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『snowdrop』
2002/02/13
Author by たつる |
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プロローグ ポーン♪
札幌行きの飛行機の中にスチュワーデスさんのアナウンスの優しい声が響いた。
そう小さく呟いてリュックに着けてきた小さなゾウのぬいぐるみ、えれふぁんをツンと指で弾く。
心の中ではそう呟いて…… |
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〈1〉 空港で荷物を受け取って(あのベルトコンベアに乗ってみたいと思うのは私だけ?)待ち合わせのメーカーさんを待つ。
マスターらしいメッセージにちょっと緊張がほぐれた。ありがと、マスター。
不意に名前を呼ばれて声のした方を向くと長い髪を一つにまとめたの元気そうなお姉さんが私に向って手を振っていた。
鷹村さんはそう言ってにっこり笑うと一枚の名刺を取り出した。
名刺なんてもらうの初めての経験。きちんと両手で受け取って改めて名前を見た。
お仕事で会う人って、どう呼べばいいか困っちゃうから必ず伺うようにしている。ちょっと困っている私の心が見えるのか鷹村さんは
って、言ってくれた。
そう言うと深雪さんは私の荷物を持ってさっさと移動してしまった。
思わず足を止めて呆然とその雄大な雪景色を眺めた。
ぼたん雪、か。帰ったらぬり江ちゃんに教えてあげよう。
……二歩目は足じゃなくてお尻での着地となった。痛いよりもじんわりと冷たい。
深雪さんが差し伸べてくれた手を取って、何とか立ち上がった。
私の返事ににっこり笑うと、深雪さんはすたすたと駐車場の方へ歩いていった。
いつもなら小うるさいほど何か言ってくれるえれふぁんが静かなので不思議に思ってみてみると、えれふぁんは寒いのか押し黙って震えてた。 |
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〈2〉 場所は変わって、札幌のカニ専門料理店『カニ元祖』
って、思わず悲鳴にも似た言葉が出る。その言葉に、お店のお給仕さんが
って、笑って言った。
深雪さんの言葉に、この店に架けられていた足が動く大きなカニを思い出した。
深雪さんがカニをほぐしながら教えてくれた。
深雪さんと二人で顔を見合わせてふふっ、と笑う。でもその笑いも深雪さんの手によって食べやすくほぐされたカニの山によって長くは続かなかった。 |
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〈3〉 深雪さんの話だと、このあと3時からステージ。4時から商品の配布ということだった。
そういって控え室のテントの中で深雪さんから渡されたのは今日の衣装だった。
渡されたのは牛柄のフードが着いたコートと黒のミニフレアスカート。スカートはペチコートが付いてとても裾が広がってお姫様のような気分になれそう。
牛柄のコートはフードにちゃんとツノと耳がついていて、ご丁寧なことにお尻にはしっぽがついている。でもきっと彗聖がみたら『乳もないのにウシ女かよ!』とか悪口いうんだろうな。
深雪さんがカイロをくれた。なんでもお腹に入れて内臓を暖めた方が寒さを感じないんだって。またひとつ勉強になった。
どきん。
ありがとう、大丈夫。がんばります。 |
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〈4〉
少し息を切らしながらステージを降りてきた私に、深雪さんがねぎらいの言葉をかけてくれた。
って言って、テントから慌てるように出て行った。
あっちゃ〜またえれふぁんの講釈(ちょっと電波っぽいし)が始まっちゃった〜。
……あるんだ、リフレッシュ休暇。
えれふぁんにそう念を押して、ミルキースターをそっと外す。
えれふぁんのツッコミ。も〜全部終わったらおにぎりの刑にしてやるんだから!!
私の呪文を受けてミルキースターは7色の光を放ちながら、ゆっくりと流星形に姿を変えていく。 |
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〈5〉
怪しい男の笑い声が、四越前のスクランブル交差点にこだまする。
藁にもすがる思いでえれふぁんに小声で助言を求める。
…………
返事はない。ただの屍のようだ……
あっ、と気がついて慌てて口を覆う。怒りのあまり声に出しちゃったんだ。
やっぱり、コッチを見て怒ってるよぉ!
電波な人はライオンさんから降りてゆっくりと私に向ってくる。
私の『合格』の言葉に電波な人の動きが止まった。
まさしくこれこそ『火に油』
そしてもう一つのことわざが私の頭の中に浮かんだ。『焼け石に水』
動きを止めていたのはタメ攻撃のため(シャレじゃないのよ〉だったのかと思うくらいの勢いで、手にしていた本を投げつけてきた。
それを手にとって確かめると『北海道神宮・学業成就』と書かれた小さなお守りだった。
思ったとおり、電波な人の動きがぴたりと止まる。やっぱり学業のお守りに向って攻撃は出来ないみたい。
どこからか聞こえたその声と、私の身体が動くのは同時だった。
電波な人は苦痛の声をあげながら両目をおさえ、その場にうずくまり、その拍子にかけていた渦巻きメガネが地面に落ちて、パリーンと甲高い音を立て砕け散った。 |
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〈エピローグ〉 その後、私はなんとか時間に間に合い、無事仕事を終えることが出来た。
もうそろそろ搭乗口まで行かなきゃならない時間。
どうしても深雪さんに聞きたいことがあった。
不思議そうな顔で深雪さんが私を見ている。
とびっきりの笑顔で別れよう、それだけは心に決めていた。
深雪さんが笑顔で私に声をかける。
元気よく言葉を返して私は手を振りながら搭乗ゲートに進んだ。
聞き覚えのある声。
駅の入り口に自転車に乗った彗聖がいた。
いつもならすぐに返ってくる彗聖の憎まれ口が一旦止まった。
なんかしどろもどろ。ひょっとしてカップメンを缶のお汁粉で作ろうとでもしていたのかなぁ?
紙袋の中から彗聖のお土産を取り出す。北海道ロイスのチョコレート。本当はバレンタインに渡そうと思ってたんだけどまぁいいか。 |
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〈&エピローグ〉 車の中に携帯電話の着信音が鳴り響いた。
ツー…ツー…ツー… |
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謝 辞
札幌支部のたつるさんより『snowdrop』をご投稿いただきました。 きららちゃん初の遠征エピソードです。 札幌雪祭りでステージとは凄いですね。巨大彫像物に囲まれて歌うきららちゃんを想像して思わずにたりと……。 くぅ〜〜っ、イイねえ! そして今回は、謎な挿絵が一枚紛れ込んでいます……。 作品の雰囲気をぶち壊す落書きなんで、見ない方が賢明デーース。 たつるさん。ご投稿ありがとうございました! 感想を送るぜ。 素晴らしい小説を頂けた、たつるさんにぜひご感想を! 上の直通メールフォームをご利用下さい。 たつるさんの「建茶屋」へは、下のバナーからいけます。 |