ここの卒業式には泣く人が見あたらない。みんな笑って別れることが素晴らしいと思っている。ここはアメリカなのだ。 スイス人、日本人、ドイツ人が司会席に座っており、その正面に他の生徒達が座っている。側面に先生や生徒の知り合いが立っていて、その仲には生徒の子供の姿もあった。生徒の多くは日本人だがこれは3月に日本の女子校が体験入学で来たためだ。
「ぐどもおにんぐ、えぶりわん」
女子校生達の先生なのだろう。英語で感謝文を読み始めた。思いっきり日本語なまりの英語でいい始めたため、日本人の生徒の仲には笑いをこらえるモノが多くいた。
マサもその中の一人だったが、余りのおかしさに笑いをこらえきれず、大声で笑ってしまった。高校教師はむっとしてマサをにらんだが、マサはおかしくてそれに気付くはずもない。
「Be quiet,MASA!」
隣に座っていたロシア人のオレッグがマサの口をふさぐ。高校教師の演説はさんざんな結果に終わったが、もちろんマサは反省するはずもなかった。
「この恥ずかしさを忘れるんじゃないぞ。帰国したら日本の英語教育がどれほど意味のないモノか良く考えて、教育体制を変えてくれ」
マサはその先生に対して心の中で激励の言葉を送っていた。全くおめでたい奴である。
卒業式が終わり、生徒達はそれぞれ級友や先生などと写真を撮ったり、連絡先を教えあったりと最後の時を楽しんでいる。その中の一人であるマサはひときわ目立っていた。とにかく誰にでも声をかける、在学中一回も口を聞いたことのないモノにまで声をかけている。そして話しをしたかと思うと、他の生徒の所にいき、また話したかと、他に移る。まわりからみると奇妙な光景に見えただろう。
マサの顔は真剣であり、まるで全員と話すことをノルマのようにこなしていたからだ。
「ねぇ、明日サンディエゴ旅行にいかない?」
マサは旅行の同行者を探していた。しかし、こんなことを突然言われて「OK!」という人などいるはずがない。
「明日、ドイツに帰るから」
「ロスアンゼルスに行くから」
「金がない!」
当然ながら、人は見つからなかった。