フミトおすすめのビーチに向かう。空は晴れ渡りやっと西海岸の恩恵を授かることができそうだ。
マサは裸になって寝転がった。めちゃくちゃ気持ちがいい。ローラースケートで走り回る若者たち、寝転がりながらそんな風景を眺めていると今までの苦労が嘘のように思える。
マサは熟睡した。昨日夜遅くまで騒いでいた疲れがここに来て出たのだ。
帰国する際のマサの唯一の気がかりはユーヤのことだったのかもしれない。どんな人間の気持ちも理解する。感情だけで相手の気持ちを決めつけない。そういう人間になるためにアメリカに来たのだ。ここでは予想以上に自分に素直になれた。見知らぬ場所で見知らぬ人と出会うことで、日本の生活で積み重ねてきたプライドや偏見をすべて捨て去ることができたと思う。そして多くの人と友達になり、相手の意見を聞いては自分の意見をぶつけてきた。ただひとりの日本人、ユーヤを除いては。
最後の授業で言ったことはある意味では本当のことだったのかもしれない。しかし、あの時点ではまだ言う資格はなかった。もしこの旅行をしなかったら永遠にその資格を得ることはできなかっただろう。順番が逆になってしまったがマサには達成感があった。最初はどうなるかと思ったこの旅行も今は心の底からやってよかったと思える。そしてこの留学も・・・
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どこからともなくマルボロが飛んできて寝ているマサに当たった。
マサは目を覚ました。眠い目をこすりながら辺りを見回すとユーヤが笑いながらマサの方を見ている。
「何すんだよ」
マサがそのマルボロをユーヤに投げつけようとした瞬間、ユーヤはカメラのシャッターを切った。
「だめよ、投げちゃ、それは私からの贈り物なんだから」
「こんなのが贈り物かよ」
「そうよ、そしてこの写真はマサからの贈り物ね」
ユーヤはそう言って遠くにいってしまった。
こうしてこの旅行唯一の写真はユーヤだけのものになった。
マサはユーヤからもらったマルボロをしばらく見ていたが、ポケットに入れると再び寝転がった。寝転がりながら「最後のビーチ」をずっと眺めていた。
最後のビーチ <終わり>