防衛庁不正査定疑惑

元調本副本部長ら4人を逮捕

1998.9.3更新

■元調本副本部長ら4人を逮捕/東洋通信機の前社長とNECの防衛庁担当元社員らも/東京地検
 (9月3日付夕刊)
■防衛庁などを捜索、元調本副本部長らから背任容疑で取り調べ/東洋通信機の前社長とNECの防衛庁担当元社員も
 (9月3日付夕刊)
■防衛庁元幹部、背任容疑を一部認める供述
 (9月1日付夕刊)
■NEC元幹部らから参考人聴取 防衛調本の不正査定
 (8月26日付朝刊)
■防衛庁天下り1420人、防衛産業135社に 94年作成の庁内名簿
 (8月24日付朝刊)
■天下り条件に返納額圧縮 防衛庁不正査定の要求、業者側がメモ
 (8月23日付朝刊)
■日本航空電子も過大請求 支払い10億円減額
 (7月24日付夕刊)
■防衛庁元幹部が不正査定 国に損害十数億円
 (5月20日付朝刊)


■元調本副本部長ら4人を逮捕/東洋通信機の前社長とNECの防衛庁担当元社員らも

 東証一部上場の電機メーカー「東洋通信機」(島山博明社長)が装備品代金を防衛庁から過大に受け取っていた問題の処理をめぐり、東洋通信機の返納額を不正に圧縮して国に約十七億円の損害を与えたとして、東京地検特捜部は三日、防衛庁調達実施本部(調本)の元副本部長の上野憲一容疑者(59)や東洋通信機の前社長で現会長の伊藤伸一容疑者(66)、大手電機メーカー「NEC」の元社員ら計四人を背任容疑で逮捕した。特捜部はまた、東京都港区港南の東洋通信機本社事務所、同区赤坂の防衛庁などを捜索した。調達をめぐっては、大正時代に海軍の元艦政本部長らが摘発された「シーメンス事件」以来の、大型事件に発展する可能性が出てきた。逮捕されたのは、上野元副本部長と伊藤会長のほか、東洋通信機の筆頭株主であるNECの元防衛事業推進室長・新井秀夫(57)、東洋通信機の官公営業部長・永元恭徳(54)の二容疑者。

 調べでは、東洋通信機は、防衛庁に敵味方識別装置などを納入していたが、一九九四年三月上旬、水増し請求によって過大な代金の支払いを受けていたことが調本の調査で判明した。九三年度までの五年間の契約額は約三百七十七億円だった。調べによると、上野元副本部長らは、この三百七十七億円のうち、少なくとも二十五億円余りを東洋通信機から防衛庁に返還させるべきだったのに、自己の保身や調本OBの天下り実現、さらに東洋通信機の利益を図る目的で、広告宣伝費などの「非原価項目」約四億八千万円や社内金融利子約八億円を経費として認めて予定価格を計算し、九五年三月、返納額を八億七千四百万円と確定させた。上野元副本部長らは、東洋通信機に対し、これ以外の返還を免除し、結果的に差額約十七億円の返還を免れさせ、同額の損害を国に与えた疑いがもたれている。上野元副本部長は、事実上の責任者として東洋通信機との返納交渉を指揮し、また、部下に対し、「返納額は十億円を切るように」と指示したとされる。伊藤会長は、返納額が十億円を超えると経営問題になるなどの理由から「二けたを超えると決算が大変なのでよろしく」と上野元副本部長に依頼した。新井元室長は、返納額を減らすために有利な理論を提示するなどして、上野元副本部長らに協力したとされる。上野・元副本部長は防衛大学校を卒業して、防衛庁に技官として入った後、一貫して装備品の原価計算や契約関係の部署を担当。調本の総務課長などを経て、九二年六月から九五年六月に退職するまでの間、調本の契約原価計算第一担当副本部長を務めた。

 伊藤会長はNECの常務、専務を歴任し、九二年から東洋通信機の社長に就任し、今年六月から会長を務めている。

(朝日新聞9月3日付夕刊)

