マサは満足だった。やっぱりロスで一泊してよかった。近くのリカーショップで酒をたらふく買い込みホテルに向かう。そういえば旅行中、5人で酒を飲んだことはなかった。
「これ全部飲むの」
フミが驚きの表情で言った。確かにマサの紙袋はビールでいっぱいだったが、この程度はマサの許容範囲だ。
「当たり前だよ、もちろんお前も飲むんだぜ」
マサは得意げに言ったが、フミはマサの紙袋だけを見ていったのではなく、ユーヤの買ってきたビールを見ていったのだ。マサは腰が抜けた。ユーヤもマサと同じく袋にいっぱいのビールを買ってきていた。
「あれっ、ユーヤも買ってきたの?」
「店の人が私のこと”Beautiful”って言ってくれたからたくさん買っちゃった」
ユーヤはうれしそうに言ったが、マサは結構単純な奴だなと思った。英語ができるわりにはアメリカのことが全然わかっていない。”Beautiful”なんてアメリカでは社交辞令のようなモノなのに。
部屋のなかで宴会が始まった。そういえばこの面子はノンベェの集まりだ。フミを覗けばみんな酒好きで大量に買い込んだ酒はあっと言う間になくなってしまった。
「ビール買いに行かない」
顔色一つ変わらないユーヤが言った、もちろんマサが断るはずもない。
マサはジョーに車を出してくれるように頼んだ。マサたちに比べればはるかに大人のジョーではあったが、その場の雰囲気に飲まれて車を出すことになる。
「ねぇ、チョコレート買ってきて」
わがままフミがなんかほざいていた。
「馬鹿野郎、オレたちは酒を買いに行くんだよ。ほしかったら自分で買ってきな」
マサはそう言って部屋を出た。ジョーはひどく酔っぱらっていて廊下もまともに歩けない様子だ。ユーヤが不安そうに見ているので、マサは二つ指を立ててジョーに尋ねた
「How many finger?」
日本ではこうやって酒に酔っていないか確かめることが多いのだが、果たしてスイス人のジョーにこの意味が分かるのだろうか、そう思ったが一か八かやってみた。
「four!」
スイスでも同じことをするのか、勘がいいのか、ジョーは期待通りの答えを返してくれた。ユーヤもこれには爆笑し雰囲気は良くなってきた。
運転に関してはプロ級のジョーだが、信号無視をしたりと運転はさんざんだった。やはりどんなに運転がうまくても酔っぱらい運転はやってはいけない。マサは今更のようにそう思ったが、もう運転してしまったのだからしょうがないと相変わらず自分勝手な納得をしていた。マサは大声で笑いながらジョーをからかっていた。全くとんでもない旅行者たちである。
ユーヤが誉められたという例のリカーショップに行く。またもや大量のビールを買い込み車に向かう一行、
「あっ」
マサが思い出したように店へ戻っていった。
「なに買ってきたの」
不思議そうにユーヤが尋ねる。
「これ買ってかないとまたあの馬鹿がすねるだろ。もうトラブルはたくさんだからな」
- 紙袋にチョコレートを放り込みながら、マサはそう答えた。
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部屋に戻るとフミトはすでに寝ていた。車の運転で疲れてしまったのであろうか。その横でフミが暇そうにテレビを見ていた。
マサはチョコレートをフミに放り投げると、ビールの栓を開け、うまそうにビールを飲み始めた。フミトを無理矢理起こしてもよかったが、明日はたっぷり観光ガイドをしてもらわなければならないのでそのまま寝かせておいた。そして明日の心配のいらない4人は隣の部屋に移動し始める。やっぱり貧乏くじを引くのはいつもフミトなのね。
そしてさらに飲み会は続く.....
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