16-7
学生甲 私は、(Aウ 放送に流用できるチャンネルには限度がある以上、国民の知る権利にこたえる情報の多様性を保障するためには、番組準則、特に調和を保った番組比率の準則の遵守を求めることも許されるのだと考えます)。また、(Bオ 放送が、多くの受信者に対し、受動性、浸透性の強い動画や音声という形態で多量の情報を提供する、社会的影響力の極めて強いメディアであることも、合憲判断の裏付けとなると考えます)。
学生乙 甲君は、電波の希少性を根拠に放送法による規制を合憲としていますが、少なくとも衛生放送により100を越える放送用チャンネルが認められている現代において、電波が希少だと言えるのか疑問なしとしません。また、放送の影響力が番組内容の規制を正当化するほど特殊であることについては十分な論証がなされていないと思います。私は、(Cア 社会生活に必要な基本的情報が社会全体に公平かつ低廉に提供され、各視聴者が自立的に情報を選択することを可能とするために、番組内容に対して一定の規律を加えることは必要であり許されると考えます)。
学生甲 乙君の考えからは、新聞に対しても、放送法と同様の規制をくわえることが許されることになりませんか。
学生乙 そうではありません。(Dエ 放送に対する規制により社会の中の多様な意見が番組内容に反映することが期待でき、他方、新聞に対する規制を許さないことにより、放送に対する規制の行き過ぎを批判・抑制することが可能になり、マスメディア全体としては、情報の公平な提供が期待できることになると考えます)。
学生丙 その考え方からは、放送に対しては規制を外し、新聞に対して規制を加えることも憲法上許されることになり、不当ではないでしょうか。私は、基本的には甲君と同様の考えに立ちますが、それに加えて以下の点も考慮すべきだと考えます。すなわち、(Eイ 商業放送においては、時間を単位として広告枠が売られています。そのため、放送事業者は各時間帯の視聴率を高めようとするようになり、番組編成が大衆受けをするものに画一化する傾向が見られます。これに対して、新聞では、各ページごとに読者数を増加させようという誘因は少なく、むしろ多彩な話題にページを割くことで読者を獲得しようとします。そこで、放送においては、情報の多様性確保のため、番組準則、特に調和を保った番組比率の準則の遵守を求めることも許されるのだと考えます)。
16-12
政党に対する憲法の態度について、トリーペルは、敵視、無視、承認、[@テ 憲法的編入]の段階にあることを示すものが存在する。例えば、ドイツ連邦共和国基本法第21条は、自由で民主的な秩序を侵害若しくは除去し、又は国の存立を危うくするものは違憲であることを定める。実際、ドイツ共産党が違憲審査の対象になったとき、連邦憲法裁判所は、自由で民主的な秩序を侵害していると判断した。これは一般的に「[Aタ たたかう民主制]」の例として知られている。フランスでも、現行憲法第4条では、政党は国民主権と民主主義を尊重すべきことを定めている。
しかし、実際には、政党が民主的であるかどうかを決めるのは容易ではない。日本では、憲法上の政党の地位は、前期4段階のうち[Bサ 承認]の段階にあると解されているが、憲法の「[Cア 結社]の自由」の保障の下にあるため、裁判所の介入は消極的になりがちである。最高裁判所の判例でも、政党の[Dチ 内部自律権]に属する行為、例えば除名等の処分の当否については原則として自主性を尊重すべきとしている。もっとも、法律によって[Eカ 政党助成]制度などが導入されている以上、政党に対して司法的コントロールが及ばないと解することは妥当ではなく、司法権の範囲との関係でなお検討が必要である。また、代表性に関連する問題でも、一般に、[Fウ 自由委任]原則が妥当すると解されているが、平成12年の公職選挙法改正により、比例代表選出議員が、当選後に他の届出政党等に移籍した場合に[Gシ 失格]となる規定が置かれたことは、[Fウ 自由委任]原則との関係において理論的課題があることを示しているといえよう。
16-16
学生A 最高裁判所は、定住外国人の地方参政権が憲法上保障されているかどうかが問題になった事件の判決(平成7年2月28日第三小法廷判決・民集49巻2号639頁)において、第1点として、憲法第15条第1項の公務員選定罷免権の規定は、権利の性質上、日本国民のみを対象とする、第2点として、憲法第93条第2項にいう住民とは、[1キ 地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味する]、第3点として、憲法第8章の地方自治に関する規定の趣旨から、永住者等に地方選挙権を付与する措置を講じることは憲法上禁止されているものではない、という判断を示しました。
学生B では、最高裁判所の見解では、地方公共団体の長や地方議会議院の選挙権を永住者等に付与する措置を講じないときは、違憲になるのですか。
学生A [2カ 専ら国の立法政策にかかわる事柄なので、違憲になるわけではない]といえます。
学生B 第1点で、日本国民のみを対象にすると考えるのはなぜですか。
学生A [3ケ 最高裁判所の見解によれば、憲法前文及び第1条の規定に照らせば、国民主権原理における「国民」とは、日本国籍を有する者を意味することは明らかである]からです。
学生B 第3点について、第2点で[1キ 地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味する]という見解を導いたことと矛盾しませんか。
