March 27,1993
AM12:00 |
サンディエゴ |
いよいよサンディエゴだ。車内がいやがおうにも盛り上がる。しかしサンディエゴに入った途端またしても雨。 やっぱりこの旅行はしてはいけないものだったのだろうか 5人が5人そう考えただろう。それほど激しい雨だった。それでもマサはこの旅行を何とか成功させようとことを進める。何度もいうがこの旅行を最後にマサは日本に帰ってしまうのだ。 「さあ、シーワールドに直行だ!」 「でもこの雨じゃねー」 マサの一言も、フミのやる気の感じられない声にかき消される。 サンディエゴ最大の**橋を越えると、海岸沿いに広大な公園が見えてきた。ミッション・ベイ・パークだ。雨は相変わらず降っていたが、一同はそのパークの一部であるシーワールドに向う。 シーワールドに行きたいという気持ちはみんないっしょだった。たとえ雨が降っててもだ。しかし正門に表示されている入場料をみて動揺しないものはいなかった。 「$40」 これはちょっと高いのではないか、いっちゃあなんだがシーワールドはイルカの曲芸と水族館を足して二で割ったようなものじゃないか、しかも外は雨、一同はざわめきはじめる。それでもフミトをのぞく4人は見てみようということになったが、まさかフミトを一人残して見に行くわけにもいかない。結局、シーワールドは見送りとなった。じゃあいったいどこに行くんだ! 【後部座席】 「ジャーン」 そう言ってフミは誇らしげにガイドブックを掲げた。 「おお!」 という歓声があがる。 「こんなことになるだろうと思って、ホームマザーから借りてきたのよ」 「気が利くじゃない」 フミトの言葉に気をよくしたフミは、得意げにガイドブック開き、サンディエゴの観光地の探し始めた。だがフミは肝心なことを忘れていた。書かれている文章は当然ながら英語なのだ。それでも必死に読んでいたが、とうとうあきらめ放り出してしまった。 「なんか、学校で勉強しているみたい。フミト読んでよ」 フミトも最初のうちは、しょうがないなという顔で読んでいたが、次第に渋顔になり、フミと同様にあきらめてしまった。本当に彼らは留学生なのだろうか。二人はユーヤに助けを求めた。 二人にはユーヤが神様に見えたに違いない。次々と読んではページをめくり、あっという間にすべて読み切ってしまったからだ。 「どこかおもしろそうな所あった?」 二人は歓喜の目でユーヤを見たが、ユーヤは眉にしわを寄せて首を傾げているだけだった。 「んー、どこが面白いのかな?」 ユーヤはしばらくの間、考え込んでいたが答えが出るはずもなかった。旅行など全くしたことがないユーヤに、おもしろい場所を探せというのも所詮無理な話だったのである。 「じゃあ、みんなで協力しよう」 フミトはそう言って、それぞれに役割分担することにした。ここでのフミトの功績は大きかった。このメンバーで「協力」という言葉を初めて使ったからだ。ユーヤが次々と読み上げ、フミが「そこ行きたぁい」というたびに、フミトが地図で探すという、それぞれの短所を補いあう見事な連携作業が始まった。しかし、場所が遠かったり、料金が高かったりと行き場所が決まる気配はない。 「このガイドブック、肝心ことはなにも載ってないな」 三人はガイドブックに責任を押しつけて、自らの正当性をはかった。
【前部座席】 こちらは一応、英語の会話である。 マサとジョーは地図で現在地の確認をしていた。マサが位置を説明し、ジョーが頷いて答えていた。マサが地図上の数カ所に印を付けると、ジョーは一番近いところにを指さしたので、マサは納得したようだった。
【前部座席 ←→ 後部座席】 後部座席が急に静かになったので、いままで隔離されていた二組の旅行者たちは互いに交流し始める。 「どこ行くか決まったのか?」 「サンディエゴっておもしろい所あまりないみたい」 フミが絶望的につぶやく。 「じゃあ、オールドタウンへ行こうか」 「なにオールドタウンって。サンディエゴのこと知ってるの?」 「これに全部載ってるよ」 そう言ってマサは後ろに本を放り投げた。それは日本語版のガイドブックだった。 三人はしばし呆然としていたが、やがて鬼の形相に変わっていった。三人はありったけの罵声はマサに浴びせたが、マサには少しも反省の色がなかった。三人は責めることを諦め、今更のように思い出した。 これがマサなのだ! 「Let's go to OLD TOWN!」 マサの威勢のいいかけ声を聞くと、ジョーは笑いながらエンジンをかけ、車を『古き善き街・オールドタウン』へ走らせた。 |
目次 / 前の項 / 次の項(オールドタウンってなに?)