第三新東京市ぱられるふぃーばー
その9
夕方の四時、という時間は前後関係がいたらない僕には、既に綾波が零号機とのテストに出ているのか、使徒が出たのか、まったくどうでもいい。これがどうでも良くなって来るのがノーテンキというものであって。
理由がすっぽぬけるくせに、とにかく急がなくていけないとわかる。
びっしょりと汗で濡れそぼりながらジオフロント行きのバスに乗る。バスがターミナルに到着した頃には上がっていた息がいくぶん戻る。もどかしくポケットから財布を取りだし、カードリーダーを通す。
反対側のポケットに綾波のカードが入っている事を確認した。
再び僕は駆け出した。長いエスカレーターを走り降り、エレベーターで母さん、リツコさんを目指す。だいたい、自分が何をしようとしているのか、理解出来ている訳ではない。衝動以外のなにものでもないのであり、前後不覚と言って良く。
リツコさん、母さん父さんはトリックスターそのものだ!心の何処かがいつもの弾劾をしているのだが、僕には飛びだそうとする心臓をなだめすかして心の会議に参加している暇もない。
着替えたばかりのティーシャツは汗がしみ込み、ジーンズは肌に張りついて足を邪魔するのであり、技術部のリツコさんのオフィスに着いた頃には、リノリウムの床にへたりこむ始末であって。
「あら、シンジ君。どうしたの、そんなに慌てて」
「へ?」
間抜けな声は僕にはいつでも出す事が出来るのだ。
首だけ上を向けば、クスクスと笑う女性が何かの書類を抱きしめていた。
「疲れちゃって・・・家からここまで走って来たんです。バスは使いましたけど、ぶっ続けで走ったもので」
もちろん、書類の束が何かの拍子でばらまかれないようにという配慮であるのだが、彼女がやるとどうも書類にしがみついているようにしか見えない。オペレーターの伊吹さんだった。
僕は、深呼吸をひとつした。伊吹さんのまわりには、吸い込まれそうな匂いがした。香水なのかもしれない。僕が膝立てして、よっこらしょっと起きあがると、伊吹さんはおおっぴらに笑った。
「もう、使徒が接近中かと思うじゃない。シンジ君は今日はオフでしょ?家でくつろいでいても良いのよ。友達と遊ぶ事だって子供の仕事よ。それと、おじいちゃんみたいな事言わないでね」
彼女は、うふふふふ、と口を押さえて笑った。もちろん、そんなことをすれば抱えていた書類が、すすす、と下方にずれる。彼女は、一枚がぴらりと翻るのを止めようと、持ち変えようとしたが、お腹で支えていた束が邪魔をしている。その隙にまた三枚ほど落ちてしまい、僕が手伝おうとするのを待たず、何とか持っている分を片手で抱えなおし、床に手を伸ばした。
「手伝いますよ。伊吹さん、手に持っている分をしっかり持っていてください!」
「し、心配しなくても、だ、大丈夫よぅ。私、体柔らかいんだから」
シンジが手を伸ばして屈んでいた横で、不格好に書類を拾おうとした彼女は、拾おう苦しい姿勢で伸ばした手が書類に触れるが、今度は抱えていた束が形を乱した。彼女はそれをなんとか制御したまま、今やっと手に触れた一枚を取り上げ、その上で書類束を整えるつもりであったが、ずずず、と抱えていた束の真ん中が不自然に垂れ下がる。腰でその下から押さえるつもりで押しあげた。が、彼女はバランスをすっかり崩してしまっていた。シンジはとっさに彼女を支えようと腕を伸ばすが、その腕にしがみつこうと彼女は、またとっさの思考で思ったのか、書類の束はすでに束ではなくなるが、なくなるのと同時に二人はもつれて倒れ込んだ。フワリと書類は放射状に舞う中、意識の二重化がどこかで起こるのを理解しながらショートする。
どさ。と、二人は固い床に倒れた。シンジは彼なりに彼女を守ろうと後ろ手に床に手をつきふんばる。が、それでも完全にはかばいきれなかった。かばった手が痛い。
「あの、だ、大丈夫ですか?」