■防衛庁などを捜索、元調本副本部長らから背任容疑で取り調べ/東洋通信機の前社長とNECの防衛庁担当元社員も

 防衛庁に装備品代金を水増し請求し、過払いを受けていた電機メーカー「東洋通信機」(本社事務所・東京都港区)の返納額を同庁調達実施本部(調本)の元幹部が不正に減額したとされる問題で、東京地検特捜部は三日、調本の元副本部長(59)と東洋通信機の前社長(66)らを背任容疑で取り調べるとともに、防衛庁と東洋通信機など関係先の捜索を始めた。東洋通信機の筆頭株主であるNECの元社員(57)も減額計算にかかわったとして連日、特捜部の聴取を受けている。水増し請求問題が明るみに出てから一年を経て捜査は立件へ向けて大詰めの局面を迎えた。このほか事情聴取を受けているのは、東洋通信機の官公営業部長(54)。

 関係者の話を総合すると、東洋通信機は一九八九年度から九三年度までの五年間で計約三百八十八億円の契約を防衛庁と結んだが、このうち二十五億円以上は同社の水増し請求だったとされる。

 この水増し請求は調本の調査で九四年三月に発覚したが、同社との返納交渉の責任者だった元副本部長が「十億円を切るように」と減額を指示するなどしたため、同年六月の返納額決定の際は約八億七千四百万円まで圧縮されたという。結果として、本来、返納させるべき金額との差額約十七億円が国の損害になった疑いを持たれている。関係者によると、元副本部長は水増し請求の事実が公になると自らの責任問題につながることから、任務に反して、減額に応じた疑いが出ている。一方の東洋通信機の前社長も、返納額が十億円を超えると同社が損失を公表せざるを得なくなり、株主総会などで責任を追及される恐れがあったため、「二けたを超えると決算が大変なのでよろしく」などと、元副本部長に返納額を十億円未満に抑えるように依頼したとされる。

 NECの元社員は当時、同社の防衛事業推進室長を務め、防衛装備品の価格を決める原価計算の第一人者だった。東洋通信機の返納交渉の過程で、元副本部長の意向を受けて減額に有利な理論を提示するなどしたとされる。元副本部長は防衛大を卒業後、ほぼ一貫して装備品の原価計算や契約関係の部署を担当。九二年六月から退職する九五年六月まで契約原価計算第一担当副本部長を務めた。

 東洋通信機は、NECが筆頭株主で約四割の株式を保有する。前社長はNECの常務、専務を歴任し、九二年から東洋通信機の社長に就任、今年六月から会長を務めている。

(朝日新聞9月3日付夕刊)

■防衛庁元幹部、背任容疑を一部認める供述

 防衛庁に装備品代金を水増し請求した電機メーカー「東洋通信機」の返納額を不正に圧縮した疑いがもたれている同庁調達実施本部(調本)の当時の副本部長(59)が、東京地検特捜部のこれまでの事情聴取に対し、「水増し請求が公になれば、責任問題になると思った」などと答え、背任容疑の一部を認める供述をしていたことが、関係者の話でわかった。水増し請求に伴う代金の払い過ぎが公になると、調本の価格見積もりのずさんさを外部から批判され、調本幹部の責任が追及される恐れがあった。元副本部長は、自分自身の立場を守るという自己保身のため返納額を低く見積もるなど、問題が表面化するのを避けた疑いがあるとみられ、特捜部は背任容疑で捜査を続けている模様だ。防衛庁によると、東洋通信機は、防衛庁に敵味方識別装置などを納入していたが、九四年三月上旬、水増し請求により過大な代金の支払いを受けていたことが判明した。元副本部長らは、払い過ぎ代金を返納させることを決め、東洋通信機と交渉。最終的に返納額は八億七千四百万円になった。

 関係者によると、元副本部長らは、水増し分の全額を返納させるべきだったのに、広告宣伝費などの「非原価項目」や社内金融利子を経費として認めて、返納額を八億七千四百万円まで不当に圧縮し、少なくとも同社に約十七億円の返納を免れさせたとされている。元副本部長はまた、九四年から九五年にかけての契約額から返納額を差し引くかたちの返納方法を認めた。周辺関係者の話によると、元副本部長はすでに数回、特捜部の事情聴取を受けているという。元副本部長は「東洋通信機の水増し請求が公になれば、放置しておいた自らの責任問題になると思った」という趣旨の供述をしていたといい、東洋通信機の返納過程で自己保身の意図があったと認めている模様だ。

