。
Aの「職務上」とは、職務上の義務としてということで、職務に関連して作成されたものは該当しないことになる。
Bは「公表したもの」ではなく、「公表するもの」となっているので、法人等の著作名義で公表することを予定しているものも含まれることになる。このことから作成者本人の著作名義で公表されるものについては、本規定は適用がないことにある。
Cにより、著作物を作成する際の勤務規則その他の契約で作成者個人の著作物とする旨の特約がない限り、法人等が当然に著作者の地位に立つことになるわけである。
5.上記の3.判例と4.著作権における法人著作の見解を照らす
@においては被告であるy1さんが企画、意図したものであるのだから該当する。
Aにおいては製図はy1さんがxさんに対してかした職務上の義務なので該当する。ただし職務に関連することは該当しないので、xさんが製図を作成する際に使った技法をxさんのものであることを認定したのはAに該当するためだと考えられる。また、裁判所の見解において創造的要素が乏しいといっているが、創造的要素を職務に関連するものであると考えれば今回の判例における著作物は別に原画があるので創造的要素が乏しい。つまり職務に関連したものではないためy1さん側に属すると考えられる。
Bにおいてはy1さんが公表を予定したと考えられるため、xさんに著作権があることを公表しない限りy1さん側に著作権があると考えられる。
Cにおいては、勤務規則その他の契約で作成者個人の著作物とする旨の特約がない限り、y1さん側に著作権が属するものと考えられる。
上記のことから裁判所の判断は正しいものと考えられる。
6.考察
法人著作物が個人又は法人に属するのかを判断する際には次の事を明確にする。作成する際に個人に属するのか法人に属するのかを公表すること。そして契約において著作物が個人もしくは法人に属するのか明記していくことが挙げられる。特にこれからは国内だけではなく海外を相手に仕事をしていくことが増加すると考えれば契約などにおいて明記していくことがさらに必要であると考えられる。
7.参考文献
千野直邦・尾中普子 著 「著作権法の解説」1989年4月10日