連続ネーミング小説

命名(なづ)けんぼ

WEBversion第1回

(あらすじ)東西広告社のコピーライター山名岡士郎は、同僚の栗名田ゆう子とともに「究極のネーミング」づくりに取り組むのだった。

「山名岡くん。中高校生向けに開発された新しいコンドームのネーミングは、本当に完成しているんだろうな?」
不安そうな部長の問いに答えず、山名岡はクライアントを見回して自信ありげな笑みをもらした。
「まあご覧ください。究極のネーミング側が用意した名前は…これです!」
そう言って山名岡が取り出した真っ白いプレゼンボードの中央には、黒々とした太丸ゴシック横書でこう記されていた−−

『ラブラブこんちゃん』

「…ほほう、これはなんとも親しみやすくて覚えやすい名じゃのう」
「ほんと! 濁音を重ねて印象をきわ立たせているのにちっとも重苦しさを感じさせないわ。ゴロの良さと『ん』の反復が軽くすっきりとした後味を残すのね!」
「さすが山名岡はんや。いつもこちらの意表をついてきよる。コンドームの暗いイメージを見事にくつがえしよったわ」
「うほおっ、こりゃ上手い!上手いですなあっ!」
その時、襖の向こうから高らかな笑い声が響きわたった。

「ぬはははははは!」

「だ…誰だ!?」
「士郎。お前はネーミングの本質をなんと心得る!」
「きさまは、か…海名原雄山!」
姿を現した海名原は士郎たちを無視して、居並ぶクライアントをジロリと見渡した。
「こんな青二才の小手先の芸にまんまと騙されるとは、失礼ながら、みなさんもネーミングのなんたるかを理解されてはいないようですな」
「なにを! それほど言うならきさまの作った名前を見せてみろ!」
「ふむ、よかろう。今日という今日はその鼻っぱしらをへし折ってくれるわ」
にやりと笑った海名原は、懐から一本の巻紙を取り出すと、おもむろに紐を解いた。
「お見せしよう。これが至高のネーミング案だ!」
広い座敷を一瞬の沈黙が満たした後、おお、という嘆声が流れ出た。

(つづく)
 
 

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