え〜、懐古ネタをひとつ。
その昔、僕は大根が好きだった。おろしも好きだし、おでんネタも良いし、タクアンも好きだった。 子供の頃は、タクアンなんてほとんどおやつ代わりに食べていた。 タクアンをポリポリ噛りながら、渋茶をすすって、「ハァ〜、シミジミ」なんて言っていたのである。 一度なんか、あんまりタクアンがうまいもんで、丸々一本ひとりで喰ってしまって、 母親にブン殴られた事もある。
大根おろしは、秋刀魚の薬味なんていう典型的な食べ方でもいいけど、 極端な話、大根おろしだけでメシが喰えたのだ。 梅干しを見て出たヨダレでメシを喰う ... という落語やギャグ漫画の古典があるけど、 ほとんどそれに近い。 おろしにちょっと醤油を垂らして、大根の辛みだけで炊きたての白米をワシワシと掻っ込む ... カ〜〜ッ! 堪まりまへんな。
... って、何で過去型なんだ? と思う人もいるかもしれないけど、 今の日本では大根という食品はほぼ絶滅してしてしまったので、当然過去型なわけです。 えっ?「そこらのスーパーでも何処でも転がってるだろ」って? あ〜、青首大根というやつですね。 残念でした。あれは、僕の認識の範疇に入る大根ではありません。
とういわけで、さあ、いってみようか! 青首大根叩きだ! ... えっ? 叩いてもいい音しないって? んじゃあ、青首大根のこきおろしだ! ... えっ? おろしても、うまくないって? そんじゃあ、そんじゃあ、青首大根死ね死ね恨み言大会だい! ...
長い伝統を誇っていた「白首系大根」が、たった10数年の間に、 現状の様な悲惨な地位に転落させられた原因は実にあっけなかった。 これも、正確な資料が見つからなかったが、20年近く前、三浦半島を襲った台風が原因である。 この台風が丁度収穫間近の三浦大根を壊滅してしまったわけです。 当然、農家は困ったわけです。なんせ、重要な収入源が一瞬にして絶たれたわけだから農家も大変です。 と、そこへ、願ってもない救世主が現れました。その名も「青首大根」です。
この「青首大根」という奴。 何でも、その原産地は、キッチュな食品でたまに我々を笑わせてくれる名古屋だそうです。 で、この青首大根は促成栽培できるんですね。 三浦大根の生産農家には願ったり叶ったりです。 で、急遽この青首大根を三浦半島に導入したわけです。 その結果、収穫時期は遅れたものの、お家断絶、一家離散というような悲劇は避けられました。 メデタシ、メデタシ ... とはいかないのが世の常ですね。
この「青首大根」という奴。 なかなかの曲者でして、その形状が、 当時主流だった練馬大根や三浦大根等の白首系大根とはちょっと違っていました。 白首系大根が中太の円錐形なのに対して、青首大根はほぼきれいな円錐形だったのです。 そう、ほんのちょっとした違いです。 ところが、このほんのちょっとした形状の違いが、 農作業に大きな影響を及ぼす事に三浦半島の農家は気付いたわけですな。 そう。白首系大根は中太であるが為に引き抜き難いのに、 青首大根は引き抜き易い。(早口言葉ではないぞ)
さぁ〜、もうお分かりだろう。 翌年以降、三浦半島の農家は、三浦大根の生産を再開するかと思いきや、青首大根を作り続けたわけです。 なんせ、促成栽培できる上に、農作業が楽 ... とあっては、無理も無いですな。 当時から高齢化が進んでいたので、生産農家のジッチャン、バッチャンは大喜びです。 青首大根の形状は農家ばかりか、流通筋をも魅了しました。 収納性が良かったんでしょうな。