「う、うん、ごめんなさいぃ・・・」
シンジに覆い被さるように倒れたマヤは、シンジに馬乗りになり、眼が焦点を失う。
ん、と唸ると、彼女はシンジにしがみついた。
すっかり動転して一瞬目眩がしたのだった。
「伊吹さん・・・」
伊吹さんはそれほど背が高い方ではないにせよ、僕はつまりモヤシという虚弱者であって、ぶっつづけて走りまくった疲れはこの時とばかりに襲いかかり、しがみついた程よいやわらかさが、刺激的そのもので。抱き上げようとすると、くてっと首が傾ぎ、形の良い唇が半開きになった。
ピンクのルージュは彼女に良く似合う。見ようと思えば口腔までも覗けそうだった。ん、という喉鳴りによって僕は凝然としてしまったのであって、とてつもない蠱に絡められている事を自覚した。僕が知覚している唇は、つややかそのものであって、きっと柔らかいであろう事が予想された。
見ている側で、伊吹さんの唇が大きくなった。違う、近づいたのだ。いけない、僕は気絶した彼女に対し、何かいけない事をしようとしている。もう唇は見えない、僕の眼は、薄く細くなっており、彼女の瞼が閉じられている事を確認している。僕の興奮した鼻息はもし彼女が覚醒か、或は、半覚醒状態にあったとすれば、確実に気付くはずであって。僕は今、キスしようとしている。伊吹さんに僕は口づけをする。もう、センチメートルという単位は無いだろう。センチメンタルでもセンチメートルでもどうでもいい。もはや、時間の問題だった。僕はあとほんの少し引き寄せるか、顔を近づけるかすれば、いいのだ。そうすれば、つややかにしてふくよかな、あの柔らかい唇、半開きになった口腔へと僕はつき進むだろう。甘い香が僕を囲繞している。それは明らかに僕をさそっているものだ、と僕は信じた。そうだ、彼女は僕を誘ったのだ。ここを先途と引きよせ、ただちにキスを敢行すべきであり、いましもその中途、いやそれは達成するだろう。ほんのりと頬を染めた伊吹さんは美貌だった。その瞼が震えている。気付くかもしれない。僕は、制限時間間際であることに急かされている。口腔に入り込み、舌先をつるりと潜らせる甘さは素晴らしいだろう。彼女の頬に僕は手を添えた。何処かが波打っている。ドックンドックンと波打っている。震えだったのか?僕か彼女の震えが体を通して僕に伝達されるかもしくは感ぜられる。ドックンドックン。甘美感の波が僕をさらう。しっかりと頭部を固定したまま、僕はまさにその一点に向けかつてない集中をした。奏でられるファンファーレ。トテチテタ!ラったらッたらったらッたらったらッたらッたター〜。天使が舞う。
ぷしゅっ。
唇を尖がらせるのと、圧搾空気のドア開閉の音は同時だった。
「な に を 、しているのかしら?」
頭上に、影が落ちていた。腰に手をあてふんぞりかえるというしぐさはリツコさんに良く似合う。きっと、そんな高飛車そのもののしぐさが似合うのは、リツコさんとアスカくらいのものではないだろうか。
タコチュー唇で固まる僕が何を言っても信じてもらえないはずで。
「もう、シンちゃんったら、おさかんで、お姉さん困っちゃうわん」
僕は慨嘆した。
何故かその場に居たミサトさんによりおおっぴらにされるのはごく自然のことだ。
未遂だからといって、やはり二人でモニターしていたに違いはなく。
眼前のディスプレイモニターで、リプレイされるのは、どうみてもラブシーンそのものであって。
僕は、どのようにいわれようとも仕方の無い状況があると言う事を理解する。
「あの、シンジ君。私、気にしないから、あの、気にしないでね。それじゃ、私レイのテストの準備しなくちゃ」
伊吹さんは言い訳を聞いてくれなかった。
だいいち何を言い訳すれば良いのかわからない。
「・・・男の子だから、そりゃ、ある程度はしかたがないわ」
リツコさんが、ミサトさんをつつく。チラリと、目を合わせる二人。
