"ミニ旋盤トップ・クロススライド目盛り部分改良" プロジェクト 【2003.11.24完了】
*** (追加情報) ****************************************
この記事を掲載してから、中山様という方からメールをいただき、以下の製作記事に出てくる調整用カラーが不要となる更に適当と思われるスラストベアリングを教えていただきました。以下に、調整用カラーが不要となるスラストベアリングを2つ紹介します。この記事と同じような目盛りを作る際は、次のスラストベアリングを使用されることをおすすめします。
NTN51102
・種別=単式スラスト玉軸受
・厚さ=9mm
・外径寸法=28mm
・内径寸法=15mm
NTN51103
・種別=単式スラスト玉軸受
・厚さ=9mm
・外径寸法=30mm
・内径寸法=17mm
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CL−300(寿のFL350と同等品と思います)ミニ旋盤で、穴ぐりをしているときにトップスライドの移動量を示す目盛り表示が少しずつズレてくることに気がつきました。通常の外径削りなどではそれほどスライドを押す力がかからないので、こういう現象が起きず気が付かなかったんですが、スライドを押す力が大きくなってくると移動量を示す目盛りカラー部分が摩擦に負けてズレてきます。穴ぐりとか端面削りとかとても負荷がかかる切削をしているときに発生します。トップスライドまたはクロススライドの目盛りカラー部分をバラしてみるとわかるんですが、CL300では目盛りが付いたカラーはとても重要な役目をしています。単に目盛り表示の役だけでなく、ハンドルを回転させた力をクロススライド(またはトップスライド)に直接伝える機能を果たしています。わたしも始めてバラしてみてやっとわかったんですが、スライドを押すとき、この目盛りカラーで力を伝えています。そして内側の軸とこの目盛りカラーの間に溝が掘ってあり、そこにU字形のバネがあり、目盛りカラーを下から押していて簡単に空転しないようになっています。
通常の外径削りなどでは、それほど力がかからないんで気付きにくいんですが、スライドを押す力が強くなった場合、目盛りカラーが摩擦に負けてバネの力で保持できなくなり、わずかですが空転することが起きます。なおスライドを引くときはこういうことは起きません。
スライドを押したときに空転すると目盛りがずれ、実際の位置より少なめな位置表示となりますので、オーバー切削の原因となります。
対策として目盛りカラーの内部にスラストベアリングを組み込んで、このベアリングを通して力を伝達することにより摩擦を少なくし、目盛りカラーが滑るのを防ぐことにしました。真鋳棒材料の内部を繰り抜いてベアリングを入れられるように工作します。あと目盛りの表示が必要になってきます。
《"ミニ旋盤用スライド目盛り改良"レシピ》
(材料)
真鋳・・・手持ちの39Φと15Φの2つの材料を使いました。「材料屋.com」でもφ40×300L(@2,067円)、φ15×300L(@500円)のものがあります。アルミでも作れると思いますが外形の肉厚が薄くなると歪みやすいので注意。
(ベアリング)
スラスト玉軸受(NTN2902)・・・「住商グレンジャー モノタロー」 単価304円 →★このベアリングを使うと調整用カラーが必要となりますので、上の(追加情報)にありますNTN51102またはNTN51103を使用してください。
・厚さ=12mm
・外径寸法=31mm
・内径寸法=15mm
-製作するもの-
中にスラストベアリングを内蔵するミニ旋盤スライド用目盛り。トップスライドとクロススライドの2つ製作。
目盛り本体と長さ調整用のカラー(どちらも真鋳で作成)で一組となります。
-製作方法-
1.目盛り本体の製作
真鋳棒を外径33mm(-製作上の注意点-で説明しますが、外径は34〜35mmくらいにした方がいいと思います)に削り、中心に穴を開けて内径12mmに内繰りして拡大します。これを長さ15〜16mmほどで突っ切り、切り落とします。突っ切りした端面は作成した円筒治具でつかんで旋盤で端面切削し、きれいにします。また、内径の12mmは微妙ですので、実際にスライド軸にうまく嵌るかどうか確認する必要があります。
できたものに円筒治具およびピン治具を取り付けて、フライス盤でスラストベアリングが入る溝をドーナツ状に掘ります。フライス盤には、三つ爪チャックを付けたロータリーテーブルを固定し、このチャックで材料を円筒治具ごとつかみます。材料の端面に6mm径のエンドミルで、巾8mm((31-15)÷2=8)のドーナツ状溝を掘ります。
まず正確に材料のセンタを出し、そこからフライスにけがき針などを付けて、テーブルの目盛りで測って、溝端をけがいておくと安心です。また、溝掘りの前に6mm径のドリルで掘る溝の深さ分の穴を1つ開けておくとやりやすいと思います。

