メキシコ観光がさんざんな結果となり、昼食もとりおわった5人はまたしても行き場がなくなってしまった。困ったときはビーチということでビーチに向かうことになる。メキシコにいたときは天気が良かったのだが海岸の手前まで来ると待っていたかのように天気が悪くなった。 ビーチに着くなりフミトは海沿いにどんどん遠くにいってしまった。なるべくフミから離れようとしているのだろうが何もそこまでやらなくても。ユーヤもその後をついてゆく。まさかフミの言うとおりユーヤはフミトのことを・・・。マサはそれ以上考えるのやめることにした。もうトラブルはたくさんだった。のんびり寝転がってバカンスを楽しむんだ。そう思うことにした。
ジョーは精力的に写真を撮っているこんな曇り空なのに何を撮ろうと言うのだろうか。
フミは...なぜかマサの隣にいた。フミはなにかいいたそうだったがそれでもマサは無視して寝ることにした。「バカンス、バカンス」 マサは頭の中でその言葉を繰り返した。
フミが何か言っているようだったがマサはフミ背を向け、寝ているのだということをアピールした。それでもフミは当たり前のように話し続ける
「マサって、あたしのこと嫌いでしょ」
「今頃わかったのかよ」
寝ているはずなのに答えてしまった。マサは話し掛けられると反応してしまう自分の性格をのろった。
「どうして、私が誰とでも寝る女だから?」
「おまえが誰と寝ようがオレには関係ない。それはおまえ自身の問題だろ。貴重な睡眠さえ妨害しなければみんないい奴さ」
「後でたっぷり寝させてあげるから。話を聞いてよ」
どうやらフミはマサと腹を割って話したいらしい。マサは仰向けになり海を見ながら話を聞くことにした。フミは嬉しそうに笑うと本題に入った。
「あたしね、今まで中年としか付き合ったことがなかったの、同年代からは相手にされなかったし、中年だったらニコニコ笑っているだけで、いろいろ買ってくれるでしょ」
「うらやましいね、オレもそんな楽な生き方してみたいよ」
「でも見た目ほど楽じゃないのよね、これって。最初は遊び半分だったけど、気がついたら本気で好きになってた。向こうには家庭があったけど、二人にはそんなもの障害でもなんでもなかった。彼は別れるって言ってくれたし、私も彼を信頼してた。だから就職もしなかった。」
マサはフミの顔を見たが、フミと目が合うことはなかった。フミも海をを見ながら話していたのだ。フミはさらに続ける。
「結局、彼は精一杯の誠意だって言って私にお金を渡したわ。でも、私はぜんぜん悲しくなかったの、なんか肩の荷が下りたって感じ。これからは普通の生き方をしようって本気で思ったもの」
「...」
「もちろん、今までのツケはそんなに甘くなかったけどね。みんなで私を売春婦扱いしたし、友人、家族、私のまわりにいる全ての人が敵に見えてきて。 だからそのお金使って日本を逃げ出して来ちゃったってわけ」
マサは本気でフミの話を聞いていた。ちょっとだけフミに同情しているのだろうか。
「誰もおまえを責められねぇよ。誰だって多かれ少なかれ同じようなことはしてるのさ。金欲しさに自分の本当にやりたいことや夢を犠牲にしてまで自分を偽っている。それが体か気持ちかってことだけさ」
「マサっていいこというね。ちょっと見直しちゃった」
フミは嬉しそうだったが、別にマサはフミを喜ばせようと思って、そういったわけではなかった。ただ、過去のマサ自身も社会に認知されにくい性格であったし、今そのことをせめても何の解決にもならないと思っただけだった。
「アメリカはお前の過去を知っている奴は誰もいなかったわけだし、やり直すチャンスだったんじゃないのか。それなのに、同じことの繰り返しじゃ世話ないよ」
「やっぱり私ってダメのなのよね。なんかヤケになっちゃって。結局同じことしてた。フミトと出会わなければ、日本にいたときと同じ結果になってたと思う。やっと中年以外の人を本気で好きになることができたのよ」
なんでそういう方向に展開しちゃうわけ。マサはため息を吐いた。
「フミトには彼女がいるんだぜ。それじゃあ日本にいたときと少しも変わってないじゃないか」
「だって一年も離れて暮らしてるのよ。今でもフミトがその人のことが好きだって保証はどこにもないでしょ」
「1年ぐらい離れたぐらいで終わるんなら、6年も続くかよ。お前だってフミトの性格はよくしっているだろ」
「あたしは本当にフミトが好きなの。こんなに好きなのにどうしてみんなわかってくれないの」
マサはいよいよフミの話を聞くのがいやになってきた。これ以上話しても堂々巡りになるだけだからだ。
「だからお前はガキだっていうんだよ。何の努力もせずに
好きだ、好きだ
しか言わない奴を誰が好きになるんだよ。男と女には釣り合いってものがあんだよ。オレだって好きな女がいるから、今のオレじゃ彼女が迷惑するだけだから、こうやってアメリカに来て自分を向上させようとしてるんじゃねぇか!」
マサは身を起こしながらそう言うと、その場を去った。