食事を食べ終わると近くのビーチに行くことにした。そこは海に向かって橋が出ており200M位先に人工の島があった。横を見るとフミトとフミがベンチに座りながら話している。なんだかよくわからないが、すべてがいい方向にむかい出している。ちょっと気味が悪いくらいだった。橋の上でマサはジョーに謝った。
「悪かったな」
「なんで謝るんだい?」
「こんな旅行に付き合わせたからさ」
「いい旅行だったよ。景色は見れたし、日本料理はおいしかったし」
その言葉に説得力はなかった。雨続きでいい景色なんか少しも見れなかったからだ。確かに日本料理はうまかったかもしれないが、それが旅行で一番楽しかったことだなんてあまりにも寂しすぎる。
「マサだっていい旅行だと思っているだろ?」
「最悪の旅行だよ」
「嘘つきだ」
「なんで嘘つきなんだよ」
「だって、マサは夢が叶ったって言ったじゃないか。夢が叶ったのだから最高の旅行じゃないか」
ジョー言うとおりだった。確かに夢は叶った。異国の地で知り合った友人と酒を飲みながら本音で話すという夢はサンディエゴの酒場で叶ったはずだ。なのになんでこんなに心残りがあるのか。
「もし、まだ夢が叶ってないのなら。いますぐ叶えるべきだ。そうしないとマサは一生後悔する」
「夢は叶ったよ」
マサはそう言ってその場をはなれた。ジョーに夢のことを言われるのはつらかった。頭の中が混乱して少し冷やしたかったので人工島まで行くことにした。
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マサが振りかえると血相を変えたユーヤこちらに向かっていた。何事かと思ったがマサが目当てなのは間違いないようだ。しょうがないので立ち止まりユーヤを待つことにした。
「もう頭にきた」
いきなり本題である。いつも通りユーヤの会話には前振りがない。
「どうしたんだよ」
「フミよ、もう彼女には耐えられないわ」
「だって、さっきは仲良さそうにしてたじゃん」
「あれはホテルでみんなの前だけは仲のいいフリをしようって決めたからよ」
マサはつくづく女って言うのはわからないと思った。さっきはどう見ても仲良しの二人っていう感じだったのに・・・
その言葉を皮切りにユーヤは次々とフミの悪口を言いはじめた。マサはあらためて気がついた。この旅行でこんなにユーヤと話をするのは初めてのことだったのだ。ユーヤはマサが人工島に歩き着くまでフミの悪口を言い続け、そのうち言い尽くしたのか黙ってしまった。
島に着いたのはいいが、何もやることはない。マサは手すりに寄り掛かり夜の海をじっと見ていた。海は荒れていて波が高かった。
「なに考えてんのよ」
ユーヤが不思議そうに尋ねる。
「なにも考えてないよ、たそがれてるだけさ」
実はユーヤにどうやって話を切り出したらいいかをずっと考えていたのだが。
「寒いね」
たまりかねたのかユーヤがマサに対してありきたりの会話を始めた。
「走れば暖かくなるよ。この島を一周でもすれば」
マサは冗談で言ったつもりだが、ユーヤは本当に走り出してしまった。あわてて止めようとしたがすでに遅かった。
「なんちゅう女だ」
マサはこれほど冗談の通じない奴がいるとは思わなかった。と言うよりも不器用なのだろうと思った。
しばらくするとユーヤが戻ってきた。
「ああ、疲れちゃった」
「お前なぁ、オレは冗談で言ったんだぜ。普通、走るか?」
「でも暖かくなったよ」
「そんなの今だけだよ、汗かいたら風邪ひくだろうが」
マサはそういってMA1をユーヤにわたした。
「マサは寒くないの」
「全然寒くないね、だてに秋田で生まれてないよ」
本当は少し寒かったがマサは見栄を張ってこういった。
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マサはユーヤと喧嘩したときのことを思い出していた。
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