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これほど不思議な現象が普段あまり話題にならないこと自体、この問題にはなにか大きな秘密があるように思う。
靴下反転現象を体験した人々の多くは、外出時は間違いなく正常に履いていたと証言している。だが、靴を脱ぐと恐ろしいことに、かかとのでっぱった部分が、半回転してこちらを見ているのだ。それは三段腹の様相で、奥から「やあ、調子はどうだい」と言っているように見えたと友人は語っている。
実は私も靴下反転現象を体験したことがある。というか、今でもその現象が続いている。ただ、私の場合はなぜか左足だけだ。
歩くたびにずり落ちるというのはゴムの伸びてしまった靴下に起こるが、その場合は左も右もたいした違いはない。
しかし反転現象だけはなぜか左足に起こる。
ある日の帰り道、私は友人の土屋氏になにげなく尋ねてみた。彼は、「それは、妖怪靴下返しのしわざである」などとのたまってくれた。私は少しの間、自制心と戦った。そして、言った。
「でも左足だけ反転するんだよ」
「じゃあ、左足に憑いてるんだね」
彼の論理には隙がなかった。引き分けで終わった『たこ焼きVSお好み焼き論争』が頭をかすめる。
「そ、その妖怪は、なんの目的があるのかな」
多少ひるみつつ、私は尋ねた。
「教えない」
彼は電車から降り人混みの中へ消えた。そうだったのだ。小学生のとき、いつも靴下が裏返しになっていたこと。かかとの部分がいつのまにか上になっていて不思議に思ったこと。それらはすべて、妖怪靴下返しのしわざだったのだ。
私はなにか晴れ晴れとした気分だった。ふと見ると前の男の足元に三段腹の妖怪がいた。私はコンニチハと挨拶し電車に乗った。
などと結ぶのもなかなか幻想的かもしれないな、と三分間だけ思った。これではあまりにもなので、私自身の説を発表しよう。
まず反転現象は、ゴムのゆるみとは関係ない。これは新品の靴下を最近買ってみて調べたので、間違いない。また、丈の長さや形はあまり重要ではない。色や匂いは全く重要でない。
考えられる点としては、左足の形と歩き方の作用、それに靴の密着度である。これらが互いに影響を与えた結果、現象が起こるに違いない。ただ、なぜ半転で終了するかは、未だ不明だ。いっそのこと一回転してくれれば、なにも問題ではないのに、だ。
今月の下旬までには実験も終わり、ひとつの解答が出る予定だ。
なお、この件に関するどんな情報も、私は心から歓迎する。