1.『 AS WE MAY THINK (思うがままに)』
現在のようなメディアテクノロジーの動向をある意味で予言した科学者、ヴァネヴァーブッシュ氏が1945年に米国の科学雑誌『アトランティック・マンスリー』7月号に一本の論文『 AS WE MAY THINK 』を発表したことから壮大な夢は始まる。
ブッシュ氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)教授時代から当時の科学教育に対して無意味な暗記作業よりも、人間がもっと本来の思考作業に時間を割けないものかと長年考えていた。20年余りにわたる思案の結果、人間の思考支援のための仮想機械の可能性をテーマに書かれていた。さらに氏は 『 MEMEX (EXtention of MEMory = 記憶の拡張)』と名付けられた、仮想機械のコンセプトも提示している。これは、のちのJ.C.R.リックライダー、ロバート・ティラー、ダグラス・イングルバート、アラン・ケイ、シアドア・ネルソンらに思想的影響を与え、「知的増強マシーン」へのテクノロジの進化を突き動かしたのである。
2.1968年12月9日
「知的増強マシーン」への夢は1950年代にはいると対話型コンピュータの研究者に受け継がれていった。中でもJ.C.R.リックライダー氏(MIT教授)は、その後のメディアテクノロジー開発史を大きく変えるハプニングに遭遇することになる。
もともと心理音響学という異分野の出身ながら、実験解析用ツールとしてのパワーに注目していた氏は、「対話型コンピュータ」の研究をしていた。のちに付属施設であるリンカーン研究所の顧問に就任した氏は、同大学院生であるアイヴァン・サザランドという人物に出会った。