「ピィー! ピィー! ピィー!」 軽快なデジタル音が彼らをたたき起こす。必死の思いでベルを止めようと手を伸ばした瞬間、フミトはベッドから転げ落ちた。
「痛ぇな、くそっ!」
床から起き上がってベッドを見ると、マサがベッドの大部分を占領し気持ちよさそうな顔で寝ている。
「Good Morning HUMITO 」
先に起きていたジョーが笑いながら挨拶をした。
「だから男二人で寝るのはいやだっていったんだよ」
フミトはあきれたようなジェスチャーをすると、おもいっきりマサの鼻をつまんだ。それまで気持ちよさそうにしていたマサの顔は、次第に悲痛な顔になっていく。とりあえず怒りがおさまったフミトはブリーフ姿のまま洗面所に行き髭を剃り始めた。
「ねぇ、起きてる!」
ドアをノックしながら甲高いフミの声がする。フミトはあわてて着替え始め、その直後にフミが部屋に入ってきた。間一髪で着替えたフミトは何事もなかったような顔でフミに話しかけた。
「あれっ、腹の調子直ったの?」
「薬飲んだら、すぐに直っちゃった」
「たまにはマサも役に立つよな」
マサが寝ているのをいいことに、いいたい放題である。
「なんで、マサが薬なんかもってたの?」
「マサは薬物依存症なんだよ。マサのバッグの中を見てみたら、びっくりするよ」
フミがマサのバッグを開けると、風邪薬、胃腸薬、歯痛薬、セイロガン、カルシウム、栄養剤、各種ビタミン剤などの薬はもちろん、なぜかコンドームまで出てきた。
「やっぱりマサって頭おかしいんじゃないの」
フミはあきれながら言った。
パソコンオタクで薬物依存症、できればこんな奴とは友達になりたくないものだ。本来なら、要注意人物と見られてもおかしくないはずのマサだが、明るい性格に助けられているのも確かである。
「でも、マサのおかげで直ったんだから、感謝しなきゃ」
フミトはマサの名誉のためにフォローしたが、天敵に感謝しろというのもフミにとったら無理な話だ。当人のマサはそんなことに気づくはずもなくもなく完全に熟睡中だった。
「マサ、いつまで寝てるつもりなのかしら」
「起こしてやれよ」
「やだ!、また怒られそうだもん」
「マサは朝に弱いんだよ、怒るほどの元気ないって」
フミトはおもしろ半分にいったつもりだったが、これがフミの復讐心に火をつけてしまった。
「いい機会だから昨日の仕返ししようっと」
ピシャッ、ピシャッ
フミはマサの頬に平手打ちを始めた。ジョーとフミトはそれを笑いながら見ている。
ピシャッ、ピシャッ
フミの攻撃はとめどなく続く、だがマサには全然起きる気配がなかった。
「マサって寝てる時まで、怒ってるんだね」
フミトに鼻をつままれ悲痛な顔になっているマサの顔を見ながらフミが不思議そうに聞いた。
「変な夢でも見てんじゃないの。女に首しめられてる夢かもね」
チャンス到来である。フミは万年の笑みを浮かべた。
「チャンスは確実にものしなければならない」というのはマサの口癖だが、フミもそう思っているようだ。フミは寝ているマサの上にのっかった。
「夢の中で、もっと苦しめてやんなきゃ」
こうなってしまったら誰も止められない。フミはマサの首を本当に締め始めた。マサの顔はますます悲痛な顔になり、とうとううめき声まで上げ始めた。フミの頭の中にはマサが起きたときのことなど考える余地もなかった。頭の中は復讐心でいっぱいなのだ。
「まだ、起きないよ。どういう神経してんだろうね」
フミの手はグイグイとマサの首を絞めていった。