 結果として、返納額が当初よりも低く抑えられたうえ、翌年の契約から支払う返納方法が認められたため、東洋通信機の損失が表面化することはなかった。水増し請求の事実そのものも、元副本部長が退職した後の昨年九月まで公にならなかった。

(朝日新聞9月1日付夕刊)

■NEC元幹部らから参考人聴取 防衛調本の不正査定

 電機メーカー「東洋通信機」が防衛庁に装備品の代金を水増し請求した問題の処理をめぐって、東洋通信機と防衛庁の双方が、大手電機メーカー「NEC」に相談を持ちかけ、原価計算に詳しい同社の防衛事業担当社員の助言を受けて返納額の算定作業を進めていたことが関係者の話でわかった。東洋通信機の筆頭株主であるNECは、当時の担当常務らも対応にあたった。東京地検特捜部は、防衛庁調達実施本部(調本)の当時の副本部長(五九)が返納額を不当に小さく算定して国庫に損害を与えたという背任の疑いで捜査を続けており、NECが不正査定疑惑にどこまでかかわったのかを見極めるため、当時の常務や担当社員らNEC関係者から幅広く参考人聴取している模様だ。

 東洋通信機は防衛庁に敵味方識別装置などを納入していたが、一九九四年三月までの調本の調査で、同社の水増し請求が判明した。

 NEC関係者によると、返納額の算定をめぐり、東洋通信機が防衛庁と交渉を始めた九四年三月初旬、同社の当時の社長がNECの当時の常務に水増し請求が発覚したことを告げ、「ノウハウがないので指導してほしい」と依頼したという。これを受けて元常務は防衛事業の責任者に対応を指示。この責任者は、製造原価計算に詳しい担当社員を指名し、相談に乗ってやるように命じたという。

 一方、同月末、調本の副本部長からも、このNECの担当社員に対し、「民間企業の有識者の立場で意見を言ってほしい」と依頼があった。担当社員は、調本に論文を提出したり助言したりした。また、NEC元常務が調本幹部とこの問題で面談したこともあった。

 結果的に、NECは組織的に水増し請求問題の処理にかかわった形となっている。このため特捜部の事情聴取も、元常務や担当社員ら多人数に及んでいるとNEC関係者は話している。

 水増し請求発覚当時の常務は専務に昇進後、九五年六月に退任。原価計算に詳しい担当社員もすでに退社している。

(朝日新聞8月26日付朝刊)

■防衛庁天下り1420人、防衛産業135社に 94年作成の庁内名簿

 防衛庁にミサイルや戦車などの装備品を納入している防衛産業の主要企業百三十五社に、約千四百二十人にのぼる防衛庁OBが天下っていることが、朝日新聞社が入手した「防衛庁OB就職状況」と題した名簿で明らかになった。八割以上が制服組の自衛官で、残りは事務官と技官。防衛庁の制服組と背広組の構成割合とほぼ比例している。名簿は、装備品調達の際に企業側との窓口になる調達実施本部(調本)総務課が一九九四年に作成し、その後も毎年、更新を続けている。装備品の価格決定システムの不透明さが指摘される中、自衛隊と防衛産業との構造的な癒着を示している。

 名簿には、企業ごとにOBの氏名、生年月日、退職時の階級と経歴、入社日、役職名が記載されている。全体で百四十ページ。調本の関係者は、退職する防衛庁OBを天下り枠がある企業に再就職させる際の参考資料になると認めている。

 防衛庁から各企業への天下りは、人事院の「天下り白書」でも、防衛施設庁の一部を除いて公表されていない。名簿の表紙には「注意」の文字と管理のための通し番号が入っている。防衛庁は、名簿の存在を明らかにしておらず、外部には秘密扱いになっている。

 名簿によると、最も天下りの受け入れ人数が多いのは川崎重工業で六十人。続いて五十人台が三菱重工業、NECの二社、四十人台は東芝と富士通の二社、三十人台五社、二十人台十七社、十人台二十三社。

 川崎重工業、三菱重工業などは、自衛隊の幹部である三佐以上の氏名しか名簿になく、それ以下の階級や役職の再就職を含めるとさらに人数が増える。

 防衛庁と取引する資格がある業者は約二千二百社だが、名簿には施設建設などを発注する大手建設会社などは含まれていない。調本が取引している企業のうち、天下り枠をもつ企業をまとめたとみられる。

