・‥…・・・「きゃっ!」
フミはベッドから飛ばされ、床に転げ落ちた。
「もう、急に起きないでよ。こっちはか弱き乙女なんだから。怪我したらどうすんのよ」
フミトの予想通りだった。
マサは女に首を絞められている夢をみていた。それにしてもなんていう夢だ。あまりにも現実的で事態が飲み込めるまで少し手間取ってしまった。
「なにがか弱き乙女だよ。信じられねぇ奴だな」
「マサが起きないから悪いのよ。今何時だと思ってるの」
「誰のせいで寝不足になったと思ってるんだよ。夜中に腹痛なんか起こすんじゃねぇよ!」
「こんぐらいのことで、そんなに怒んないでよ。カルシウム足りないんじゃないの」
フミはそう言ってマサのバッグからカルシウムの容器を取り出し、その中の一粒をマサに渡した。マサはやけくそでカルシウムを口に入れ、また怒鳴ろうとしたがフミトとジョーが笑い出したので、しょうがなくカルシウムと一緒に怒りを噛み潰した。
「今度はお前の首を絞めて起こしてやるよ」
「マサが私より早く起きることなんか絶対ないから大丈夫よ!」
やっぱりマサは朝に弱かった。いつもはマサのペースですすむフミとの喧嘩も今回ばかりは惨敗に終わった。
部屋からでて空を見ると雲ひとつない良い天気だった。
二日連続でフミに睡眠の妨害をされたマサだったが天気が良かったので怒りも少しおさまった。昨日は雨のせいで予定が狂ってしまったが今日は順調にいきそうだ。
5人は車に乗りサンディエゴに向かった。
「ここからサンディエゴまで遠いの?」
「1時間半ぐらいで着くんじゃねぇーの」
「えー、まだそんなにあるの。やっぱりディズニーランドいこうよ」
「とっくにロスは過ぎたんだよ、文句言わずに黙って乗ってろ」
「わかったわよ。黙ってればいいんでしょ。私、寝てるから着いたら起こしてね」
「ちゃんと起こしてやるよ、首締めてな」
「・・・・」
マサとフミとの立場はこの言葉で逆転した。やはりフミが口げんかで勝つにはマサの寝起きを狙うしないのか。めげるなフミ!
途中でマクドナルドがあったので、そこで朝食をとることにした。テーブルには4人までしか座れないので、誰か一人が違うテーブルに行かなければならない。マサは積極的のその役をかってでた。向こうの席では盛り上がっているようだが、マサは一人でハンバーガーを食べていた。
「一人で食べて寂しくないの」
案の定、フミがチョッカイを入れてくるが、
「オレは孤独が好きなのさ」
マサはちょっとキザにいった。
ジョーが気を使ったのかマサのテーブルにきて話しかけた。マサは内心ほっとした。実はマサは孤独が一番苦手なのである。
二人はコンピュータの話で盛り上がっている。マサは英会話はあまり得意ではないのだが、ジョーが相手となると別である。英会話ができるできないということは気持ちの持ちようでどうにでもなるものだ。二人は話に夢中になるあまり、隣のテーブルで何が起こっているのかを考えるはずもなかった。
マサとジョーのテーブル同様、こちらのテーブルも話で盛り上がっている。しかし、よく見ると話をしているのはフミトとユーヤだけである。フミはその中で一人眠りこけていた。昨晩は十分寝たはずなのに..
フミは話の中に入れずふてくされていたのだ。