16-36
 相殺の効果は相殺適状にさかのぼるから、[@エ 相殺適状が生じた後の利息や遅延損害金は、相殺の意思表示がされると、さかのぼって発生しなかったことになる。]。しかし、[Aア 対立する2つの債務について相殺適状が生じた後、その一方の債務が弁済されても、その後、相殺の意思表示がされたときは、弁済は無効となる]とは考えられていない。賃貸借契約が賃料不払いを理由として解除された後、賃借人が賃貸人に対して有する反対債権を持って賃料債務と相殺するとの意思表示をした場合については、判例は[Bカ 賃料債務がさかのぼって消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかったため、相殺の時期を失した場合であっても、異なるところはない]としているのに対し、学説には、これに賛成する見解のほか、[Cイ 賃貸人が反対債権の存在を知りながら解除し、これに対し賃借人が遅滞なく相殺を主張したなどの事情があるときは、解除を主張することが信義則に反する場合がある]とする見解、また、[Dオ 反対債権を有する者を同じ履行の抗弁権を有するものと同様にみることができる]とし、したがって[Eウ 債務不履行責任が生じない]とする見解がある。