 受け入れ数が多い企業の上位には、従業員六十三人中、三分の一の十九人を天下りが占める移動通信企業や、社員三百七十二人中、二十五人が防衛庁OBの船舶無線機製造会社など、非上場企業も入っている。

 約千四百二十人の天下りの中には、「顧問」が四百三十一人含まれている。自衛隊法で、退官後二年間は、退官五年前までに従事した部署とかかわる企業の役員になれない。このため、「顧問」や「嘱託」の形で入社しているという。

 顧問は、防衛庁との交渉や情報収集にあたるとされているが、ほとんど会社に出ない非常勤顧問もいる。

 幹部が天下りで、退職時の給与と比べて著しく収入が減る場合に、二つ以上の会社の顧問などを兼任することも。名簿では、この方法でOB約三十人が複数の企業に天下りしている。

 防衛庁全体で現在、二十五万人以上が働いている。自衛官の場合、三曹以上の階級ごとに定年が定められている。将官クラスは六十歳定年だが、尉官は五十四歳、三曹は五十三歳。退職する自衛官の再就職先探しは長年の課題でもある。

 調本の田中満雄総務課長は「業務の参考資料として名簿を作っている。企業との癒着とは思っていない」と話している。

 ○防衛庁との契約高上位20企業と天下り人数

 (金額<百万円>と順位)

 社名 1997年度契約額と順位 94年度 天下り人数

  順位

 三菱重工業 271,933 (1) (1) 58(三佐以上)

 川崎重工業  146,764 (2) (2) 60(三佐以上)

 三菱電機 128,687 (3) (3) 30

 NEC  74,558 (4) (4) 59

 石川島播磨重工 66,160 (5) (5) 30(一佐以上)

 東芝  48,586 (6) (7) 49

 マリンユナイテッド 37,704 (7) −

 小松製作所  34,424 (8) (12) 19

 日産自動車 25,313 (9) (10) 23

 日本電子計算機 25,180(10) (13) 3

 日立製作所 23,788(11) (15) 35(三佐以上)

 ダイキン工業  17,892(12) (16) 17

 富士重工 17,119(13) (11) 16(一佐以上)

 沖電気工業  16,361(14) (17) 18

 伊藤忠 15,739(15) − 7アビエーション

 新明和工業  14,808(16) −  14

 兼松 12,956(17) − 5

 日本製鋼所  11,378(18) (14) 18

 富士通 11,212(19) (18) 49三佐以上、

  含む関連企業

 いすゞ自動車 9,989(20) − 6

 (天下りは、94年現在の人数)

(朝日新聞8月24日付朝刊)

■天下り条件に返納額圧縮 防衛庁不正査定の要求、業者側がメモ

 防衛庁に装備品の代金を水増し請求した電気機器メーカー「東洋通信機」の返納額を決める際、当時の防衛庁調達実施本部(調本)の副本部長(五九)が故意に少なく査定していたとされる疑惑で、返納額の圧縮について「(防衛庁からの)天下り受け入れが条件」との趣旨の記載が、複数の東洋通信機の幹部社員の手帳などに残されていたことが関係者の話で分かった。東京地検特捜部も同様の事実をつかんでいる模様だ。天下りの話は、東洋通信機の筆頭株主であるNECの当時の常務(六二)が元副本部長らと面会した直後に、NEC側を通じて東洋通信機側に伝えられ、メモに残されたとみられる。特捜部は、元副本部長が返納額を不当に少なく算定して国庫に損害を与えた疑いがあるとして背任容疑で捜査を続けている模様だ。

 防衛庁によると、東洋通信機は同庁に敵味方識別装置や無線機を納入、一九九三年度までの過去五年間の契約額は三百七十八億円にのぼった。ところが、九四年三月までの調本の調査で製造作業時間の水増しなどが発覚。代金を過大に請求して受け取っていたと分かった。

 調本は水増し分を返納させることを決め、当時の副本部長らが中心となって返納額を八億七千四百万円とはじき出した。しかし、この額は不当に低く見積もられたもので、国庫に少なくとも十数億円の損害を与えたと特捜部はみている。