青首大根の曲者ぶりは、まだ終わらない。 生産、流通の次は、末端販売だ。 丁度、核家族化の進行に伴って、スーパー等の大型店舗化の兆しが見え始めた時期である。 当然、流通と連動(結託)する。 流通が青首大根に目を付けている以上、スーパーの棚に列ぶのは当然青首だ。 末端消費者なんか知ったこっちゃ無い? ところが、ところが、末端消費者がまた、この青首大根を受け入れちゃったんですね。 「末端消費者」なんていう、ぼかした言い方は止めよう。 はっきり言えば、当時のバカ主婦連中である。 その理由が、「甘くておいしい」、「首の所が青いから健康によさそう」... なんとも、まあ、「平和ボケ日本此所に尽きる」という感ですな。 「男子厨房に入るべからず」なんて言ってふんぞり返って、 自分の口にする食べ物に無関心を貫いていたバカ亭主供も同罪ですな。
というわけで、青首大根の侵略速度は凄まじかった。 本当に あっ という間である。 おいらが、ちょっと目を離した隙に、 本当に あっ という間に日本全国を制覇してしまった。 僕なんか、ある日大根を買って来て、おろして食べて「何じゃ、こりゃぁ〜〜〜!」 ((C) 松田優作)と叫んだ位に、あっ という間だった。
また、上記文章(三浦半島の台風云々以下)は、ほとんど記憶に頼っている。 文章の勢いで三浦半島の農家の方を揶揄したような表現もあるようだが、 中傷、誹謗するつもりは、もちろん無い。 とにかく、この辺の資料を色々漁ってみたが、なかなか見付からなかった。 資料を揃えるのにいつまでかかるか分からないので、勇み足で書いている文章だ。 資料が見付かり次第補足するつもりなので御了承戴きたい。 ここでも本当は、成分比較表を提示して白首と青首を較べたかったところだが、 これも資料が無かったので記憶だけで書いておく。
白首と青首の違いは、形状と外見については上記の通りだ。 では、実際にそれを食する我々にとって重要な側面、栄養素や食味についてはどうだろうか?
栄養素については、白首の方が青首を圧倒的に凌駕している。 本当にうろ憶えで申し訳ないが、辛み成分のカラシ油、健胃効果のあるジアスターゼ等の各種有効成分は、 白首に較べて青首は概ね半分以下の指数だ。
食味については、単純に言えば、白首の方が辛い(生食の場合)。 僕の味覚では、青首は辛味が足りないばかりでなく、全体に水っぽい。 この水っぽさは、ほのかに苦味、えぐ味にもつながる。 従って、青首は薬味に使うにはあまりにも物足りないし、漬物も味気無い。
おでんや、ふろふき大根のように加熱する場合。 大根に限らず、辛味成分を含む野菜に概ね言える事だが、加熱すると、辛味成分は甘味に転ずる。 従って、加熱した場合は、白首の方が甘味を増す。
要するに、青首の場合、おろそうが、煮ようが、焼こうが、何をしようが、水っぽくて味気無い。 元々含有成分が稀薄なので当たり前ですね。 バカ主婦連中が「甘くておいしい」という理由で青首を支持したのも、全く支離滅裂です。 おでん等の加熱する場合は、白首の方が甘くておいしいんですから。 苦労して白首を調達しているおでん屋が実際にあって、御主人が言うには、 「白首が入手できなくなったら廃業する」んだそうです。
一時期、一般家庭に流通する大根は青首で、 タクアン等の加工食品には白首を使用する ... という棲み分けが極短期間あったようですが、 現在では全て青首に侵略され尽くされています。 従って、僕の食生活からは、大根、タクアン、大根おろし ... その他大根関連の食品品目は、抹殺されました。
今現在、自分から進んで大根を買う事はありません。 外食で何かの付合わせで大根が出た場合は食べます。食べ物を残すのが嫌いなんで。 スーパーでパック詰めの刺身なんかを買ってきた場合は困りますね。 ツマ、もしくは底上げの材料として使用されている大根の処置です。 なんせ、薬味として機能しないばかりか、青首特有の水っぽさの為に、 刺身の方に危害が及ぶので、買って帰ってすぐ大根を捨てて、刺身だけを冷蔵庫に入れます。