溝の深さは(スラストベアリングの厚さ−0.2mmくらい)11.8mmほどにします。溝を掘り終ったら、ベアリングを入れる前にベアリングがつかえて取れなくなったときのために、溝の底に3mm径ほどの穴を等間隔で3つくらい開けます。
穴を開けてからベアリングを入れてうまく入るかどうかを確認します。つかえるときはベアリングを磁石などで取り出し、さらに慎重に少し溝を広げます。
うまく入るようになったら、深さがちょうどいいか確認します。深過ぎたときは、あとで円筒治具でつかんだまま旋盤で端面を少し削って調整します。わずかにベアリングの方が高くなるようにします。
次に、目盛りをけがきます。わたしはフライスにボーリングヘッドを付けてけがきました。ボーリングヘッドがなかったら、10mm径くらいの棒にすり割りを入れて、カッターナイフの刃を折ったものをロウづけして固定するなどして作ればいいと思います。目盛りは標準品と同じように5目盛り、10目盛り間隔で長くします。なお安全のため、フライスの電源が入らないようコンセントは抜いておきます。(旋盤の主軸に円盤を取り付けてインデックスとして使えるようにすれば旋盤で目盛りが刻めると思います)
数字の刻印は、刻印治具を使って下の写真のように保持し、かなづちでガツンと強く打って刻印します。なお目盛りの外径が薄いので歪まないようにベアリングを入れた状態で刻印します。手で持って刻印しますので多少数字の位置がずれてしまいます。きれいに刻印したい場合は、専用の治具を作れば正確に刻印できます。

2.長さ調整用カラーの製作
今回使ったベアリングと外径、内径の寸法が同じで、厚さが10mmくらいのスラストベアリングがあるといいんですが、厚さ12mmのものしか見つけられませんでした。標準品の目盛りの厚さ(長さ)が12mmですので、目盛りのベアリングの底部分として厚さを2,3mmみると目盛りの全体の厚さは14,5mmとなってどうしても標準品より長くなってしまいます。トップ(クロス)スライド軸はちょうど目盛りの厚さ分の位置に段がついていて位置を合わせてセットするようになっています。
仕方ないので目盛りの厚さが長くなった分、真鋳でカラーを作って調整するようにします。内径8mm外径12mm弱で、長さ3mm+0.3〜0.5mmほど(目盛りの厚さが15mmのとき)のカラーとなります。

3.新しい目盛りのセット
まず、標準品の目盛りを取り出してから、U字形のバネを入れないで、新しい目盛りをセットして押し付けてスムースに回転することを最終確認します。
それから、U字形のバネを元のように置いてマイナスドライバーなどでバネの上を押しながら、新しい目盛りを押し込みます。
調整用のカラーを軸と目盛りの間に挿入します。この際、軸を左(反時計方向)に止まるまで回した後、わずかにカラーの方が飛び出ていることを確認します。
適当な厚さのワッシャを嵌めたあと、付いていたネジで固定します。少し目盛りが厚くなりましたので付いていたネジでは長さが足りないかもしれません。そのときは、M6ネジで適当な長さのものを取り付けます。


-目盛り製作のために作った治具-
1.円筒治具
切削時の歪みを防ぐため、目盛り外側を囲む真鋳製治具。長さ20mmくらいで内径を目盛りの外径と同じにした2〜3mmくらいの厚さの円筒に1mmのすり割りを入れたもの。目盛り材料を固定しやすくするため、底の方に1mm弱の段を付けて厚くしておく。すり割りするときは、すり割り治具に固定し水平を出し、フライスですり割りします。
わたしが作ったものでは、すり割りしたら内部応力が生じていたのか、スリットが閉じてしまいました。そこで下の写真のように2mm径の2mm位の深さの穴をスリットの両脇に開けてリング取り付け工具で開くことができるよう工作しました。


2.ピン治具
円筒治具と同じく、切削時の歪みを防ぐために目盛りの穴に入れる治具です。外径12mm長さ20mmくらいにして、落ちないようにツバを付けます。

3.すり割り治具
円筒治具にすり割りを入れるための治具。円筒治具の水平出しができます。下の写真のようにフライスに固定して使います。



4.刻印治具
目盛りに数字を刻印するときに使います。この治具は本来、旋盤で工作して残った端材などに穴を開けて、この治具で外径を削り、ワッシャやカラーにするための治具ですが、刻印するための治具に流用しました。もし同じものを作るなら下に置くVブロックに傷をつけないために真鋳で作るといいと思います。また刻印治具として使うだけなら、ネジは特に切る必要はないかもしれません。

-製作上の注意点-
目盛りの外径を標準品と同じ33mmにして製作したところ、溝の余裕が必要ですので、外径の厚さが実測で0.7mm弱と非常に薄くなってしまいました。目盛りの外径は34〜35mmくらいと厚めにして製作した方がいいと思います。外径を大きくするとセットしたとき目盛り部分が段になりますので、端を45°くらいの角度で少し旋盤で削ればきれいになると思います。
目盛りの中心穴は、単にドリルで穴あけするだけでは精度不足です。少なからず偏心していますので、必ず旋盤で孔グリして正確な穴開けをする必要があります。なおわたしはjapan-hobby-tool.comの超硬孔クリを使っていますが、この孔クリバイトでは孔グリする前にドリルで最低7mmほどの穴開けをしてから孔グリする必要があります。
-参考写真-
標準の目盛りです。

目盛りと内蔵するスラストベアリングです。および目盛りを作成するために製作した各種治具一覧。
目盛りの裏にはスラストベアリングが取れなくなったときにピンで押し出す穴が開けてあります。
下右の写真は、標準品の目盛りと目盛りの下にあるU字形バネです。




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