学生A [4ク 第2点の[1キ 地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味する]という見解については、地方公共団体が国の統治機構の不可欠の要素を成すことを重視し、憲法第15条第1項の趣旨が、憲法第8章の住民の解釈にも及ぶという前提で考える場合には、第3点の結論との理論的関係が問題となり、矛盾するという指摘もあり得る]と考えます。
16-19
日本国憲法は、人権に関する総則的規定においても個別規定においても、原則として、未成年者を別異に取り扱ってはいない。子供の人権享有主体性への制限を示すのは、[A 選挙権]に関する憲法第15条第3項のみである。
未成年者は伝統的には[B 保護]の客体とされてきた。しかし、今日では、未成年者も人権享有主体であることについて、抽象論としては憲法学説上ほとんど異論をみない。一方で、その人権の現実の行使においては一般に成年者とは違った制約があることが当然視されてきた。この「当然視」が具体的問題に置ける規制合憲論を帰結してきた、といえよう。成長発達の過程にある未成年者の人権制約の問題は、年齢面での発達段階、年齢によって画一的に判断すべき場合か個別的に判断すべき場合か、[C 自律]にとっての当該行為の価値、当該行為を成熟化過程における思考錯誤として許容し得る余裕の有無、[D より制限的でない]規制手段の有無等について、個別具体的に検討されなければならない。
例えば[E 公職選挙法]は未成年者が「選挙運動」をすることを一切禁止し、その違反に対して刑事罰を科している。しかし、その合憲性には疑問もある。1789年フランス人権宣言第4条の「他人の自由を害しない」範囲で自由が保証されるという文言で示唆されている[F 侵害]原理によって未成年者の選挙運動の禁止を正当化することは困難である。また、仮に「本人のため」に保護することを理由にして行われる制約、いわゆる[G バターナリズム(国親思想)]に基づく制約としてそれを肯定し得たとしても、その違反を刑罰によって規制するのは[G バターナリズム(国親思想)]に基づく制約として常軌を逸していると指摘する見解もある。
また、[H 岐阜県]青少年保護育成条例事件において、最高裁判所は、「[I 有害]図書が一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関する価値観に悪い影響を及ぼし、性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮の助長につながる」ことは「社会共通の認識になっている」ことなどを理由に、当該条例の合憲性を肯定した。当該判決の補足意見は、[I 有害]図書と青少年非行等との関係性について「相当の蓋然性」の基準を適用しつつ、当該条例を合憲とする。これを批判する見解は、補足意見も結局は必ずしも実証的ではない「社会の共通認識」に依拠して両者の関連性を肯定していることを問題視し、具体的な事実認識を踏まえた「相当の[J 具体的]蓋然性」によって判断すべきであると主張する。
16-20
学生A 私は、憲法第31条は、憲法で保障された権利・自由・利益について、政府が制限あるいははく奪する場合の手続きについて保障した規定だと考えますので、[@シ 刑事]手続きのみならず、[Aサ 行政]手続きについても、当然に憲法第31条の保障が及んでいると考えます。Bさんは、どう考えますか。
学生B 私は、憲法第31条は、その文言や、憲法第33条から第40条までに犯罪捜査の手続きや刑事裁判手続きに関する規定が置かれていることから考えて、[Bシ 刑事]手続きの適性について定めた規定だと考えるべきだと思います。ちなみに、平成6年に施工された[Cセ 行政手続]法によって不利益処分等を行う場合の告知・聴聞手続等については既に立法化されているので、私の見解によっても、特に不都合は生じないと思います。
学生A [Dセ 行政手続]法は、法律自体に適用除外既定が定められていますし、[Eサ 行政]手続のすべてに適用がある訳ではないと思います。
学生B 私も、[Fサ 行政]手続の適正が要請されるという結論には賛成ですが、その根拠は、憲法第31条ではなく、各個別の人権規定によるか、憲法第[Gキ 13]条に求めるべきだと考えます。
学生A しかし、憲法第[H13]条の規定は、一般的な[I手続]保障の規定ではなく、[Jア 実体]的権利の一般的規定なのではないでしょうか。ところで、Bさんは、憲法第31条の保障の内容についてはどのように考えるのですか。
学生B 私は、憲法第31条の文言から考えて、刑罰による身体の拘束等について、その[Kイ 手続]が法律で定められていることとその[Lウ 内容]が適正であることとが要請されていると考えます。
学生A そうすると、Bさんは、[Mオ 罪刑法定]主義は、憲法第31条の要請ではないと考えるのでしょうか。
学生B そうですね。そのことは、[Nカ 法治]主義の要請から、むしろ当然の前提だと考えられると思います。
学生A それでは、[Oオ 罪刑法定]主義は、刑法の重要な基本原則であるのに、憲法上の根拠がないことになってしまって不都合ではありませんか。
学生B 憲法第41条、憲法第73条第6号、憲法第39条から、当然に導かれる原則ですから、あえて、別に憲法上の根拠を求める必要はないと考えます。