 関係者によると、東洋通信機の複数の幹部社員の手帳などには、防衛庁からの天下りを受け入れることが返納額を少なくすることの条件――との趣旨の記載があった。続いて、「役員一人。ほかに天下り数人」との趣旨の内容も付記されていたという。そのうち一つのメモの記入は、九四年四月九日だったとされる。

 その前日の八日、筆頭株主として東洋通信機の返納作業に協力したNECの当時の常務が調本を訪ね、元副本部長らと面会した。その際の会合の内容が東洋通信機側に伝えられ、短い表現でメモされたとみられる。

 算定額をめぐる調本と同社の交渉は同年三月から始まっており、この時期は返納額の計算方法などを検討している時期にあたる。

 その後、元副本部長は東洋通信機側と天下り受け入れの話を具体的に重ねるようになり、防衛庁OBを顧問として迎えることや、元副本部長自身が防衛庁を退職した後、コンサルタントとして受け入れること、防衛庁の退職予定幹部を役員として採用することなどを提示したとされる。

 こうした要求があったことは東洋通信機も認めている。これらの要求のうち、役員受け入れと元副本部長とのコンサルタント契約は拒否した。しかし、顧問の採用は受け入れた。

 この結果、九四年十月に調本OBの一人が事務方として初めて同社に入社し、同年十二月には嘱託一人、翌九五年七月にも顧問一人が次々と天下った。

 東洋通信機は朝日新聞社のこれまでの取材に対し、「防衛庁からの天下りは以前から受け入れていた。必要な人材と考えて受け入れた」としている。

 東洋通信機は、NECが株式の約四割を保有。NEC出身者が社長に就任することが多い。元副本部長らと面会した元常務はその後専務に昇格し、現在は、やはり防衛庁への水増し請求が先月、発覚した航空機器メーカー「日本航空電子工業」の社長を務めている。

 <装備品代金の水増し請求問題>
   防衛装備品の業者四社が一九八八―九四年度にかけて、納入品代金を水増しして請求していたことが分かり、防衛庁は九五年度までに計約二十一億円を返させた。

 昨年九月に水増しが明らかになったのは次の四社。

 《東洋通信機》
 対象となったのは敵味方識別装置などの納入契約で、八九―九三年度の約三百七十八億円分。返納額は八億七千四百万円。

 《日本工機》
 弾薬類の納入で八八―九二年度の約七百十九億円分。返納額五億八千五百万円。

 《藤倉航装》
 落下傘などの納入で九〇―九四年度の約九十四億円分。返納額三億五千五百万円。

 《ニコー電子》
 暗号装置の契約で九〇―九四年度の約百二億円分。返納額二億九千七百万円。

(朝日新聞8月23日付朝刊)

■日本航空電子も過大請求 支払い10億円減額

 航空機用の電子機器を防衛庁に納入している東証一部上場の「日本航空電子工業」(本社・東京)が、防衛装備品の価格や、その修理点検費を実際より水増しして請求していたことが二十四日、防衛庁の調べで分かった。水増しの発覚を受けて、防衛庁は昨年度の一部契約分だけで当初の見積もりよりも約十億円減額して支払う措置をとった。防衛庁は同社との過去の契約にさかのぼって調査し、全体の水増し額を確定し次第、同社に正式に返納を求める。防衛装備品をめぐっては昨年九月、東洋通信機など四社の水増し請求が明らかになっている。

 防衛庁によると、同社の水増し請求は、四社の水増し問題発覚を受けて今年実施した同社への調査で発覚した。防衛庁は装備品の購入価格を決める際、製造にかかる時間や人員などの原価を業者から報告させて参考にしている。しかし、同社からの報告は、製造や経理など実際にかかった時間や人員よりも水増しされていたことが調査でわかった。

 同社と防衛庁との取引額は、下請け分も含めると、昨年度約百億円にのぼる。防衛庁は、同社が装備品を納入する際や修理点検の終了時に実際にかかった原価を防衛庁が監査して契約価格を決める「中途確定契約」の約二十三億円分だけ調査を済ませ、当初見積もりより十億三千四百万円減額して同社に支払った。