「・・・ですから、つまり、その、あの、事故だったんです!伊吹さんが抱えていた書類を落としたから、僕がそれを助けようとしたのであって・・・けっして疾しい事などなくてですね」
「ま、怪しからんとはこのことね」
とん、とテーブルにリツコさんはマグカップを置いた。猫のイラストが書かれたマグカップだった。中には、コーヒーが入っている。リツコさんは家事のほとんどができないくせに味にはうるさい。コーヒーだけはいれるのが巧い。他の料理はやらないのになあ。
「や、やだなあ。どうせ、一部始終を見ていたくせに。ドアの前の監視カメラかなにかでのっぴきならない状況に陥る僕で何かを思いついていたんでしょ!」
「・・・あら、ずいぶんね」
リツコさんのこめかみが#となり、声が半音あがった・・・というワケでもなく。
「マヤのせいでしょ。あの娘、おっちょこちょいだもの。なんにも無いところで転ぶこともあるのよ」
「そうねぇ、あ、そーいえばよくコケてるわよね、マヤちゃんってバランス悪いのかしら・・・。リツコが残業させ過ぎなんじゃ無いの?いっくら超法規機関でも、働かせ過ぎは悪いわよぅ。いっくら男女機会均等法があって、性差別だって言われてもマヤちゃんみたいな弱そうな娘、徹夜続きでこきつかっちゃ、可哀想よ」
「何よ、私は帰るように言うのよ。少なくとも、仮眠しなさいって言っても、聞かないんだから。だいいち、無理な仕事を頼んだ事なんて無いわ」
「リツコの基準は辛いもの、そりゃリツコのペースで無理が無いって言われても、常人にはしんどいんじゃないの?」
「どういう意味かしら?テストって言っては、マヤに無理な注文をつけたり余計な残業を増やしているのは作戦部長の責任でもあるのよ」
「なによ!私のせいだって言うの!?マヤちゃんはリツコの部下じゃないの!」
「余計な仕事を増やしているのはあなたよ、ミサト。ついでに言えば、マヤが帰れなくなるのも、私の仮眠時間が減るのも、日向君や青葉君の残業が増えるのもあなたのおかげね。まったく、たよりになる作戦部長だわ」
「あーそー、よっくわかりました。何がなんでも、私独りのせいにしたいワケね!」
「事実よ。あなた昨日、日向君にシミュレーションテストの報告書お願いしてたわね。あの後、彼、徹夜したみたいよ。あれ、ミサトの仕事ではなくて?」
「あ、あ、あれはその、たまたまよ。たまたま!」
「先日だったかしら?ミサトがシンジ君送った後、戻って来なかったから、日向君、あなたの分の仕事してたわ」
「夕食だったんだもの・・・」
「そうね、彼、徹夜三日めだって泣いてたわ」
僕には、ミサトさんはズボラと思えるが、リツコさんだって良い勝負だ。何しろ、リツコさんが出来るのは、研究と発明だけというものであって。
僕のフラチな感情を読み取ったのか、リツコさんが横目でにらむ。何で解ったんだ!という勘の鋭さだ。
「ああああ、あの、綾波、まだ来てないんですか?」
用を思い出すのはこういう時だ。急いで、僕は綾波にカードを渡さなくてはいけない。唐突であったとしても、これを聞かなければ、意味がない。そもそもリツコさんの部屋を目指したのは綾波を探していたからであって。
「レイのテストは17時30分からよ。マヤが準備をしているわ」
「あ、はい・・・じゃ、僕はこれで」
僕は、綾波を探さなければいけないのであって、けしてお咎めの前に退散を決め込むわけではなく・・・。
ともかくとして、走る事が多い日もある。ケージまで急いだ。とにかく、綾波のカードを綾波にわたさなくてはいけないのであり。
現象と結果が入り乱れた錯乱の極みに僕は在り。
もしかしたら、昨日のアルコールが残っているのかもしれない。ミサトさんのビール5本飲んだ。暑いからそれはそれは旨かった。しかし、過去に戻り中学の時の僕となってからアルコールに対する免疫はすっかり消えてしまったのであって。アルコールが鬼門となるのは解りきっている事実だったのに!
