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漂流記の魅力

オススメ度:2
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漂流記の魅力

吉村昭
新潮新書(002)、2003年4月10日発行
ISBN 4-10-610002-9 C0221

なぜ日本にだけ漂流記はあるのか?

今でこそ漂流という言葉には物が流れるイメージが強かったりするものだが、江戸時代なんてのは一度漂流してしまえば人も物も同じような運命を辿ることになった。略奪に遭い、奴隷として捕らえられ、殺される。そんな過酷な人生が待っているかもしれないのに、水夫たちは船を動かす。

特に太平洋を流れる黒潮にさらわれてしまうと、当時の船ではどうしようも抵抗できないまま北へと流されていってしまうのである。そうして着いた先はロシアになるのだが、それでもロシアに上陸できたら良い方で、食料が尽きたり嵐に襲われて命を落とす者も多かったとか。

そういうことが今は殆ど起こりえないのは、船が近代化し西洋化して来たことに起因する。つまり西洋にあるような船は構造からして漂流ということが起こりにくかったということらしい。それはもともと大洋を渡ることを目的に設計されているからで、日本の内海で物資を運搬するのとは訳が違っていたからである。

だから漂流記というのは西洋にはあまり存在しないが、日本には数多く残っている。その中から本書では『環海異聞』を取り上げてそのドラマを再現しようとストーリーを進める。そういうことで後半は小説みたいな展開になっているのである。けっしてつまらないわけではなく、実際に漂流記に触れることでその魅力を引き出そうとしているのだ。

西洋には海洋文学が存在するが、それもまた面白いものであろう。だが、日本独自のといってよい漂流記もまた、人間の生きるドラマだということだ。

(2003.05.18)
内容
日本には海洋文学が存在しないと言われるが、それは間違っている。たとえば――寛政5(1793)年、遭難しロシア領に漂着した若宮丸の場合。辛苦の十年の後、津太夫ら四人の水主はロシア船に乗って、日本人初の世界一周の果て故国に帰還。その四人から聴取した記録が『環海異聞』である。こうした漂流記こそが日本独自の海洋文学であり魅力的なドラマの宝庫なのだ。



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