 防衛庁は、同社のほかの契約についても同様の手口で原価を水増ししている疑いがあるとして、昨年度のほかの種類の契約や、商法上の時効になっていない一九九二年度分の契約にまでさかのぼって調査を続けている。

 同庁幹部は「報告が不正確だったことは明らかに信義に反する。詐欺罪などで訴えるかどうかは微妙な問題だ」と話している。

 同社は、「防衛庁の調査を受けているのは事実だが、事実関係がはっきりするまではコメントできない」としている。

 日本航空電子工業は、NEC(日本電気)の子会社。資本金は約百六億円。防衛庁向けに、航空機の慣性航法装置(INS)や各種の加速度計などを納入している。

(朝日新聞7月24日付夕刊)

■防衛庁元幹部が不正査定 国に損害十数億円

 航空機用電子機器などを防衛庁に納めている東証一部上場の「東洋通信機」(本社事務所・東京都港区、伊藤伸一社長)が納入価格を水増し請求して代金を受け取っていた問題で、過大請求の発覚後、水増し額は二十億円を超えていたのに、防衛庁幹部(当時)が「過小査定」したため、国に対して同社が十数億円の支払いを免れていたことが、関係者の話で分かった。査定を担当したのは、防衛庁調達実施本部(調本)の元副本部長(五八)で、同社に便宜をはかった結果、未払いの十数億円がそのまま国の損害となったとみられる。東京地検特捜部もこうした事実を把握し、国に対する背任にあたる疑いもあるとみて慎重に捜査を進めている模様だ。

 一兆三千億円の年間予算を持つ調本での、元幹部による過小査定の発覚は、「聖域」視されてきた防衛予算のチェック体制を問い直す機会となりそうだ。

 防衛庁によると、東洋通信機は一九八九年から九四年にかけて総額約三百七十八億円の請負契約を結び、味方識別装置などを納入してきた。ところが、九四年初め、調本側の調査で、同社が納入品の製造にかける作業時間を水増しするなどして過大な代金を請求し、受け取っていたことが判明した。調本側はその後、同社への過大支払額を約八億七千四百万円と査定し、同社の九四年度と九五年度の契約額から差し引く形で回収したという。

 関係者によると、元副本部長は事実上、返還額を決める責任者だった。調本側は当初、二十数億円を返還させる見積もりを出していたが、元副本部長が東洋通信機と折衝する過程で、会社側の主張を聞き入れるなどして、返還額を約八億七千四百万円に圧縮したとされる。

 特捜部は、同社が返還すべき額の算定作業を進めているとみられる。この過小査定によって、本来、国に返還されるべき二十数億円のうち約八億七千万円しか納めさせず、国庫に十数億円の損害を与えた疑いもあるとして、特捜部は、査定の責任者だった元副本部長らに背任罪が成り立つかどうか捜査をしている。

 関係者によると、調本が発注する防衛装備品は、武器など特殊な物品であるため、機密性保持などの点から、随意契約が多く、競争原理が働きにくい。こうした事情から、業者は随意契約の場合、見積もり資料を調本に提出。調本はその資料などをもとに予定価格を算定して、業者と契約する仕組みになっている。

 元副本部長は、防衛大学校を卒業して技官として入庁後、一貫して装備品の原価計算や契約関係の仕事を担当。調本の原価管理課長などを経て、九二年六月から九五年六月に退職するまで調本の契約原価計算第一担当副本部長を務めた。

 東洋通信機は、水晶機器製造のトップ企業で、無線通信機器分野に強いことで知られる。同社の発行株式の四割近くはNECが保有している。九六年度の売り上げは約八百億円で、防衛庁関係は約四十七億円。

 <装備品代金の水増し請求問題> 防衛装備品の製造業者四社が一九八八年度から九四年度にかけて、装備品代金を防衛庁に水増し請求し、過剰に支払いを受けた分として計約二十一億円を九五年度までに返還していたことが昨年九月、表面化した。防衛庁は、契約取り消しなどの処分はせず、水増しの事実も明らかにしていなかった。

 水増し請求をしていたのは東洋通信機と、日本工機(東京都港区。返還額は約五億八千五百万円)▽藤倉航装(東京都品川区。同約三億五千五百万円)▽ニコー電子(横浜市。同約二億九千七百万円)。

(朝日新聞5月20日付朝刊)

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