ケージには、父さん、副司令が居るのであり、日向さん、青葉さん、伊吹さんが準備を行っていた。ミサトさんとリツコさんは時間前には来るだろう。
僕は、そっと伊吹さんに近寄った。
「あ、シンジ君。どうかしたの?」
何故か赤面した為、僕も恥ずかしくなった。伊吹さんの中の碇シンジの事を思うとジクジたるものがある。だいたいが事故である事は伊吹さんも覚えているはずで。思い余った行為は未遂であることは彼女は知らないわけで。
後ろめたい羞恥に囚われ掛ける。が、目的を忘れるわけにはいかない。とにかく、大変な事になってしまう!
「綾波、来てませんか?実は、昨日リツコさんにセキュリティカードの更新で綾波に渡してくれって、あずかってて・・・」
「セキュリティカードって、レイの?」
「あ、これです」
「これって・・・あの、日向君、日向君!今日、レイ見た?」
青葉さんと話していた日向さんが気付いて近寄る。
「なんだい、マヤちゃん。今、司令が居るんだ。雑談は不味いって」
「それは、日向君と青葉君です!私は真面目にやってるんだから!」
「マヤちゃんだって何だい、そのシンジ君と仲良しじゃないのか」
「シゲル!」
「いや、俺はだな。つまり、それは愛には年は関係ないさ。ということをだな」
ぱっと、伊吹さんの頬が染まったのは羞恥からではあり得なかった。
「あなたたち私の事そういう目で見てたのね!いやらしい!!あなたたちなんか、シンジ君の爪のあかでも飲んだら良いのよ、モテない男のひがみ丸だしなんだから」
「な!じゃ、じゃあ、葛城さんが言っていた例の廊下ラブシーン疑惑は、」
そんなに早くうわさになっているとは、かなりの人に現場を見られたのだろうか?夢中そのものであった、劣情の最中であり、解らないのがあたりまえだ。
「疑惑ってほどでもないだろ。お前、週刊紙の読み過ぎなんだよ。どうせ、マヤちゃんがシンジ君巻き込んでこけたんだろ?よく転んでるからなあ。一日一回は転んでるもんなあ。マヤちゃんってバランス悪いよな」
「あ、あの時はだって、もってたプリントが落ちちゃったんだもん。私だって、別に好きで転んでるんじゃないわよぅ」
なんとか会話に入り込む隙は、と思うのだけれども、これは状況が悪く。居心地悪い僕に伊吹さんが気付いた。こういう気遣いがある女性は僕の周りには余り居ない。だからなのだろうか、僕は、ヒカリを思い出さずにいられなかった。
「あ、シンジ君、ごめんなさい。この二人がバカだから・・・。そっか、マギで見た方が早かったんだ。えーーと、それでね、レイなんだけど、保安部からの連絡も入ってないし、だいいち期限切れカードじゃ本部には入れないわよ」
「どうしてまたシンジ君がレイのセキュリティカードなんか持ってるんだい?」
「あ、リツコさんに頼まれたんです」
「センパイが?そう言えば、センパイも何してるのかしら、もうすぐテストが始まるのに、準備だってまだあるのよ。レイは保安部に任せちゃった方が早いと思うし。それに、レイって携帯フォンもってるじゃない」
「そういえば、ここにこれないならこれないで、連絡しないレイちゃんじゃないよな」
見合わせた顔に、さっと緊張が走る。
綾波が時間を守らないわけが無いのだ。そういう事は本当に遵守するように教えられているはずであって。ルーズそのものの僕の周りとは違っている。それはルーズの輪に僕も含むのかは別として。
「俺、葛城さんに連絡する」
日向さんが内線に向かう。
「何かあるはずはないわ」
慰めるように伊吹さんが言った。
「だって、第三新東京市はマギの監視下にあるのよ。不信な組織はもとより、怪しい人物の立ち入りだってそう簡単にはできないんだから!きっと、バスに乗り遅れたのよ。あの娘けっこう寝起き弱いから、時間的に昼寝が終わった頃でしょうから、それで携帯だって忘れて来たのよ」
「そうさ。きっと、そうさ」
青葉さんは同調した。
「僕、探して来ます。綾波、僕がカード持っているから、きっと本部に入れなくて困っていると思うから」
「シンジ君は、ここで待っていたらいいと思うわ。さっき、日向くんが内線で保安部に連絡を取ったから、レイの事は本部のセンターゲートに着いた時点で捕捉できるはずだし、そうなればマギの遠隔操作で入れられるもの」
