沖縄旅行記 1

 「明日の旅行 楽しみだよねー」
明らかに人当たりの悪い人になっているおれの周りで明日の旅行を楽しげに話すおねーさん達。 もちろん「やな感じ」モードのおれに話し掛けることも無く、 おれも話し掛けることができないままその日は17:55で帰宅した。

 「やな感じ」モードに突入するには、それなりの理由がある。

 いつだったか忘れたが、「ひょん」なことから参戦することになった6人一蓮托生沖縄旅行。 それから「沖縄旅行」がおれ達のキーワードになり、いつしか照準をそれに合わせるようになっていた。が。 突然のプロジェクトからの除外、 仕事の無いことによる「おれってここにいてはいけないのでは」精神的圧力3ヶ月目、 今まで熱帯低気圧すらなかった空に舞い降りた「今年どころかここ数年間で最強」の台風、 デジカメのメモリが1000円足りずに32MBが買えなかったこと、 行けなかった場合はもしかしたら海外に行けるかもしれないがおれだけがパスポートを所持していない事など、 沈む必要条件を質 量共に軽くクリアしていた。

 確かに、明るい材料はある。 プロジェクトからはずされたのなら 新しいことにチャレンジできるチャンスだし、 仕事が無いならホームページの構築に力を入れるなりLinuxの勉強をするなり堂々とできる。 それに明日からはまちに待った旅行なのだ。 しかし、課長のあの言葉が気になってしまい たとえ足したとしても「マイナス」になる事を押さえられない。

 「探さないでください」などと置手紙をして「ほんとに探されなかったらやだな」と思いながら探されることを期待しつつ 逃げるふりをして警察犬に捕まるより、「建設的で前向きなおれ」をたたき起こし、何かしなければと必死に考えた。 なにしろ時間が無い。その焦りの気持ちも加わり、情緒安定なまま横になってたらいつのまにか寝てた。

 長い間眠っていたつもりだったが、ケータイに起こされて時計を見るとまだ23:30だ。 あれー?と思ったが、ケータイをとる方が先だ。
「もしもし?」
「いしぐろさん ですか?」
電話は おかだ君からだった。 ここで普通なら「この電話が運命を変えた」という枕詞が続く約束だが、 おれはこの手の「引っ張り」は嫌いだ。 だっておれの場合、電話ではなくって台風が運命を変えたんだもん。


1999年10月8日作成
1999年10月20日更新
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