(前回のあらすじ)中高生向けコンドームのネーミング対決に敗れた山名岡士郎は、自ら一週間後の再提案を要求した。勝算はあるのか?
「どうするの山名岡さん。プレゼンまであと二日しかないのよ」
山名岡は、すぐ後ろを歩いている栗名田ゆう子の心配そうな声にも気付かない様子だった。
「それにしても、あの海名原雄山がこちらの再提案を認めてくれるなんて…」
「うるさいな。少し黙っててくれないか」
山名岡の声にも明らかな焦りが感じられた。
「でもどうしてこんなところへ…?」
二人は夜更けの渋谷、円山町ホテル街の真ん中を歩いていた。
「ねえ山名岡さん。ヤケになる気持ちも分かるし、私もそれほどイヤってわけじゃないんだけど、私たちにはまだ大切な仕事が残ってるし、なにもこんな時に…」
「あっ、いたいた。おーい」
突然、山名岡はゆう子を残して駆け出すと、ホテルから出てきたばかりの若いカップルに声をかけた。
「ねえ君たち、コンドームは使ってるかい?」
鼻にピアスをした男が驚いて振り向いた。
「え、コンドーム?」
ヘソを出した茶髪の女が面倒くさそうに答えた。
「当たり前じゃん。エイズ時代だしー。子供とかできたらダサいしー。そんなの今じゃヤングの常識よ」
「じゃあ、なんていうコンドームを使ってるんだい?」
「コンドームの名前なんか気にしたことないなあ」
「そうよ。コンビニで適当に買っちゃうから名前なんか関係ないわ。超かったりいって感じー。行きましょ」
肩を落として二人を見送る山名岡の後ろに、追いついたゆう子が立っていた。
「…なんていうことなの。若者にとってコンドームの名前が、これほど価値のないものだったなんて」
「そうさ。だからこそ俺は、親しみやすいネーミングでおしゃれな若者のハートをとらえようとしたんだ」
「でも、確かに『ラブラブこんちゃん』程度のインパクトでは、『責任くん』に勝つどころか、おそらく若者の購買意欲を喚起することさえできないわ」
「そんなことは分かってるさ…インパクトか。くそ、どうしたらいいんだ!」
いつの間にか二人は宮下公園の下、明治通り沿いの舗道を歩いていた。
その時、強烈な光が二人の視界をさえぎった。