「でも、期限切れのカードを使って、ドアが開かなかったりしたら、綾波、きっとびっくりするんじゃないかって思うんです。もしかしたら、不正カード使用のブザーが鳴るかもしれませんし。そんなの、綾波のせいじゃないんですよ!僕が、渡すの忘れたから」
「シンジ君は、精一杯がんばっただろ。ここまでだって、そんなに汗だくになって走って来たのは、レイちゃんのためなんだろ。だったら、いいじゃないか。俺達に任せとけ。期限切れのカードの期限をちょちょいとしちまえばいいのさ」
「ばか、そんなことできないわ。期限切れカード使用で防犯ブザーが鳴るかは解らないけど・・・。保安部に任せた方が良いわ。ガードが見失うなんて事あり得ないもの」
「でも、綾波が時間になっても来ないなんて、おかしいと思うんです」
「時間って・・・まだ、いくらか早いよ。準備の段階だぜ。そんなに心配性じゃハゲちまうぜ、シンジ君」
「でも、心配なんです。虫の知らせって言うのか、ざわざわするんです。綾波に何かあったんだってわかるんです!」
「杞憂だよ。まだ、テストまで30分もあるんだ。5分前に到着しても間に合うさ。赤木さんも罪な事するよな。カード渡すのなんて、こうなるんだったらテストの時でもいいのに・・・あ、別にシンジ君を責めてるわけではないんだ」
青葉さんの言っている事は、良くわかっていた。リツコさんが僕に頼まなければ、僕が渡すのを忘れなければ、綾波のアパートにさえ向かっていれば・・・タラレバだが、時間はまだある。
「あっ、シンジ君!」
やっぱり、僕は探しに行かずには居られなかった。
「やっぱり、センターゲートで待つことにします!」
発令所を後にする。エレベーターは待ち時間が長い。腕時計はまだ発令所を出てから殆ど動いてはいないが、気はあせる。あせる気持ちが、足踏みをさせるのか、僕はずっと足踏みをしていたらしい、とにかく僕は綾波の元に直ちに行かなくてはならない。そうしないと、大変な事になってしまう。僕の不安は常軌を逸している。明らかに、異常な不安が僕を蝕んでいる。
あやなみのいえにいったときぼくはインターホンをおしたけどきみはいなかった
そうあのときわたしはシャワーをあびていたわあなたはわたしのへやにはいったわ
ごめんあのときはほんとうにきみがいないとおもったんだだっていちおうこえだってかけたしものおともなかったしごめん
うふふふいいのよわたしにはたいせつなおもいでなのよ
しってた?ぼくはきみがだいすきだったんだきみがいなくなってぼくはこころがちぎれそうだったはつこいだったんだそばにいてほかったでもぼくはゆうきがなかったそれをきみにつたえてきょぜつされることがこわかった・・・すごくこわかった
しっているわわたしはあなたのきもちをよくしっているのよでもごめんなさいわたしにはあいするということがわからなかったなにもないとおもっていた
きみがいなくなってぼくははじめてほんとうにないたきがするほんとうのかなしさってこころがまっくろになるんだなんにもないっていうのはそういうことなのかなっておもったんだ
そうよわたしにはだれもいなかっただからあいすることもかなしいということすらわからなかったのよあなたのきもちもずっとずっとわからなかったわ
つたえなかったからねぼくはきみをふくめたみんながこわかったんだぼくはまるでただいっぴきのけもののようにおもえたんだまるでぼくいがいにはもうおなじしゅぞくはぜつめつそんなみたいなくうきょにおもえた
よかったわねいかりくんあなたがすき
しってるよあやなみ
あなたがすき
ぼくもだずっときみをおもっていたきがするきみにあいたかったんだ
あのひぼくはきみをさがしたんだすべてがなくなりつくられたときぼくはきみをさがしたんだ
はいいろのそらにはいいろのまちはいいろのひとたちあかいうみ
あるいたいっぱいさがしたんだぼくはきみをもとめていたきらいだっていわれてもいまならいえるんだゆるぎないけついをぼくはもっているわけであって、つまり
しゅ、とエレベーターのドアがひらく。
長い間待ったような気がした。
僕は、寄せては返す会話の想念を打ちきった。
夢の続きはどこだろう。
そこに綾波レイが立っていた。