で、それはそれでいいんだけど、やっぱり周囲から見るとこういう輩は珍しいらしく、 たまに「なんで甘い物が嫌いなの?」と聞かれたりなんかする。 こういう時、僕はカドが立たないように適当に誤魔化すけど、 この場だから一度徹底的に言っておこう。
例えば、僕は喫煙者で、たまに非喫煙者から「なんでタバコなんか吸うの?」と聞かれ るが、この疑問は理解できますね。しょせんタバコは嗜好品で、 非喫煙者には分からないし、喫煙者自身なんで好きなのか分からない。 しかし、「なんで甘い物が嫌いなの?」という疑問は、僕からすればこの疑問自体理解不能。 逆に僕の方から「なんで甘い物を食べるの?」という疑問を呈したい位だ。
飽食の国日本で、まがりなりに日に3度しっかり食事をしていれば、 栄養、カロリーは十分過ぎる程摂取できる。その上での間食は、あくまで嗜好に過ぎない ... というのが僕の考え方です。 例えば山登りなんかで緊急避難用にチョコレートを携帯するというのは理解できますね。 合理性がありますから。しかし、普段の生活の中でお菓子を食べたり、 食事の中でことさら甘い物を食べるのは、やはり嗜好の範疇だろうと思います。 従って「なんで甘い物が嫌いなの?」という疑問は、 喫煙者が非喫煙者に向かって「なんでタバコを吸わないの?」と聞くのと同じ構図になるわけですね。
だからといって、甘い物が不必要だと言いたいわけでもない。 体調によっては甘い物を食べたくなる事がたまにある。 そういう時は、身体が要求するまま甘い物をしっかり食べる。 要するに、僕は主義主張や変な理念でこういう事を言っているわけではなく、 単純に本能に従っているだけだ。そして、普段は甘い物を本能が要求しないというだけの事だ。
で、本来ならこの事について甘い物好きの人達を批難する筋合いは無い。 嗜好なんだから好きにしなさい ... で話は終わる筈だ。 ところが、そうも言ってられないわけですな。 甘党の人達(あまり正確な言葉では無いが、以下、甘党、辛党という言葉を使わせてもらう) が彼等のテリトリーの中で好きなようにやっている分には、な〜〜〜んにも文句は無い。 ところが、こいつら甘党連中は俺ら辛党のテリトリーを平気で侵食してしまうわけだ。
メシを喰いながらジュースを飲む? あ〜〜、ハイハイ好きにしなさい。 麦茶に砂糖を入れる? OK。 メシに砂糖をかける? どんどんやりなさい。それこそ
一般に野菜類は日々甘味を増している。 トマトなんかの酸味が薄れて年輩の方が嘆いている話は良く耳にする。 野菜の甘味を増すというのは、換言すれば香味や栄養素を低減するという事だ。 卑近な例を挙げれば、本来辛さが身上であるカレーを、 「カレー風味の甘ったるい小麦粉料理」にアレンジした挙げ句、 「カレーはもはや日本食だ!」なんぞとほざいてる。 からし明太子に到っては、「減塩からし明太子」、「辛さ控え目からし明太子」 なんていう摩訶不思議な食品がスーパーの棚を賑わしている。
今現在、僕自身が日本という国に居坐っているのは、以下のような理由だ。
さ〜〜、そろそろ「大根なんていうくだらない事で、いつまでもグダグダ言ってじゃね〜〜!」 という罵声が聞こえそうなので、話を結ぼう。 大根だけで話が終わるんなら、僕の誇大妄想で済むだろう。 今の日本の情勢を観て、その内、「辛くないワサビ」だとか、「シロップ漬けステーキ」だとか、 「減塩塩煎餅」なんかが横行するだろうという僕の心配は杞憂なのかもしれない。 ところが、4ヶ月前程に聞いた話だけど、とうとうやってくれましたねこの国は!
さ〜〜、これでおいらの好きなオニオンスライスや、玉葱の味噌汁や、 チャーハンなんかは前途多難である。 もしかすると、カレーなんかも二度と口にする事は無いだろう。
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